転生者・十六夜咲夜は静かに暮らしたい。   作:村雨 晶

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どうも、永夜抄編が書けないからって思いついた新しい小説を書いている作者です。
そんなんだから書けないというのに…。作者ってほんとバカ…。

今回も咲夜さん視点。

途中で何を書きたかったんだかわからない謎回になりました。


霊夢へのお礼です…

「ええと、博麗神社はこっち、よね?」

 

霊夢が書いてくれた地図読みにくい……。

せめて縮尺位きちんと書いてくれればいいのに。

 

異変解決から二週間たった。

私は今博麗神社に向かって飛行中。

なんで博麗神社に向かっているのかというと、霊夢へのお礼のためだ。

 

実は萃香が紅魔館を散々引っ掻き回して帰った翌日、果物の詰め合わせを持って霊夢がお見舞いに来てくれたのだ。(果物の詰め合わせは仕事が忙しくて来れない妖夢が買ったらしい)

 

その時に異変の顛末やその後の処置などを聞かせてもらったおかげで異変の全容を把握することができた。(萃香や魔理沙にも聞いたのだが、主観が入りすぎていて部分的なことしか分からなかったのだ)

ちなみに話をしている間、霊夢が私特性のワインを五本開け、見舞いの品であるはずの果物のほとんどを食べてしまったことは霊夢との秘密だ。(さすがに悪いと思ったのか、果物は半分に切って食べさせてくれたのだが)

そのお礼も兼ねて博麗神社に遊びに行くことにしたわけだ。

 

しかしまさか紅魔館の皆が、私が出かけることに猛反対したことには驚いたなあ。

もうあんなことは滅多にないって言ってもなかなか納得してくれなかった。

パチュリー様がレミリア様と美鈴を説得してくれなかったらどうなっていたことやら。

パチュリー様には個人的に後でお礼をしないと。

クッキーかな、いや、材料もそろってきたし、マカロンなんかもいいかな。

私はパチュリー様のお礼に何を作るか考えながら博麗神社を目指すのだった。

 

 

 

 

 

やがて博麗神社の鳥居が見えてきて、そこへ近づくと、境内には見覚えのある姿があった。

 

「あや?咲夜さんじゃないですか、奇遇ですねえ。あなたも博麗の巫女に用事が?」

 

「ええ、まあね。文は取材?」

 

「はい!今回は鬼が出てきましたからね、スクープの予感がしたのですよ!」

 

境内にいたのは異変の時に妖怪の山で会った射命丸文だった。

文はカメラを構えてやる気をみなぎらせている。

 

「ふうん、鬼に積極的に関わろうなんて、珍しい天狗もいたもんだ」

 

突然私達の前に現れたのは萃香。

どうやら疎の状態で話を聞いていたらしい。

文は萃香の姿を見ると、カメラを構えて近づいた。

 

「お久しぶりです、伊吹様!唐突で申し訳ありませんが、取材を受けて下さらないでしょうか!」

 

「おやおや、怖いもの知らずな天狗だね。私が怖くないのかい?」

 

「怖いものに近付けなくてネタを見逃すようじゃブン屋としての名が泣きます!」

 

「へえ、なかなか見どころのあるやつだ。天狗でマシなやつなんて天魔位なもんだと思ってたけど、気に入った。取材とやらを受けてやろうじゃないか」

 

酒でも飲んで話そう、と文を引っ張っていく萃香。

すると、萃香の後ろに霊夢が現れた。

スパン、と霊夢は萃香の頭をお祓い棒で叩くと、呆れたように息を吐き出した。

 

「昼間から酒を飲むなって言ったでしょうが。神社がお酒臭くなったらどうするのよ。……あら、咲夜じゃない。どうしたの?」

 

萃香を叱っていた霊夢が私を見つけて問いかけてくる。

完全に尻に敷かれてるなあ、萃香。

 

「お見舞いのお礼に来たの。よかったらこれ、食べて頂戴」

 

そう言って霊夢に渡したのは手作りのクッキーと途中で寄った人里で買ってきた日本酒。

 

「あら、ありがとう。どこぞの魔法使いと違って気が利くわね。ところで、その荷物は?」

 

霊夢はクッキーと日本酒を受け取ると、私が持っている袋に目をやる。

ふふ、よくぞ気付いてくれました。

 

「これは今日の夕飯の材料よ」

 

「そんなもの、帰りに買っていけばいいじゃない」

 

「何言ってるの、これは貴方の夕飯の材料よ?」

 

「……まさか、ここで夕飯を作っていくつもり?」

 

「ついでにお酒のおつまみもね。日本酒とクッキーは合わないでしょう?」

 

台所借りるわね、と私はこの前の宴会で使った厨房を目指して歩く。

すると霊夢が慌てた様子で引き留めてきた。

 

「え、いやさすがにそれは悪いわよ、居間で大人しくしてなさい」

 

「いいのよ、魔理沙から聞いたのだけど、ここ最近まともな物を食べてないって聞いたわよ?それが本当かどうか確かめなくちゃね」

 

霊夢の場合、食料がなくてもギリギリまで我慢するタイプだと思うから食糧事情を把握しておかないと。

あまりにひどいようなら紫をあのテープを使って脅して食料供給させるか、定期的に確認しないと危ない気がする。

 

私は台所に着くと、食料を確認する。

野菜はぼちぼち、米は切れてて、調味料はギリギリ残ってる、それ以外は特になし。

って、思った以上に備蓄が少ないな。米ぐらいはたくさんあると思ったのだけど。

 

「私は大丈夫だから、縁側で萃香たちと話してなさいってば。病み上がりなんでしょう?」

 

「完治したから問題ないわ。霊夢、博麗神社ってお米が無くなるくらい貧乏なの?」

 

「ここ最近は妖怪退治の依頼も減ってね、収入がないのよ。人里からは定期的に野菜が納められるけど、米は買いに行かないと……」

 

うーん、意外に世知辛いのね、幻想郷。

よし、ここは腕によりをかけて作りますか!

 

「じゃあ霊夢はあっちで萃香達とくつろいでてちょうだい。文の分も作るから帰らないように言っておいてね」

 

「いや、さすがに手伝うわよ?」

 

「いいから休んでなさい、これもお礼の一つなんだから」

 

レミリア様から霊夢や魔理沙、妖夢は私のために奔走してくれたらしいし、きちんとお礼をしないとね!

 

しぶしぶといった様子で縁側に向かう霊夢を見送って、私は料理に取り掛かるのだった。

 

 

 

 

 

「料理、できたわよ」

 

「おっ、待ってました!」

 

「あやや、おいしそうですねえ。椛の料理もおいしいですが、こちらもなかなか……」

 

「久しぶりに白米を見たわ……」

 

声をかけると、すぐによってくる三人。

さあ、たーんとお食べー。

 

「「「「いただきます」」」」

 

うむ、みんな行儀がよくてよろしい。

萃香はがつがつと豪快に、文は意外にも上品に、霊夢は未だに複雑そうな顔で食べている。

 

「おっ、これうまいね。なんて料理だい?」

 

「ハンバーグよ。洋食だからなじみがないのかしら」

 

「こっちの肉じゃがもおいしいですよ。咲夜さん、調理方法教えてください!椛に作ってもらいます!」

 

「ええ、いいわよ。あとでレシピを渡すわね」

 

「このお味噌汁美味しいわね。出汁がきいてるわ」

 

「気に入ってもらえたようで何よりよ、霊夢」

 

やがて米櫃一杯にあったご飯も綺麗に消え、私は日本酒を出すために台所へ戻る。

居間に戻ると、萃香が待ちきれなさそうに体を揺らしていた。

 

「おお、なかなか上手そうな酒だね。さっそく……」

 

「おつまみがあるからちょっと待ってちょうだい」

 

私は台所からあらかじめ焼いておいたスルメと茹でた枝豆を持ってくる。

 

「おお、いいねえ。こっちも上手そうだ!」

 

「これはお酒がすすみそうですね、さっそく飲みましょう!」

 

はしゃぎまくっているお酒好き組を見て苦笑していると、霊夢が近づいてきた。

 

「今日はありがとうね、咲夜。色々助かったわ」

 

「霊夢には困ったときに助けてもらってるし、お互い様よ。こういう風におせっかいを焼くのも好きだし」

 

「あら、世話好きの自覚はあるみたいね」

 

縁側で騒いでいる萃香と文を見ながら笑う霊夢。

綺麗だなあ。ずーっと見続けても飽きないんじゃなかろうか。

私が霊夢に見惚れていると、ふと霊夢がこっちに近づいてくる。

えあっ!?顔近い……!さすがにこれは照れるって!!

 

「ふふっ、顔が赤いわよ、咲夜?」

 

「からかわないでくれる?霊夢」

 

霊夢がクスクスと笑ったところでからかわれていたと分かり、肩から力が抜ける。

まったく心臓に悪い。

 

「お二人とも!そんなところにいないで一緒に飲みましょう!」

 

突然文が私達の手を掴んで萃香の場所まで連れて行く。

 

「おっ、来たかい!じゃあ飲み比べと行こうじゃないか!」

 

「いいわね。受けて立つわよ、萃香」

 

「咲夜さん、私の新聞とってくれませんか?損はありませんよ?」

 

「じゃあ一部頂こうかしら。これからよろしくね」

 

「ありがとうございます!これからも文々。新聞をお願いしますね!」

 

そこからは完全に酒盛り状態になってお酒に弱い私は萃香の誘いを断るのに苦労するのだった。

 


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