IS~ほんとはただ寝たいだけ~ 外伝・超外伝   作:真暇 日間

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 連続投稿三話目です。


他の子・シルヴィア編03

 

 

 

 

 side 織斑百秋

 

 俺が神様のミスで死んで転生してきたことを覚えている人は居るだろうか。大半の人は忘れていて、今こうして話題が出たから『そう言えばそうだったっけ』と思っている人が多いと思う。なにしろ俺も普段はほとんど忘れているようなものだし、いちいちそれを気にしなくちゃいけないようなことはそうそう起きないからだ。なにしろ俺がこっちの世界で生まれてからもう16年が過ぎるが、わざわざそうやって転生してこの世界に来たということを思い出さなければいけない事なんか一度もなかったからな。

 何でこんなことを突然に言い始めたのかと言うと……目の前で金髪くるくるお嬢様が神に祈り始めたからだ。自分の娘……と言うか、自分の子供と未来の自分自身が変態性癖を持つようになってしまうことを知った結果神頼みに走ったようだが……大丈夫!今のところ未来は確定してないからな。異世界とこの世界が同調することはまず無いし、こっちの世界のセシリーがドMにならない限りは大丈夫なはずだ。

 まあ、俺は世界の構造に詳しいわけでもなければその道の専門家と言うわけでもない。そんな俺の言葉に大した説得力を感じろと言う方が無理だろうから信じなくてもいい。信じてもいいが責任は取らん。

 

「そんなことより鞭を下さい」

「ねえパパ、もうこれ手遅れじゃないかな?」

「言うな……セシリアが発狂する……」

「そう? まあ、叩かれても苛められても暴言吐かれても抱き締められて撫でられても誉められても何もしないでも快感に変換するような相手を更正させられるんだったらそれでいいんじゃないかな?」

「……殴ったのか?」

「『グーで殴ってください!』って言われたからあえて脳天にチョップしてみた。そしたら目覚めた」

「アウトぉぉぉぉ!」

「セシリーママは笑って『わたくしの娘ですわねぇ』って言ってたけど?」

「俺的にはもうその時点でアウトぉぉぉぉぉ!」

 

 やっぱり原作一夏的にはセシリーのアレっぷりはアウトらしい。俺としてもあれはアウトでいいと思うが、可能性の一つがああなっている以上、万が一と言う可能性でこっちの世界でもセシリーがドMになると言う未来も……まあ、無いわけではない。頑張って矯正してやってくれ。できるかどうかはそれこそ知らんが。

 

 ……そう言えば今回はまだシャルを見ていない。何かあったのか?

 

「……何となく何考えてるのかわかった。シャルなら『嫌な予感がするから』って今回は会わないようにしてるんだと」

「パパはその鋭さをもう少し別の所でも活かせればいいのにねぇ」

「……どういう意味だよ?」

「言った通りの意味なんだけどね?」

 

 どうやら原作一夏は未だに鈍いままらしい。それに合わせて『不確定な未来の話だから』とヒロイン達から向けられる恋心を全て頭の中で友情に変換した上で受け取っているようで、唐変木に磨きがかかっている。

 ……俺の知っている原作では最後には多少ましになってたはずなんだが……これも俺が関わったことによる改変に当たるんだろうな。唐変木に磨きをかけてしまった。流石に少し悪かったと思っている。

 

 ……言い訳をさせてもらうと、流石に原作がああだったからと言って現実になってもあそこまで鈍いままだとは思わなかったし、ついでに切っ掛けやら何やらは十分に用意されていたはずなのにそれに気付くことすらない人間がいるとは思わないだろう?

『だから俺は悪くない』などと某最底辺の更に下な裸エプロンだか手ブラジーンズだか全開パーカーだか言う先輩のようなことを言うつもりはないが、それでも抗弁の機会くらいは欲しいところだ。

 

「女性的にはこの鈍さはもう有罪(ギルティ)ですわよ間違いなく」

「あ、やっぱりそう思う?」

「そこで、こちらの世界のお父様をドMに仕立て上げると言うのはいかがでしょう? 大分解決すると思いますわよ?」

「別の問題が出てくるから却下」

「残念ですわね。同族が増えると思いましたのに……」

 

 セシリーがなんか恐ろしいことを言っているが、流石にまずいだろうそれは。ドM主人公(性別男)とか、もう汚れキャラあるいはネタキャラ以外の選択肢が消えてなくなっていくぞ。恋愛系の話の主人公を間違いなく降ろされるだろ。

 

 セシリーみたいに。

 

「まあ酷い。時々性癖を押さえてシリアス風なことを喋ればいいだけですのに」

「メタ発言……俺が言える立場じゃねえか」

 

 初めに言ったの俺だしな。

 だが、そもそも原作一夏をどうこうするには色々と時間その他が足りない。実行したとしても間違いなく面倒なことになるし、楽しむにしてもそれこそ時間が足りない。

 そう言う訳でその案は却下。俺が楽しめないのに労力を払うとか馬鹿らしすぎてやる気になれないね。

 

「ではわたくしが……」

「さっきから聞いてたらなんかヤバい話になってないか!? やめろよ!? 絶対やめろよ!?」

「それはフリですわね? わかりました。このシルヴィア・O・オルコット、非才にして卑小にして卑劣なる我が身の全力をもって向かわせていただきますわ」

「フリじゃねえから!ほんとにやめろよ!?」

 

 わあ必死。まあ普通に考えて必死にもなるか。なにしろ自分の性癖が強制的に矯正されそうになってるわけだし、しかもその相手が未来の自分の娘(と本気で思ってる相手)となると……羞恥プレイとかそんなちゃちなものじゃ断じてない恐ろしさを感じるだろうな。俺はそんなことされた覚えはないからちゃんとはわからんが。

 これからもできればそんなことは一生……と言うか永遠に無い方がいいが、可能性だけで言えばありえないわけではない。可能性だけで腹一杯なんだがなぁ……。

 

「……もう昼だし、さっさと寝るか」

「まだ昼だろ!?」

 

 起こされた。解せぬ。

 

 

 

 


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