問題児に混じって野生児が来るそうですよ? 作:ささみの照り焼き
浴衣+牛乳は──?
◇◆◇◆◇
謎の少女との邂逅から少しして。
「はふぅぅ…………」
温泉から上がったユーリは、温泉から出てすぐのところにある休憩スペースで寝転がっていた。
ほかほか湯気の上がる体は僅かに湿気を帯びているが、風邪を引く心配はないだろう。なんせそれも回復してしまうのだから。
「あ、出たんだ」
「ん……よう?」
パタパタとスリッパを鳴らしながら、耀が駆け寄ってくる。
ユーリの風呂上がり故に若干呂律の回っていない状態に苦笑して、瓶に入った牛乳とコーヒー牛乳を差し出す。
「どっちが良い?」
「……んぅ、こっち」
ユーリはふらふらと手を持ち上げて、牛乳を取る。その蓋を開けて両手で持つと、眠たげな様子に耀の目が微笑む。
それに少し首をかしげ、牛乳を一口。
「……………………ぅ」
どうやらおきに召さなかったようで、目に見えて元気がなくなっていく。
基本的に何でも食べたり飲んだりするユーリではあるが、好き嫌いは一応ある。好き嫌い……というよりは“苦手”という感じではあるが、まあ細かいことは良いだろう。
「こっち飲む?」
「……………………ぁぅ」
差し出されたコーヒー牛乳に口をつけると、ユーリの顔がほわ~っとなる。
その様子にまたクスリと笑い、耀は牛乳を一口。
「…………────あッ!?」
飲んでから気づく、“間接キス”の事実。
瞬間的に頭と顔が赤熱し、わたわたと手中の牛乳瓶をお手玉する。
「わぷっ!」
が、蓋が空いたままだった牛乳を頭から被ってしまう耀。
「折角白夜叉に借りてた浴衣が……」
べたべたになった浴衣の具合を確認していると、ふとユーリが自分を見ていることに気づく。
「……………………」
「……………………」
問一、女の子が牛乳まみれで浴衣を少しはだけています。さて、これを見た男の子はどう思うでしょう?
答一、ガオーッ!
「……………………」
「……………………」
問二、しかし相手にその様子はありません。さて、この相手が野生児くんだった場合どうなるでしょう?
問二、格好の獲物デス♪
瞬時に立ち上がり、逃げようとする耀。
しかしユーリに腕を捕まれ、組伏せられる。
「え、えーっと……悠莉?」
返事はない。ただただ、その熱に浮かされたような瞳が耀を──正確には、耀に付着している牛乳を見つめている。
「──ひゃっ!?」
ペロリ、と首筋を舐められ、耀は甲高い声を上げる。
「ん……む……」
「ぁっ……やめっ……ゆう、り……ひゃんっ!?」
牛乳が付着しているところを、すべて、余すことなく、徹底的に舐められていく。
「ぅぁ……ん……はぅん!? も、もうホントに──んぁ!」
ビクン、と耀の体が跳ねる。
ペロペロと舐められているのは、頭部の側面──つまり“耳”。
今まで感じたことのないような感覚が背筋を駆け抜け、耀の体から完全に力が抜ける。
「はぁ……はぁ……んっ、あっ!」
「んむ、ちゅむ……はむっ……」
耳の次は頬へ。
「ぁ……っん!」
頬の次は鎖骨と首筋を。
「はむ……ん──」
そして、胸元へ──
「………………………………?」
来、ない……?
恐る恐る目を開ければ。
「くすぅ…………」
「……えぇ………………」
クタリと力を抜き、耀の胸元に頭を置いて眠りこけている、ユーリがいた。
耀は思わず脱力し、少しばかり落胆する。
「…………っ!?」
落胆? そう、耀は今確かに落胆した。
それはつまり、その、
カツンッ──
「──誰ッ!?」
僅かに聞こえたその音を聞き逃さず、耀はギフトを使ってまでその音がした角の向こう側に移動する。
はたして、そこに居たのは──
「……リリ?」
「あ、えっと、その……!」
ノーネームの良心(黒ウサギ&稲荷命名)こと、狐尻尾を二本従えた小さな女の子だった。
しかしその顔は熱でもあるのではないかというほどに赤面し、尻尾と狐耳は所無さげにふらふら揺れ動いている。
これは──見られた……!
「リリ、この事は秘密。絶対に」
「は、あ、はっはい! わわっ、分かりましたぁっ!」
ハイライトの入っていない目で、肩を掴んで逃げられなくした少女に詰め寄る耀。
完全に脅迫の構図だが、隠蔽作業に夢中でそんなことは気にならない。というか気にしていたらやっていられない。
「あ、あの……それよりユーリさんは、大丈夫なんでしょうか……?」
心配気に聞いてきたリリに、耀は眠っただけと伝え安心させる。
「ぅ……!」
ユーリの呻き声が聞こえた。
ハッとして、二人してユーリに駆け寄る。
「こ、これって──!?」
呻き、仰向けになったユーリ。
その浴衣のはだけた胸には──
──
◇◆◇◆◇
答え、ちょいエロ♪
…………やっちまったぁ……!