IS~ほんとはただ寝たいだけ~ 外伝・超外伝 作:真暇 日間
超外伝、夏休み その1
一夏達をフルボッコにしてから起きると、目の前にはやっぱり一夏の顔が。今は……まだ夜の八時か。まだ寝れるな。
「こらこら、布団を被るんじゃない。一回起きたらちゃんと起きろって」
「…………あと……10時間………」
「長えよ!? そこは普通五分だろ!?」
……普通とか、常識とか……そういった言葉は俺の辞書には………無いことはないけど、非常識と異常の対義語として端っこの方に申し訳程度にしか出てこない。
「……仕方ないやつだなぁ………」
一夏はそう言うと、俺を布団にくるんだままお姫様だっこで抱えあげた。
そしてそのまま部屋の扉を開けて、俺をどこかに運び出す。
……いい匂いがしてきたから、向かう先は多分食堂だろう。夜の八時だし、かなり遅い晩御飯ってところかね?
「……ほら、ついたぞ……って、完全に寝てるな………」
まあ、俺は寝る方が好きだからな。某ボールに入れればポケットにも入っちゃうモンスターのケーシィ並みに寝てると思うぞ?
頭の起きている部分でそう思いながらも、俺は一夏に抱かれたまま一夏に運ばれるがままになっている。
このまま運ばれても悪いことにはならないだろうし、眠いけど腹減ってない訳じゃないし…………とりあえず、細かいことは後で考えることにした。
「……ふぁ………ねむい……」
「はいはい、わかったからせめて飯の時くらいは起きろって」
「……むりぃ………」
「無理って……オイ」
ツッコミ入れられたが、無理なものは無理だ。だって無理だから無理だし、無理な上に無理は無理で無理だから無理であって無理なんだ。つまり無理。
でもご飯は食べる。寝ながらでも何となくできる。溢すことも無きにしもあらずだが、気を付ければできないこともない。多分。
財布は他の服と一緒にアンダーグラウンドサーチライトの中にあるので金がすぐには出せない。とりあえず服だけは千の顔を持つ英雄で出しておく。今の状態で毛布が解けると色々不味いからな。中身下着とぶかぶかのYシャツ一枚だし。
それがバレたら俺をお姫様だっこしている一夏が色々と不味いと思うし………でもバレたらバレたで面白そ……げふんげふん。流石に可哀想だよな。
ついでに財布を出して、食券の券売機に一万円札を入れる。
「起きてんなら自分で歩けよ」
「靴が無いからヤダ」
「……そういや無かったな。靴」
そうなんだよな。千の顔を持つ英雄で作れば話は別だけど、こうしてると一夏が運んでくれて楽だし……やりたくないなぁ………。
券売機のボタンをポチポチポチポチと押して、出てきた食券を拾ってお釣りを財布の中にしまう。
出てきた食券は四枚。このくらいだったらIS学園の食事の量が少ないと言うこともあって、普通に食べ切れる量だ。
「……そんなに食べられるのか?」
「ん。結構余裕」
「そうなのか?」
今度は声を出さずに頷くだけにしておいて、千の顔を持つ英雄で靴を出してから着地する。
いくらなんでも俺を抱えたままそれだけの量を運ぶのは無理だろうし、このくらいはしないとな。
「靴は無いって言ってなかったか?」
「無かったよ? これはシロに入ってたのを出しただけだし。容量が多いと便利だね」
さてと。それじゃあこの食券を食堂のお姉さん方に渡しに行くか。
side 原作一夏
………人間の体って凄いな。百秋の食欲を見ていると、本当にそう思う。
次々に飲み込まれて消えていく料理は、大体俺がいつも食べている量の四倍から五倍くらい。食堂のおばちゃんを『お姉さん』と呼んだ百秋は、凄い量のサービスを受けていたからな………。
もきゅもきゅもきゅもきゅと食べている百秋はたまに食べ物の欠片を落としたりするが、本当に美味しそうに食べている。
目の前でこんなに美味しそうに食べられると……食欲をそそられてしかたない。中には胸焼けしそうと言う人もいるが、俺はそんな風に元気に食べる百秋がもう可愛くて仕方がない。
「……親バカ」
「五月蝿い。良いじゃないか親バカで」
鈴の呟いた言葉にそう返し、百秋の食事風景を眺める。
「……パパも食べる?」
「いや、俺は自分のがあるからいいよ。いっぱい食べな」
俺がそう言うと、百秋はまたもきゅもきゅと食べるのを再開する。
こんだけ食べててあんだけ寝てて、よく太らないな?
「パパとおかーさんの子供だからね」
そうか。
…………ん? もしかして俺、自分の子供にまで内心を読まれたのか?
………まあ、いいか。この程度のことを一々気にしてたら禿げそうだ。それは絶対嫌だし、流すことを覚えよう。
もっと頭を柔らかく。そうすりゃみんなハッピーだ。
そう思いながら俺は目の前の食事を口に運ぶ。……うん、いつも通りに美味いな。
百秋もたくさん食べているし、俺も食べて寝て訓練して強くならなくちゃな。
超外伝、夏休み その2
晩御飯を食べて、目が覚めると目の前に一夏の顔。どうやら今回の原作世界旅行は随分と長くなるらしい。
とりあえず二度寝といこうと考えて一夏を抱き締める。
すると一夏の方からも抱き締め返し、優しく頭を撫でてくれる。この天然ジゴロめ。お休み。
side 原作一夏
てっきり今回も夜が明けたら百秋はいなくなってるものだと思っていたんだが、今も俺の目の前で気持ち良さそうに眠っている。
離れようとしたんだがなかなか離れてくれない。なんか異様に相手を逃がさないことに長けているような気がするのは俺だけ?
……とりあえずなんとか百秋の腕の中をすり抜けて、起こさないように静かに着替える。
……昨日は俺達との試合で疲れてるだろうから、今日はたくさん寝かせておいてやろう。そう考えて俺は百秋を置いて部屋を出た。
昨日の夜、百秋が寝付いてから山田先生から連絡があった。今日は白式の元々の開発室から研究員が来て、データ取りをしないといけないそうだ。臨海学校で二次移行したせいらしいけど、そのお陰で鈴と約束していたプールにも行けなくなってしまった。
……山田先生も、もう少し早く言ってくれればいいのにな。そうすれば鈴との約束を破らないで済んだのに。
鈴もいつもはかなり夜更かししてるくせに、なんで昨日に限ってあんな時間に寝てたんだ? お陰で山田先生から言われて行けなくなったってことを伝えられなかったしさ……。
……ああそうだ、今のうちに鈴に直接言いに行くか、無いと思うけどもう出掛けてたら電話しとかないと。用事ができて行けなくなったから、セシリアと行ってきてくれって。
百秋にもメモを残しとこうかな。目が覚めた時に隣に誰もいないってのは、ちょっと寂しいし。
俺は山田先生に言われて機体のデータ取りに行くと言うことをさらさらとメモに書いて、百秋が起きたら目に入りそうな所に置いておく。
なんとなく百秋だったら大丈夫なような気がするけど、一応な。
だって俺は、百秋の父親なんだから。心配もするし、甘えさせたりもする。
ちらりと百秋に視線を向けると、どこから出したのか百秋サイズの抱き枕を抱えていた。とりあえず今度似たようなのを買うか作ろうと心に決めて、薄い布団を腹だけは冷やさないようにとかけ直す。
夏でも腹を壊すことだってあるし、まあ、なんとなく心配だ。
頭を撫でると、百秋の顔がへにゃりと緩む。
しばらく百秋の頭を撫でていた俺は、ゆっくりと静かに部屋を出る。しっかりと外から鍵はかけたし、百秋が襲われたり拐われたりすることは多分無い。
「いってきます」
百秋の寝息だけが幽かに聞こえるだけの部屋にぽつりと言うと、聞こえる訳が無いのに百秋の子供特有の高い声が聞こえた気がした。
「いってらっしゃい。パパ」
…………幻聴だろうけど、元気が出てきた。今日も一日頑張ろう。
side 織斑 百秋(とは名ばかりの織斑一夏)
一夏が出掛けてからしばらく(具体的には三時間と二十三分。秒以下は切り捨て)して、俺はむくりと起き上がった。
朝は抜いた。昼も抜いてもいいんだが、その場合は確実に一夏達に怒られる。
だから仕方無く外に出ようと思ったんだが、一夏の書き残した物らしいメモを見付けて読んだときに食堂に行くのはやめた。
その代わりに、外でおやつを食べることにした。具体的には@クルーズで。
メモの内容と時期を考えると、今日は多分ラルちゃんとシャルが@クルーズでバイトをしていた日だろう。それと同時に鈴とセシリーがプールで一夏とデートをしようとして大失敗した上やらかしちゃう日。
二人をビックリさせるのも面白そうだし、それ以前にあそこのケーキは美味しいからまた食べたいと思ってた。ついでに鈴とセシリーをからかいに行くのもいいかもね?
思い付いたが吉日。そんなわけで一夏のメモの裏側にメモを残して、窓側の壁を【IS】ディープダイバーですり抜け、シルバーカーテンとモーターギアで空中を走る。
エアライナーを使わない理由は、エアライナーを全部シルバーカーテンで隠すのは疲れるし面倒臭いから。
急ぐ理由はそんなに無いんだし、のんびりしたっていいと思って。
そんなわけで、俺はこっちの世界を空から満喫中。目指すは@クルーズ。そして鈴の行くはずだったウォーターワールドだ。
しっかり金も持ってきてるし、大丈夫だろ。諭吉さんが80人ずつ居れば足りるはず。
………ああそうだ。銀行強盗のコーさんゴーさんトーさんが来るんだったか。来たらすぐさまシルバースキンリバースで包んで動きを止めてやろう。
……リバースの初使用がこれとか、きっと誰も予想してなかったに違いない。俺も予想してなかったし。
……まあ、いいや。さっさと行ってケーキを食おう。そして鈴とセシリーに悪戯しよう。
サテライト30と【IS】ライアーズマスクを使えば……ああ、楽しそう。
「それじゃあ、ウォーターワールドの方はよろしく。好きにしていいと思うから」
「そうだな。好きにする」
俺と俺は二手に別れ、俺は@クルーズに。もう片方の俺はウォーターワールドに行く。
……楽しめる時に楽しんどこう。
「いらっしゃいま……百秋!?」
「やっほーシャルママ。………うん、似合ってると思うよ?」
誉めたのになんでかシャルは固まってしまった。いったいどうしてだろうね? どうでもいいけど。
「……う……」
「う?」
「うわぁぁあぁぁんっ!!」
だだだだだっとシャルは走って店の奥に消えていく。なんでこうなったのかよくわからない。
元の世界でもこうだったような気がしないでもないけど、その時もよくわからなかったんだよなぁ……?
「どうしてシャルママは逃げ出したんだと思う?」
「さてな? 私には想像もつかんが………まあ、とりあえず適当な所に座れ」
ラルちゃんに言われて適当に座る。
さてと。何を頼もうかな?
超外伝、夏休み その3
ラルちゃんにケーキと紅茶を頼んでしばらく待つ。俺のところでやったみたいに全種類を一つずつとかそんなことはしないで、前に食べた中でも特に美味しかった物を選んで頼む。
……いや、みんな美味しかったんだけどね? 気分で食べたい味は変わるし、今はあんまり甘くないのが食べたいと思ってたからそう言うのを選んだ訳なんだけど。
一番混雑すると思われる時間帯は少しだけだが避けたし、あんまり待たないでも出てくるだろう。こういうのは作り置きしておくものだし。
そう考えている間に、執事服のシャルが少しだけ頬を赤くして、俺の頼んだケーキと紅茶を運んできてくれた。
「お……お待たせしました」
「んー、待ってないよ。ありがとシャルママ」
「こ……ここでその呼び方はちょっと………」
「……シャルおねーちゃん?」
なんだかシャルの胸の中央あたりを何かが貫いていったという光景を幻視したんだが、一体なんだったんだ?
……とか考えていたら、シャルがかなりいい笑顔を浮かべて俺のことを撫でていた。いいなでなでだ。一夏程じゃないけど。
とりあえず出てきた紅茶を飲みながらケーキを食べる。ミルクは備え付けのやつを適当に入れてやるだけでいい。サービスでミルクやら砂糖やらを入れてくれるのがここの特徴みたいなものらしいが、俺は別に自分でやればいいと思えるタイプだし。
………ここのケーキは美味い。甘さ控えめで紅茶付きって言うのがいいな。それぞれが普通に美味しいし。
…………もきゅもきゅもきゅ。
「……可愛いなぁ………」
「んむ?」
「あ、なんでもないから、気にしないで食べてて? ね?」
それじゃあシャルの言葉に甘えようか。
……あと、執事服を着たシャルもかっこいいと思うよ? シャルは嫌がるかもしれないけど。
side 原作シャルロット
僕達(ラウラや他のお客さん達も含んだ店にいるみんな)がもきゅもきゅもきゅと美味しそうにケーキを食べている百秋を眺めていると、いきなり店の扉が乱暴に開いて、『一昔前の銀行強盗からの逃走犯です』と大書きされてるような感じの三人組が雪崩れ込んできた。
「全員、動くんじゃ」
怒号の途中で銀線が走り、その三人の服がいきなり黒いコートに変わった。
その銀線の出元に視線を向けると、さっきまでの明るい笑顔はどこへやら、殺気まみれの危ない笑顔を浮かべた百秋が片手を強盗達に向けているのが目に入る。
「お還りください銀行強盗三人組様。具体的には土に」
「いやいやそういう意味で『かえ』しちゃうのは不味いんじゃないの!?」
「おかーさんは『犯罪者は甘く対応すると付け上がるからとりあえず問答無用で半殺しにした後さらに半殺しにしてから見せしめにしろ』って」
「織斑先生ーーーっ!!? 自分の子供にいったいどんな教育をしてるのさ!?」
「結構色々あって優しくしたせいで何回か死にかけたからそう思うようにしたんだってさ。てなわけでしばらくそこに転がっててねー」
百秋がそう言うと同時にコートの一部が解けて連結して、両手両足を動かすことができなくなってしまったらしい三人組が床に転がっていた。
その周りには小さい百秋(どこかで見たことのある獣耳付き)がたむろしていて、うまいこと武器をとりあげている可愛い。
「わぅわぅ!」
「きゅきゅきゅっきゅ~♪」
「にゃう?」
「……君達は僕をどうしたいの……っ!?」
どうしよう可愛い。百秋ってよく見ると一夏そっくりだからなぁ……。
……あれ? 確かあの獣耳は………僕の夢に出てきた時に僕にくれたのと同じのだよね? なんで同じのをしてるんだろう?
「シャルロット。無力化された目標を捕縛するぞ」
「あ、う、うん」
百秋によって拘束され、小さな百秋達によって武装解除された強盗の三人を拘束服の上から縛り上げる。未来の技術が使われていると思われる物を着せたまま警察に連れていかせるわけには行かないからね。
この国の警察は結構有能らしいから、もしかしたら百秋の使ったこれが現在の科学力では再現が不可能なものだと気付いてしまう可能性がある。
そうならないように、僕達がフォローしてあげないとね。
「………もきゅもきゅもきゅもきゅ……」
……うん、百秋は可愛いなぁ……。
side 織斑 百秋(とは名ばかりの以下略)
今日も元気だケーキが美味い。ついでに前回(というか俺の世界の話だけど)はケーキを台無しにされたので、今回は台無しにされる前に銀行強盗三人組の未来を台無しにしてやった。食べ物の恨みは恐ろしいんだぜ?
そんなわけでこっちの世界のシャルとラルちゃんがあの銀行強盗三人組を縛り上げたのを確認してからシルバースキンを消し、この世界で作った【ぷちか型遠隔操作型ゴーレム】で解除させた武器を一ヶ所に集めておく。
……この場合のゴーレムは、よく神話とかそう言うのに出てくるゴーレムではなく、束姉さんの作ったゴーレムのことだ。
魔法のゴーレムはさすがに作れ……ないこともないけど、機械で作った方が楽だし、それにこっちは原型があるから想像しやすい。
ぷちか達がISだと聞いてからはぷちかのようなISを作ることもできるようになったから、そこまで苦労はしていない。
……ただ、ISって飯食えるんだな。ぷちか達で慣れてるけど。
俺のいるテーブルでぷちかモドキ達がちょっとずつもきゅもきゅもきゅきゅとケーキを食べている。まあ、美味いのはわかるからある程度までは止めない。具体的には全体の半分くらいまで。
……そうだ。どうせならこっちの世界のぷちののちゃんとかぷちりん、ぷちしゃる、ぷちらるちゃんも作ってみよう。
いくら俺でも今この場所で作ろうとは思わないから、IS学園に戻ってからにしよう。
……ああ、楽しそうだなぁ。
超外伝、夏休み その4
ケーキを食べ終えてこっちの世界のIS学園に戻ってきた俺は、何故か一夏におもいっきり抱き締められていた。
メモは残しといたし、心配される理由があまりよくわからない。もしかしたらメモを見ていないのかもしれない。
例えば、一夏のメモの裏に書いたせいで落ちたときにそっちが上になって気付かれなかったとか?
だとすると俺は悪くないと思うんだけど………俺的にはそんな危ないこともなかったし、ケーキを自腹で食べに行った位だし問題ないと………あ、よく考えたら小規模ながらインフレ起こしてるし、問題ないわけじゃないのか。同じ通し番号の本物の札が二つできるわけだし、結構問題か。
……で、それはそれとして。
「……パパ? ちょっと苦しいし痛いんだけど……」
「うるさい。メモも残さないで外出して心配かけさせた罰だ」
「残してったよ? パパのメモの裏に」
「…………え?」
一夏は慌てて机の上に置いてあるメモをひっくり返して目を通す。すると一夏の全身からへにゃっと力が抜けた。
「な……なんだよ俺の早とちりかよ………」
「あはははははっ。パパは昔は先走りすぎることがあったって聞いてたけど、本当だったんだね? 俺の知ってるパパはいつも落ち着いてて、おかーさん達が怒ってても冷静に対応して被害ゼロで丸く納めてたから半信半疑だったけど」
「え、未来の俺そんなすごいことやってるのか?」
「弾おじちゃんはそんなパパに毎夜毎晩呪いを送ってるらしいけどね。『ハーレム野郎死ね!ハーレム野郎死ね!!ハーレム野郎死ね!!!』って」
「俺が弾に何をした!?」
「大事にしてる妹を奪われたーとかなんとか? 俺にお酒を奨めながら教えてくれたよ?」
「十の子供に酒を奨めんなよ!」
「その時六歳だったけど」
「余計に悪いわ!」
あっはっは。こっちの世界の弾。巻き込んじゃってごめーんね?おもしろそうだったから、つい。
……そうだ。一夏の持ってる獣耳を核にして、ちっちゃいみんなを作ってみようとしてたんだった。
勝手にシャル達とリンクさせて、表層意識をぺらぺら喋るようにしておいたら面白いかも。
……どこかのテストの点数によって強さが変わる召喚獣みたいだな。元ネタはその通りだけど。
まあ、今は作らないけどな。眠いし。
ネタとしてどっかに記録しといて、今度時間があった時に思い出せたらやろう。絶対面白いことになるだろうから。
ただ、時間軸的にかんちゃんとたっちゃんの分が作れないんだよな。俺の中ではもう過ぎたことなんだけど、こっちだとそれは未来のことだし…………やれやれ、時間の概念って難しいな。
それは置いといて、俺は一夏のベッドに入り込む。一夏はメモを取る時に俺のことを放していたから、邪魔されることもなく布団に入ることができた。
……全く関係無いことなんだが、原作の鈴がプールで待ち惚け食らった時って、BGMを『トルコ行進曲 - オワタ\(^o^)/』にしたら一部の人を除いて爆笑の渦が起きたんじゃね? とか思ってみた。
正確には少しシチュエーションが違うけど、似てないことはないよな?
それじゃあ、お休み。
side 原作一夏
帰ってきてすぐに寝てしまった百秋を置いて、俺は外で問題を起こしたらしい鈴とセシリアを迎えに行く。
なんでも公共の場でISを使い、民間人に攻撃をしかけたとか。
幸いにもその人には怪我はなかったらしいけど、まあ、普通に考えればそりゃ問題だよな。
けど、攻撃された人はあっさりと二人を許したらしい。そうでなかったらこの事は色々と不味い方向に転がっていったはずだと千冬姉が言っていたし………いや本当によかった。
……けど、何で二人はそんな馬鹿なことをしようとしたんだ? いくら鈴とセシリアの二人でも……いや、二人だからこそ、それはやっちゃ不味いとわかるだろうに。
そう思いながらも俺は緊急の用事が入った山田先生のかわりにウォーターワールドのゲートを潜る。そしてゲートのすぐそばにある守衛室にいた人に、IS学園からの生徒の引き取りだと言う証明書を見せて鈴とセシリアを引き取らせてもらう。
守衛の人は事務室までの行き方を教えてくれて、俺はその通りに進んで二人を迎えにいった。
そこには当然のようにかなり暗い雰囲気の鈴とセシリアがいて、ぼんやりと床を見つめたままこっちに歩いてくる。どうやら俺には気付いていないようだ。
そんな二人の前に立って、できるだけ明るく声をかける。
「お、なんか二人とも暗いな。さてはたっぷり怒られたんだろ?」
「「―――え?」」
俺が声をかけると、二人は同時に顔を上げて俺のことを見つめてきた。
「ほんとは山田先生が来るはずだったんだけど、緊急の仕事が入って来れなくなったんだと。で、丁度暇になった俺が来たんだけど………まあ、元気出せ」
なんとなくこのまま言葉を続けていたら理不尽な目に遭うような気がしたから、誤魔化しも含めて二人の頭を撫でる。
二人ともこうすると結構落ち着いてくれるし、落ち着いてくれれば俺もいきなり殴られたりとかそんなことをされなくてすむ。
………ただ、箒とかは他のみんなにやってると怒って日本刀振り回してきて危ないんだよな。いったいなんで俺がそんな目に遭わなくっちゃならないんだ?
二人の髪型を崩さないように気を付けつつ、百秋の頭を撫でているうちに会得した『撫でられて気持ちいい頭のツボ』を押さえながら優しく撫でる。これはなんとびっくり一瞬とはいえあの千冬姉にも効果があったツボだし、この二人にも効果があるのはわかっている。
しばらく頭を撫でてから、二人の手を取って歩き始める。
「今日は二人にもケーキを奢る。だから元気出せ」
確か、駅前の@クルーズっていう店のケーキが美味いっていう評判だったよな。少し高いらしいけど、まあ一人二千円はかからないと思いたい。
そんなことを考えながら、なんでかさっきとは違う感じに少しぼんやりしている二人を連れて歩く。
……まったく、世話がかかるな。
「千冬姉」
「ん? どうした一夏」
振り向いた千冬姉の頭を撫でてみた。最近色々あって疲れてるみたいだったから、お疲れさまと労いの気持ちを込めて。
「……ん………」
一瞬、千冬姉の目がうっとりと緩くなって、
ガヅンッ!!と俺の頭に激痛が走った。
「……教師の頭を撫でるとは、いい度胸をしているじゃないか」
ち……千冬姉だってちょっとうっとりして
ガヅンッ!!
………どうやら心を読まれているらしい。あのうっとr
ゴギンッ!!
……理不尽だ。