Crescent Moon tears   作:アイリスさん

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流れの歪み

 

 

「小賢しい塵芥共めが。纏めて始末してくれるわ!」

 

はやて(?)の前に、巨大な魔法陣が展開。真っ黒な魔力の塊が3つ現れる。

 

「シュテ‥‥‥ヴィヴィオ、周りのカス共は任せる。さっさと潰して終わらせるぞ!」

 

「面倒なのでもう名前は良いのでは?王」

 

ヴィヴィオも飛行しながら魔法陣を展開し、呆れる程の数のシューターを自身の周りに展開する。

 

「では。『パイロシューター、シュート!』」

 

その右手に掲げた、レイジングハートと同型の杖を振りかざし、炎熱を帯びたシューターをガジェット目掛けて発射。その全てが命中し、瞬く間にガジェットは数を減らしていく。

 

「『シュート!シュート!シュート!』」

 

一方のはやても、作り上げた魔力をディード達に向けて解き放つ。

 

「絶望にあがけッ!『エクス・カリバー!!』」

 

解き放たれた3つの魔力砲は一つに重なり、巨大な魔力となってディード達の方へと真っ直ぐ飛んでいく。

 

「危ない、ディード」

 

ガリューとディードを自分の魔法陣の中へと誘導したルーテシアはその冷静な表情とは違い、出来る限り全開でシールドを展開。直後真っ黒な魔力の奔流に飲み込まれる。

その様子を見ていたヴィヴィオはエクス・カリバーがまだ撃ち終わらないうちに、大規模魔法陣を展開していた。‥‥‥ガジェットは既に殲滅したようである。

 

「リミッター付とは言え、すずかやシャマル達が苦戦する程の相手です。念には念を。『集え、赤星』」

 

ヴィヴィオの頭上に、周りの魔力が集まり収束していく。徐々に大きくなっていく、赤い塊。

 

「うむ。『四天に吼えよ、我が鼓動!』」

 

はやても5つの魔法陣を展開。魔力が充填されていく。やがて準備を終えた二人は、漸く姿の見えてきたルーテシア達に向かい、その恐るべき魔力を解き放った。

 

「行きますよ‥‥‥豪熱滅砕!『ルシフェリオン・ブレイカー!!』」

 

「『出でよ巨獣!ジャガーノート!!』」

 

太陽かと見紛う程の魔力の塊から放たれた一撃と、巨大な隕石群かと思う程の、降り注ぐ真っ黒な魔力の一撃。

なす術も無くディード達は飲み込まれ、その威力に辺り一帯も吹き飛ぶ。

 

 

 

深く抉れたクレーターの真上。中空でふんぞり反るはやては、海中から気絶したオットーを引き摺りだしているヴィヴィオに念話を入れる。

 

《ちとやり過ぎたか》

 

《まぁ、管理局が何とかするでしょう》

 

クレーターの真ん中で倒れているディードとルーテシアをルベライトで拘束したヴィヴィオは、自分達の魔力砲で半分程無くなった海岸線を眺めながら、ユックリと口を開いた。

 

「さて、シャマル。今のナノハの保護者に会えるでしょうか?」

 

◆◇◆◇◆

 

テロのあった管理局内。

セインはチンク達を回収すべく、合流ポイントへと移動していた。

彼女のIS(ディープダイバー)で壁の中を移動してたが故に、ほぼ真っ直ぐに。

 

(さーて。局内はどうなってるかな)

 

興味本意で壁から出て、辺りを見回す。どうやら局内強襲時にナンバーズが通った通路のようだ。特に荒れていない廊下に少しガッカリしたセイン。

 

「ねぇ」

 

セインはトントン、と後ろから肩を叩かれ、ビクッとして振り向く。そこにはフェイトとそっくりな、11、2歳位の少女が居た。バリアジャケットの色以外は、髪の色もフェイトと同じ色の少女。

 

(新しいナンバーズかな?それともドクターの作ったクローンか何かか?)

 

『勝手にそう思い込んだ』セインは、少女の肩に不用意に両手を掛け、語り掛ける。

 

「君もナンバーズ?それとも、ドクターの助っ人か何か?」

 

その言葉を聞いたフェイトそっくりな少女は、フェイト本人ならば絶対にしないような凶悪な笑みを浮かべる。少女は不意にセインの腕を掴むと、全身に雷撃を纏わせて、口を開いた。

 

「そっか。じゃあ、キミはクロハネ達の敵か」

 

少女は持っていたデバイス、バルニフィカスをブレイバーモードで起動。セインの手首を持ったまま、凶悪な笑みで睨んだ。

 

「クロハネ達の敵なら、ここで潰しちゃってもいいんだよね?」

 

◆◇◆◇◆

 

「士官学校には少ししか居なかったけど、いろんな事教わっとくもんだね、なのは」

 

フェイトとなのはは、エレベーターを使って下層に降りていた。使っていたと言っても乗っていた訳ではなく、エレベーターを支えるワイヤーを伝って落下している。両掌に魔力を纏わせ、摩擦と衝撃を抑えた状態で。

 

公聴会真最中の中のナンバーズ達のテロによって、管理局のシステムがダウン。扉1つも満足に開けられない状態の中、カリム、シャッハ、はやての手を借りどうにか扉を開けて、二人はもしもの時のフォワード陣との合流地点へと急ぐ。規定によって局内会場にはデバイスは持ち込めない為、レイジングハートとバルディッシュはスバル達に預けてある。

 

二人が目的の階へと到着し、エレベーターから出ると、何処かで爆発が聞こえた。

 

「爆発!?急ごう、フェイトちゃん!」

 

「う、うん」

 

今の爆発に、フェイトは何やらモヤモヤとしたものを感じていた。自身と同じような、雷撃を伴った一撃のような気もする。それに、思い出せないが、知っている魔力を感じる気もする‥‥‥。

 

「わっ!」

 

爆発に気を取られていたフェイトは、前方から来た何かにぶつかった。向こうもその衝撃で倒れ、どこかにぶつけたのか、頭を擦っている。その相手の姿を確認したフェイトは、思わず驚きの声を上げた。

 

「『へいと』!?どうして此処に!」

 

◆◇◆◇◆

 

「フェイトさん!なのはさん!」

 

遠くからスバル達が駆け寄ってくる。

無事合流した一同は、3つに別れて事態に当たる事にした。なのはは、爆発のあった方へ。スバル達はそのまま公聴会会場へ。

 

「エリオとキャロは、私と六課へ!なるべく急いで!」

 

今もまだ通信が繋がらない六課の、すずかからのSOSを知らせに来た『へいと』を抱きながら、フェイトは二人に指示を出し、自身も六課へと急ぐ。信じてはいるが、すずかにはリミッターがある。

もしも、もしもすずかに万が一の事があったら‥‥‥。フェイトは焦る気持ちを必死に抑える。最悪の展開を想像してしまい、泣き出したいの必死に我慢しながら、フェイトは六課のすずかの元へと急いだ。

 

(すずか‥‥‥お願い、無事でいて‥‥‥)

 

 

 

そうして動き出した一同。なのはが爆発の聞こえた地点へと着くと、拍子抜けする光景が。

 

(えっ?)

 

なのはが見たものは、壁に空いた大穴と、その穴を背にして倒れているセインの姿。セインの身体には雷撃を受けたような焦げ跡があり、完全に気を失っている。

一先ずセインをそのまま拘束し、なのははフォワード陣に合流すべく会場へと戻り始めた。

 

◆◇◆◇◆

 

クロノは来客者を艦長室へと通す。部屋にはクロノの他はヴェロッサとアリサ。

 

「キリエ、一先ず‥‥‥事情を説明してくれないか?」

 

「そうね。先ずは‥‥‥‥‥‥」

 

そうしてキリエはこの時代に来た経緯を話し始めた。シュテルがエルトリアに戻る際にフィアッセ‥‥‥なのはを巻き込んでしまった事や、つい先程この時間軸で発見して、ユーリ、アミタ以外の4人でなのはを連れ戻しに来た事。そして。

 

「シュテルが、いえ、恐らくすずかちゃんがこの世界に来てからかしらね。この時間軸だけが他から大きく外れているのは。これ程イレギュラーが出るなんて」

 

「だから、介入しに来たのか?」

 

クロノのその問いに、キリエは首を横に振る。

 

「いいえ。本来なら、その世界の流れを、運命をなるべく変えないように、介入は出来る限りしない。‥‥‥‥‥‥確定事項なのよ」

 

クロノは更に首を捻る。

 

「確定事項だって?」

 

「そうよ。確定事項。私達が、この時間軸の、この時代に関わるのが」

 

キリエが言い終えた所で、機動六課との通信が漸く回復。モニターに映るはやてとヴィヴィオの姿に、クロノは驚く。

 

「はやて、どうして六課にいるんだ!」

 

《色々不都合を避ける為、姿を借りておるだけよ、クロノ。我だ、ディアーチェだ》

 

《お久しぶりです、クロノ。シュテルです》

 

姿は其々はやてとヴィヴィオだが、声と話し方はディアーチェとシュテル。六課の方の侵略者は撃破、捕縛済み。二人の話だと管理局にはレヴィが向かったらしい。

 

《クロノ、一先ず医療班を。ザフィーラとすずかの怪我は重傷です》

 

「分かった。直ぐに向かわせる」

 

姿はヴィヴィオのシュテルに返事を返し、クロノは医療班を手配する。キリエが避難させてきたヴィヴィオと、それを懸命にあやすアリサ、更にそれを微笑ましく見ているヴェロッサを見ながら。

 

 

 

 




機動六課の攻防後編&地上本部の攻防前編。
圧倒的力のシュテるんと王様の回。

果たして、ナンバーズは何人生き残れるでしょうか?

どうやらヴェロ×アリは確定のようです。

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