IS~ほんとはただ寝たいだけ~ 外伝・超外伝   作:真暇 日間

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 いろいろ書いてたら遅くなりました。申し訳ありません。




他の子・シャーリー編06

 

 

 

 

 side 織斑 百秋

 

 流石にまずいと思ったので、もう少しシャーリーを直しておくことにした。とは言っても、俺にできることはシャーリーを落ち着かせる程度。根本的な解決には大分遠いんだが……まあ、何もやらないよりは幾分ましな筈だ。

 

「そんなことができるんならもっと早くやってよぉ……」

「いつもはもっと理性的だから油断してた。普段ならからかわれる側だし、ツッコミ側で常識的なタイプだからストレスが溜まってたんだろうね。今回みたいに時間を越えるとか非常識の極みだから発狂した感じになったんだと」

「ナニソレ……あれで普段ツッコミとか誰も信じないよ……?」

「まあ、基本的に織斑家(ウチ)は非常識なことが多くて、シャーリーも自分にとっての常識と自分以外の誰かにとっての常識のギャップに悩んでたりもしてたから、正直いつかこうなるんじゃないかと思ってた。なっちゃったものは仕方ないからガス抜きしようとしたらこうなった、後悔はしていない」

「お陰で僕は凄い疲れたんだけど……?」

「普段から砂糖吐かせるようないちゃいちゃっぷりを見せ付けてくれてるから八つ当たりの対象になったんじゃないかな。知らんけど」

「そんなにいちゃいちゃしてるの僕!?」

「してる。男女構わずいちゃいちゃしてる」

「なにそれどう言うことなの!? 男女構わずって……普通に仲良くしてるとかそういうのじゃなく!?」

「唇同士でキスをするのが当たり前な普通の友達とはいったい……」

「うわぁぁぁぁぁぁん!未来の僕のバカぁぁぁぁぁ!!」

 

 なぜか……そう、『なぜか』シャルは突然走り出してどこかに行ってしまったいったい何があったんだろうな?

 まあ、今はそれよりシャーリーの方だ。さっきシャルに言ってたのはかなり嘘だが、シャーリーの状態を甘く見ていて油断したと言うのは本当だからな。このまま放置しておいたらいったいどうなるか、正直俺でもわからない。

 後々正気に戻った時に自殺しそうな感じだが、そうなってしまわないように手を出しておかないと。シャーリーに死んでもらう気はないし、そんなことになったら悲しいからな。

 

 そんなわけで、箍が緩んだままのシャーリーを膝に抱え上げる。こっちに来たばかりの時に少し締め直しておいたはずが、またかなりゆるゆるになってしまっている。ストレスがかかり続けたせいか、直るよりも壊れる方に向かってしまったようだ。

 膝の上のシャーリーは、電池が切れたようにぼんやりと何もない中空を見つめている。ついさっき、俺が話しかけるまではかなり元気そうにシャルをからかっていたのだが、どうやらそれは一種の痩せ我慢と言うか、空元気のようなものだったらしい。

 そんなシャーリーを後ろから抱き締めて、そっと頭を撫でる。眠るときに自分を落ち着かせるのと同じように、自分の心臓に一番落ち着く最も身近なリズムを刻ませる。

 心臓を止められるのだから、ゆっくりにすることくらい雑作もない。

 

 とん、とん、とん……と、ゆっくりと鼓動を刻み続ける俺の心臓。その速度にシャーリーの心音がだんだんと重なり始め、まるでシャーリーと俺が一つになったかのような錯覚が俺を襲う。

 

「……ん……あれ…………?」

「ほれ、無理すんな」

 

 暫くして意識を取り戻したシャーリーの視界を塞ぎ、状況を認識させないままに抱き締める。弱った心にこれはよく効く。ちー姉さんや束姉さんを相手によくやっていたから、そのくらいは常識として知っている。

 精神的に弱っているときには、他の人からの声や体温が心地いい。それに漬け込む悪い人も居るくらいだし、その効果の高さはある意味では周知の事実だと言えるだろう。

 シャーリーの身体を抱き上げて、前後を入れ換えて今度正面から抱き締める。唐突に回った視界に一瞬何が起きたかわからないようだったシャーリーだが、すぐに自分から俺に抱きついてきた。

 ……この体格だと少しばかり見映えがよくないので、設定上食べることにしている蛍光水色のグミのような半透明の楕円球を口に放り込む。

 ……流石はちー姉さんの作った餅。何度食べても俺の毒物耐性を抜けてダメージを与えてくる。すぐに治る範囲だが、俺にダメージが入る時点でどうかしていると言わざるを得ない。

 ただ、これを食べると身体が全力運転を始めて解毒しようとするから、しばらくの間気を抜いても縮むことがなくなるんだよな。便利っちゃ便利だが、俺以外には使えそうにない。使ったらまず死ぬだろうし。

 そして一時的に身体を大きくしたままの形に固定して、抱き締めたまま頭を撫でる。俺の胸元に顔を埋めるシャーリーは、とろんと蕩けたような表情を浮かべて瞼を閉じる。

 ……巻き込んで、本格的におかしくなるほどに追い詰めてしまったのは俺だ。どうでもいい相手だったらともかく、シャーリーだからな。しゃーない。

 

 ただ……こうしているのを誰かに見られたら、こっちの世界の俺がロリコンだとか言う噂が広まってしまいそうな気がする。実際には俺なんだが、俺がこうしてでかくなってる事を知らない相手にはそんなことはわからないだろう。

 つまり、こっちの世界の俺が未来の自分の娘を膝に載せてよしよししてたと言う噂が流れ……なんだろう、普通の家族の一幕に見えてきた。これが汚れて見える奴は心が汚いに違いない。

 だが、心が綺麗かどうかは知らないが腐った奴ならそこら中に居るんだよなぁ……。

 ……まあ、大丈夫だろう。そもそもラルちゃんに手を出している疑惑がある時点でロリコン扱いされるのは確定だろうし、変わらん変わらん。精々『父親を妹に取られたと思った百秋が夜中に父親の部屋に夜這いをかけて襲ったり反撃で食べられちゃったりする薄い本』が流行の最先端を行くようになるくらいだろうし。

 

 ……知らなければ幸せ。目につかなければセーフ。ついでにそうやって稼いだ金の一部を俺に回してくれればベストなんだが、流石にそんなことまではしてくれないだろう。

 それに、このIS学園の腐女子の方々は基本的に心優しいから、『百秋を誘拐して一夏を呼び出し、身体を捧げさせた上で目の前で百秋がボロボロにされていく映像を見せられて親子共々大変なことになる』とか、そんな感じのあまりに酷いオチの物は書かないからな。そういうのを書こうとするとどこからともなく千冬さんが現れてトラウマを植え付けられるせいもあるだろうが、とりあえず今日もIS学園は平和だ。間違いない。

 

 ……ああ、シャーリーは寝ちゃったか。それじゃあこっちの世界の俺の部屋に運んでおくとするかな。

 

 

 

 

 


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