EX編の導入話のifで、もしフランちゃんが本当に暴れていたら、という話です。
ボツにした理由はほのぼののはずなのに血生臭くなったから。
レミリア様が起こした紅霧異変から数日後。
私はせっせと館の修繕に精を出していた。
ここ最近手に握っているのは掃除用具ではなく、大工用具だということから館の被害がどれだけ酷いか分かるだろう。
美鈴が庭園の修理を買って出てくれなかったらもしかしたら過労で倒れていたかもしれない。
今日も今日とて穴の開いた壁や床、時には天井を修繕し、その上に違和感がないように紅のペンキを塗っていく。(ペンキが乾くのは一瞬だ。こういう時、時間を早められる能力でよかったと心から思う)
紅魔館は数日の修繕で館の8割ほどが荒れていたのが、今は2割ほどに回復している。
私と霊夢が戦っていたホールの修理を終えた私は紅茶を飲むことで一息ついていた。
そしてふと外を見ると、先程まで快晴だったというのに、いつのまにか大雨が降っていた。
洗濯物、午前中に取り込んでいてよかった、なんて安堵していると、妖精メイドが慌てた様子で私の方へ走ってきた。
「どうしたの、そんなに慌てて」
「そ、それが、フランドール様が暴れ始めて…」
「本当?分かったわ、ありがとう」
むう、最近狂気が鳴りを潜めていたから気が緩んでたかもしれない。
外の雨はきっとパチュリー様がフラン様を外に出さないために降らせたものだろう。
早く行ってフラン様を静めなくては…。
主に私の仕事が増えないようにするために!
私は時間を止めて、大慌てでフラン様のもとへと向かうのだった。
フラン様は図書館でパチュリー様と戦っていた。
今日はパチュリー様の喘息が治まっているらしく、普段は使えない強力な魔法をフラン様に放っている。
しかし、その魔法もフラン様が手に持っている歪な剣のような、杖のようなもの――「レーヴァテイン」の圧倒的な火力で薙ぎ払われる。
とりあえず、戦っている場所が図書館で良かった。
ここには、パチュリー様が張った結界があり、よほどのことがなければ傷一つつかないからだ。…修繕場所が増えなくてよかった。
ともかく、今はフラン様を止めなくてはいけない。
今回はスペルカードルールを無視しても構わない戦いなので、遠慮なくやらせてもらうとしよう。
「時よ、止まれ」
能力を発動させ、時間を止める。
止まった攻撃の間を通り、フラン様に接近する。
フラン様の目の前に来ると、私は彼女の両手を銀のナイフで串刺しにし、能力を上手く使えなくさせる。
次に練習用の木製ナイフで頭を串刺しにした。(銀のナイフじゃないのは、吸血鬼の弱点である銀で急所を攻撃したら即死してしまうからだ)
「そして、時は動き出す」
時間が動き始めると、フラン様は突然与えられたダメージに耐え切れず、気絶した。
落下する前にフラン様を受け止め、ナイフを抜く。
すると、頭は瞬時に直り、両手は徐々に回復していく。
これだけのダメージを与えたのに、一時間後にはピンピンしているのだから、つくづく吸血鬼の強さを思い知らされる。
「ありがとう、咲夜。助かったわ」
パチュリー様が私に近づき礼を言ってきた。
「いえ、私が一番あの状態のフラン様と戦っていますので。慣れてきました」
戦闘が終わったことで緩んだ空気が私とパチュリー様の間に流れる。
だからだろう。私の腕の中で気絶していたはずのフラン様が目を覚ましたことに気が付かなかったのは。
――がぶっ
フラン様が俊敏な動作で私の首に食らいつく。
そして、そのまま私の血を吸い始めた。
「んっ、くっ、はあ…。ひんっ!あ、ああ…」
体の内からこみあげる強烈な快楽に嬌声を上げてしまう。
一度だけレミリア様に直接吸血された時に感じたことがあるが、やはりこの快感は抗いきれるものではない。
パチュリー様が私を助けようと魔法で狙っているのが朦朧とした意識の中で見えたがこの体勢では私ごと攻撃してしまうだろう。
強烈な快感で意識を失う直前、視界の端に紅白が見えた気がした。
この後の展開が助けてくれた霊夢に惚れた咲夜さんが霊夢にアピールするんだけど、ツンデレな霊夢は素直になれない。
だけど霊夢は魔理沙に相談して吹っ切れてレミリアに「娘さんをください」と戦いを挑み、結果的に二人は幸せになりました、まで考えた。
だけどこうなったら原作関係なくなるし、登場人物も限られ、霊夢が熱血主人公になったのでやめました。