アミタ、キリエが斬りかかり、はやて、クロノが砲撃支援という形を取っていたものの、一向に状況を打開出来ない。アミタはキリエと顔を見合わせ、叫ぶ。
「このままじゃ埒があきません!行きますよ、キリエ!フルドライブ!!『エンド・オブ・ディスティニーッ!』」
「オッケイ、お姉ちゃん!フルドライブ!!『S・R・I!』」
アミタがU-Dに銃撃、キリエが双剣で斬りかかる。そのままアミタもキリエに合流、U-Dを連続で斬撃。
「こんのぉ!食らいなさい!!」
キリエは頭上に巨大なエネルギー球を作りだす。同時にアミタが魔力弾をU-Dの周囲に大量に展開。エネルギー球をキリエがU-D目掛けて振り下ろすと同時に、アミタは展開した魔力弾を一斉に放つ。
轟音をあげて爆発している所へ、間髪入れずに魔法陣を展開するはやて。
「『響け、終焉の笛!ラグナロク!!』」
ミッド、ベルカ双方の魔法陣が唸りをあげ、白銀の大魔力がU-Dに放たれる。それがU-Dに直撃した瞬間に、クロノはデュランダルを降り下ろした。
「『凍てつけ!!』」
《Eternal Coffin》
巨大な氷塊にU-Dが閉じ込められる形になる。
しかし、数秒の後、氷塊はバラバラに砕けちり、U-Dが平然と現れる。その瞳は碧に輝き、その魄翼と同じく赤く燃えるようなインペリアルローブを纏っている。その姿を睨み、肩で息をしながら、はやてがぼやく。
「だいぶ削った筈やのに。何て硬い防御なんや」
クロノもU-Dを睨んだまま、再びデュランダルに魔力を込める。
「気を抜くな、はやて。勝負はこれからだ!第2班、頼んだぞ!」
クロノの言葉を合図に、フェイト達はU-Dに接近する。
「U-D!」
そのヴィヴィオの言葉に反応し、フェイト達の方を見やるU-Dは、その口を開く。
『君達は、また‥‥‥!』
魔力を更にたぎらせ、魄翼を大きく拡げたU-Dと対峙したフェイトは、1度深呼吸をしてバルディッシュを握り直して、U-Dに、否、すずかに語りかけた。
「U-D。ううん、すずか。助けに来たよ」
『助けなんて、必要ない!一人でも生きていける力を、私は、手に入れた!』
「U-D。一人じゃないよ。すずかママだって、きっと思ってる。U-Dにだってマテリアルのみんなが、王様が、待ってる人達がいるの!」
U-Dの放った魔力弾を避けつつ、フェイトは自身に言い聞かせるように語る。恐らく次はない。ここで全てを決しなければ、すずかを助ける術は‥‥‥。
「何度だって、叫び続ける。すずかを助けるまで!『リライズ・アーップ!』」
フェイトが左手に持っていた少女プレシアのカードを翳すと、光に包まれ、そのバリアジャケットが、カードと同じ物に変わる。
「母さんの力‥‥‥すずかの力。待ってて、すずか。プログラムカートリッジ『ホルニッセ』ロード!」
バルディッシュがバシュン、とカートリッジを炸裂、対U-Dプログラムが走る。フェイトはバルディッシュをザンバーフォームで展開。緊張で震える両手に力を込める。
(きっと、ううん、絶対、助けるんだ)
「行くよ、バルディッシュ‥‥‥ドライブ・イグニッション!」
◆◇◆◇◆
「『ディバインバスター!』」
「『覇王・断空拳!』」
ヴィヴィオとアインハルトのコンビネーションに、フェイトのザンバーでの斬撃。即席だが、まるで昔からのチームのように息の合った攻撃。全て、という訳にはいかずとも、U-Dの猛攻の隙を突き、かなりの手数はU-Dに通っている。しかしながら、はやて達のあれだけの極大魔法を受けながらも、U-Dはまだまだ墜ちる気配はない。少しずつだが、フェイトに焦りの色が浮かぶ。
「はぁぁぁ!!」
そうしてフェイトが斬りかかると、魄翼の一方に斬撃を防がれ、もう一方に左手を掴まれる。焦るフェイトの胸に手を伸ばしたU-Dは、フェイトの魔力を掴み、槍状に形成しながらそれを引き抜いた。
『エンシェント‥‥‥マトリクス!』
近距離からそのまま降り下ろされた槍の威力は凄まじく、ギリギリでシールドを展開したものの、それに押され、全開で展開しているシールドにもヒビが入る。
「クッ‥‥‥うぅぅぅ!」
必死に耐えてはいるものの、そのシールドも最早風前の灯。U-Dはだめを押すべく、フェイトの左手を掴む魄翼に更に力を込める。
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
その痛みに耐えられず、フェイトの集中は途切れ、シールドが砕け散る。
「ア、アカン!フェイトちゃん!」
はやて達が助けに行こうにも、U-Dの魔力弾を捌くので手一杯。思うように近付けない。
「何をしておるか!『インフェルノ!』」
「『パイロシューター!』」
ディアーチェとシュテルの砲撃が、直近に居たヴィヴィオとアインハルトに道を切り開く。
魔力の槍がまさにフェイトを貫こうかという直前で、二人は割って入った。
「させません!!『覇王流・旋・衝・破ァ!!』」
「クリス、全開!セイクリッドディフェンダー!」
二人が何とか槍を弾き、どうにか難を逃れたフェイトは、痛む左手を押さえ、再びU-Dを見つめる。
「ハァ、ハァ、ハァ、すずか!」
『変わらない。何度やっても』
ただ攻撃するのみでは、打開は難しい。やはり、すずかをどうにかして目覚めさせなくては。フェイトは叫んだ。
「すずか、目を覚まして!すずか!」
必ず助けると誓った。どうすればいいかなんて分からない。せめて、せめて声だけでも届いて。届いてほしい。そう願いながら、フェイトは叫んだ。
「すずかぁ!!」
◆◇◆◇◆
(誰‥‥‥?)
どこからか、声が聞こえる。
《‥‥‥‥か!》
(誰の声‥‥‥?)
誰かが、叫んでいるような、呼んでいるような、声が聞こえる。
《す‥‥‥‥‥‥‥‥‥か!》
(誰?)
《‥ず‥‥‥‥目を‥‥‥‥して‥‥‥ず‥》
《すず‥‥‥!‥‥‥ずか!》
それは誰かが、呼んでいるような声。それに、温かい、柔らかい温もりを感じる。それは、忘れようもない、あの人の感触、あの人の温もり。
(呼んでる‥‥‥‥‥‥私を?それに、あったかい‥‥‥?‥‥‥温もり?‥‥‥フェイ‥‥‥トちゃん?)
そして、今度はハッキリと聞くことができた。
《すずかぁ!》
(‥‥‥‥‥‥フェイトちゃん!!)
ようやく自我を取り戻したすずかは、自身のリンカーコアに意識を集中させた。
(させない!フェイトちゃんを傷つけるなんて、させない!)
◆◇◆◇◆
(お願い、目を覚まして!すずかぁ!)
祈るような気持ちで願うフェイト以外のその場の全員が、U-Dでさえも驚愕し、一瞬固まっていた。ヴィヴィオとはやては、フェイトの理解出来ないその行動に、思わず声を漏らす。
「フェイトママ!?」「フェイトちゃん!?」
『!!』
事態をようやく理解したU-Dは、自身の唇にその唇を重ねていたフェイトを振りほどくと、フェイトの両手を魄翼で押さえる。
『貴女を壊すのは、心が痛む。だけど、ここで、サヨナラです』
フェイトは涙を流し、力なくU-Dを見つめていたが、次の瞬間には、表情を一変させた。再び生気が戻り、魄翼を振りほどき、バルディッシュを構え直す。
『‥‥‥‥‥‥どうして!エラー!?いや、これは!』
U-Dはその場で動きを止めている。動けなくなっている、と言うべきだろう。U-Dの左目からは碧の光が消え、元のすずかの瞳に戻っている。それを観測していたアリサから、フェイトに通信が入った。
《フェイト!馬鹿!全く、無茶するわね!それより、吉報よ!微かにだけど、すずかの魔力が観測出来るわ!何とかするなら、今しかないわよ!》
そして。フェイトには確かに届いた。それはかなり小さな声だったが、幻聴でも何でもなく、確かに。
《フェイトちゃん‥‥‥信じてるから》
「すずか!」
待機していたシュテルは、期が熟したのを確認すると、フェイトの傍まで移動し、バルディッシュに手をかけた。
「フェイト、今しかありません」
「シュテル!でも、どうやって融合の解除を?例えスプライトザンバーでも、あんな魔力破れない!」
「それなら、ナノハが教えてくれました。私は、その為に此処に居ます」
「なのはが?」
疑問の表情を浮かべるフェイト。なのはが何時そんな事を‥‥‥と考えていて、ふと前回のU-D戦の事を思い出す。
「シュテル、まさか!」
「察しの通りですよ。バルディッシュ、かなり強引な方法ですがフェイトの為、耐えてください」
シュテルはバルディッシュを握りしめると、そのまま大規模魔法陣を展開。バルディッシュに周辺の魔力が集まり始める。
「『集え、赤星』」
バルディッシュの刀身は雷と焔を纏い、尚も魔力が収束していく。その真意を察したアルフ、クロノ、ユーノが、U-Dをバインドで拘束する。
「『チェーンバインド!』」
「『ストラグルバインド!』」
「『ケイジングサークル!』」
『うあぁぁぁぁぁ!』
苦しむU-Dを真っ直ぐ見据える。やがて収束を終えたバルディッシュは、その刀身に恐ろしい程の魔力を纏い、金色に輝く。
「シュテル、みんな‥‥‥バルディッシュ!『疾風・迅雷!!』」
《Sprite Zamber!!》
フェイトがそれを降り下ろすと、雷と焔を纏った魔力が刀身から放たれ、U-Dに向かって走る。その光がU-Dに達すると、巨大な光の奔流となって辺りを包み込んだ。
フェイトは誰よりも早くそれに向かって飛んでいく。U-Dの居た場所から落下してくる人物を海面スレスレで抱きかかえると、フェイトはそのまま海岸まで移動し、その人を自分の膝枕に寝かせた。
一方、器から分離され、その場に留まり、『ぐぁぁぁぁぁぁ!!』と悲鳴をあげているU-D。
そのU-Dの頭上で魔法陣を展開し、ディアーチェは目一杯の魔力をたぎらせた。
「もう泣くなっ!お主の悲しみなど‥‥‥我が闇で、消し飛ばしてくれるわっ!」
U-Dに向けてエルシニアクロイツを振りかざしたディアーチェから、この戦いの終焉を知らせる、巨大な魔力が迸る。
「くらえっ!これが、我等の砕け得ぬ闇!!!」
U-Dを中心に、辺りは再び光に包まれた。
◆◇◆◇◆
まるで宝物を扱うように、抱えていた人物を自分の膝枕に大事そうに寝かせ、涙を一杯に浮かべながらその頭を優しく撫でる。服がボロボロで殆ど裸と変わらないその人物に、自身のマントをかけて、フェイトは静かにその口を開いた。
「すずか」
弱々しくはあったが、確りとした口調で答えるすずか。
「うん‥‥‥‥‥‥フェイト、ちゃん。約束、守ってくれたんだね」
すずかは微笑を浮かべ、フェイトの頭に何とか震える手を伸ばし、静かに撫でる。やがてフェイトも笑みを溢し、そのまますずかを抱き締める。
「私一人じゃ、何も出来なかった。みんながいたから。みんなが支えてくれたから」
「助けてくれたのは、フェイトちゃんだよ。ありがとう。‥‥‥‥‥‥大好き」
抱き寄せたまま、フェイトはすずかと唇を交わす。その存在を確かめあうように、二人の舌が濃厚に絡まる。
「んっ‥‥‥んちゅ‥‥‥ん‥‥‥‥‥‥んくっ‥‥‥んちゅ‥‥‥ンぁ」
1度唇を離し、フェイトは再びすずかを抱き締める。
「私も、私も大好きだよ、すずか。もう、一人にしないから!」
もう一度、二人はその唇を重ね合わせた。
あ、もう一回かけるつもりがユーリに勝っちゃった‥‥‥。
肌色成分が多いのは仕様です。(リリカルなのはシリーズ=肌色成分)
※S・R・I:スラッシュレイブインパクトの略。