今回は霊夢視点。
そろそろ萃夢想編も終わりが見えてきました。
最後まで読んでいただけたら幸いです。
――博麗神社
「最初から見てたんでしょう、紫?出てきなさい」
私が虚空に声を飛ばしてみるが、反応なし。だけど私の勘は紫が見てると感じているのでさらに話しかける。
「出てこないつもり?……そう、なら私にも考えがあるわ。実はこの前霖之助さんに「てえぷろこおだあ」っていう道具をもらってね。声をその中に保存できるらしいわ。それで、あんたのだらけてる時の声を前に保存したのよね。これ、あんたの式神の藍だっけ?その藍の式神の橙っていう式神にこれを聞かせたらあの子、あんたのことどう思うかしら――「ごきげんよう、霊夢。さっそくだけどテープレコーダーを渡してくれるかしら?」……」
脅したらやっと出てきた。こうでもしないと出てこないのだから困ったものだ。
「それなら紅魔館に置いてきたわ。ついでにレミリアに面白いものが聞けるって伝えて、使い方を教えてきたわよ」
そう言った瞬間、スキマから出て落ち込んだ格好をする紫。
うざったいからよそでやってくれないかしら」
「声に出てるわよ霊夢。……妖怪の賢者としての威厳が……」
「そんなもの幻想郷にも無いわ。そんなことより紫、今人里で起こっている異変の首謀者と咲夜を誘拐した奴についてあんた何か知ってるんじゃない?」
「私の威厳がそんなことって……。まあいいわ、ええ、知っているわよ。どちらも同じ人物が起こしたことで、彼女は私の友人でもあるわ」
「誰?言いなさい、さもないと……」
「言うわ、言うからそのお札をしまってちょうだい。……今回の事件の犯人は伊吹萃香。地底に潜った鬼達の一人よ」
「地底に潜った鬼が何だって地上で異変を起こして咲夜を攫うのよ」
「萃香は鬼の中でも変わり者でね、よく地上に出てくるのよ。異変を起こしたのは、まあお酒が飲みたかったんじゃない?十六夜咲夜は分からないけど」
「今伊吹萃香はどこにいるの?」
「そうねえ。昔の根城だった妖怪の山にいるんじゃないかしら。細かくは分からないけどね」
「そこまで分かれば充分よ。……それにしても随分あっさり吐いたわね?」
私が疑わしい目で紫を見ると、紫はいつもの胡散臭い笑顔で答えた。
「まあ今回は事が大きくなり過ぎたし。それを静めるためにもあなたの介入が必要だと思っただけよ。まさか十六夜咲夜が萃香に攫われるとは思わなかったけど」
「ふーん、まあいいわ。何か企んでるようだったらその時とっちめればいいし」
「あら、私が常日頃から何かしら企んでるみたいな言い方は心外ねえ」
「だったらその胡散臭い笑みをやめなさい。そうすれば少しは信じてあげるわ」
「つれないわねえ。じゃあ私は少し用事があるからこれで失礼するわね」
そう言って紫はスキマを作って瞬時に姿を消してしまった。
私は紅魔館の魔女からもらった魔石を通して魔理沙につなげた。
『聞こえる?魔理沙。咲夜の居場所が分かったわ』
『霊夢か!私達もちょうど今回の事件の犯人が分かったところだぜ!聞いて驚くなよ、犯人はなあ、なんと――』
『鬼の伊吹萃香でしょ?さっき紫から聞いたわ。……ん?達?魔理沙、貴方今誰かといるの?』
『なんだ、知ってたのか。じゃあ阿求の家の本をひっくり返したのは骨折り損か、ついてないぜ。じつはさっき妖夢と会ってな、手伝ってくれるとさ』
『そう、咲夜がいる場所は妖怪の山よ、すぐに向かってちょうだい。なんだか嫌な予感がするのよね』
『そうか、じゃあ急がないとな、妖夢!行先が決まった、早く行くぞ!あ、阿求、片付けは任せた!』
そんな魔理沙の声ときっと阿求のものであろう怒鳴り声を最後に通信は途切れた。
魔理沙の奴、阿求の家が出入り禁止になっても知らないわよ?
でも本当に嫌な予感がするわ。咲夜に何か起こってそう。……急いだ方がいいわね。
私は踵を返して妖怪の山へと飛んで行った。
♢
やがて妖怪の山に辿り着き、さてどこから探そうかと考えていると、後ろから声が聞こえた。
「霊夢!」
呼ばれて振り返ると、手を振っている魔理沙と頭を下げている妖夢を見つけた。
妖夢の顔が若干青いのはきっと魔理沙の箒に一緒に乗ってきたためだろう。
「確かに咲夜はここにいるんだな?」
「ええ、紫に聞いたから間違いないわ。細かい場所は分からないからしらみつぶしに当たるしかな――
ドッゴオオオオオオオン!!!!!!!!!!!
私の言葉の途中で少し離れた場所で爆発が起こった。
それは凄まじい威力で、空中で爆発したにもかかわらず、爆発した場所のの真下付近の森が消し飛んでいるのが確認できた。
「どうやら探す手間は省けたようね、行くわよ」
「え、お、おう!」
「はい!」
私達は爆発が起こった場所に急行する。
攫われた咲夜が無事であることを祈りながら。