Crescent Moon tears   作:アイリスさん

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夜天の魔導書

 

《外で戦ってる方、すいません!この子の左手に付いてる物を外すの、手伝うてください!》

 

「はやてちゃん!?」

 

視界が晴れ、目の前の闇の書が苦しみその場で制止している中で聞こえた、はやてからの念話に驚く3人。

 

《聞こえる?なのは、フェイト、すずか》

 

3人の前にモニターが現れ、ユーノが映し出される。隣にはアルフもいるようで、どうやら此方に向かっているようだ。

 

《闇の書との融合状態で主が意識を保ってる!これなら何とかなるかも知れない!》

 

《クロノだ。僕も今そっちに向かってる。あの左手の黒い塊が、ナハトヴァールだ。いいか、3人とも。闇の書に大魔力をぶつけるだけでいい》

 

クロノとユーノの話が確かならば、あの左手の闇を吹き飛ばせば、はやては助かるかも知れないという。大威力の砲撃を撃つだけならば、3人とも易い。すずか達はお互いを見て頷き、クロノ達に返事をした。

 

「了解、ユーノ君、クロノ君!」

 

其々の愛機を握る手に力を込める。3人は魔法陣を展開し、力強い眼差しで闇の書を見据えた。

 

「いくよ、二人とも!」

 

「「うん!」」

 

すずかの言葉に、フェイトとなのはが答える。フェイトが一緒に学校に通うようになってから、3人で練習してきた。元々はすずかが居た彼方の世界の、なのはとフェイトの合体魔法。そこにすずかが加わる事で、その破壊力に磨きをかけてきた。3人は各々愛機を構え、魔力をたぎらせる。息もピッタリに、同時にそれを放った。

 

「「『『『中距離殲滅三重奏・ブラスト・カラミティ!!!』』』」」」

 

桜色と金色、紫のマーブルの砲撃は闇の書を捉え、光の中に飲み込んでいく。光の奔流が収まると、ナハトヴァールは分離され、海上に留まっていた。

 

《クロノ執務官、作戦コード『 Hope in the darkness』、現場につき次第開始してください》

 

《了解です、艦長》

 

◆◇◆◇◆

 

「守護騎士システム復旧、リンカーコア復帰。おいで、私の騎士達」

 

はやてが魔導書を開く。消えていた空白部分に文字が現れる。それと同時に、4つの光が現れ、それぞれが守護騎士を形作っていく。それは、やがてはっきりと4人の姿となった。

 

 

「リインフォース、私の武器と甲冑を」

 

『はい、我が主』

 

はやての要望にリインフォースは答え、ロードオブグローリーと呼ばれるその騎士甲冑姿となるはやて。その右手には、剣十字の付いた杖。

 

「行くよ、リインフォース。『ユニゾン・イン!!』」

 

白銀の光が収まると、L.O.G.姿のはやてが現れた。

 

守護騎士達と抱き合っているはやての元へと、ようやく到着したクロノが降り立った。

 

「すまない、時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。確認するが、あの黒い淀みがナハトヴァールで間違いないか」

 

はやてはそれに答える。夜天の書から切り離した闇の書の闇。

 

「間違いないよ。夜天の書の防衛プログラム、ナハトヴァール」

 

クロノの話す作戦は3つ。

 

「停止のプランは3つある。みんなの意見を聞きたい。ひとつ目は、極めて強力な氷結魔法で停止させる。2つ目は、主であるはやてがナハトヴァールのプログラムそのものを書き換える、だ」

 

リインはそれにすぐに反応、ひとつ目を否定。二つ目ははやてが否定する。

 

『ひとつめは多分難しい。切り離したナハトヴァールは魔力の塊。完全な凍結は不可能だ』

 

「2つ目は、自信ないよ。あれは夜天の書から切り離してしもうてるし、もう私の制御下じゃないんよ」

 

それを確認したクロノは、まるで二人のそれが分かっていたかのように答えた。

 

「成る程、そうか。では、やはり3つ目でいくか。『アースラの魔導砲、アルカンシェルで吹き飛ばす』!」

 

アルカンシェルの威力を知るヴィータは、真っ向からそれを否定する。

 

「アルカンシェルで!?絶対反対!」

 

「最後まで聞くんだ。個人の能力頼みのプランで申し訳ないが」

 

 

ナハトの防御は、魔力と物理の複合4層式。それを各個の大威力攻撃で破り、コアを露出、アースラ前に転送の後、アルカンシェルで吹き飛ばす作戦。

 

「みんな、頼むぞ」

 

◆◇◆◇◆

全員の飽和攻撃を受け、シールドを全て破壊されたナハトヴァール。4人は魔力を集中する。

 

「ブラスター3!!全力全開!『スターライトーーー』」

 

「『サンダーレイジO.D.J.!!』」

 

「『雷光一閃!プラズマ・ザンバー!』」

 

 

 

 

「ごめんな、おやすみな」

 

夜天の書を左手に携え、剣十字の付いた杖をそれに向けて構えるはやて。

 

闇の書の闇の部分とは言え、夜天の書のプログラム。しいては、ヴォルケンリッターと同じ、はやての子供も同然。そんなナハトヴァールにすら情けをかける。

 

「はやてちゃん!」と言うすずかの声に気持ちを切り替え、目一杯の魔力を込めて魔法陣を展開する。

 

「『『響け、終焉の笛!ラグナロク!!』』」

 

はやての頭上に、一際大きいベルカ式魔法陣が現れ、足元には、ミッド式魔法陣。『神々の黄昏』の名に相応しい、恐るべき量の魔力が充填されていく。

なのはとフェイトのそれに合わせ、四人はナハトヴァールに向けて、その魔力を解き放った。

 

 

「「「「『『『『ブレイカー!!!!』』』』」」」」

 

4つの大魔力がナハトヴァールにぶつかり、その外郭が消えていく。慎重にそれを観察していたシャマルが、暗黒のコアを掴み取った。

 

「捕まえた!」

 

ユーノ、アルフ、シャマルは、そのコアを軌道上のアースラ前へと転送する。

 

「『転送!!』」

 

それを確認したリンディが、叫ぶ。

 

「アルカンシェル、バレル展開!‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥発射!!」

 

◆◇◆◇◆

 

アースラの休憩室で休む、フェイトとすずか。

 

「ねぇ、すずか」

 

「なぁに、フェイトちゃん」

 

「闇の書の中で、夢を見たんだ。その中のアリシアが、言ってたんだ。『ここでなら、ずっと幸せでいられる』って。母さんやアリシアの事は悲しいけど、すずかが居てくれる。私は幸せだよ」

 

「私も。フェイトちゃんが居てくれて、『今』、幸せ」

 

フェイトとすずかは座って頭を寄せあい、瞳を閉じた。その表情は安らぎ、微かに笑みを浮かべていた。

 

 

すずかのその『今』に、どれだけの意味が込められていたのか。この時のフェイトは知るよしもなく、すずかに寄り添っていた。

 

◆◇◆◇◆

 

「嫌や!やめて!せんでええ!リインフォース!!」

 

再び防衛プログラムを生成してしまう夜天の書は、自らの消滅を願い出た。魔導書本体から守護騎士を開放し、そのシステムをはやての命に依存させて。

 

 

消えていくリインフォースを涙越しに見ることしかできないはやてを残して。

 

 

 

 

 

その後、はやては保護観察を兼ねて嘱託魔導師として局入り。車椅子ながらも学校にも復学。聖祥小に通う。守護騎士達ははやてと生活しつつ、レティ提督の元で贖罪を兼ねて局で働く事となった。

 

ユーノはその手腕を買われ、無限書庫の司書となり、なのはとフェイトは嘱託魔導師を続けながら将来を模索。フェイトは執務官試験の勉強を始め、なのはは航空武装隊の戦技教導官の見習いとして局入り。そして、すずかは‥‥‥。

 

 

 

 

 

 

 

 




闇の書事件編でした。
アニメ+映画くらいの内容のクライマックスになったので、守護騎士となのフェイの活躍は省略。

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