これほど見ていただけるとは書いていた当初は考えられませんでした!
本当にありがとうございます!これからもがんばります!
追記:ランキング6位に入ったのが嬉しすぎて歓喜の踊りを踊っていたら親に変人を見るような目で見られた…orz
今私の腕の中では咲夜さんが紅茶を飲んでいる。
ここ最近は異変を起こすための準備に追われ、咲夜さんと触れる機会が減っていたのでこういう雰囲気が心地いい。
先程、突然入ってきた咲夜さんにあの巫女との弾幕ごっこでついてしまった傷を見られてしまった。
咲夜さんは昔から紅魔館の住人に何かがあると、それを敏感に察知して、見つけ出してしまう。
私にとってこんな傷は能力を使えばすぐに治ってしまう程度のものだ。
事実、咲夜さんが来るまではこの程度の傷では治療すらしたことがなかった。
そして思い出す。咲夜さんに初めて出会った日のことを。
あの日は、お嬢様がそわそわしていて、紅茶をいつもより多く飲んでいた。
そして何か決意したような顔になると、掃除をしていた私に外へ散歩に行くように命令した。
不思議に思ったが、お嬢様の命令であれば仕方がない。
私は掃除用具を片付け、近くの森へと足を向けた。(結界は張られているものの、これはどちらかと言えば紅魔館へ入らないようにするための措置であり、私達も幻想郷の主要な場所へ行かないことを条件として外に出るのは容認されていた)
もう太陽は沈み、綺麗な満月が顔を覗かしている。
月明かりに照らされた申し訳程度の獣道を進むと、開けたところに出た。
――そこには、銀髪の美しい少女がいた。
その少女は満月を見上げていた。
私は引き寄せられるように彼女に近づく。ある程度近付くと、彼女は私に気が付いたらしく、私の方へ顔を向ける。
変わらず私は近づくが、少女はその場から動かずに私のことをじっと見つめている。
手を伸ばせば届く距離まで近づいても、私から目を離さなかった。
無言で私は彼女に手を伸ばす。何を求めていたのかは分からない。
だけど、そうするべきなのだと思ったのだ。
少女は私の手をしばらく見つめていたが、やがて手を握ってくれた。
私は少女の手を引いて紅魔館へ戻る。
その間会話はなかったけれど、不思議と嫌な空気はなかった。
屋敷へ戻ると、玄関ホールでお嬢様が待ち構えていて、少女の姿を見ると満足そうに笑った。
「その子を風呂に入れて着替えさせたら、私の部屋に連れてきなさい」
そう命令すると、お嬢様は部屋に戻って行ってしまった。
私は少女を浴槽へ連れて行き、彼女の体を洗った。(その間、何やら胸に視線を感じたが…たぶん気のせいだろう)
この位の年齢の少女なら――たぶん5歳程度――笑顔を浮かべてはしゃぐくらいはしそうだが、彼女は無表情でただされるがままに私に体を洗われていた。
風呂から上がると、メイド服を着せてお嬢様の部屋へと連れて行く。(この館に子供服などあろうはずもないので、妖精メイドの服を拝借した)
お嬢様の部屋に着くと、少女だけ部屋の中に入り、私は廊下で待たされた。
30分ほど廊下で待っていると、少女が出てきた。
「いざよいさくやです。これからここでおせわになります。よろしくおねがいします」
無表情のまま、舌足らずな声で彼女は私に挨拶した。
私は笑顔で彼女を抱きしめたのを覚えている。
その後、私は咲夜の教育係を任せられ、メイドとしての仕事を彼女に教えていった。
彼女は優秀で、1年後には私よりも仕事ができるようになっていた。
咲夜が来て2年後には私の仕事はメイドではなく、門番としての仕事が増えていた。
結界の効果は人間や理性を持つ妖怪などがこの屋敷に入れないようにするものであり、木端妖怪は屋敷の主を狙って侵入しようとしてくる。
その妖怪たちを撃退するのが私の仕事だった。
ある日、数で押してくる妖怪たちに不覚を取ってしまい、傷を負ってしまった。
能力を使えばすぐに治るだろう、と放置していたら、咲夜が夕飯を持って私の部屋に入ってきた。
彼女は私の傷を見ると、いつもの冷静さが嘘のように取り乱し、傷を治療しようとしてきた。
大丈夫だと笑って言っても彼女は聞き入れず、治療して包帯を巻いた。
「あなたが大丈夫だと思っても、見てる私が心配なの!いいから治療を受けなさい!」
泣きながらそう言った彼女を見て、私はひどく驚いた。
彼女は何をするにも無表情で、その鉄面皮が崩れた姿を見たことがなかったからだ。
その後泣き疲れた彼女と共に寝て、起きた彼女に謝ったのだった。
それ以来、私は怪我をすればきちんと治療をするようになった。
咲夜の泣き顔をまた見たくはなかったからだ。
そして今、心配性な彼女は私の腕の中で今度はクッキーを食べている。
その姿が昔の彼女と重なって、思わず頭を撫でてしまう。
「何?美鈴。子ども扱いはしないでって言ってるでしょ?」
不機嫌そうに聞こえるが、これは彼女なりの照れ隠しだと知っている。
だから私は身をよじってこちらを向こうとする彼女を強く抱きしめた。
この心地いい空間は、彼女が苦しいと私に文句を言うまで続いた。
え?なんだかいつもより文章量が多いって?
それはね、作者の一番好きなキャラが美鈴だからだよ。
美鈴は俺の嫁。