魔法少女リリカルなのは~カレイドの魔法…少年?~ 作:朱羽総長
「ランサー、ゲットっと」
地上へ降りてカードを回収する。
これで五枚。あと十倍以上もあると考えると気が遠くなる。
「今回は案外楽でしたね」
「いや、どこがだよ。ヘトヘトだよ」
「初回からリミッター外す覚悟してきたのですが」
「えっ、リミッターとかあるの?」
「はい。ですがあまり使いたくないので、死んでも良いって覚悟が決まったら言って下さい」
「何が起こるんだよ…」
話しながら置いてきた女の子の所へ向かう。
「あっ、結界が」
「英霊が消滅しましたから当然かと」
灰色の空が徐々に崩れていく。
急いで、放心状態の女の子を抱き上げ近くの公園に降り、転身を解く。
「えっと、大丈夫?」
「……」
コクンと頷いてくる。
よく見ると膝を怪我している。
「うわ、大丈夫?」
「だいじょうぶだから、おろして」
女の子を抱き上げたままだったので地面に座らせるように降ろす。
彼女は立ち上がろうとするけど、立てないらしい。
怪我が痛いのだろう。
「痛いでしょ」
「いたく、ない…もん」
涙目で言われても…。
仕方ない。
「ごめんね」
「えっ?…うわっ」
女の子を背負う。僕の方が多少高いからと、エメラルドが身体強化してくれてるからこそ出来る。
入口近くの蛇口まで運び、一度降ろして、ポッケから大きめのハンカチを取り出す。
水で濡らし、怪我してる箇所に巻く。
「これで大丈夫な筈。痛かったでしょ」
「いたくなかった…の」
強情だなぁ。まぁ、子供ってそんなものかな。
「…は、いい子だから」
「…いい子ねぇ」
最初のほうは聞こえなかったがどうやらいい子でいたいらしい。
詳しく聞くと、父親が大怪我で入院。
そのせいで母親と姉は仕事で、兄は修行で忙しくなってしまったと。
だから迷惑掛けないようにわがままも困らせることも言わないいい子でいようとしているらしい。
「馬鹿だなぁ…」
「グスッ、ばかじゃないもん」
「ほら泣かない、泣かない。でもさぁ、一つ言わせてもらうけど」
「うん」
「遠慮しすぎ」
「ふぇ?」
可愛らしい反応が返ってきたがスルー。
「えっと、我慢しすぎってこと。僕達みたいな年の子供はもっと甘えていいんだよ」
「けど、」
「けども、なにもない!そのせいで独りきりなんてことを知ったらお母さん、悲しむよ?いいの?」
「やだ!…だけどおにいちゃんもおねえちゃんもいっしょにあそべないし、おともだちもいないし」
だんだん声が小さくなっていく。
「ならなろう」
「えっ?」
「僕が友達になる。そうすれば君は独りじゃない」
目の前の少女を抱きしめる。
ふぇ、という可愛らしい声がまた聞こえたが続ける。
「だから我慢の時間はおしまい。よく頑張ったね。これからは一人じゃないよ。僕もいる。ううん、僕がいる。辛くなったら呼んで。嬉しいことを誰かに話したいときも呼んで。君の友達が必ず行くから」
「…ほんと?」
「ほんと」
「…うん!」
その後はその子を背負い、家まで運んだ。途中、色々な話をした。
最近見た綺麗な鳥や、面白い雲の型。
そんな一見したらしょうもないこと、だけど彼女からしたらそんなことでも誰かに話せるのが嬉しいらしい。
僕も精神が肉体に引っ張られるのか、そういったものにも興味が湧いてきていたから退屈はしなかった。
勿論、さっきまでのことは内緒にしといてもらうことにしたけど。
「ここ?」
「うん」
喫茶店「翠屋」。確か姉さんが美味しいと言ってた店だったような。
「じゃあここで」
「…ねぇ」
彼女をドアの前に立たせて帰ろうとすると、呼び止められた。
「名前…。」
「名乗って無かったね。碧崎悠斗だよ。悠斗でいいよ」
「ゆうとくん…。わたしはたかまちなのは!なのはでいいよ」
電話番号を書いた紙(いつの間にかエメラルドが用意)を渡し、別れを告げて家に向かう。
「なのはちゃんね。…うん?なのは?高…町」
もしかして…。
「はい。主人公です」
「あの子が!?」
確かに見覚えあったけど。
「まぁ、だからといって問題ないしいっか」
(いいんですか…)
「わかりました。それと帰ったら色々報告と質問しましょう」
「誰に?」
「あなたが言う神さんにです」
「で、どうやって?」
帰宅し、一息ついてからエメラルドに問いかける。
「こうやってです」
ガションと、音をたてながらアンテナと二つのカメラが生える。
いつの間にか六芒星が形そのままでマイクみたいになってた。
「なんか見たことが…」
「私自身、把握仕切れていないフォームチェンジの一つ、テレビ通信形態です」
そうだった。これは何でもありだった。
「通信開始します」
カメラの一つが壁を向き、ノイズを映す。
しばらくして、神さんの姿が現れた。
『お久しぶりです。元気そうですね』
「どうも。一応元気です」
五年ぶりの再開。喜びは…特にないな、うん。
『それで?用件は?』
特典、その他について質問したいことがあることを伝える。
『わかりました。一つずつ解消していきましょうか』
1 クラスカード
「多すぎないですか?」
『まぁ、気にしない方向で。サービスだと思って』
「サービスって」
50枚以上はいくらなんでも…。
『でも、その世界を生き抜くならあっても困らないとは思いますけど』
「そんな厳しい世界でしたっけ?」
『…あぁ、そうでした。無印しか知らないんでしたね?その内わかりますよ』
「分かりたくないなぁ」
2 訓練場
『流石に段ボールには入らなかったけど、送りました』
「どこにですか?」
『地下』
「地下!?」
家に地下なんてあっただろうか。
『まぁ、探してみてください』
3 黒化英霊
「カードが色々な所に散って、黒化英霊してるようなんですけど」
『見てましたよ。ランサーの一枚目確保おめでとうございます』
「ありがとうございます。…じゃなくて」
『だってそのほうが訓練になるかなぁって』
その気持ちは有り難いけど少し迷惑だ、なんていえない。
『あっ、でも基本一般人には害ないですよ』
「基本!?」
4 エメラルド
そういや、リミッターとか言ってたので聞いてみた。
『リミッターつけてますよ。ちゃんと』
「何故に?」
『本来カレイドステッキは二本で一つ。けど二本もないためエメラルドは、一本で二本分の力を持ってます。まぁ、使うには覚悟要りますが…』
「…何起こるの?一体」
覚悟って…。
5
「使えないのは何故でしょうか」
『こっちでロックしてます☆』
「ちょっ、待ってください!潰れます、潰れます!」
おっといけない。思わずエメラルドを握り潰してしまうところだった。
『まぁ、理由としてはチート過ぎってとこですね』
「あー、なるほど」
確かに初っ端から使えたら強すぎかな。
『教えませんけど、ある条件を達成したら使えるので』
『後は何かありますか?』
「無いです」
聞きたいことは多分ない。…うん、多分。
『こっちから伝えたいことがあるのですが』
「何ですか?」
『ポイント残ってるんですけど…どうします?』
残ったのか。まぁ、使い道わからないからなぁ。よし。
「じゃあ、必要な時に連絡するのでその時まで保留で」
『わかりました。それでは』
映像が途切れる。
一気に疲れが襲ってきた。
一息ついた程度じゃ疲れはとれないようだ。当たり前か。
「寝てくる。姉さん帰ってきたらおこ…「ただいまー」…して」
どうやら休めるのはかなり先なようだ。
後半の神さんとの会話は、簡単な設定です。
これからもちょくちょくあんな感じで増えるかもしれません。