問題児に混じって野生児が来るそうですよ? 作:ささみの照り焼き
◇◆◇◆◇
うねる炎。
燃える木々。
悶える一匹の虎。
例えるならば、地獄絵図。
◇◆◇◆◇
久遠 飛鳥は、そばで肩から血を流して座り込んでいる耀を支えながら、ユーリの急変に驚いていた。
「……飛鳥は、ここで……待ってて」
そう、
その姿はさながら太陽のようで、圧倒的な存在感を示していた。さらに髪は炎と一体化して燃え盛り、瞳の中では炎が渦巻いている。
ユーリがこのような姿に一一いや、
ガルドとのギフトゲームが始まり、指定武具で討伐するという条件をクリアするためにガルドのところへ向かっていき、飛鳥が渋るジンにギフトで逃げるように指示し、命令が少し曲解されて伝わった結果に飛鳥も逃げ、ガルドにやられたらしく肩から血を流して帰ってきた耀を見た一一その時だ。
いきなりユーリが立ち上がったかと思えば、しばらく虚空を見つめて一一いきなり炎を纏ったのだ。
「もしかして……ギフトを、作った……?」
ジンが呆然とした様子で呟く。
ユーリの纏う炎からは、神格さえ感じられる。ギフト鑑定の時にそれらしい名前がなかったことを考えると一一《
だが、何故その必要があった? ユーリの話によれば、《適応力》は“生き残るため”のギフト。つまり、今の自分で敵わない敵が出てきた場合のみ一一そうか。
今回のギフトゲームで、ガルドは“恩恵”ではなく“契約”一一つまり指定武具以外に対しては絶対的な防御を持っている。ならば、今ユーリが持つギフトでは傷一つつけられないのだ。それを、適応力が“敵わない”と、そう判断したのなら一一
「あっ、悠莉くん!?」
そう、ジンが考察している間に、ユーリは羽衣のギフトで跳び去っていった。
◇◆◇◆◇
一一生物とは、えてして炎というものを本能的に怖がる習性がある。
故に、古来から寝るときなどは焚き火などをして光源と平行して威嚇をしていた。
一一吸血種とは、えてして太陽というものが弱点である。
故に、この箱庭には直射日光を遮る天井が設けられている。
「Grrrrr……!」
それは、鬼化したガルドも例外ではない。
炎は本能が警戒するし、太陽は契約で身を守られているとはいえ忌避するものだ。
「…………」
本能に従うばかりの虎になったガルドが威嚇する先には一一炎を纏い、その手に十字剣を持つユーリの姿が。
「……《
ユーリがその
ガルドは素早く跳躍して距離をとる一一直後、先ほどまでガルドの居た
これだけの威力をもってしても、契約に守られた身では火傷すら負わない。しかしガルドは、僅かに残っていた理性より本能が示した行動を選択していた。
「一一燃やせ」
ユーリの口から下される、短い命令。
しかし、太陽の炎はその命令を遂行しようとうねり、燃やしていく。
ガルドは必死に逃げる一一が。
「Ga一一Gaaaaaaaa!?」
遂に避けきれなかった炎が足に絡み付き体中にまとわりつく。
だが、契約で守られた身には火傷さえない。
「Gaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
しかし、ガルドはのたうち回って炎を消そうとする。
本能は、傷つかないと分かっている一一そして、この炎に恐怖している。
なぜなら、その炎は触れたものを溶かし尽くす太陽の炎だから。その炎が契約に守られていない自分に触れれば、途端に四肢を、命を溶かし尽くす炎だから。
「…………」
のたうち回るガルドに、ユーリは表情を変えずに歩み寄る。
ユーリは怒っているのだ。
ガルドが自分の仲間に一一耀に、傷をつけたことに。
そして、飛鳥を追って、という耀の言葉に従い、耀を残してきた自分にも。
「……これで一一」
ユーリは十字剣を振り上げる。
《
「一一終わり」
その斬撃は、大地ごとガルドを切り裂いた。
◇◆◇◆◇
ギフト詳細
《
太陽の神格を宿したギフト。
その炎は全てを燃やし尽くし、跡形も残さない。
発動すると、炎髪炎眼になる。
《適応力》が対ガルド用に作り出した、謂わば“適応ギフト”。
神格を宿しているのは、ギフトを作ること自体が修羅神仏の領域なので、必然的に適応ギフトのほとんどには神格が宿っている。
※ 《超回復》は自己治癒能力を、《昇華》は物を上手く使うことを、それぞれ進化させた形になるので、神格は宿っていない。