問題児に混じって野生児が来るそうですよ?   作:ささみの照り焼き

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メイドと流星群だそうです?

◇◆◇◆◇

 

 

「「「それじゃあ、これからよろしく──メイドさん」」」

「「……ゑ?」」

 

 黒ウサギ達の昔の仲間──レティシアの石化が解けての、問題児達の開口一番。

 それはレティシアのメイド化発言だった。

 黒ウサギはワーギャーと文句を言い立てが、件のレティシアはまさかのノリノリ。メイド就任が決まり、所有権は十六夜:ユーリ:飛鳥:耀=3:3:2:2、となった。十六夜とユーリは挑戦権を持ってきたからだ。

 

「……もう、勝手にしてください」

「ところで、悠莉の奴は何処に行ったんだ?」

 

 色々諦めて膝をつく黒ウサギを他所に、十六夜が耀と飛鳥に尋ねる。

 耀と飛鳥が答えようとした時、コンコンとノックの音が聞こえた 。

 

「あら、やっと?」

「待ちくたびれた」

「あ?」

 

 怪訝そうにする十六夜を置いて、耀と飛鳥は扉に歩み寄って──開けた。

 

「……お待たせしま、した。……ご主人……様?」

「……ヤハハ、なるほどな」

「………………」

「ほぅ。これはこれは……」

 

 得意気な耀と飛鳥。

 開いた扉からヨロヨロと入ってきた稲荷。

 事情を察して、ニヤニヤと笑みを浮かべる十六夜。

 ポカンと口を開ける黒ウサギ。

 顎に手を当てて、目を細めるレティシア。

 

「……んぅ?」

 

 

 ──そして、メイド服を着たユーリ。

 

 

 混沌とした部屋のなかで、黒ウサギのハリセンとツッコミが元気に響き渡った。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 “ペルセウス”との一戦から三日後。

 ユーリ達“ノーネーム”は、ユーリ達の歓迎会を行っていた。

 本来ならばもう少し早く行われるはずだったのだが……まぁ、あれだけ問題を起こしまくっていたのだからしょうがない。

 

「モグモグモグモグ……」

 

 子供達もはしゃぎ回って賑やかなパーティーが行われる中、やはりというかユーリは色々な食べ物を口に放り込んでいた。その様子はさながら冬眠前のリスだ。

 ちなみにこの食材は、ほぼユーリが取ってきたものだ。働かざる者食うべからず、というわけではないがノーネームの食料はかなり厳しい状態だったので、ユーリがちょくちょくギフトゲームで稼いできたのだ。

 その横では耀が苦笑しながら料理を口に運んでいた。

 

「それでは皆さま、本日のメインイベントです! 箱庭の天幕をご覧ください!」

 

 司会をする黒ウサギの声に、全員が天幕を見上げる。

 そこでは無数の星々が輝いていた。中にはもちろん、ペルセウス座もある。

 ふと、ユーリの視界の端に一筋の光が写った。続けて二つ、三つと流れていくそれは、どんどん数を増していき。

 

 一際大きな光と共に──ペルセウス座が、消えた。

 

「──え?」

 

 耀が呆けた声をあげる。隣のユーリも、ポカンと口を開けていた。

 

「これを起こしたのは──他でもありません、我々の新たな同士がこの流星群のきっかけを作ったのです。 ……箱庭の世界は天動説のように、全てのルールがこの箱庭都市を中心に回っております。先日、同士によって敗北した“ペルセウス”は“サンザントアイズ”から追放され、同時にあの星々からも旗を降ろすことになったのです」

 

 黒ウサギの説明を受けて、耀たちとは離れた場所で十六夜がくくっと笑った。

 それはつまり、あの星たちも箱庭を盛り上げるための舞台装置のようなものだということだ。規模が大きすぎて笑えてくる。

 

「……すごかったね」

「ん」

 

 耀が興奮冷めやらぬ様子で呟き、ユーリがそれに答えた。

 二人ともが食事の手を止めている。

 

「……耀?」

「ん、何?」

 

 ユーリが耀に顔を向けて声をかける。

 耀もユーリを見て。

 

「……これから、も……よろしく」

「……うん、よろしくね」

 

 二人で笑って、飽きるまで空を見上げていた。

 

 流星群は止まることを知らないかのように、ずっと流れていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 


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