問題児に混じって野生児が来るそうですよ?   作:ささみの照り焼き

12 / 29
千の目と新たな獲物とギフトネームだそうですよ? (後編)

◇◆◇◆◇

 

 ユーリの猛攻は、始まりが唐突ならば終わりも唐突だった。

 

「一一うにぃ」

「一一は?」

 

 気の抜けたような声を漏らして、ユーリが地面に伏せた。

 黒く染まっていた髪と瞳も元に戻り、体中を這っていた雷もおさまっている。

 一同、呆然である。

 

「…………」ぐぅ~~~~~~……きゅう

「……エネルギー切れか?」

 

 十六夜の呟きに、ユーリの腹の虫が再び唸りを上げた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

「……納得がいかんの」

「ヤハハ、元魔王様も押されてたな」

「うるさいわ」

 

 結局、決闘はユーリの戦闘不能(エネルギー切れ)で、白夜叉の勝利となった。

 が、白夜叉は納得がいかないのか、憮然とした表情だ。十六夜に茶化されて、拗ねた子供のようだ、と稲荷は思ったが口には出さない。

 その原因の張本人は、未だエネルギー切れでぶっ倒れていた。

 

「……まぁよい。黒ウサギ、今回の目的は鑑定じゃったよな?」

「あ、はい。皆さんに自分のお力についてより知ってもらおうと思いまして」

「ふむ……正直鑑定は苦手なのじゃが。いやおんしらは運が良い。ちょうど良いものがある」

 

 そう言うと、白夜叉は手を二回叩いた。

 ポンッ、と、十六夜、飛鳥、耀、ユーリの手元に一枚のカードが現れる。

 

「ギフトカード!」

「お中元?」

「お歳暮?」

「お年玉?」

「……食べれる?」

「息ピッタリですね皆さん!?」

『あっ、ちょっ、食べちゃダメですってばユーリさん!! それ結構便利な物なんですよ!?』

 

 稲荷に止められて、ユーリは渋々カードを口から離した。

 黒ウサギによると、耀のギフト一一“生命の目録(ゲノムツリー)”や、十六夜が手に入れた水樹も収納可能な、超素敵アイテムらしい。

 正直、ユーリはそんなものより食べ物がほしいのだが、稲荷がペシリと尻尾で叩いてきたために飲み込んだ。

 渋々、ギフトカードを見る。

 ギフトカードの色は白銀で、ユーリには読めない文字で何かが書かれていた。

 

「…………?」

「一一へぇ、じゃあ俺のはレアケースなわけだ」

「こ、これは……ありえん、全知全能のラプラスの紙片がエラーを起こすなど……」

 

 ユーリが首をかしげている間にも、話は進んでいく。十六夜の持つコバルトブルーのギフトカードには、“正体不明(コード・アンノウン)”とでたらしい。

 飛鳥や耀にも聞いてみたところ、飛鳥はワインレッドのカードに“威光”、耀はパールエメラルドのカードに“生命の目録(ゲノムツリー)”と“ノーフォーマー”とでたらしい。

 

「で? 悠莉くんはなんていうギフトなの?」

「うん。気になる」

「……稲荷……よろ」

『あ、やっぱり読めないんですね』

 

 半ば予想していた稲荷は、ユーリから白銀のギフトカードを受け取った。

 そして器用に前足で持ちながら読もうとして一一

 

『えぇと、うわ、四つもありますよ!』

 

 おー、と、本当にすごいと思っているのかどうか分からない声で反応するユーリ。

 飛鳥と耀も、関心したような表情になった。

 

『えー、“昇華(サブリメーション)”“適応力(アダフト・アビリティ)”“超回復(リカバリー)”一一“災禍(ディザスター)”!?』

「なに!?」

 

 稲荷がギフトネームを叫んだ瞬間、白夜叉が一瞬で稲荷のもとまで移動してギフトカードを奪い取る。

 そしてギフトネームを確認し、ユーリの胸ぐらに掴みかかった。

 

「貴様一一このギフトを何処で手に入れた……!?」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。