今回はフランちゃん回。少し短いです。
レミリア様の食器を片づけ、今度はフラン様の部屋へと向かう。
フラン様の部屋は地下室にある。
地下へと続く階段を下ると、暗い廊下をパチュリー様が作った灯りが照らしている。
フラン様も原作通りに閉じ込められているのかと思ったが、単にフラン様は外にあまり出たがらないだけのようだ。
地下室に部屋があるのも、本人の希望らしい。(レミリア様は自分と同じ最上階に部屋を用意したらしいが、フラン様は断ったらしい。暗いところの方が落ち着く、と)
フラン様の部屋につき、ノックする。
「フラン様、お食事です。入ってもよろしいですか?」
返事はない。だが、これはいつものことだ。
だから私はそっと扉を開けて中を確認する。狂気の真っ只中だった場合、この時に弾幕が飛んでくる。
…飛んでこない。
ほっとして私は扉を開けきり、中に入った。
その瞬間、私のお腹のあたりに何かがぶつかってきた。
って、危ねえええええええ!もう少しで料理を落とすところだった…。
ぶつかってきた、というか抱きついてきたのは案の定フラン様だった。
「えへへ、驚いた?咲夜」
無邪気な笑みを私に向けるフラン様。
もう抱きついて頭を撫でたくなるほどかわいいが、今回のことはきちんと叱らねばなるまい。
「フラン様?なにか物を持っている人に勢いよく抱きついてはいけませんよ?危ないでしょう?」
「はーい…」
しゅんとなるフラン様を見て凄まじい罪悪感がこみ上げるが、それをこらえて、笑顔を向ける。
「さあ、食事にしましょう。フラン様、こちらにお座りください」
「…うん!」
一転して笑顔になったフラン様を見てほっとする。
フラン様の食べ方はレミリア様に劣らず優雅だ。
きっとレミリア様かパチュリー様にテーブルマナーを学んできたのだろう。
それでも、口の周りに食べかすが付くのは子供っぽい証しなのだろう。
「御馳走様でした!今日もおいしかったよ、咲夜!」
「ふふ、それはよかったです。お顔をこちらに。拭いてさしあげます」
「うん。…んっ、ありがとう!」
顔を拭いて食べかすをとると、満面の笑顔でフラン様が礼を言ってくる。
…かわいい。本当にフラン様といると癒される…。
「ねえねえ咲夜、この本読んで!」
「はい、かしこまりました。むかしむかしあるところに……」
フラン様の食事が終わった後はこうしてフラン様に本を読み聞かせるのが日課となっている。
私がフラン様を膝に乗せて読み聞かせているとそのうちフラン様が満腹感で眠ってしまうので、最終的に膝枕のような状態になる。
「そしておうじさまとおひめさまはしあわせにくらしたのでした。めでたしめでたし…
眠ったようですね」
フラン様を膝枕したまましばらく何かの作業をするのも日課だ。
今日はフラン様が壊してしまったらしいクマのぬいぐるみの修繕作業をする。
裁縫道具で破けてしまった布を縫ったり、取れてしまっている目を付け直していると、フラン様が私に抱きつき、笑顔を浮かべた。
何か楽しい夢でも見ているのだろう。
私はゆっくりとフラン様を自分の体から外し、ベッドに運んで布団をかける。そして直したばかりのぬいぐるみをその小さな手に握らせた。
フラン様はぬいぐるみをぎゅう、と抱きしめ、笑顔を深めた。
私はフラン様の頭を一回撫でると、食器を片づけ、部屋を出ようとする。すると、
「ううん、さくや、さくやあ…」
どうやらフラン様がうなされているらしく、しきりに私の名を呼んだ。
「どうかしましたか、フラン様。咲夜はここにいますよ?」
ベッドに近づいて手を握って声をかけると治まったらしく、穏やかな表情で眠り始めた。
それを確認すると、今度こそ私は部屋を出る。
それにしても、ああいう子供的な可愛さってやっぱり癒されるなあ。
こう、守ってあげたくなるよね、フラン様は私よりもはるかに強いけど。
私はフラン様の可愛さを思い浮かべて癒されながら、美鈴の料理をとりに厨房へと向かうのだった。
この後咲夜さんは美鈴と一緒に夕飯を食べましたが、蛇足になるので割愛します。
次にフラン視点を書いてEX編に入ります。