転生者・十六夜咲夜は静かに暮らしたい。   作:村雨 晶

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どうも、友人(女)のフランちゃんコスプレのレベルが高くて戦慄した作者です。

今回はフランちゃん視点。
キリのいいところで切ったので次の話もフランちゃん視点です。


ユルサナイ…!!(フラン視点)

 

――妖怪の山 上空

 

――博麗霊夢達が到着する十数分前

 

 

――禁忌「クランベリートラップ」

 

私が放ったスぺカが弾ける。

お姉様やパチュリー、美鈴に咲夜、霊夢に魔理沙。

私が弾幕ごっこをしたことがあるのはこの六人とだけ。

だけど皆が私のスぺカの弱点や改良点を教えてくれたおかげで作り上げた当初よりも威力や避けにくさが上がっている。

あの咲夜や魔理沙が私のスぺカ一枚にスぺカを使うほどに私のスぺカは強くなっていた。

 

だけど、目の前の天狗は何でもない事のように回避する。

 

「スペルカードブレイク……。強いのね、貴方」

 

「基礎能力では貴様ら吸血鬼には劣るが、速さで我ら天狗に勝てる者はいない。そしてお前の弾幕は少々正直すぎるのだ。どこに来るのかが手に取るように分かるわ」

 

経験の差。それが彼と私の差だ。

私は地下で生のほとんどを過ごした。でもきっと彼は戦いの中に身を置いてきた。

 

「お前の攻撃には実ばかりで虚がない。そんな馬鹿正直な攻撃ではどれだけ強力でも当たりはせんわ。そして見せてやろう」

 

天狗の手に一枚のカード。きっとあれが彼のスペルカード…!

 

「これが本物の攻撃というものだ」

 

――旋風「気紛れな旋風」(せんぷう・きまぐれなつむじかぜ)

 

天狗から一つの竜巻が発生し、私へと迫ってくる。

だけどその速度は遅く、簡単に避けられるものだった。

 

(あの竜巻を避けてから突っ込んでスぺカで――)

 

「――弾けろ」

 

次の行動を考えていた私の思考は突然分裂した竜巻の群れを見て霧散した。

全方位から襲い掛かる竜巻は一つだった時とは比べ物にならないほどに速く、ほぼ反射的に攻撃のために用意していたスぺカを防御のために発動した。

 

――禁忌「レーヴァテイン」

 

顕現した炎剣で私に殺到する竜巻群を薙ぎ払う。が、私の視界にあの天狗の姿はなかった。

 

(え!?一体どこに……、!上!?)

 

「ほう、気が付いたか。だがもう遅い」

 

――「神風特攻」

 

天狗が上空から風を纏って突っ込んでくる。

弾幕で止めようとするけど纏っている風に弾かれて効果がない。

ならばと私はラストスペルを発動した。

 

――禁忌「禁じられた遊び」

 

十字架型の弾幕が天狗に襲いかかる。

私のスぺカは確実に天狗の風の鎧を剥いでいき、やがて私達はすれ違った。

 

「……私の負けか」

 

そう言って天狗は血がにじんでいる肩を抑える。

私のスぺカは天狗の風の鎧を全て剥ぎとり、一撃を入れることに成功していた。

 

「ううん、引き分けだよ。私も一撃貰っちゃったもの」

 

しかし、私のスぺカが天狗に当たった瞬間、天狗に残っていた微量の風が私の頬を斬り裂いていた。

私は頬の傷に触れるが、それはもうすでに治っていた。

 

「さて引き分けとなるとどうしたものか……。私にも職務があるしな……。……ん?」

 

私達を通そうかどうか悩んでいる天狗に一羽の烏が近づいてきた。

天狗はその烏を肩に乗せ、何やら話し込み始める。

 

「そうか、分かった。お前はこのことを哨戒中の天狗にも伝えてくれ」

 

話し終わったのか、天狗は烏を飛ばして、私達の方に向き合う。

 

「通っていいぞ。ここで何をやるにも好きにしろ」

 

「いいの?」

 

「たった今大天狗様から命が下った。「十六夜咲夜なる人物を探している者達に関しては手出し無用」とな。つまり我々天狗は捜索に協力しないが妨害もせんということだ。ではな、私は新しい仕事ができたのでな、ここで失礼する」

 

そうして天狗は風を巻き起こして姿を消した。

少しして美鈴が私に近づいてくる。

 

「どういうことでしょう?縄張り意識の高い天狗が捜索を許すなんて」

 

「分かんない。でも咲夜を探すのは今しかないよ、行こう、美鈴!」

 

私は美鈴の手を引っ張って目的の妖力を追っていった。

 

 

 

 

妖力を追っていくと、やがて一つの洞窟に辿り着いた。

 

「微弱ですが、咲夜さんの気が感じ取れます。ここで間違いないでしょう」

 

「じゃあすぐに入ろう!」

 

「ちょっと待ってください……。はい、他に誰もいないようです、入りましょう」

 

美鈴の声を聞いて私は洞窟に飛び込んだ。

しかし、そこで私が見たものは信じたくないものだった。

 

――地面には恐らく咲夜のものであろう血がぶちまけられ

――岩に寄りかかりながらも死んだように目を閉じた咲夜の姿

 

「咲夜!?咲夜、どうしたの、ねえ!」

 

半狂乱になりつつも私は咲夜に縋り付く。

いつもならここで目を開けて優しく頭を撫でてくれる。だから今回もきっと――

そんな思いに反して咲夜は目を開けない。

 

「どうしよう、美鈴!咲夜が、咲夜があ!!」

 

私は咲夜の姿を見て慌てて駆け寄ってきた美鈴に顔を向ける。

美鈴は咲夜の体に触れて体調を探っていた。

 

「……霊力がほとんどない。それに内臓もいくつか傷ついていますね。右手は完全に折れてます。でも、まだ生きてます。大丈夫、致命傷ではないですよ、フラン様」

 

体力の低下で眠っているだけです、という美鈴の言葉を聞いてひとまず安心する私。

でもやっぱり目を覚ましてほしい。そうすれば心の底から安心できるから。

 

そんな時、洞窟の入り口に誰かが立っているのに気が付いた。

 

「おいおい、これは何の騒ぎだい?」

 

この妖力には覚えがある。あの戦いの場所に残っていた妖力だ。

つまり、この目の前の妖怪が咲夜を攫い、こんな目に合わせた張本人――。

 

そこまで思考して私は本能的にその妖怪に飛びかかった。

 

(許さない。許さない許さない許さない許さないユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ――――――――コロシテヤル!!!!!!!!!!!!!!!!)

 

私は生まれて初めて湧き上がる破壊衝動に身を委ねたのだった。

 


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