問題児に混じって野生児が来るそうですよ? 作:ささみの照り焼き
約一ヶ月ぶりの更新……が、当たり前になりつつある今日この頃。
作者は切実に文才が欲しいと思っています。
今回はちょっと飛んで、魔王襲来の場面から。
あと、割りと重大な事実が出てきたり。
では、どうぞ!
◇◆◇◆◇
聞こえてきたのは笛の音。
遠くに感じる、“死”の臭いと、力を封じられた太陽の気配。
「ぅ……ぁ……!」
未だ黒死病に蝕まれ続けている体を無理矢理に起こし、ユーリは立ち上がる。
笛の音の近くに飛鳥と稲荷、それに耀の気配を感じる。しかし耀は気配が弱くなっている。とはいえ、稲荷が二人を守っているようだから心配はいらないだろう。
問題は──
「──昨夜ぶりね」
──急速に接近してきていた、“死”の臭いだ。
「……ん、昨日ぶり」
「あら? 中々に余裕じゃない、《
ユーリ以外の者がこの場に居れば息を飲んだことだろうが、生憎この“サウザンドアイズ”直轄の療養室にいるのはユーリのみ。ユーリは薄々感づいていたので驚きはしない。
ユーリの持つギフトを超えるギフトともなれば、それこそ高位の修羅神仏の物ぐらいしかない。だが、そんなギフトを所持しているものは殆ど上層にいるし、こんな低層を攻めてくる者がそんな高位のギフトを持っているわけはない。
加えて、ユーリの内にある“黒死病”から僅かに感じる《災禍》の気配。いくら野生児のユーリといえど、これで分からないわけがなかった。
「……どこで、」
「先に言っておくけど、教えないわよ。──
彼……? と、ユーリが首を傾げる。
少女の言っている人物を特定しようと思考を巡らせるが、襲いかかってきた黒い霧のような何かによってそれは中断された。
ユーリは跳躍して後退し、《怒り狂う太陽》を発動させ──られない。
「ふふっ……」
硬直するユーリを、黒い霧が襲い──
「“
「…………チッ」
雷鳴と共に響いた黒ウサギの声に舌打ちすると、少女は黒い霧を操りユーリから遠ざける。
ギフトが使えなかったことに困惑するユーリを一瞥し、窓の縁に足をかけた。
「命拾いしたわね……次はないわ」
ユーリを睨み付けながらそう呟くと、少女は窓の外へと消えた。
◇◆◇◆◇
彼に出会ったのは、少し前のことだ。
とある人物の思惑によって召喚され、魔王として人々に悪夢をもたらす為だけに形作られたその姿を見て、彼はこう言った。
「ん、なんだ。面白い気配を感じたと思ったら、ただの可愛い女の子じゃねえか」
問答無用で黒い霧を放ってやった。
それは自分なりの照れ隠しみたいなものだったのだが、それなりの威力を持っていたのに。
「オイオイ……最近の幼女は物騒だなぁ……」
平然と立ち、あまつさえ自分の気にしている事をのたまった。
もちろん次の瞬間にはフルパワーの霧が襲いかかったのだが、それでも彼は倒れなかったのだ。
「ハイハイ、ストップストップ。とりあえず落ち着こう。COOLに行こうぜ?」
そんな感じで、彼とのファーストコンタクトは最悪の形で終わったのだ。
彼は自分が鬱陶しがっても着いてきて、カラカラ笑っていた。
元々居た二人の仲間ともすぐに仲がよくなって、いつの間にか傍に居るのが当たり前になって。
──だけど。
「わりぃ、ちょっくら異世界行ってくるわ」
とだけ言い残した彼は、フラリと何処かへ消えていった、
彼が死んだ──いや、殺されたと分かったのはその数日後。
彼の友人を名乗る人物から、アイツに殺されたと知った。
その時に気づいたのだ。
──私は、彼のことがいつの間にか好きになっていたんだ。
今さら気づいたところで、もう遅い。
その気持ちはもう、伝えることは出来ないのだから。
だったら、せめて。
せめて、彼への手向けとして。
“死”を知っている私──いや、私たちだからこそ。
──アイツを殺して、仇を取る。
八千人の“死”の功績を持つ悪魔。
黒死病で死亡した八千人の悪霊群。
“
彼女の復讐は、まだ始まったばかりだ。
◇◆◇◆◇
はてさて、彼とはいったい誰なんでしょうね?(すっとぼけ)
《怒り狂う太陽》が発動しなかった理由は、皆さんお察しのことかと思いますがね。
彼の正体が分かった貴方。
つまりそれは──ペストちゃん狂化(誤字にあらず)フラグというやつです(キリッ
それでは、次は何時になるか分かりませんが(オイ
また次回!(* ̄∇ ̄)ノシ