Crescent Moon tears   作:アイリスさん

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番外編4 ヴィヴィオとアインハルト

 

 

「行きましょう!」

 

ヴィヴィオがアインハルトの手を引き、ホビーショップT&Hに入っていく。ブレイブデュエルのコーナーまで上がり、デュエルシミュレーターの列に並んだ。

 

「頑張りましょうね、アインハルトさん!」

 

「そうですね!」

 

不安と期待。今日はT&Hエレメンツのなのは、フェイト、アリサがショッププレイヤーとして客の相手をしている。このまま並んでいれば、あと30分位で対戦できそうだ。

 

「楽しみですね。早くママ達と対戦‥‥‥」

 

「ヴィヴィオさんっ」

 

ヴィヴィオが『ママ』と発言した口を、アインハルトが慌てて手で塞いだ。一瞬驚いたヴィヴィオだったが、「あ、そっか」と納得しテヘッ、と舌を出した。

 

発言に気をつけながら並ぶ事、10分。ヴィヴィオ達の視界に、ある人物の姿が見えた。雫と共にプレシアに会いに来たすずかだ。因みに雫は応接室でプレシアとお戯れ中。

 

「‥‥‥え?」

 

ヴィヴィオもアインハルトも、酷く驚いた表情。二人に気付いたすずかが近付いてきた。ヴィヴィオとアインハルトは固まったままだ。

 

「あれ?‥‥‥ヴィヴィオとアインハルトちゃん?今日は学校あるよね?どうして此処に居るの?」

 

アインハルトは「え、あ、えっと、その」と何と話していいか分からない様子。ヴィヴィオに至っては声も出せていない。

 

「二人とも‥‥‥?」

 

不思議そうに首を傾げたすずか。アインハルトが漸く「すずかさん」と言葉にできた。

 

「すずかさん、その、すずかさんはどうやって此処に?」

 

「え?何時も通りにだけど?」

 

ヴィヴィオとアインハルトが顔を見合わせた。二人は理解に苦しんでいるすずかの手を握り「帰れるんですよね!?」と興奮ぎみに叫んでいる。

 

「えっと‥‥‥?」

 

すずかには二人の行動の意味が全く理解出来ない。何時もこの並行世界に一緒に来ているではないか。ヴィヴィオもアインハルトも、アリサの所の転移装置で来ている筈だ。

 

《すずか、宜しくて?》

 

語り掛けてきたのはスノーホワイト。二人に関して気になる事がある、という。それは、『二人から魔力を全く感じられない』という事だった。

 

《リミッターが付けられているような様子もありませんわ。もしかしたら》

 

「そうだね、スノーホワイト。『私と同じ』かも」

 

すずかは二人をシミュレーターの列から離して、手を引き、応接室へ。中ではプレシアが眠ってしまっていた雫をソファに寝かせ、珈琲を飲んでいた。

 

「お義母さん」

 

「あら‥‥‥ヴィヴィオちゃんにアインハルトちゃん。こんにちは」

 

すずかがプレシアの事を『お義母さん』と呼んだ事や、自分達の事を知っている事に酷く驚いた様子のヴィヴィオとアインハルト。すずかが会話を聞かれないようにと部屋に鍵を掛ける。

 

《さて、お二人とも。幾つか質問宜しくて?》

 

すずかの服の胸の中から現れたスノーホワイトに、二人は驚き腰を抜かしたらしい。そのままソファにストン、と座る格好になった。

 

「えっ!?えっ!?スノーホワイト!?どうして!?」

 

「スノーホワイト型のチヴィット‥‥‥ですか!?」

 

ヴィヴィオとアインハルトの反応。やはりそうだ。二人は恐らく、別の次元の二人。発言からして多分、この時間軸か又は近い時間軸の世界の未来からの来訪者だろう。

 

「ふーん、そういう事ね」と納得しているプレシア。それと、少し悩んでいるすずか。その二人の代わりに、スノーホワイトがヴィヴィオ達に聞いていった。やはり、魔法の無い世界の未来から来たそうだ。ヴィヴィオ達の所の、グランツ博士の親友のスカリエッティが作った装置が暴走、原理は全く分からないが過去に飛ばされたのだそうだ。

 

《はぁ、そうですか。Dr.スカリエッティのミスですか。やれやれですわね》

 

「スノーホワイトさん、私達、帰れるの?」

 

瞳を潤ませているヴィヴィオと、その手を握っている不安そうなアインハルト。

結論から言えば、帰れる。アリサの所の転移装置では無理だが、幸運な事に今向こうの世界の高町家にはアミタとシュテルが来ている。彼女達に頼めば帰る事が出来るだろう。

 

「帰る前に幾つかやらなきゃいけない事もあるわね」

 

そう発言したプレシアに、すずかも「そうですね」と頷いた。此方で接触した関係者の記憶と記録の破棄。すずかの方の世界は完全に並行世界で未来も大きく違っている為そこまででもないが、目の前のヴィヴィオ達の方はほぼ此方の世界の未来。下手をすれば色々とこの世界の未来に不味い影響が出てしまう。故に、所謂『証拠隠滅』の必要がある。

 

「記憶の封鎖‥‥‥?そんな事出来るんですか!?」

 

ヴィヴィオの表情には、恐怖の色が見ている。常識的に考えて、人為的に記憶封鎖なんて出来ない。ショックが強すぎて防衛本能が働いて思い出せなくなるような症状になる事はあるかも知れないが、それは人為的に起こせるものでもない。それならまさか、未来の為に口封じとか‥‥‥とか考えていそうな表情だ。

 

「危害を加える訳じゃないから平気だから。言葉通り記憶を『封鎖』するだけだから、ね?」

?」

 

すずかは出来る限り優しく、二人を安心させるように笑顔で諭した。それから、虚空の、何も無い筈の天井に向かい、誰かに話すように語り掛けた。ヴィヴィオとアインハルトからしたら、ただの独り言に見える。

 

「アリサちゃん、モニターしてるんだよね?予定より早いけど、戻してもらえるかな?アインハルトちゃんとヴィヴィオも一緒に」

 

その直後。すずかとソファの雫の身体が光り、同時にその足元に魔法陣が現れた。「えっ?えっ?」と理解の追い付かないヴィヴィオとアインハルトの足元にも、勿論。

 

「すみません、お義母さん。また遊びに来ますので」

 

寝ている雫を抱いて頭を下げたすずか。「ええ、何時でもいらっしゃい」と笑顔で手を振るプレシアに見送られ、アリサの研究室へと転移。

 

◇◆◇◆◇

その後すずかに連れられ、ヴィヴィオもアインハルトも初めてみた魔法の世界に驚き感嘆しながら高町家へ。丁度紅茶片手にお茶していたなのは、シュテル、アミタに事情を説明、無事に二人は自分達の世界に戻る事が出来た。勿論、アミタは証拠隠滅のために奔走した。

 

「そっかぁ。やっぱりあっちの未来でもヴィヴィオは私の娘なんだね。ちょっとホッとしたかなぁ」

 

先程のヴィヴィオ達を思い出しながら、紅茶に口をつけるなのは。対してすずかは少し違う反応。

 

「そうかもだけど、私は少し寂しいかなぁ」

 

ヴィヴィオに『すずかママ』と呼ばれない事が寂しかったようだ。そんなすずかを察している訳でも無いだろうが、雫が「ままー」と笑顔で近付いてくる。

 

「うん?雫、どうしたの?」

 

「おやつー!」

 

テーブルの上のお菓子に視線を向けた雫を抱き上げ、「はいはい」と、すずかは微笑んだ。

 




お久しぶりです。INNOCENTの最新刊を見ていて、「あ、やっぱり未来にヴィヴィオいるのか」と思ってカキコ。R-18要素入れる場所が無かったので此方で。

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