IS~ほんとはただ寝たいだけ~ 外伝・超外伝   作:真暇 日間

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 連続投稿十四話目です。


他の子・燦編04

 

 

 side 五反田 燦

 

 色々あって、私はとりあえず一日五反田食堂で働きつつご飯をもらったりすることになったらしい。私のいた世界では愛情によって色々ぶっ飛んだことになることが多いんだけれど、まさかこっちの世界ではTRPGで言う『リアル言いくるめロール』を実行してしまうとは思わなかった。具体的には、驚きすぎて演技用の仮面が剥がれるほどに驚いた。

 けれど仮面がちょっと剥がれかけたくらいじゃ大した影響じゃない。もう一度同じ仮面を張り付け直すくらいは簡単だ。特にこの仮面は実際に形がある訳じゃなくあくまでも私の心の問題。心の問題ならば解決はそれこそ一瞬だ。

 

 ……と、言うわけで……わたし、復活です。年齢からすればかなり大人びた、責任感の強めな少女。それが今の私、五反田燦である。

 まあ、もちろん自分の限界もある程度知っているので、責任感と天秤にかけて自分で可能な範囲なら行動に移す……って感じなのだけど。

 

 そんな私は今。いつもの休みの日と同じように、五反田食堂でちょこちょこ休みを入れながらバイトのようなことを頑張っています。身長や歩幅がかなり違うので戸惑うこともありますが、なんとか失敗はしていません。

 ……この事を考えると、もしかしたらコナン君は凄いのかもしれない。高校生から小学生の身体になっていきなり走れるなんて、本当にまともな人間だったんだろうか。推理馬鹿って言う意味なら、ある意味合ってはいるような気もするけど……推理バカだからといって身体の方までぶっ飛んでるとは思えないんだよね……。

 

 ……まあ、漫画に物理法則を当てはめる方がどうかしてるかな。漫画や小説において、物理法則なんて書き手の気分次第でいくらでもねじ曲げられてしまうような不確かなもの。そんなものを現実に持ってこようなんて考えること自体がどうかしているけどね。

 そんなわけで、少し定まりにくい重心のせいでちょっとだけふらふらしながらも、わたしは頑張って注文を取ったり料理を運んだりする。

 この姿と言うこともあってかなんだか周りの人達からの視線が柔らかくて暖かい。孫を見るお爺ちゃんみたいな、そんな感じの視線を向けられている。

 ちょっとくすぐったいような恥ずかしいような気がするけれど、視線を向けられるのはいつものこと。私の演技が素晴らしいものだと誉められているものだと受け取っておこう。

 

 今回は百秋兄がいないから、あまり派手な動きはできない。写真もあまりとらなくていいことになっている……と言うか、余裕がなければあまり撮れないのはあたりまえ……と言うことにしておこうと思う。

 失敗はできないし、するつもりもない。この身体ではあまり力が出ないので、料理を持っていく時には一つずつ。あとはいつもやっているように観察とかテーブル拭きだとかでなんとかなる。経験って凄いよね。

 ちなみに、私の事は普通に受け入れられた。以前に百秋兄や小鈴姉が来ていたことも説得力を持たせる原因になっていたようだけれど、仁兄の事について黙っていたらしい弾お兄さんは締め上げられていた。あれは痛いね。うん。

 

 そんなこんなで弾お兄さんとお母さんを学校に送り出してから、わたしはこうして店員の真似事なんかをやっています。

 食堂の一番忙しい時間は昼と夜の二つ。昼は主に会社の昼休みなんかで時間ができた大人の人達がやってきて、定食類を注文して食べていく。夜は夕食の時間くらいに主に家族連れがやって来て色々頼んでいく。どちらの時でも業火野菜炒めは人気の商品だったりします。

 わたしは色々な人にからかわれながらも、頑張ってお仕事に取り組んでいます。

 

 ……ここで働いているとナンパしてくる人がいないのが一番心穏やかになれる理由な気がします。まあ、私達の世界だと私をナンパしようとすると八面六臂のお爺ちゃんがパンチ(の)ラ(ッシュ)をするのである意味疲れるし、お兄も時々近所の100均で買ってきたレインコートを血まみれにして帰ってきたりするので知らないふりをしたりするのもちょっと……ね?

 

 ……ね?

 

『ちょっと害虫を潰してきただけだって。大丈夫大丈夫』

 

 こいつ直接脳内に……って言うか何も大丈夫じゃないよ? 確かに今までバレてないみたいだけど……よくバレてないよね。

 

『都心で相手の襟首を掴んで空中浮遊します。相手が放せと叫びます。放してやります。おしまい』

 

 コマ○ドー!?

 

『ゴマンドーだ。五反田だからな』

 

 上手いこと言ったつもり? 上手くないからねそれ? あとそれだと血塗れにならないと思うんだけど?

 

『あ、血は自前だ。主に鼻から出るやつ』

 

 なんだ愛情か。愛情なら仕方無いかな。

 よし、これで今度から安心して眠れるね。よかったよかった。

 

 …………あれ? なんだか何も良くはなってないような気がするよ? 殺人犯ですって発言もされたような気が……。

 

 ……よし、それについてはまた元の世界に帰ってからにしよう。きっと帰れるし、帰ってから話だって十分できるはず。お兄も理由もなくそんなことをするようなする人じゃないしね。何かあったんでしょ。多分。

 具体的には……一夏さんを暗殺しようとしたとか、一夏さんに言うことを聞かせるために人質を取ろうとしたとか、そんな感じじゃないかなって思う。

 

 ……信じてるよ? 意味もなく人を殺すような人じゃないってところと、一夏さんに向ける愛情(友愛)だけはさ。

 

 

 


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