問題児に混じって野生児が来るそうですよ? 作:ささみの照り焼き
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「つーわけで、北側に連れてけゴラ」
「「「連れていけゴラー」」」
「おんしらは本当に仲が良いのぉ……」
サウザンドアイズ到着後、箱庭生活初日と同じように白夜叉の私室へと通された四人の開口一番の脅迫に、白夜叉は苦笑しつつパチンと扇子を閉じた。
ちなみに、店の前で門番よろしく掃除していた女性店員はユーリの
そのあと何を思ったのか、耀がユーリの頬をむにむにみょーんみょーんと餅を捏ねるように弄っていた。若干耀の頬が膨れていたように思えるが、ユーリの頬の柔らかさに嫉妬していたのだろうと思われる。飛鳥と十六夜がそう言っていたので。さらにその二人にも弄られた。お陰で頬が若干赤い。
あと、白夜叉は空からトリプルアクセルしながら降ってきた。女性店員が頭を抱えていたので、ユーリ達は合掌しておいた。竹箒で叩かれた。
「北側へ行く前に、少し聞きたいことがある。サウザンドアイズの幹部として、ノーネームリーダーのジン・ラッセルにな」
「は、はい」
真剣な顔になった白夜叉につられて、ジンが姿勢を正した。
曰く、魔王に関するトラブルを請け負っているのは本当か。
曰く、東側のフロアマスターとして正式に頼みがある。
曰く、北側のフロアマスターが世代交代をした。
曰く、その影響で──
「待って」
──と、話の途中であるにも関わらず、耀が待ったをかけた。
首を傾げる白夜叉に耀は相変わらずの無表情で、
「その話……長くなる?」
瞬間、この場にいる白夜叉を除く全員が理解した。
「白夜叉様! このまま話を続け──」
「悠莉くん!」
「んっ!」
「コペッ!?」
前のめりになりながら言おうとしたジンを、飛鳥の指令によってユーリが落とした。
「白夜叉! すぐに北側に向かってくれ!」
「ふむ。何か理由でもあるのか?」
「説明する時間も惜しいから一言で済ませるぞ──そうすりゃ面白いことになる!」
「……くくっ、そうかそうか」
ニヤリとした笑みを返しながら言い切った十六夜を見て、白夜叉は少し笑みを漏らして頷いた。
そして扇子を袖に入れて。
──パン、パン。
その手を二回うち合わせた。
途端、ユーリがピクンと小さく跳ねた。
「……空気……変わっ、た……?」
「流石野生児、と言ったところかの。この部屋に居て変化が分かるとは大したものだ」
小首を傾げて問いかけたユーリに、白夜叉は小さく笑いながら頷いた。
二人だけが分かっているようで、その様子に問題児達は少し不機嫌そうにムッとした。
「オイ白夜叉、俺達にも分かるように説明しろ」
睨みながら言う十六夜に白夜叉は少し肩を竦めながら、再び袖から取り出した扇子をパッと開いてにやけの収まらない口許に当てて──
「──いやなに、北側に着いただけじゃよ」
「「「…………はっ?」」」
問題児達のすっとんきょうな声に、たまらず吹き出した。
◇◆◇◆◇
サウザンドアイズの各支店は特殊なギフトで繋がっているらしく、四人が外に出ると熱い風が一気に吹き抜けてきた。
出た先は崖になっていて、街を一望できる場所だった。
「……──ッ!?」
歩くキャンドルやら輝く
次の瞬間にはユーリは顔色を変えて、《
「えっ、ちょっと、悠莉くん!? 抜け駆けはズル──」
飛鳥が慌てて崖下を覗き込みながら言った、その次の瞬間。
「「──見ぃつけ、たぁああああああああああ!!!!!」」
──
「「「………………」」」
つつつー、と問題児達のこめかみを冷や汗が流れる。
問題児達の十メートルほど後ろの場所に着地した黒ウサギと稲荷は、ゆらりと不気味な動作でゆっくりと顔をあげた。
その顔は白夜叉が頬をひきつらせるほどで、遅れてユーリが逃げた理由も全員が理解して、心が一つになった。
詰まるところ──こいつはやべーや。
「──逃げるぞっ!!」
十六夜にしては慌てた様子で、飛鳥を抱えて崖を飛び降りる。
耀もそれに続いてグリフォンとの友達の証である旋風のギフトを使って飛び上がり──
──ガシッ。
「──後で、たーっぷりお仕置きナノデスヨ」
「──それまでは大人しく待っていてクダサイネ?」
「……い、イエッサー」
頷くしか、なかった。
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