IS~ほんとはただ寝たいだけ~ 外伝・超外伝   作:真暇 日間

39 / 52
 
 連蔵投稿五話目です。


他の子・シルヴィア編05

 

 

 

 side 織斑百秋

 

 Q.達磨が転がっています。どうしますか?

 

「A.体内の鉄分子を爆弾に変え、爆殺」

「脳まで砕かれて相手は死ぬ!ですわね」

 

 シルヴィアは狂ったようにケラケラと笑い、跡形もなくなった死体の舞い散る微妙に赤い霧のかかった路地裏でくるくる回る。昔は人の死体を見たら口許を押さえてえずき出すような繊細な娘だったはずなのに、今じゃこれだよ。いったい何がどうしてこうなったし。

 

「環境適応の結果ですわね。人間もやはり動物なのですわ」

 

 環境適応マジ凄い。人体って時に予想もしない方向に性能を変えるんだな。今回は人体ってより精神だが、肉体と精神には密接な関わり合いがあるそうだし、同一ではないにしろ同一であろうとする力があるからこの場合にはもう限りなく近いものとして扱うんでいいだろう。あんまり細かいこと考えるの面倒だし。

 

 まあ、昔から敵を直接的に排除するのは俺の役目だったし、嫌な訳じゃない。他人の赤血球に含まれる鉄にまで干渉したのは……と言うか、干渉できたのは今回が初めてだが、身体の中にナノマシンを入れて爆破したのとそう変わらない。

 

 ……なお、ナノマシンはあくまでナノマシンであり、ナノマシンのナノは十のマイナス九乗と言う意味で、けして某魔王とか魔砲使いとか冥王とかそう言うのとは関連はない。だから入り込んだ相手の体内で砲撃したり頭を冷やすために砲撃したりしない。大丈夫大丈夫。

 

「わざと不安を煽ってませんこと?」

「そんなことはない」

「そうですかありがとう、扇動凄いですね」

「覚えがない」

 

 ……なんか悔しそうな顔をされた。と言うかなんでブロント語?

 

「サーフィンをしていたら色々見つかったので取り入れてみたのですわ」

「取り入れるものは選べ」

「選びましたわよ?」

「選んでこれ?」

「全部選びましたの」

「畜生シルヴィは馬鹿だ」

「っ───ふぅ……」

 

 ああもうこいつ精神的には本当に最強かもしれん。ドM怖いな。まんじゅう怖い的な意味じゃなく。

 

「怖いのですか……ならば殴って排除してみたらいかがでしょうか?」(キラキラ)

「そんな顔で言われると余計疲れる。勘弁してくれ」

 

 出会った時から面倒な奴ではあったが、これなら昔の方が……いや、微妙か……? 昔も昔で面倒なことに変わりはないし、だからってその後の事を考えればあれが一番楽な結果だったのは間違いないからなぁ……。

 ……まあいいや。今更っちゃ今更だしな。過去は変えられん。本当に変えたらそこからまた新しく世界が分岐するかそこから先が消滅するだけで変わったことを理解できん。過去を変えるために努力するくらいなら平行世界に移動するか平行世界を引っ張ってくる努力をした方がいくらかましだ。実現性がある。(ただしできるとは言ってない)

 

 さて、面倒な作業も終わったし、遊ぼうか。こっちの世界の弾と虚淵(うつほぶち)さんのデートコースの下見でもしつつ───

 

「わたくしとデートですわね?」

「……そこまで間違っちゃいないしもうそれでいいよ」

 

 疲れはするが別に嫌って訳じゃないしな。疲れはするが。

 実際嫌だったらついてこさせないし……それに、これはもうそういうものだと諦めているからな。今更今更。

 

 ……さて、それじゃあ本格的にやるとするか。

 千の顔を持つ英雄、この地域における高校生でも行ける美味いもの屋マップ~。(ゴマダレー♪)

 これを使えばこっちの世界の弾でも行けるお手頃な値段で美味しい料理が食べられる店がどの辺りにあるかすぐにわかる。ただし、現在位置が光ったりするような特殊効果なんてものは無いので自分がどこにいるかはちゃんと理解していないと使えないわけだ。

 ……弾はあれでかなり一途だし、やろうとしないだけでやればマジでできるやつだからな。恋をして、相手が自分より上だと思ったなら自分の格をあげようと努力できるし、相手が自分より下だと思ったなら相手を同じところまで引き上げようと努力できる男前。一夏が隣にいなければ間違いなく小説の主人公をはれるくらいのスペックはある。

 ……ただ、隣にいたのが一夏だったからモテモテにはなれなかったようだけどな。俺のことでもあるが、原作における一夏のモテっぷりは常軌を逸している。何がどうしてあの鈍感唐変木にあんなに惹かれる奴が出てくるんだか……。

 

「そんなことよりおうどんたべたいですわ」

「蕎麦専門店を謳ってる所でうどんを要求とかちょっとマジで空気読んでいただけませんか」

「お蕎麦も好きですがおうどんも好きです。そして白玉はもっと好きです」

「なんで全部粉から作る系なんだよ」

「もちもちした食感がたまりませんわ~♪」

「聞けし」

 

 いやまあ本当に聞いてて返事されても大して変わりゃしないんだけど。

 

「おいしいお蕎麦。そしておうどん。そして白玉。……もしかしたらラーメンやビーフンなどもあるんじゃなくて?」

「……あります?」

「あるよ。作るかい?」

「とりあえず一人前ずつ」

「毎度」

 

 あるらしい。実は蕎麦じゃなくて麺類専門店じゃなかろうな? そっちの方が嬉しいけど。

 

「お待ち」

「早いねぇ」

「早くて美味い、がモットーでね。元々立ち食い蕎麦屋だったから未だにそれが続いてるのさ」

「……だから表の看板も?」

「おう。……まあ、そっちの小さな彼女さんもごゆっくり」

 

 そう言い残して店主のおっさんは引っ込んでいった。俺達以外に客がいないし、暇だったんかね?

 

「なんでもいいです!おいしいものを食べるチャンスですわ!」

「そのネタを何故猫座のエロ会長に残してやらなかったのかと小一時間問い詰めたい」

「あの会長さんがそんなに大事ですか? まさかあなたとわたくしの間にこんなにも意識の差があるとは思いませんでしたわ」

「だからそのネタを何故霧纏いの淑女(大爆笑)に残してやらなかったのかとあービーフンうまい」

「ああラーメンが美味しいですわ」

 

 ……デートにいいかも。候補の一つに入れとこう。

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。