IS~ほんとはただ寝たいだけ~ 外伝・超外伝 作:真暇 日間
風邪ひいて死んでました。ようやく復活したので投稿します。
……また貯めなきゃ。
side 篠ノ之 十柄
『反応ありました!パターン青!
……まあ、そんな感じの行動をすることでこちらの世界の私を誘導してやると、ほとんどこちらの思った通りの状態にまで持っていってやることに成功した。
少し違うのは、周りにもそれなりに人がいて、かつ二人のことを気にしているところも結構あると言うことか。
私の予想では、こちらの世界の一夏が居たとしてもそろそろ慣れてしまって気にする者も殆どいない筈だったのだが……どうやらこの世界では違うらしい。
これは一夏の性格と性質、性能の差が大きいのだろう。多くの相手に魅力を振り撒いているこちらの世界の一夏は、あまりにも鈍感が過ぎると言う欠点はあれどかなりの優良物件。基本的に誰にでも優しく、性格もよく、社交的だ。
対して私達の世界の一夏はと言うと……惚れている私が言うのもあれだが、好き嫌いの別れる性格をしている。
顔や体格などはほとんど変わらないが、あまりに性格が違いすぎる。基本的に利己的で面倒臭がり、見知らぬ相手はできるだけ見知らぬ相手のまま関わろうとしないし、自分から相手に関わりに行くのは『その方が間違いなく面白い』と判断した時のみ。やりたいことには積極的に関わりに行き、やりたくはないことは殆どの場合関わろうとしない。
何でもできる万能者なのに何にもしようとしない怠惰な人で、とてもとても我儘で……こうやって言葉にしてみると、自分がどうして惚れたのかがわからなくなってくるくらいの人だ。
……だが、それはあくまで他人に対する態度の話。知り合って、仲良くなってからはそうではない。
自分の内側に入った相手には、一夏はとてもとても優しく、甘くなる。友愛と親愛の境が曖昧で、親愛と恋愛の境も曖昧。友人ならば相手にキスされても平然と受け入れるし、男に抱かれそうになっても相手が友人あるいはそれ以上の仲であるなら当たり前のようにOKを出してしまう。
女が相手でも、相手が知らない相手なら拳が飛ぶし、知っていて仲のいい相手なら受け入れたり抱き締めるだけで生殺しにしたりする。性別とかそう言ったものでなく、完全に本人の感情でのみ動く私の世界の一夏は……色々な意味で非常に扱いづらかったりはするが、優しいことに変わりはない。
勿論それで問題が起きなかったわけではないが、そんな問題が起きたら一夏はさっさと綺麗に片付けてしまっていたので大きな問題になったことは一度も無かったりする。
女性権利団体に絡まれたり訴えられたりしたこともあるそうだが、訴えようとするとそちら側の本人を含めた親類縁者が全員死体で発見されたり、行方不明になってしまったりするそうだ。いったいいくつの団体が消えたかと思うと震えてくることもあるが、普段からあまりに胸糞悪い行動ばかりしている者ばかりなのでそこまで心が痛むようなことはないのが唯一の救いだ。
……姉さんと違い、ド派手に社会的に抹殺するのではなく、静かに生物学的に抹殺してくれるから手っ取り早くていいらしい。証拠も残してないし、そもそも身体の内側から爆発して殺すなどまともな方法でできるはずがないからな。逆に言えば、まともじゃない方法でならできるわけだが。
……さて、なんの話だったかな? 確か、こちらの世界の私の反応を見るための計画のことを考えていたはずだが……いつの間にか一夏式の害虫駆除法を思い浮かべるようになっていた。実に不思議だ。いったいなぜそのような事になったのだろうか……?
まあいい。そんなことは些細なことだ。重要なことじゃない。今はそれより顔を真っ赤にしたこちらの世界の私の写真を撮ることに集中せねば。こちらの世界の一夏は、実に動かしやすいな。
疲れた表情を浮かべているこちらの世界の私の頭を撫でさせるなど、私の『気配』の力を使えば容易いことだ。
まず、二人を正面から向き合わせる。これは普通によくあることだから意識する必要はない。
そして、こちらの世界の一夏に相手の頭を意識させるように気配を集中させ、される側には周囲からの視線などの気配を増幅することで自分の頭に手を伸ばされていることを気付かれにくくする。
その手が頭に触れた瞬間に気配の変換を行い、周囲を落ち着いた気配に変える。そうすることで『撫でられると落ち着く』と言う状態にあると錯覚させることができる。
そう、私の『気配』の力は正直な話、レーダー等が存在する現代では普通に替えが利くものだと思われていたが……こうして実際に応用してみればそんなことはないとわかるだろう。
そう、私の能力は……気配を察知し、操り、変換し、強弱を付け、自在に支配することにより……自分にとって都合のいい雰囲気を私の都合である程度作り出すことができるのだ。
なお、この力を使って某生徒会長を緊張の気配で包み込んで失敗を誘発させたり、羞恥の気配で包んで決定的な行為に及ぼうとするのを妨害したりはしていない。あれは間違いなく本人の性質だ。私の手に余る。
だから、楯無さんに『やったでしょ!絶対やったでしょ!?』とか言われても私は知らない。実際私はなにもやっていないのだから知るはずがない。
……惚けているわけではないぞ? 私はあのヘタレが勇気を出して前に進もうとする姿が大好きだからな。それを妨害したりなど、するわけがない。
簡単に言えば、元々できる奴が当たり前にできることを当たり前にやったとしても感動することはないが、元々できなかった奴ができなかったことを努力の末にできるようになるのは素晴らしいことだと思う……と言うことだ。
当たり前のように告白できない某ヘタレ会長が、いつの日かこちらの世界の一夏に告白できるようになることを祈って!
……あ、ようやくこちらの世界の私が現状に気付いたな。鈍い鈍い。
だが、そうして慌てている時こそシャッターチャンス!その恥じらいの表情をいただいていく!
……撮った写真は後々アルバムにして置いていくから、是非未来で『ああ、こんなこともあったなぁ……』と思い出してくれると嬉しい。そして面白い。
……私達も、写真を残しておくか。昔の写真は多くないが、今からでも増やしていこう。
初めに撮るべきは……集合写真だな。IIIの。豪勢にしてやろうじゃないか。