問題児に混じって野生児が来るそうですよ?   作:ささみの照り焼き

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契約と戦闘狂だそうですよ?

◇◆◇◆◇

 

 

『ギフトゲーム名 “FAIRYTALE in PERSEUS”

 

  プレイヤー一覧

 

    逆廻 十六夜

 

    久遠 飛鳥

 

    春日部 耀

 

    神無月 悠莉

 

  “ノーネーム”ゲームマスター

 

    ジン・ラッセル

 

  “ペルセウス”ゲームマスター

 

    ルイオス・ペルセウス

 

  クリア条件

 

    ホスト側のゲームマスターを打倒。

 

  敗北条件

 

    プレイヤー側のゲームマスターによる降伏。

 

    プレイヤー側のゲームマスターの失格。

 

    プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなくなった場合。

 

  舞台詳細 ルール

 

    ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。

 

    ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない。

 

    プレイヤー達はゲームマスターを除くホスト側の人間に姿を見られてはいけない。

 

    姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦資格を失う。

 

    失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行することはできる。

 

 

  宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。

 

  “ペルセウス”印』

 

 

 

 

 

 今回のギフトゲームの舞台となる白亜の宮殿の門に、上記の内容が書かれた“契約書類(ギアスロール)”があった。

 要約してしまえば、『敵──コミュニティ“ペルセウス”のリーダー、ルイオス・ペルセウスを暗殺せよ』ということだ。ただし、ノーネーム側のリーダーであるジン・ラッセル以外は見つかっても失格にはなるがゲーム自体は続行でき、しかしルイオスへの挑戦権は失う。

 そこで、三つの役割をそれぞれが補うこととなった。

 一つは囮役。敵の注意を引き付け、本命のプレイヤーが見つかる可能性を下げる役割だ。これは、“水樹”をギフトによって自由自在に操れる飛鳥と、その護衛に稲荷がつくことになった。

 二つ目は本命の護衛と透明化のギフトの入手役。姿を見せてはいけない本命を護衛し、なおかつ見つかる可能性を極限まで下げるためのギフトを敵から奪う役割だ。こちらは、そのギフトを使って敵の位置を把握することの出来る耀と、同じく野生の勘で見破ることの出来るユーリが配役された。

 最後に本命のゲームマスターを打倒する役。上記の二役のアシストを受けて、見つかることなく白亜の宮殿の最奥まで辿り着きルイオスをぶっ飛ばす役割だ。これは、十六夜とジンがつとめることになった。十六夜は言わずもがな、そのギフトから。ジンはゲームマスターとしてだ。

 それぞれの役割を確認し、いざ突撃──しようとしたとき、黒ウサギから待ったかがかかった。

 

「気を付けてください。恐らくルイオスの切り札は──」

「隷属させた、元魔王」

「そう、隷属させた……ゑ?」

 

 当たり前のように言った十六夜に、黒ウサギの顔がキョトンとなる。

 十六夜が言うには、この箱庭の星座が関係しているらしいが、ユーリには何が何やらちんぷんかんぷんだった。

 

「ま、まさか十六夜さん……割りと知能派にございます?」

「何を今さら。手を使わずにドアを開けることだって出来るぜ?」

「……ちなみに、どのような方法かお聞きしても?」

 

 黒ウサギの頬が、ピクピクとひきつり、同じくジンの顔が真っ青に染まっていく。

 そんな二人をスルーして、十六夜が右足を振り上げ──

 

「──さぁ、開幕だ!!」

 

 ドでかい門が、ド派手に吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「行くわよ、稲荷!」

「ハイ、飛鳥さん!」

 

 ポカンと口を開けるルイオスの部下たちを前に、飛び込んできた飛鳥が水樹をギフトカードから出し、稲荷も空中で一回転してポンッと小さく煙を出して人型へと変化した。

 実はこの二人、とある契約を結んでいる。

 それは、主従契約。契約内容は名前の通り、飛鳥が稲荷の主人となる契約だ。

 稲荷は本来、契約主がいて初めて本領が発揮できるのだ。しかしその条件は特殊で、『稲荷のギフトが認めた相手』ということだ。稲荷が認めた、ならば簡単なのだが、ギフトが認めたというのが厄介で、稲荷のギフトに宿る稲荷にも不可侵の意思が判断するのだ。故にこれまで契約主がいなかったのだが、このギフトゲーム前に確認したところ、飛鳥だけが適正を持っていることが分かったのだ。

 というわけで、飛鳥と稲荷はめでたく主従関係と相成ったわけだ。

 

「さぁさぁさぁさぁ!! ()ってらっしゃい()てらっしゃい! 九尾の狐がお見せする、一世一代──ではないですが愉快痛快面白喜劇! 第一幕は地獄の業火の方がマシだと思えるほどに、あっつ熱な狐火の舞踏会です!!」

 

 稲荷がパンッと手を叩くと、稲荷を取り囲むように無数の青白い火が現れる。

 その火は稲荷の興奮したような声を皮切りに、勢いよく飛んでいく。

 

「ぎゃぁあああああ!!!!!」

「あっつぅううううう!!!!!」

「ありがとうございますぅううううう!!!!!」

 

 ……何か変な声が聞こえた気がしたが、気にしないことにして飛鳥は水樹の枝に乗って稲荷を見下ろす。

 

「アハハハハハ!!!!! どうですかどうですか!? 私自慢の狐火に身を焼かれる気分は!?」

 

 そこでは、体を抱くように腕を回して体を快感に震わす、戦闘狂(バトルジャンキー)の姿があった。

 タラリ、と飛鳥の額に汗が流れる。

 

「ま、まぁ、目立つから良しとしましょう」

 

 気をとりなおして、飛鳥は自分にも注目を集めるために名乗りながら、手に持った《白銀の十字魔剣(シルバリオ・クロスソード)》を体の前で振り抜き──

 

「「「ぎゃぁああああああああああ!!??」」」

「…………」

 

 ただ振り抜いただけのはずが、その剣線の先にいた数十名ほどの部下を切り裂きつつ、さらに床に大きな亀裂を生み出した剣の威力に、尋常ではないほどの冷や汗を流しながらギフトカードに剣をしまって。

 

「アハハハハハ!!!!!」

「「「ひぃいいいいい!!??」」」

「……早く終わらないかなぁ」

 

 自分の出番がどんどんなくなっていく様子を見ながら、水樹の枝に腰かけてため息を漏らすのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 





ギフト説明

契約(けいやく)
稲荷が本来の力を発揮するために必要なギフトかつ過程。
飛鳥が契約を結び、契約主となった。
飛鳥強化ギフトその2。


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