IS~ほんとはただ寝たいだけ~ 外伝・超外伝   作:真暇 日間

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親子(?)戦闘シリーズ

 

 

 

 超外伝、親子(?)戦闘 開幕編

 

 目が覚めると目の前に俺。つまりはそういうことなんだろうと納得してみた。

 まあ、実際この世界には何度も来てるわけだし、今さら慌てたりはしないって。

 それは目の前の俺も同じようで、目覚めてすぐに焦点を俺に合わせて頭を撫でた。

 

「おはよう、パパ」

「おはよう、百秋」

「お休み、パパ」

「寝るな、百秋」

 

 原作一夏にむにっと頬をつままれて起こされる。そしてそのまま一緒に着替えることに。

 

「……ん? その手首のってもしかして……」

「? ……ああ、シロね」

 

 こっちの一夏の視線がシロに向いていることに気づいて、多分こっちの一夏の考えてる通りなんだろうと思いつつ言葉を返す。

 

「多分パパの考えてる通り、シロは俺用のISだよ? メイドイン大天災さんの特別製」

「百秋……お前、ISを動かせるのか!?」

「うん。びっくりした?」

 

 にぱっと笑いかけてみると、こっちの一夏はかなり驚いたという顔をしながら何度も首を縦に振っている。

 ……それはそうとして、今はいったいどの辺りの時期なんだろうか?

 たっちゃんが同居してないし、原作でシャルからプレゼントされたはずのホワイトゴールドの腕時計も無いから六巻まではいってないと思うけど、こっちの一夏のISの名前が【白式・雪羅】になってるから三巻以降の話だろうし……。

 

 ……直接聞いた方が早いな。

 

「そう言えば、今日って何月?」

「ん? ああ……八月の……」

 

 把握。四巻だ。四巻は夏休み中の話だったからこれであってるはず。

 ………つまり、いくらでも寝られるってことでファイナルアンサー?

 

「着替えたんだから寝ようとするな。飯食べにいくぞ」

「……ん」

 

 ……ちなみに、金は自腹だ。未来の一夏や束姉さんに貰ったと言って使っている。

 ………実際は千の顔を持つ英雄で偽造してるんだが。便利便利。マジで反則ぎみに使い勝手がいい。

 

「ほら、行くぞ」

 

 俺は一夏に手を引かれて食堂に向かう。……やっぱりまだちょっと眠いな。

 

 ……ふぁ…………。

 

 

 

 色々あって、食事の後に一夏と模擬戦をすることになった。観客は一夏ラバーズとこっちの世界のちー姉さん。つまり千冬さん。ついでに真耶先生の七人だ。

 この模擬戦は完全に秘匿された状態で行い、この場にいる者以外には知られることはまず無いそうだ。

 

 展開するのはシロ。その内側にクロをさらに展開し、ISスーツの代わりにする。

 目の前に浮かぶ一夏は【白式・雪羅】を展開し、雪片弐型を構えている。

 真剣な顔をしている一夏はかなりかっこいい。みんなが惚れる理由もわからなくはないかな。俺に惚れる理由はわからないけど。

 

 ……まあ、いいや。今はなんだかワクワクしてる風な一夏とのバトルにある程度集中しとかないと。

 

「それでは始めろ」

「はーい」

 

 千冬さんの号令に従って動き始める。取り敢えず突っ込んできた一夏を避けて後ろから荷電粒子砲をどーん。

 そう思ったんだが見事に零落白夜のシールドで防がれた。その上左手の【雪羅】から荷電粒子砲の光が見える。

 そこで荷電粒子砲同士を真っ正面から撃ち合い、互いに互いの撃ったエネルギー砲を撃ち落とした。

 

 ……シロには照準機能はついてないが、撃つだけなら大体の検討はつけられる。俺にはそれで十分だ。わざわざしっかり狙って撃つことなんかまず無いし、散弾は元々数をばらまいてなんぼの武器だし。

 

 そう言うわけで荷電粒子砲を散弾に切り替え、カチカチカチと連射しながら逃げる。零落白夜の理不尽さは俺もよく知っているからな。そう簡単に食らってやる訳にはいくまいよ。

 まあ、荷電粒子砲は直接は効果がないとはいえ、それでも弾幕で視界を塞いで目眩ましくらいにはなる。目が見えてない状態だったら後はそこにつけこんでやればいい。

 

 ……例えば、荷電粒子砲の中に白く輝くだけの鉄鋼弾を混ぜて撃つとか、銃が主要武器だと勘違いした一夏が接近してきた所でカウンター的に斬艦剣でずんばらり、とか。

 ちなみに、白く光る鉄鋼弾はもう装填済み。あとは適当に撃ってれば………

 

「がっ!?」

 

 ……ほら、出た。

 

 

 

 

 

 side 一夏Another

 

 防げるはずだった弾丸が、白式のシールドエネルギーを一気に削る。

 全身にぶち当たった散弾が、俺の体に衝撃を伝える。

 

「パパ? 俺はパパの手札はちゃんとわかってるんだよ? 対抗策の一つや二つや三つや四つや五つくらい用意してて当たり前でしょ?」

「そんなに用意できてんのかよ!」

「……ただし、おかーさんには通用しないのばっかりだけど。何回やっても何回やってもおかーさんが倒せないよ?」

「どんだけ強いんだよその人!?」

 

 いやその対抗策の内容は聞いてないけど!

 

 そう思っていると、百秋は不思議そうに首をかしげた。

 

「……あれ? パパは俺のおかーさんが誰だか聞いてないの?」

「ああ、聞いてないけど……」

『言うなよ? 百秋』

「はーい」

「ここまで聞かせといてそれは酷くないか!?」

『黙れ』

「はい」

 

 な、なんで千冬姉はこんなプレッシャーをかけてくるんだ!? 超怖いぞ!?

 

「……パパは本当に唐変木なんだね」

「だからなんでだよ!? いつもいつもそう言われてるんだがワケわかんないぞ!?」

「…………わけがわかっていないから(・・・・・・・・・・・・)、パパは唐変木で朴念人なんだよ」

 

 百秋がそう言うと、それを聞いていたんだろう全員の声が聞こえた。

 

『その通り』

 

 理不尽だ。

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 超外伝、親子(?)戦闘 中盤編               (?)

 

 色々と小技(主に荷電粒子砲と光輝く鉄鋼弾などの遠距離武器)を使って一夏を追い詰める。ちなみに、さっきから使っている光る実弾は【輝くトラペゾトロン】という名前があったりなかったり。

 無効化できるはずの弾丸が零落白夜のシールドを抜けてきたり普通に書き消されたりするのは初体験なんだろう。一夏はかなり狼狽している。

 まあ、エネルギー系の武器を完全に無効化するシールドをエネルギー系の武器(に見える実弾系武器)で破られたらそう思うよなぁ………?

 しかも弾種が散弾だからかなり避けづらそうだし、速度はかなり速い上に無効化できる弾と無効化できない弾の区別がつかないために無効化できる弾も全力で避けようと飛び回っている。

 零落白夜のシールドも、ついたり消えたり大忙し。大変だねぇ。

 まあ、撃ってる弾のうち七割くらいは荷電粒子砲のエネルギー弾だから、あんまり間違ってはいないんだけどさ。

 

「やっぱりパパは昔から近接しかできなかったんだね?」

「いや、今はちゃんと左腕に遠距離武器が付いてるんだが……」

「ついてても使えなかったらただ容量を無駄にしてるだけでしょ」

「う……」

 

 どうやら反論はできないらしい。事実だしね。

 そんな風に軽口を叩きながら適当に撃ち続けていると、カスン、という軽い音を立てて弾が出なくなった。つまり、弾切れだ。

 チャンスと思ったらしい一夏に向けて二度ほど引き金を引いてから弾切れであることをアピール。

 それから跳ねるように後ろに下がり、距離をとってから同じ形をしたエネルギーが満タンの荷電粒子砲と、エネルギーが空になっている荷電粒子砲を一夏に見えないように取り替え、一夏に向けて引き金を引いた。

 

 吐き出されたのは実弾(トラペゾトロン)で、質量のある小さな散弾が一夏の全身をカウンター気味に貫いた。

 とりあえず、落とせそうな時に落としとくべきだよな?

 

 そう思った所でトラペゾトロンを連射。高威力の散弾を雨のように浴びた一夏は地面に叩きつけられ、零落白夜を発動していたこともあってシールドエネルギーが切れてしまった。

 ………あーあ、やっちゃった。

 

 ……そうそう。割とどうでもいいことだけど、トラペゾトロンの名付け親は実は束姉さんだったりする。

 荷電粒子砲と見分けがつかない実弾にするか、実弾と見分けがつかない荷電粒子砲にするかという問題の中、後者はなかなか難しいから実弾を荷電粒子砲に見せかける方法として『弾そのものを光源体にする』という方法を取ったのが【輝くトラペゾトロン】だ。

 ……第二候補の【ザ☆ピッカリー】という名前よりは良かったと確信している。トラペゾトロンも大概だけど。

 

 シロクロをどっちも解除して、遠距離のまま封殺された一夏の隣に立つ。

 

「初めて勝った♪」

 

 そう言ってやると一夏は苦笑して、ISを展開したままの手で優しく頭を撫でてくれた。

 

 ……あれ? なんで機械の手なのにごつごつした感触が無いんだ? 一夏はある意味凄いよな。魅力チート的な意味で。

 

 

 

 ……それでは問題です。どう考えてもここで戦闘はおわりなのに、どうして『中盤編』なのでしょうか?

 制限時間二秒、シンキングタイムスタート!

 

「何をしている? 次は私の番だぞ?」

 

 …………考えるまでもなく答えが出たね。ちなみに今俺の前に居るのはこっちの世界のののちゃんだ。勿論ISは展開済み。

 どうしてこうなっているのかと言うと、一夏を倒してさあ(一夏の)部屋に戻って寝ようと思ったら次に俺と戦いたいという人が立候補してきたからだったりする。

 その中で優先権を得たのがこっちの世界のののちゃんだったということで、この後にはラルちゃん、シャル、セシリー、鈴の順番で戦うことになっているようだ。

 

 ……勝手に決められて苛々してるからジェノサイドサーカスで芥子粒一つ残らないほどに吹き飛ばしてやろうとかそんなことは考えていない。いないったらいない。

 

 ……とりあえず、ののちゃんを相手にするなら回復される隙を与えちゃいけないから、遠距離でひたすら撃ち続ければ…………いや待て、確かこの頃のののちゃんはまだ【絢爛舞踏】を使いこなしてはいなかったはず。

 ……だったら………勝つのは結構簡単だな。散弾ばらまきながら逃げ回ってエネルギー切れを待っていればいいんだから。

 

 さてと。それじゃあ頑張っていってみようか。面倒臭いけど。

 

 

 

 

 

 side 原作一夏

 

 …………………十歳の息子にガチバトルで敗けた父親。なんだかすっげえ情けない。

 百秋の前では強がっていたけど、やっぱりかなり落ち込む。

 

「…………はぁ……」

「……落ち込むな、一夏。あれは百秋が凄まじいのだ」

「……まあ、確かにそうだけどさ」

 

 今は俺の部屋のベッドですやすやと眠っている百秋に、俺達は全員ボッコボコにやられてしまった。

 

 俺は荷電粒子砲と実弾の波状攻撃で。

 箒はエネルギー切れを狙われて牽制射撃等で振り回されて狙い通りに。

 ラウラは俺達との戦い方を見て接近戦を挑み、零落白夜を使った一撃で撃墜。

 シャルは自分以上の速度で銃弾をばらまくガトリングガンの弾幕に押されて敗北。

 セシリアは近接戦で押しきられて距離を離せずにあえなく敗退。

 そして鈴は衝撃砲と近接戦で一番時間は持ったが、まさかまさかのグレネードの雨(少なくとも200発はあったと思う)に飲まれてシールドエネルギーが0に。

 

「……私はダメだ……ダメな軍人だ………」

「近接とは言え子供に負けるなんて………」

「いくら織斑先生の子供だからって強すぎるよぉ………」

「ぐ……グレネードっ!グレネードがっ!? グレネードが視界いっぱいにっ!!?」

 

 …………信じられるか? これでも皆結構回復してるんだぜ? 鈴以外。

 鈴だけは落とされてからそんなに時間がたってないからあんまり回復してないけど………。

 

 すやすやと眠り続けている百秋の頭を撫でながら、それでもと考える。

 

 百秋は、俺に初めて勝ったと言った。つまり俺達は、あの百秋と戦って普通に勝っていたと言うことだ。

 

 ……俺達は、まだまだ強くなれる。そう確信を得た俺は、とりあえず訓練の密度を上げてもらうことを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 


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