IS~ほんとはただ寝たいだけ~ 外伝・超外伝   作:真暇 日間

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 連続投稿十五話目です。


他の子・燦編05

 

 

 side 五反田 蘭

 

 学校で授業を受けている間、私はずっとそわそわし続けていた。原因はもちろん、未来からやって来たと言う私の子供、燦である。

 今の私からしてみれば産んだ覚えもなければ実感もない……まあ未来の事なんだから当たり前と言えば当たり前なのかもしれないけれど、そんな子供が突然現れればもっと戸惑ってもいいと思う。

 けれど、今の私は妙に落ち着いていた。理由はわからないけれど、もしかしたらどこかで準備ができていたのかもしれない。どこでかと言われれば困ってしまうけれど……まあ、とにかくどこかで準備ができていたに違いないのだ。

 それになんと言うか……私の娘だと言う燦は、見た限りかなりのスペックがある。私も学校ではお姉さまって呼ばれたりしているけれど、燦が大きくなったらきっと私以上にそう呼ばれるだろう事が予想できる。

 そして一夏さんの子供だ、モテるに違いない。男相手にモテて、女の子相手にモテて……とりあえず、私みたいに2月14日にチョコをもらうばかりであげる側だと言うことを忘れるような青春は送って欲しくない。女子高も悪くないけど、やっぱり共学校に……あ。

 ……そうだった、一夏さんの子供なんだったら間違いなくIS学園だよね。そりゃそうだよね危ないもんね。

 

 まあ、別にそれはいい。結局のところ惹かれる相手がいてくれればいいって言うだけの話だし、恋に生きるのもまた青春の一つ。自分の娘には青春を謳歌してもらいたいよね。

 ……そう言えばなんだけれど、私は未来ではどんな仕事をして暮らしているんだろう? 一夏さんを追ってIS学園に行くつもりでいるんだけれど、その後の事なんて全然考えていなかった。

 私のIS適正はA。簡易適性検査での結果とはいえ、これは十分に高い結果だと言える。だからと言って将来ISパイロットになれるかどうかはまた別の話だし、いくら練習したからといって国家代表や代表候補になれるかと言えば難しいとしか言えない。

 また、IS学園で技術者方面に進んだとしてもそこで大成できるかどうかはわからない。少なくとも卒業できれば仕事に困ることは無くなるだろうけど、ただ卒業するだけじゃ一夏さんに近付くのは不可能……。

 ……未来の私に話を聞いてみたい。いったいどうやって私は一夏さんと子供を作るくらい近付くことができたのか。今何をして生活しているのか。そういう話を聞いてみたい。

 未来がわからないなんて今までと変わらないことなのに、今になって未来がわからないことがとても不安に思えてしまう。

 過去からの共通点が多い未来なら……例えば、今通っている中学は附属校だから、そのまま高校にまで上がってしまえばそう変わることのない未来が待っていることがなんとなくわかる。

 けれど、IS学園と言う今までの私の人生経験から大きく外れてしまった場所に行くとなると話は変わってくる。なにしろ、全く予想がつかないのだから。

 

 今までの未来もわからないものだけれど、言ってしまえば『真夜中に歩く通り慣れた道を通る』ような感覚だった。暗くて周りはよく見えなくても、大体何が起こるのか、どのあたりに何があるのかくらいはなんとなくでも予想ができていたのだから怖いという思いは浮かばなかった。

 けれどこれから私が進もうとしている道は、私の通り慣れた道ではなくて全く知らない道。何が起こるのかもわからなければどこに繋がっているのかもわからない。光も何も見えない、真っ暗な道。

 何が起こるのかもわからない、どうなるのかもわからない、わからないことだらけで、考えるだけで足が竦んでしまいそうになる。

 未来は不確かなものだと、お兄は言っていた。未来で自分は今付き合っている人と結婚したという話を聞いたそうだけれど、その未来ですらこれからの行動によってたやすく書き換えられてしまいかねない物であるという。

 お兄は、それを聞いて少しだけ怖くなるとともに、心の底からやる気が湧き上がってきたと言う。

 お兄は未来の自分の姿を聞いた。未来の自分は結婚をして、子供もできて、幸せな生活をしているらしいと聞いた。

 なら、自分だってそんな未来の自分に負けないくらいに、未来の自分よりもずっと幸せになって見せるんだと、色々と自分にできることを始めたようだ。

 

 ……そんなお兄は、強いと思う。私にはそんな決心はできないし、今みたいに見えずともおぼろげに感じていた未来が全部錯覚だったと知らされて怖がっている。お兄はそんな中でも、自分にできることを探してそれに突き進もうと頑張っているのに。

 私にもお兄にも、好きな人がいる。お兄はその人と一緒に幸せになるために頑張っていて、私は何もできていないで立ち止まっている。

 そう考えると、少しだけ気に食わないような気がするんだけれど……けれど、それも単なる事実でしかない。私にできないことをお兄はできて、私はほんの少しの勇気が足りないせいでいつまでも同じところで燻っている。なんだか悔しくなって来るけれど……でも、それを覆すだけの勇気が私にないこともまた事実。

 私自身もわかっているのだ。それを何とかしたいのならば、私もお兄と同じように行動すればいいのだと。それができないのは、私が弱虫だから。お兄に色々言ってきたくせに、こんな時ばかり私は弱くなってしまう。

 お兄はあの人に好きだと言ったらしい。私は一夏さんに好きだと言えていない。

 お兄とあの人は時々休みの日にデートに行くらしい。私は一夏さんをデートに誘う事なんて一度もできていない。

 そういった場所で、今の私とお兄の間にはとても大きな差がある。ちょっとやそっとじゃ埋められそうにない差だ。

 

 ……私も、頑張らないといけないかなぁ……?

 

 

 




 
 次回の更新は東方寝たいだけ、です。前日の23時に一話目を投稿していますので、まだご覧になっていない方はそちらからどうぞ。

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