IS~ほんとはただ寝たいだけ~ 外伝・超外伝   作:真暇 日間

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他の子・十柄編08

 

 

 

 

 side 篠ノ之 十柄

 

 そんなこんなで食事をしていた二人の写真を撮り終えたら、私も夕食を食べることにする。それなりに運動したし、腹が減るのは人間として当たり前のことだからな。

 IS学園の食事は基本的になかなか美味い。世界各国から寄せられる寄付金や、日本からの税金によってなんとかしていった各国からの無茶振りの中に食事のこともあったからだと聞いているが……日本はよくここまで無茶振りを何とかして見せたと誉めてやりたいところだ。

 英米仏独伊中韓etc、全世界のメジャーな料理のほぼ全てを網羅し、それらをいつでも作って供給することができる状況を作り上げていると言うのは凄まじい。同じことをレストラン等でやろうとしても、資金的にも材料を輸入するルート的にも困難な部分が間違いなく出てくる。その辺りは流石国家が経営している学校だ。

 

 ……ちなみに、基本的にISについて学ぶ学園を作ると言う時に米国あたりが色々と脅迫じみた方法で日本に負担をかなり押し付けた条約を締結させたことは当たり前のごとく知っているだろうが、実は米国も本当はもっと妥協点を探るつもりだったそうだ。

 なのに日本は平然とそれを受け入れ、無茶振りにしか思えない要求の殆どをこなしてしまった時点で『あ、これヤベェ』と認識を改めて寄付金やら何やらを出してIS学園の内部に食い込もうとして来たそうだ。

 確かに、もしも完全に日本の独力でそんな学校を作り上げてしまえば日本以外の国の力が全く届かなくなるも同義。しかも当時は世界中で一番ISについての情報を握っていたのは間違いなく日本であったために放置することもできず、学園に優秀な人材を送り込まざるを得ない。明らかに相手のフィールドであるIS学園に、だ。

 

 そんなわけで、日本はやはり変態技術の国であり、かなり純度の高い変態の血が身体に流れているために、楯無さんのような中途半端にレベルの高い変態が蔓延るっていてもおかしくはない……と。

 その変態力はまさに異様。現代における最大国家の予想の遥か斜め上を駆け抜けていってしまう、正直言って頭がおかしい程の物だ。これだから『日本人は本気になるところがおかしい』と言われてしまうのだ。

 ……まあ、そのお陰で極東の小さな島国が一つの大陸をほぼ丸々保有しているような大国相手に渡り合えているのだから、否定するような要素は一つも……ない。楯無さんが変態だったり、ちょっと調子に乗りすぎて時々明らかにおかしいことを始めようとしたり、そう言うことは個人のことであって国民性ではない筈だからな。文句は無いとも。

 

「あ、十柄? こっちの飯はどんな感じだ?」

「……百秋か……生憎とお前ほど正確にわかるような舌は持っていないからな。『美味い』と言う程度にしか感じんさ」

「味がわかるならそれだけでも幸せな部類に入ると思うがね。上を見ればきりがないのと同じように、下だってきりがないんだし?」

「それはわかっているのだがな……」

 

 ……まあ、原因は何となくだがわかっているのだ。私はこれでも割と姉さんに似て寂しがりだからな。同士である鈴やラウラ、シャルロット達が近くにいないと調子がでないのだ。

 勿論、一夏の場合も同じことが言えるが、気配を感じ取れる場所にいてくれれば落ち着いていられるし、最近は月までどころか太陽系全土まで察知範囲を広げることができるようになったから早々見失う事はないんだがな。

 あるとすれば、姉さんや一夏自身による世界間移動や亜空間に部屋を作られたりするとわからなくなってしまうくらいだろう。今回はそれについてきたわけだな。

 

 とにかく、元気がないのは私がどこかで『寂しい』と感じているからだろう。これについては議論の余地など欠片もない。ただ、寂しいと感じてしまうのは私と皆を繋ぐ縁と言うものが細くなってしまっているせいではないかと思ってしまう。昔からあまり親友と言えるような間柄にはなったことがなくて普通に迷うのだ。

 ……国のお陰であまり襲われたりすることはなかったが、国のせいでかなり引っ越しを繰り返したせいだ。許すまじ。

 

「『許すマジ』? 誰を許すんだ?」

「お前が相手なら大体許すぞ? 日本は許さんが」

「日本何したし」

「色々だ。助かった部分もあるが、非常に気に入らない部分も数多い。だから手は出さんが、手助けしてやるつもりもない」

「……そういえば俺も色々な国の工作員を行方不明にしたなぁ……特に誘拐犯は食肉加工して庭に居た蟻の餌にしてやったっけ」

「……蟻は肉を食えるのか?」

「サイズをかなり小さめにすればいける。ミミズも食うんだから問題ない」

「そうか。倫理的な問題はともかくとして、ちゃんと片付けまでしたのなら文句はない」

 

 生物は放置すると臭いが酷いことになるからな。近所のことは……まあいいとして、家の中にそんなものがあっては困る。非常に困る。

 ただでさえ人の暮らす家と言うものは臭いが染み付きやすいのだ。そこに腐乱臭など持ち込んでみろ? 凄まじいことになるぞ?

 

 少なくとも、私はそんな家に住むのは嫌だ。人肉の腐敗した臭いの染み付いた家に好んで住みたいと思うような奇特な人間がいるならば話は別だが、そうでないならば大体の者は同意してくれるだろう。普通だろうが普通じゃなかろうが、嫌なものは嫌なのだ。

 

「それで、百秋はどの程度写真を撮った? 私は一応やばそうなものは検閲削除してから出してるからそんな凄いのは出てこないぞ?」

「こっちも似たようなものだ。ラッキースケベ系がそれなりに多かったから削除して、コメディ一色にしたら使える写真の枚数が全体の四分の一以下になったのはなんの冗談かと思ったよ」

「……そんなにか?」

「ん、そんなに」

 

 ……こちらの世界の一夏はかなりアレだな。これであまり嫌われていないのが驚きだ。一般的な感性で言えば、そう言う奴は嫌われるものだと思うのだが……私の感性が一般的なものではないことはわかりきっているし、恐らくこの考えも一般的ではないのだろうな。

 

「いや、その反応は一般的だと思うぞ?」

「そうか?」

「ああ。とりあえず、こっちの方だと嫌われない性格をしているらしい。味方は多く、敵は少なくできるってのは一種の才能だな。俺とは大違いだ」

「お前は味方はそれなりに多いが敵はそれ以上に多いのを味方の能力値のごり押しで何とかするタイプだからな。本気でやりあうなら一番戦いたくないタイプだ」

 

 将棋で言えば、相手を強制的に『裸王』にした上で自分の『歩』を『香車』に、『香車』を『飛車』に変えて勝負を初めて先手を取る感じだからな。もはや反則以外の言葉が見つかりそうにない。

 ……いや、『不平等』があったか。それまでの努力を見ずにその場だけを見ればそう言うのも出るだろう。実際にはそれだけの差がつくに足る十分以上の努力の積み重ねがあるわけだが……それは目に見えるものではないからな。知らない者からすれば不平等で不公平なことだろう。

 

「……すまん、ちょっと会長相手に愉悦してくる」

「いきなりだな? わかった、行ってこい」

 

 百秋は当たり前のように私に頷き返し、食べ終わった食器を下げてから瞬間移動でこちらの世界の楯無さんを追っていった。

 

 ……まあ、死にはしないだろうから頑張ってほしい。応援だけはしておくとしよう。

 

 

 

 

 


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