問題児に混じって野生児が来るそうですよ?   作:ささみの照り焼き

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急展開?のようですよっ!

◇◆◇◆◇

 

 

 サラマンドラとの謁見も無事……とは言えないがともかく終わり、ノーネーム一行はサウザンドアイズの支店へと戻ってきていた──のだが。

 

「…………」ジーッ

『んー?』

 

 部屋の中心には、無言で妖精を見つめるユーリと、手を口に当てて首をかしげる妖精がいた。

 

「…………んぅ?」

 

 これなに? とユーリが首を傾げれば、

 

『んんー?』

 

 妖精も同じように首を傾げる。

 

「……………………」

『んんんんー?』

 

 なんとなく、右手の人差し指を突き出してみる。

 妖精は首を傾げたが──なんとなく、左手をそれにくっつけてみた。

 

 ──そして、何故か触れた部分が光を発した。

 

「……これで、友達?」

『ともだちー? ……ともだちー!』

「何をしてるのよ、あなた達は……」

 

 と、飛鳥はため息を吐きながら額を手で押さえた。

 そして、恐らくこんな余計なことを吹き込んだ──いや寧ろ芸を仕込んだ張本人であろう十六夜を睨み付ける。十六夜は笑うだけだった。

 

「はぁ……今日は一層疲れたわ……」

 

 椅子に座り壁に体を預けながら、ため息を吐く飛鳥。

 無理もない、と隣に座る稲荷が苦笑する。

 

 怒りが頂点に達し、降臨した鬼ウサギから逃げるのに体力をかなり使い。

 押し付けられたユーリの面倒でメンタルをガリガリと削られ。

 止めとばかりに、ユーリとレティシアを探しに訪れた展覧会で無数のネズミに襲われた。

 ちなみに最後の一つに関しては、ネズミに襲われたことではなく、威力の高すぎる護身用の剣と主の危険を察知して駆けつけてきた戦闘狂のせいだ。

 

 白夜叉が「今回の依頼の前金だ」と肩代わりしてくれたからよかったものの……とジンが青ざめていた、と言えばお分かりいただけるだろう。

 

「……あら? そう言えば白夜叉は?」

 

 ふと、飛鳥が部屋を見回しながら呟く。

 その言葉に一同がそう言えばと部屋を見回した。

 今この部屋にいるのはノーネームのメンバーだけで、オーナーである白夜叉の姿がないのだ。

 

 いったい何処に行ったのか、と一同が首を傾げていると、障子が開き白夜叉が部屋へと入ってきた。

 

「すまんが、先に風呂を貰ったぞ。おんしらも入ってくるといい」

 

 白夜叉に促され、その後から着いてきていた店員に案内されて女性組(+妖精1)が風呂へと向かう。

 やがてその足音が消えると──白夜叉と十六夜の顔に悪大官バリの悪ーい笑みが浮かんだ。

 嫌な予感に冷や汗を流すジンを他所に、二人はごそごそとなにかをセッティングし始める。

 

「クックック……白夜叉、例のブツはセットしてきたか?」

「フッフッフ……店員(ヤツ)の目を盗むのは少々骨が折れたが──ほれ!」

 

 ヒソヒソと会話しながら、白夜叉がセッティングした機械──監視カメラの映像をパソコンに表示した。

 

「なっ──ななななっ、なぁっ!?」

 

 突如として映し出された桃色に、ジンの顔が一瞬で沸騰する。

 しばらく固まった後、黒ウサギたちに注意を促そうとして──

 

「行かすかっ!」

「へぶっ!?」

 

 十六夜の突きだした足に躓き、運悪くちゃぶ台に頭をぶつけて気絶した。

 邪魔者はいなくなったとばかりにパソコンの画面を覗き見る十六夜と白夜叉。

 

 ──だが、ふと気が付いた。

 

「……おい、悠莉がいねぇぞ」

「……本当じゃの」

 

 いつの間にかユーリの姿が消えていた。

 ……まあいいか、と画面に目を戻した二人は、変態談義に花を咲かせるのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 ピクピクと鼻を動かしながら、ユーリは月を見上げていた。

 今宵は満月らしく、少しだけ漂っている雲の合間から柔らかな月の光が零れていた。

 

 ユーリは満月が好きだ。

 綺麗な真ん丸だし、何よりもその柔らかい光が大好きだ。

 逆に三日月や半月は好きではない。少しでも欠けていると、どことなく不安になるのだ。

 

「……………………」

 

 そういえば、狼羊のルルも満月が好きだったなぁ……と思い出してしまい、少しばかりホームシックに陥ったユーリ。

 ──そして、その物憂げな姿を見下ろす、白黒斑のゴスロリ服を着た幼い少女(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「──始めまして……ではないわね。お昼ぶり(・・・・)かしら?」

「……ん」

 

 左右で結った髪を揺らし、皮肉げな笑みを浮かべる少女に対し、ユーリはいつもの無表情で答える。

 

「……驚かないのね」

「……匂い、で……分かった、から」

 

 ──鼻が曲がりそうな程の、濃密な()の匂いで。

 

 たどたどしくそう付け足したユーリに、少女は顔をしかめる。

 しかし長く膨らんだ袖で口許を隠すと、再び目に皮肉げな光をともし、

 

「さすが──あの《災禍の魔王》を倒したことはあるわね」

 

 ユーリは首をかしげる。

 何故この少女が、あの異世界人の事を知っているのだろうか。

 

「別に大した理由でもないわ。ただ、アイツとは少し縁があっただけ」

 

 その様子にクスリと笑い、少女は袖をユーリに向ける。

 

 

 ──直後、ユーリの体を黒い霧のようなものが覆い隠した。

 

 

「……んっ」

 

 が、少し力んだような声が聞こえた瞬間、神々しい太陽の炎にそれらは全て焼き尽くされた。

 渦巻く炎が写る瞳を向けてくるユーリに、少女は心の底から憎々しげに舌打ちをしてユーリを睨み付ける。

 

「……ここで宣言しておいてあげる。明日、私は──」

 

 そこで一拍の間を置いて。

 

 

「──貴方を、殺す」

 

 

 月の光が、少女の憎しみに染まった顔を照らした。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇




 おまけ『NGシーン』

十六夜「おい白夜叉、例のブツは?」
白夜叉「もちろん、ここにある──」

黒ウサギ&稲荷「ナンノコトデスカネ、オフタリトモ?」

十六夜&白夜叉「……………………」


 おまけその2『NGシーン……?』

少女「──貴方を、ころちゅっ」
ユーリ「……………………」
少女「……………………」
ユーリ「…………(気の毒そうな目)」
少女「…………(涙目でプルプル)」


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