転生者・十六夜咲夜は静かに暮らしたい。   作:村雨 晶

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更新しようとしたら大学のレポートとパソコンの不調により出来なかった作者です。

妖々夢編導入話。
咲夜さん以外の視点を一つはさんで原作に行きます。

追記:操虫棍面白いです


春なのに寒いです…

 

 

 

「…寒い」

 

 

只今絶賛雪かき中。

紅魔館の屋根の上に登り、スコップを使って雪を下に落とす。

そんな単純作業を始めてもう数時間。

いい加減寒さと疲れで休みたくなってきた。

 

 

「よーし、次はこっちから行くよー!」

 

 

下からの声に視線を向けるとフラン様と数人の妖精メイドが雪合戦で遊んでいた。

雪玉を投げ合って遊ぶ様子は一見すると癒される風景に思える。

しかし、フラン様が投げた雪玉が顔面に当たった妖精メイドが、頭を吹き飛ばされてピチュっている姿を見ると、爆撃を受けている哀れな兵士たちにしか見えなくなってくる。

手加減を知らないからなあ、フラン様は…。

 

最近フラン様は地下室から出て外に出る機会が多くなっている。

喜ばしいことだ。地下室にこもりっきりなんて不健康にも程があるし。

まあ、ここ最近太陽が姿を見せていないことも要因の一つだろう。

 

時季的にはもう春一番が吹いて様々な草木が芽吹く頃だというのに幻想郷では未だに雪が降り、真冬のような寒さが続いている。

 

きっとこれが春雪異変なのだろう。

もうそろそろ霊夢か魔理沙あたりが異変解決に乗り出すかもしれない。

 

妖精メイドを全員ピチュらせて手持無沙汰になったらしいフラン様が屋根の上の私に気づいて手を振ってくる。

私はそんな姿に癒されつつも手を振りかえすと、後ろからメイド妖精に話しかけられた。

 

 

「メイド長、レミリア様がお呼びです」

 

 

「分かった、すぐ行くわ」

 

 

簡単に返事をして私はレミリア様の部屋へと向かう。

扉を開けるとそこにはレミリア様以外にパチュリー様がいた。

 

 

「お呼びでしょうか、お嬢様」

 

 

「ええ、咲夜、この長すぎる冬をどう思う?」

 

 

「まず間違いなく異変かと。犯人が誰かは分かりませんが」

 

 

「そうね、これは異変よ。そこで咲夜、あなたにこの異変の解決を命じるわ」

 

 

何だって?私が?確かに原作では自機として動いていたけど、ここにいるのは十六夜咲夜(笑)ですよ?

 

 

「失礼ながらお嬢様、私が動く理由は?異変解決ならば霊夢と魔理沙に任せればよいのでは?」

 

 

「理由がなければそれでもよかったのだけれど、ね。フランに春を見せたいのよ。フランはいつも地下室に閉じこもっていたでしょう?だから春というものをその眼で見たことがないの。でも最近フランは自分から外に出るようになった。今までは誰が何を言っても出てこなかったのにね。太陽が出てこない今の季節は快適だけど、フランに色々な体験をしてほしいのよ」

 

 

…なるほど。それなら確かに納得できる理由だ。

いつもカリスマが半端ない状態なので忘れがちだがレミリア様は家族思いな方なのだ。

 

 

「かしこまりました。それでは異変を解決して参ります。準備をしてきますので失礼します」

 

 

「待ちなさい、咲夜」

 

 

フラン様のために意気込んで準備をしようとした私を止めたのは今まで黙っていたパチュリー様だった。

パチュリー様は私に近付くと二つの球体を私に差し出した。

 

 

「これを持っていきなさい」

 

 

こ…、これは…まさか…!?

 

ま、マジカル☆さくやちゃんスターなのか…!?

 

 

「これは私が作ったマジックアイテムなの。霊力を込めると弾幕を周囲に張ってくれるわ。スペルカードルールにはピッタリでしょう?」

 

 

あの巫女の陰陽玉を見て思いついたのよ、と説明してくれるパチュリー様。

 

ええ、ピッタリだし、とても助かるんだけど、この魔法少女チックな外見はどうにかならなかったのだろうか。ぶっちゃけ、これを持ち歩くのはすごく恥ずかしいのだが。

だけど、パチュリー様がせっかく作ってくれたものだし、便利なのは確かだ。

厚意に甘えておくことにしよう。

 

 

「ありがとうございます、パチュリー様。ありがたく使わせていただきます」

 

 

私は懐にマジカル☆さくやちゃんスターをしまうと、準備を整えるために部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

装備を整えて門から出ると、ちょうど門番をしていた美鈴と会う。

美鈴は私を見ると、嬉しそうに話しかけてきた。

 

 

「お出かけですか?咲夜さん」

 

 

「ええ、お嬢様の命で異変を解決しにね。その間館は任せたわよ」

 

 

「任せてください!あ、そうだ」

 

 

美鈴は首に巻いていたマフラーを外すと、それを私の首へと巻きつけた。

 

 

「寒いですからね、付けていってください」

 

 

「…分かった、ありがたく借りていくわね。ありがとう、美鈴」

 

 

「いえいえ、異変解決頑張ってくださいね!」

 

 

美鈴の応援を背に私は空を飛ぶ。目的地は冥界だ。

 

美鈴のマフラーが私の体と心を温かく包み込んでくれるような気がして私は笑みをこぼすのだった。

 


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