もう一日一話更新は無理かなあ。
今回はアリス回。
でもアリスより上海の方が目立っているように見える不思議。
あ、pixivには上げないことにしました。
感想をくださった方々、ありがとうございます。
橙に教えてもらった出口を通って無事マヨヒガから出ることができた。
ここはどうやら魔法の森の近くみたいだ。
冥界へ行くには魔法の森の上を突っ切るのが最短ルートだろう。
そして私が魔法の森上空を飛んでいると、鳥が群がっているのが見えた。
何かと思って見てみると、そこにいたのは一体の人形だった。
――流れるような金色の髪
――純粋な光を宿す綺麗な蒼の瞳
――その可憐な姿によく合っている流麗な一本の槍(ランス)
(なんだか変な解説が流れた気がするが)上海人形だ。
周りを見てみるが、主人のアリスの姿は見えない。単独行動中なのだろうか?
上海はランスを振り回して鳥たちを追い払おうとしているが、鳥はこらえた様子もなく、上海をくちばしで突いている。
なんだか可哀想なので、ナイフを数本鳥たちの目の前に投げることで追い払う。
すると、上海が私の方へ近づいてきた。
「シャンハーイ!」
「ええ、どういたしまして」
お辞儀をしていることからたぶん、礼を言っているんだろうと思う。
言葉を返すと、上海はふよふよと浮かび、私の頭の上に乗っかった。
「シャンハーイ、シャンハイ、シャンハーイ!」
うん、なんて言ってるのか全く分からない。
嬉しそうな声色からして懐かれてるのは分かるんだけど。
とにかく、アリスを探して上海を渡さなくては。
さすがにこのまま冥界に行くわけにもいかないし。
上海が私のヘッドドレスを弄っているのを感じながらそんなことを考えていると、声をかけられた。
「上海、こんなところにいたのね。探したわよ」
鈴が転がるような声、という表現があるが、その表現がぴったり合う声だった。
声が聞こえた途端、上海は私の頭を離れ、声の方へ向かう。
そちらに目を向けると、人形のように美しい少女がいた。
彼女がアリス・マーガトロイドだろう。
「あなたがその人形の主人かしら?」
「ええ、そうよ。私はアリス・マーガトロイド。上海を保護してくれてありがとう」
「いいわよ、そんなこと。ところでその人形、貴方が動かしてるの?」
「ええ、といっても、命令が無くても半自立型で動くようにしてあるのだけどね」
そういえば、アリスは完全自立型の人形を作ることが目標なんだっけ。
でも、完全自立型って、それもう魂が人形の中に入ってるよね。
どうやって魂を定着させるんだろう。付喪神みたいに長年使い続けるとか?
「ところで、今私は魔法の研究で春を集めているの。上海にもそれの手伝いをさせていたのだけれど…。あなたの春を譲ってくれないかしら?」
私が人形のことについて考えていると、アリスがそんなことを言ってくる。
春?春ってゲームで出てきたあの春度のことだよね。
でも、私そんなの集めた覚えがないけど。
「何のことかわからないわね。私はそんなもの持ってないわよ?」
「とぼけないでちょうだい。あなたのそばにあるその球体に大量の春を感じるわ」
え…?まさか私が妖精やら毛玉やらを倒して手に入れた春度、全部マジカル☆さくやちゃんスターに入ってるの…?
本当に高性能すぎるでしょ、マジカル☆さくやちゃんスター…。
「まあいいわ、渡さないというなら奪い取るまでよ。私としては上海を助けてくれたあなたと戦いたくはないのだけど」
私がマジカル☆さくやちゃんスターの性能に驚いていると、いつの間にか臨戦態勢をとっているアリスがいました。
あれ?やばくね?
――紅符「紅毛の和蘭人形」
紅毛の人形たちが即時に展開し、四方から弾幕を放ってくる。
少しずつ動きながらこちらを狙い撃つ様はまさしくファンネルのようだった。
私は避けながらも弾幕を撃ってくる人形をナイフで撃ち落とす。
そうすることで弾幕が薄くなった場所からグレイズしつつ脱出する。
…うう、人形と分かってはいるんだけど、あんな可愛い人形にナイフを刺すのはやっぱり罪悪感が…。
そこで時間切れとなったのか、一瞬アリスからの攻撃が途絶える。
そこで、私はスぺカを発動する。
――幻符「殺人ドール」
ナイフの群れがアリスを襲うが、彼女は盾を持たせた人形たちにそれを防がせる。
それにしてもあの人形たち、どこから出てきたんだろう。最初は上海しかいなかったのに。
咒詛「魔彩光の上海人形」
考え事をしていると、上海によく似た、というか同じ種類の人形が出現し、弾幕を撃ってくる。
先程と比べて弾幕が厚く、避けきるのは難しい。
というか本当に弾幕が厚いなあ、私のナイフが人形にまで届かないんだけど。
――時符「プライベートスクウェア」
スぺカを発動すると、弾幕が人形ごと停止する。
人形が停止したことでアリスが無防備になったので、そこにナイフを投擲した。
アリスは避けようとするが、マジカル☆さくやちゃんスターからの弾幕に当たった。
なんだかマジカル☆さくやちゃんスターが高性能すぎて私の見せ場が無くなってるような気がする。
「負けちゃったわ。ごめんなさいね、不意打ちみたいなことをして」
「シャンハーイ…」
勝負が終わってほっとしていた私に謝ってくるアリス。
一緒にいる上海も謝っているのか、それとも落ち込んでいるのか、どこか元気がない。
そんな二人(一人と一体?)に私はマジカル☆さくやちゃんスターから出した少量の春度を差し出す。
「これは…?」
「別に春を渡さないとは言ってないわ。これだけの量があれば研究に十分かしら?」
元々私は春を集めていなかったしね。
これらは襲ってくる妖精や毛玉を倒したら手に入れたものだから特に思い入れもない。
「ええ、充分よ、ありがとう。行くわよ、上海」
「シャンハーイ!」
アリスたちは私に背を向けて帰ろうとする。
私も冥界に向かおうとすると、声をかけられた。
「機会があったら私の家に遊びに来て。一緒にお茶がしたいわ。あそこに赤い屋根の家が見えるかしら?私はあそこに住んでいるのよ」
「ええ、喜んで」
やった、アリスの家に遊びに行ける口実ができた!
これは絶対に行かなくちゃね!
私は内心歓喜しつつもアリスに返事をする。
改めて冥界に向かうため、そちらの方へと飛んでいく。
後ろを振り向くと、背を向けているアリスと手を振っている上海が目に入った。
私は上海の可愛さに癒されつつ、手を振りかえすのだった。