魔法少女リリカルなのは~カレイドの魔法…少年?~   作:朱羽総長

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今回オリジナル魔術が出てきます。
ご注意ください。




黒き騎士王

 

 

 エメラルドがジュエルシードを感知したのは、午前零時頃のことだった。

 

「行こう」

「カードのほうはいいんですか?」

「そっちも気になるけど、罠にかかれば分かるし、それよりもなのはとフェイトが心配だから」

 

 カードを選んでも持って行く。

 カード全てを持ち歩くことは出来ない。転身後のカードケース、それに入る限界は7枚。

 そして、今持ってるのは12枚。

 セイバー戦の作戦通りに7枚選ぶ。

 

「じゃあ、行くよ」

「はい」

 

 素早く転身して発動場所へ移動した。

 

 

 

「で、どういう状況?」

 

 向かった先は旅館の近く、罠を仕掛けた林から少し離れた場所だった。

 

「この!外れろ!」

 

 全速力で移動してすぐ目に映ったのはユーノと、彼に殴りかかるオレンジの髪で犬?の耳を生やした女性だった。

 思わず拘束してしまった。 

 

「助かったよ悠斗。えっと…」

 

 簡単に纏めると、

 なのはとユーノ駆けつける。

 フェイトとこの女性と遭遇。

 ジュエルシードをどっちが取るかで戦闘開始。

 なのはに襲いかかった女性をユーノが自分ごとここへ転移。

 

「じゃあ、なのは達はまだ戦ってるんだね」

「うん。場所は」

「あ、大丈夫そう。今東の空に桃色の光が見えたから」

 

 罠地帯のすぐ上だな。

 

「悠斗っていうのかい?アンタ」

「そうだけど、フェイトの……お姉さん?」

 

 未だに拘束中の女性が話しかけてきた。フェイトと一緒に居たってことは彼女の関係者なのだろう。

 

「フェイトがアンタのことばっかり話すからね」

「内容が気になるけど、悪い気はしないな」

 

 友達だと思ってくれてるなら、いいけど。

 あっ、一応敵対関係だった。

 

「ここに来たのもフェイトがアンタを…」

「僕を?」

「い、いや、なんでもないよ」

 

 ?変なの。

 まぁ、今は二人のところに行こう。

 この女性、アルフさんとはユーノを襲わず、お互いの相棒同士の戦いが終わるまでここで傍観してもらうことを約束して離れた。

 約束を破るような人じゃなかったし心配無いだろう。

 念のためユーノに護身用の宝石(魔力流すと中の術式が作動)を渡しておいたけど。

 

 

 

 

 

 振り下ろされる黄色の魔力刃を紙一重で交わして、魔力弾を数発撃って牽制する。

 当たりはしなかったけど、距離は稼げたのでその間にいくつかの魔力弾を周囲にホールドさせ、レイジングハートの先端をしっかりと相手に向けて構える。

 

(速い。砲撃は当たらないよね。魔力弾が掠りもしないんだから)

 

 それに比べてこっちは、既に三回もくらってしまってる。

 

(なんとか隙を狙って…)

 

 

(厄介…)

 

 私は視線の先の白い服装の少女を見ながら思う。

 得意の接近戦に持ち込もうとすると、魔力弾と障壁が。

 かといって中距離からの魔力弾は、あっちのほうが操作が上手いから全て落とされる。

 砲撃は出来ないこともないが、足を止めれば周囲の魔力弾に撃ち抜かれる。

 

(やっぱりここは、速い魔力弾を撃った後に一気に接近して斬る)

 

 最悪タックルでもいいや、などと考えて実行に移すタイミングを探す。

 

 

 

 私は杖を、彼女は鎌をしっかりと持ち膠着状態になる。

 

「…!?」

 

 突然、別の方向に身体ごと視線を向けた。

 チャンス!

 

「行って!」

 

 周囲の全ての魔力弾を操り、彼女を攻撃する。

 

「しまっ…!?」

 

 小規模の爆発が連続して起こる。

 

「やった!?」

 

 この時の私は、知らなかった。

 この言葉がフラグだとは。

 

『後方注意!』

「えっ」

 

 レイジングハートの警告とともに、後ろを振り向く。

 そこには金髪の少女が、鎌を振り上げていた。

 

『サイズスラッシュ』

 

 障壁を張るよりも速く、浅くだが切り裂かれる。

 とっさに杖を槍代わりに突き出す。

 あっさりと避けられ、再び斬り掛かられる。

 けど、その刃は突然張られた翡翠色の障壁によって防がれた。

 

「はい。ストップ、ストップ」

 

 近くに悠斗くんがやってきていた。

 

「いつ来たの!?」

「ん?少し前だよ。フェイトは気づいてたみたいだけどね」

「うん」

 

 彼女の名前がフェイトっていうんだー、とかよりも私には驚くべきことがあった。

 

(この子、あんな状況で悠斗くんに気づいてたの!?)

 

 お互いに隙を探しあってた中で、私よりも速く見つけていた、戦闘よりもそっちを優先したことに驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

 

「邪魔したのは悪いと思ってるけど、ここは危ないから別の場所でやってくれないかな」

 

 フェイトとなのはの戦いに介入して、下の罠に関して注意する。

 もし落ちたら危ないからね。

 

「わかったの」

「うん」

 

 二人とも分かってくれたようだ。

 

「そういえばジュエルシードは?」

「あそこらへんに…!」

「!」

 

 なのはが指差して教えようとしてくれた瞬間張られていた結界が上書きされた。

 

「反応あり!西の方角、300メートルです」

 

 現れたらしい。罠地帯の少し前だ。

 

「二人とも、今からこの原因をどうにかして来るからそれまで一時休戦、ってことで」

「悠斗くん!」

 

 なのはは、何するか分かったらしい。

 止めようと、手を伸ばしてくる。

 けど今は構ってられない。もうすぐ罠地帯へ入る。

 その場を急いで離れて、目標へ向かう

 

「悠斗様!後ろ!」

「へ?って、撃ってきた!?」

 

 何としてでも行かせないつもりか、魔力弾を撃ってきた。

 心配性だなぁ。

 同じように魔力弾で相殺して、おまけになのはと(一応)フェイトの両手両足を拘束しておく。

 

 

 カードを一枚構えて、一本の木のてっぺんに立つ。

 視線の先、そこには黒い鎧の騎士がいた。

 目はバイザーで隠され、鎧の所々には赤い、血のようなラインが見られる。

 何よりも一番目を引くのは左手に握られてる剣だ。

 禍々しい黒。けれども、どこか聖なる気配を放ってる。

 クラス、セイバー。

 最優のサーヴァント。

 

「よし、やろっか」

 

 エメラルドを一振り。

 すると、下で幾つかの爆発が起こった。

 罠その1。

 設置系遠隔起動型トラップ『爆発(エクスプロージョン)』。

 魔力を送ることで起爆するトラップ。

 威力は微妙なとこだが、足止めと目くらましには役立つ。

 

限定展(インクル)…!」

 

 カードの展開を中断し、上空へ跳ぶ。

 さっきまで居たところを黒い斬撃が通り過ぎていった。

 爆発によって起きた土煙の中から、黒い霧に包まれたセイバーが現れた。

 

「やっぱり意味なさそうだね」

 

 セイバーの周囲の霧。それは高密度な魔力の霧。

 その前では魔力砲は意味をなさず、剣に纏わせて斬撃として放つことも可能。

 もっとも、先程の爆発程度では霧を使う必要もなく、くらってもノーダメージだったみたいだけど。

 

「さて、どうしよう?」

 

 爆発(エクスプロージョン)はまだある。他の2つは自動だからその内起動するだろう。

 効果があるかは不明だが。

 

速射(シュート)

 

 速い魔力弾を撃つ。

 霧に阻まれて届かない。

 

速射、速射、速射、速射(シュート、シュート、シュート、シュート)

 

 連射しながら、ゆっくりと着地する。

 そのまま、距離を取りながら打ち続ける。

 すると防御しながらただ立ってただけのセイバーは、剣を振り上げる。

 攻撃を防いでる正面、その反対側である背中側の霧が剣に纏われる。

 速射を辞め、魔力砲に切り換える。

 剣は振り下ろされ、黒い斬撃が放たれた。

 それは、魔力砲を裂きながら進み僕へ迫る。

 回避が間に合わないと判断し、足元の爆発(エクスプロージョン)を起動。爆風を利用して横へ跳ぶことで回避。

 ダメージは、ほとんどない。

 あらかじめ物理防御に魔力をまわしていたからだ。

 これは、連続では出来ない。仕掛けてある場所に降りていたからこそ出来たこと。

 さて、他の罠が怖いしここは…。

 

限定展開(インクルード)、ランサー」

 

 白兵戦で挑む。

 ヴラドの槍を手に、地面スレスレを浮くイメージで飛行する。

 近接戦闘では、霧は意味をなさない。

 

「はぁぁぁぁ!」

「……………」

 

 突き、払い、斬り掛かる。

 全てを受け流され、反撃の刃が振るわれる。

 一撃一撃が重い斬撃を強化することでなんとか防ぎきる。

 

「くっ!?」

 

 反撃の暇を与えない程の連撃。

 かわし、防ぎながらゆっくりと下がる。

 距離を置かせないとばかりに、敵は詰めてくる。

 すると、セイバーの足元が緑の光を放ち始めた。

 

(よし!成功!)

 

 光の中から茨が現れ、セイバーの脚から上に登るように巻きつきはじめる。

 

 設置系自動捕縛型トラップ『茨姫』。

 対象に茨を巻きつけ動けなくさせるトラップ。耐久性はイマイチ。

 

 セイバーは、剣で茨を切り裂いた。

 足止めにすらならない。

 けど、このトラップの特徴は他にある。

 周囲の地面から緑の光と共に、茨が襲いかかり、身体を締め付ける。

 

 これの最大の特徴は、起動と同時に半径500メートル内の同じトラップも起動し、一つの対象目掛けて進むこと。

 

 茨を斬るよりも早く、脚に、腕に、胴に顔に巻きついていく。

 そして、遂に全身を包んだ。

 

 

 

 

 

 

「んー、レイジングハートどう?」

『もう少しお待ち下さい』

 

 レイジングハートに悠斗くんが仕掛けた拘束をどうにか出来ないか考えてもらう。

 やろうと思えば魔力弾ぶつけて壊せそうだけど、威力を抑えるのはまだ苦手だからやめておこう。

 目の前には、同じ状態のフェイトちゃんが。

 

「バルディッシュ、どう?」

 

 同じこと考えていたようだ。

 それに、返答が乏しくなかったのか落ち込んでる。

 …どうせお互いに暇なら。

 

「えっと、フェイトちゃん…でいいのかな?」

 

 顔を上げてこっちを見る。

 

「私は高町なのは。こっちはレイジングハート」

 

 名前、教えてくれないかな?と、目で訴えてみると

 

「…フェイト・テスタロッサ。この子はバルディッシュ」

 

 そう言って答えてくれた。

 

「じゃあフェイトちゃん…でいいかな?」

 

 首を縦に振ってくれた。

 

「じゃあフェイトちゃんは、この拘束が取れたらジュエルシード取りに行ってくれるかな」

「勿論そのつもりだけど。あなたは?」

「なのはでいいよ。私は悠斗くんが心配だから、そっちに行かないと。前みたいなのはやだし」

 

 ユーノくんにゴメンねと、心で謝っておく。後でちゃんと言うけど。

 

「前?なにかあったの?」

「…うん。悠斗くんは、なんていうんだろ?変なカードを集めてて、前に片腕血まみれの大怪我してたの」

 

 あの時の自分は、何の力も無かった。

 たまたま母親に言われて買い物に行った帰り道で、そんな状態の悠斗くんに会った。

 本人はすぐ治ると言ってたし、実際次の日の学校の時にはほとんど塞がってた。

 でも、怪我してほしくない。そう思った。力になりたいとも。

 だから、魔力の使い方を教えて欲しいと頼んだ。

 さっきの魔力弾はやりすぎたかなぁ、と反省してるが。

 

「あっ!」

 

 魔力の使い方で思い出した。

 右手に魔力を集めて、

 

「えいっ!」

 

 思いっきり振る。

 パキンと、小気味いい音を響かせながら砕けた。

 その調子で腕と足を解放する。

 

「やった!フェイトちゃんは…」

 

 フェイトちゃんのほうを見ると、黄色い魔力が体の周囲を渦巻いていた。

 目をつむって集中している。

 魔力は体の表面をゆっくりと覆っていき、目を見開いたと同時に一気に全ての拘束を破壊した。

 

「こう…かな?」

 

 私のを見てやったようだが、強化ではなかったような…。

 悠斗くんならわかるかな?

 

「じゃあ、私は悠斗くんのとこに」

「私も行く」

「えっ」

 

 フェイトちゃんがこっちから目をそらしながら、顔を赤らめ

 

「悠斗は、その、なんていうか、」

(そうだ、この子フラグ建ってたー!?)

 

「じゃ、じゃあ行こう」

 

 そのことに関しては、また後ででもいいと判断して悠斗くんの行ったほうへ行こうとすると、

 

「行くなら速く行こう。今、優勢みたいだけど」

「…わかるの?」

「うん、サーt…じゃなくてなんとなく」

 

 なにか言いかけたけど、気にしちゃ駄目だと、そんな気がしたから流しておこう。

 そして行こうとした私達は、大きな魔力を感じ、そちらへ顔を向けた。

 

 迫る黒い光の奔流。

 

 それが私達の最後に見た光景だった。

 

 

 

 

 




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