問題児に混じって野生児が来るそうですよ?   作:ささみの照り焼き

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野生児vs九尾の狐in街中だそうです!

◇◆◇◆◇

 

 

「まぁあああああちぃいいいいいなぁあああああさぁあああああいぃいいいいい!!!!!」

「やーーーーー!!」

 

 悪魔の形相で追ってくる稲荷に、珍しいユーリの大きな声が響く。

 

 

 ──ドッガァアアアアアン!!

 

 

「うわぁあああああ!?」

「きゃぁあああああ!?」

「ヒヤッハァアアアアア!! 汚物は消毒だぁあああああ!!」

「「「なんか一人違うのが混ざってる!?」」」

 

 直後、盛大な爆発が起こってこの『火龍誕生祭』に参加していた参加者達が逃げ惑った。

 その爆発を起こしているのは、他でもないユーリと稲荷である。

 

「第一火劇(ひげき)、《狐火》!!」

 

 戦闘狂スイッチが入って凶暴化した稲荷が、バスケットボール大の狐火をいくつも産み出し放つ。

 

「──ん──にゃっ!!」

 

 壁を蹴って飛び上がっていたユーリは、体全体に纏っていた炎を右足に集中させて振るう。

 羽衣のギフトによって衝撃波と共に打ち出された炎は、壁のように狐火を遮り──

 

 ──ドゴォン!!

 

 近くの建物の壁を吹き飛ばした。

 爆風と煙で稲荷とユーリの姿が掻き消える。

 もうもうと立ち込める煙から先に出てきたのは──

 

「「──っ!!」」

 

 否、出てきたのは二人同時だった。

 煙を突き放すように上空へと飛び上がり、己の持つ最大威力の技を放とうと力を溜める。

 稲荷の頭では捕まえるという目的は戦闘狂モードによって掻き消されていて、ユーリはその稲荷から放たれる一撃を叩き潰そうとしている。

 しかしその一撃同士がぶつかれば、下手をすれば周囲の建物すべてが吹き飛びかねないのだが──

 

「第六輝劇(きげき)──」

「《怒る太陽の(ウォーツ・サン──)──」

 

 稲荷の頭上に巨大な光球が出現し、ユーリの引き絞った右腕に炎が集まる。

 ──そして。

 

「──穿光(せんこう)!!」

「──一撃(シュラーク)》!!」

 

 双方の技がぶつか──

 

 

「何をしてやがりますかお馬鹿様ーーーーー!!」

「街壊す気かよオイ!!」

 

 

 光球から放たれた光線は雷によって霧散し、巨大な炎の腕は拳によって破壊された。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「まったく!! 悠莉さんを捕まえるはずが、どうしてバトル展開になっているのですか!?」

「あぅ……そ、そのぉ、なんというか……血が、たぎっちゃいまして」

「本当に勘弁してください!! 稲荷さんまでそちら(問題児)側に回られたら黒ウサギの身が持ちません!!」

 

 たはは……と正座して頭を掻く稲荷とその隣に同じく正座をするユーリの首には、『反省中』と書かれたプレートが糸でぶら下げられていた。

 あの雷と拳は黒ウサギと十六夜のもので、あれだけ暴れまくった二人は絶賛説教中というわけだ。

 

「ヤハハ、しかし稲荷? お前結構すげぇ技持ってるじゃねぇか」

「技? ……あ、もしかしてあの最後の光線ですか? すごいっていっても、あれはまだまだ五割も威力が出てませんが? だいたい……三・五割ぐらいですかね」

「あ、あれで五割もいっていないのですか……!?」

「あはは……まあ、最近はちょっとずつ力が戻ってきたので。飛鳥さんとの契約も思いの外相性がよかったですし」

 

 稲荷の最後の一撃は、ユーリの《怒る太陽の一撃》さえ飲み込もうかというほどだった。ユーリも街中ということは理解して出力を押さえていたとはいえ、稲荷の一撃も大概だ。

 しかも、“火劇”と“輝劇”、さらには“華劇(かげき)”や“刺劇(しげき)”などバリエーションが豊富な上、第一から第十まであって数が大きくなるごとに強力になるらしい。

 

「もっとも、出力が弱い上に第六までが限界ですが。華劇や刺劇に至ってはまだ使えないですしね」

「な、ナルホド……」

 

 チートな悠莉が拾ってきた稲荷は、思いの外チートだということが判明した。

 黒ウサギの頭痛は、しばらく収まることはなさそうだ。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 


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