IS~ほんとはただ寝たいだけ~ 外伝・超外伝   作:真暇 日間

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他の子・シャーリー編05

 

 

 

 

 side 織斑シャーリー

 

 するりと僕の腕の中から抜け出していった百秋を追いかけようと、百秋から渡されたご飯をしっかり味わいながらも急いで食べていく。ご飯うまうま。

 

「美味しそうに食べるねぇ……」

「心の栄養は百秋でとれるにしても、身体の栄養まで百秋でとるわけにはいかないから。百秋は食べたらなくなっちゃうし」

「自分の娘に食人嗜好があるなんて知りたくなかったよ」

 

 ……別に食人嗜好がある訳じゃないんだけど。百秋だったら食べられるってだけで、実際に食事として百秋を食べるなんてそんなそんな……。

 実際に食べるんだったら『(性的な意味で)食べる』ってことになるかな。あるいは『食べる(意味深)』でもいい。意味は同じだし。

 流石に初物は一番近しい織斑先生辺りに譲るつもりではあるけれど、それ以降なら加減するつもりも遠慮するつもりもない。なにしろ相手は織斑先生だ。家事以外で勝てる気が全くしない。

 ……家事だったら逆に負ける気がしないけどね。負けるとしたら、織斑先生が作る料理から発する瘴気に当てられて試合続行不可能になったとかそんな感じの状態だろうから、その場合は勝敗云々の前に自分の命の心配をしなくちゃいけない。料理以外はそれなりにできる……あ、正確には何かを『作る』と言う行程さえなければ織斑先生も普通に……ちょっと苦手と言うくらいの範囲に納められる程度には家事ができる。

 ……以前、プランターで朝顔を育てたら何故か某配管工ゲームに出てきそうな肉食っぽくて火を吐く花が出てきちゃった事もあるようだけど、まあそれも作る範囲に入っていたんだろうね。

 百秋曰く、『ゲームで言えば生産系の行動に極大のマイナスがつく』とか言っていたけど……あれかな? 大失敗しかしない鍛冶師とか、魔物ばっかり植わってる農家とか、そんな感じかな? ……いや、別に織斑先生は何かを作るのを本職にしてる訳じゃないし、一番得意なのは戦闘行為だから色々違うか。

 

 ……さて、なんだか織斑先生の事を考えるのが若干怖くなってきたところで、目の前の事を何とかしようと思う。

 やることは簡単。こっちの世界の僕に、『僕には食人癖はない』って信じさせるだけ。実際食人癖なんて僕にはないし、食人するデメリットを沢山説けば信じてもらえるよね。

 まず、人の肉は基本的に食べる時に美味しくなる工夫をされていないから、牛や豚の肉を食べるようにはいかない。体脂肪率は実は豚の方が低いくらいだから柔らかくはあるんだけど、肉の付き方が大分違うから豚肉のように綺麗に焼くことはできないと考えていい。

 それに、最近では変な病気を持っていたりする人も多いし、化学調味料なんかをよく使うからそう言った物が体内で生物濃縮を起こして毒性はかなり強い。ついでに当たり前の事ではあるんだけど、食べると言うからには殺さなくちゃいけない。となればまず間違いなく殺人罪、そうでなくとも傷害罪やら何やらで面倒だし、死体を盗むにしたって色々と問題はある。死体処理場で働いているわけでもなければ、死体が溢れる戦場暮らしでもない私が人肉を手に入れるとなると、犯罪に手を染めるしかなくなるわけで。

 そして、そんなことをしたら当然織斑先生が黙っているわけもなく、間違いなく泣いたり笑ったりできなくされてしまう。

 

「でも僕はこうして笑ってるからそんなことはされていない、だから僕は食人なんてしたことがないしするつもりもないよ」

「どうしよう、自分の娘が『人を食べるためにした行動から起こるメリットとデメリット』をしっかり計算し尽くしてるんだけど!? 明らかにこれ人を食べようとした努力の結果だよね!?」

 

 どうしよう、『軽く考えただけでもこれだけのデメリットがあるからやりませんよ』と言うつもりでした説明が裏目に出ちゃった。実際、本当にそんなことをするつもりはないんだけどなぁ……気持ち悪いし。

 ほんと、食人の習慣がある人たちはいったい何を考えてそんなことをするのか理解できない。他に食べられるものがないとかそういう理由だったら僕だってやるかもしれないけれど、そうでもないのに日常的に人を食べるとか本当に頭がおかしいとしか思えない。

 それが普通って言う所もあるかもしれないけれど、僕はそんな所にはあんまり行きたくないかな。そんなことをしたら僕が食事の材料にされちゃいそうだしね。

 

 ……あ、想像だけで気分が悪くなってきた。もしも本当にそんなことになったら躊躇わずにラファール展開してその場に居る全員縊り殺してさっさと逃げ出そう。証拠らしい証拠が残らないように銃器類は封印するとして……そこらの石を使えばいいね。何か紐でもあれば文字通りに縊殺してあげられるし、証拠だって残らない。ISの武器を使うとどうしても証拠が残っちゃうからね。

 

「……と言うか、なんでマミーは僕の『食べちゃいたい』って言葉を本気で取ってるんだい? よく『食べちゃいたいくらいにかわいい』とか言うじゃない」

「目が本気で比喩とかそういうのに見えなかったから言ってるんだけどね?」

 

 大体正解。もしも……いやまああり得ない仮定ではあるんだけど、もしも百秋が自分から『食べて?』とか言ってきたら本当に食べられるくらいには好きって言うだけで、実際に食べるつもりなんてこれっぽっちもないんだけどね。

 ……まてよ? 百秋って『実体のある分身』を作れたよね? だったらその分身なら何の躊躇いもなく頂け…………あ、うん、無理だね。どうしても食べるより愛でる方に思考が向かっちゃう。色々な意味で愛で倒したい。

 

「……教育はちゃんとしよう。うん」

「親の背を見て育った結果なんだよね」

「僕ってそんなことしてるの!? いやいい!何も言わないで!聞きたくないから何も言わないで!」

 

 残念、あることないこと色々吹き込みたかったのに。ラウラといい雰囲気だとか、時にはラウラと二人で溜まったものを発散してるだとか、その時によく使う言葉がさっきの『食べちゃいたいくらい可愛い』だったとか、初めての時にも三人でだったとか、そういう話をよく聞かされてるとか……お酒って本当に怖いねって話をしようと思ったんだけど……残念。

 まあ、いいや。機会はまだまだあるだろうしね。今だけは自重を忘れて、たくさんたくさん楽しもう。

 

 

 

 


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