あと一話別視点を書いたら紅魔郷編は終了です。
音が聞こえる場所へと急ぐ。
方向は地下室だ。ならば戦っている一人はフラン様に間違いないだろう。
もう一人はパチュリー様か、それとも今日パチュリー様に本を返しに来ていた魔理沙のどちらかだろう。
地下室へと続く階段を駆け下りると、どんどん戦闘音が大きくなる。
廊下に音が響き、光が時々瞬いていることから、おそらく廊下で戦っているのだろう。
次の角を曲がれば現場だ。
早く止めなければ死人が出るかもしれない。
暴走状態のフラン様は殺す気で向かわないと本気で殺されかねないのだ。
私はナイフを構え、いつでもフラン様に攻撃できるようにしてから角を曲がった。
「うおっ!今のは危なかった、初心者なのになかなかやるなあ、フラン!」
「魔理沙こそ私の弾幕余裕で避けてるじゃない、結構難しい弾幕作ったはずなんだけどなあっ!」
「へへん、初心者に負けたなんて霊夢に知られたらまた呆れられちまう。意地でも負けられないんだなあ、これが!」
「私だって勝って咲夜に褒めてもらうんだから!絶対に勝ってみせるよ!」
そこにいたのは、すごく楽しそうに戦う二人でした。
あれ?フラン様、暴走してるわけじゃないの?
なんだかナイフもってぽかーんとしてる私が阿呆みたいなんだけど。
「ああ、咲夜、来たのね」
私が呆然としているとパチュリー様が話しかけてきた。
えっと、つまり、どういうこと?
「図書館で魔理沙に魔法を教えてたらフランが本を返しに来たのよ。そしたら魔理沙がフランと意気投合しちゃって。今幻想郷で一番流行ってる遊びを教えてやるぜ!なんて言い始めて弾幕ごっこを教え始めたの。フランはそれに興味を持って出来たばかりのスぺカを使って今戦っている、というわけ」
「それなら外でやればいいのでは?正直、室内でやられると色々後が大変なのですが…」
「最初は結界が張ってある図書館内でやってたんだけどね。あの二人、勝負していくうちに夢中になっちゃって、移動しながら戦ってきたのよ。私は紅魔館が崩れそうな場合の仲裁役としてここにいるわ」
なら移動し始めた時に止めてほしかったです、パチュリー様…。
廊下の状況は弾幕によってボロボロ、修復にはそれなりの時間がかかるだろう。
移動しながら戦ったということは、こんな感じの場所がまだいくつかあるということ。
せっかく上の修復の終わりが見えてきたというのに…、こんな、こんなことって…あァァァんまりだァァアァ!!!!
でも、フラン様のあんな楽しそうな顔見たら今すぐ止めろなんて言えない…。
ここは大人しく増えた仕事を甘んじて受けるしかないかな。
諦めて二人の戦いを観戦すると、魔理沙がマスタースパーク、フラン様がレーヴァテインを放ってスぺカの凌ぎあいをしている。
ゲーム画面みたいに上からみても綺麗なんだろうけど、下から見上げても弾幕の、しかもスぺカのぶつかり合いは十分綺麗だ。
スぺカが終わると、お互いのスぺカが無くなったらしく、二人が下に降りてくる。今回は引き分けか。
降りてくる途中で、フラン様が私を見つけたようで私に向かって突っ込んできた。
それを受け止め、優しく下に降ろす。
フラン様は満面の笑顔で私に抱きついた。
「えへへ、咲夜!弾幕ごっこってすごく楽しかったよ!見てた?」
「はい、見ていましたよ。初めてやるはずなのにあそこまで弾幕を張れるなんて、素晴らしいですよ、フラン様」
「本当!?えへへー」
何この可愛い生き物。すごく抱きしめてなでなでしたいんだけど。
とりあえずフラン様の頭を撫でて癒される。
するとさらに笑顔になってすりすりしてくるフラン様。鼻血出そう。
こみあげてくる萌えという感情と闘いながら魔理沙の方を向くと、なんだか落ち込んでいる様子。
どうやら弾幕ごっこを覚えたばかりのフラン様と引き分けになったのが悔しかったらしい。
そんな魔理沙をぎこちないながらも慰めているパチュリー様。
なんだかんだであの二人いいコンビだよね。
あ、そうだ。せっかくだから図書館でおやつの時間にしよう。
私も魔理沙とお話ししたいし。
この後図書館に戻りケーキを全員に渡した後、レミリア様と霊夢を放置したままだと思い出して部屋に慌てて戻るのは別の話。