転生者・十六夜咲夜は静かに暮らしたい。   作:村雨 晶

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昨日左手を怪我した作者です。
作者は右利きなのであまり問題はないのですが、キーボードが打ちにくいです。

今回は妖夢視点。

あ、あと萃夢想買ってきました。


彼女との差(妖夢視点)

 

 

 

「西行妖の封印を解きましょう」

 

 

きっかけは幽々子様のその一言だった。

なんでも、西行妖の下に埋まっている誰かを見てみたいのだとか。

私としては逆らう理由もないので、西行妖の封印を解くために幻想郷中から春を集め始めた。

 

何か月も春を収集しつづけたことで西行妖は四分の三ほどの枝に桜の花を咲かせた。

これが満開となれば、西行妖の封印が解け、幽々子様の願いもかなえられる。

そう思いながら、西行妖を見上げていると、冥界の近くで戦いの気配がした。

 

 

「幽々子様、どうやら冥界に侵入しようとする者がいるようです。侵入者を排除してまいります」

 

 

「そうなの?気を付けてね、妖夢」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幽々子様に見送られ、階段を下りていくと、3人の人影が見えた。

1人は紅白の巫女服を着た女。1人は白黒の魔女のような格好をした女。1人はメイド服の上に防寒具のようなものをきた女。

この中でも特に強いと感じたのが、巫女服を着た女だ。

彼女はおそらく、博麗の巫女だろう。

彼女が幽々子様のもとに行ってしまえば、どうなるか分からない。

私は刀を抜いて、侵入者たちに声をかけた。

 

 

「侵入者か。これ以上先には進ませない!そしてあなたたちが持っている春ももらっていきます!」

 

 

刀を抜いた私を見て、巫女と魔女が臨戦態勢を取ろうとするが、メイドがそれを手で制した。

そして2人に先に行くよう促したのだ。

 

 

(まずい…。博麗の巫女に通られては困る。実力では幽々子様が遅れをとることはないだろうが、今は異変解決にはスペルカードルールを使わなければならない。弾幕ごっこでは幽々子様が負ける可能性もある)

 

 

私は2人(特に博麗の巫女)を通さないために弾幕を撃とうとしたが、メイドにナイフを投げられて攻撃を中断してしまった。

その間に2人の姿は見えなくなってしまう。

私は邪魔をしてきたメイドを思わず睨みつけた。

 

 

「何のつもりですか?あなた一人で私を倒せるとでも?」

 

 

「さあ、それは分からないわ。あなたと私は同程度の実力みたいだし。でも、あの二人は私よりも強い。なら、あなたより強いであろうこの異変の元凶のもとに無傷で向かわせるのが最善と判断したまでよ」

 

 

挑発を織り交ぜながら問い詰めると、メイドは薄く笑いながら答えていく。

私と同程度の実力と言っておきながら負けるとは微塵も思っていないことがその笑みから読み取れた。

 

 

「そうですか…。ですが、私があなたを倒し、彼女たちに追いつけば問題はない」

 

 

「そうかしら?私と戦えば少なからずあなたは消耗する。そうすれば一瞬で霊夢あたりにやられるだけよ?それに…」

 

 

言外にお前など障害にもならないと言って挑発するが、そんな言葉にも余裕を崩さずに言い返し、挑発的に笑う。

 

 

「私は昔から時間稼ぎが得意なのよ…。なにせ、時間を止めてでも時間稼ぎができるもの」

 

 

ここまで聞いて私は一つ溜息をついた。

どうやら彼女は私が何を言っても2人を追わせるつもりはないらしい。

 

 

「今は一刻も早くあなたを倒し、二人を追いかけるのが最優先。構えなさい、侵入者」

 

 

「十六夜咲夜、よ。紅魔館でメイドをやってるわ。よかったら今度遊びに来て頂戴」

 

 

早く戦闘を終わらせるために闘いを促すと、彼女は律儀に名乗ってきた。

だが、名乗りに続いた言葉に調子を崩されてしまう。

これから戦う相手を自分の家に招くものが普通いるだろうか?

 

 

「あなたと話していると調子が狂います…。魂魄妖夢です。この先の白玉楼の庭師を務めています。では…いざ!」

 

 

此方も名乗り返して、楼観剣の切っ先を彼女に向けると彼女もナイフを構える。

 

 

「妖怪が鍛えたこの楼観剣に斬れぬものなど、あんまり無い!」

 

 

「あなたの時間も私のもの…あなたは時間を斬れるかしら、庭師さん?」

 

 

そして、戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先手を取ったのは彼女の方だった。

弾幕を撃とうとする私に対して彼女は高速で突っ込んできたのだ。

不意を突かれた私は彼女に自分の間合いの内側に入ることを許してしまい、そのまま鍔迫り合いとなる。

力任せに押し返すと、彼女は後ろに飛ぶことで衝撃を緩和するが、直後に再び突っ込んでくる。

 

私は楼観剣を振るうことで間合いに入らせないようにするが、彼女は予想以上の速さで動いてくるため、こちらの最善の間合いよりも少し詰めてくる。

そのためこちらは刀を上手く振るえないが、あちらもナイフを上手く振るえないようだ。

 

白楼剣も振るってもう少し距離をとりたいのだが、彼女の周りに浮いている球体が妨害してくるために白楼剣を抜くことができない。

 

硬直状態のまま斬りあっていると、白玉楼から力がぶつかり合う気配を感じた。

ぶつかり合っている力の一つは慣れ親しんだ幽々子様の力だ。

あの2人が白玉楼に到着し、勝負を仕掛けたのだろう。

 

 

「どうやら上でも戦いが始まったみたいね」

 

 

「そうみたいですね。あなたとの戦いを早く終わらせなければならないということでもありますが」

 

 

そう、もうほとんど猶予はない。

ゆえに、私はスぺカを発動した。

 

 

――獄炎剣「業風閃影陣」

 

 

私は半霊から精製した弾幕を彼女に向かってばらまく。

彼女はそれを簡単に避けていくが、私は追撃のために斬撃を飛ばした。

 

私の斬撃はその場に一定時間残るため、相手の逃げ場を制限することができる。

目論見通り、彼女の逃げ場は段々と狭まり、もう少しすれば彼女を落とすことができるだろう。

 

そして、彼女は動きを止め、此方を見据えた。

私は勝利を確信し、弾幕を撃とうとしたその瞬間、急激な重圧を感じて墜落した。

 

 

(な、何が…?)

 

 

彼女がやったのかと視線を向けるが、彼女もまた私と同じように苦しんでいる。

そしてこの重圧の気配の正体を思い出した。

 

 

(西行妖、か…!?)

 

 

しかし、幽々子様は西行妖の封印が解けてもこのような事態になるとは言っていなかった。

あえて私に言わなかったのか、それとも幽々子様も知らなかったのか。

重圧をはねのけようとするが、出来なかった。

幽々子様をお守りしなければならないというのに、何をしているんだ私は…!

 

何とか視線を上げると、いつの間にか十六夜咲夜が立ち上がり、階段へと向かっていた。

やはり今までの彼女は本気ではなかったのだろう。

私は無様に地に伏して、彼女はしっかりと立っていることから彼女との実力差を痛感した。

 

彼女は私に一瞬だけ視線を向けたが、すぐに白玉楼へと向かっていってしまった。

 

私はただ彼女の背中を見送ることしかできないのだった。

 


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