Angel Beats! 失われた未来   作:大小判

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超、久々の投稿です。


ランキングバトル

 

 

 

 

 

 

 

それは何時もの校長室の日常風景、その一端に過ぎない。

日向とユイがじゃれ合っている事も、直井が音無に色々とヤバい意味で迫っている事も、松下とTKがダンスをしている事も、藤巻と大山がポテチとコーラで盛り上がっている事も、俺がそんな風景をスケッチブックに書き写している事も――――

 

「五十嵐ぃぃぃ!!貴様俺と勝負しろぉぉぉ!!」

 

―――野田がハルバート片手に俺に勝負を仕掛ける事も。

俺と野田の初対面(遊佐ちゃん曰く瞬殺劇)以降、時々野田は俺に勝負を仕掛けてくる。初めは適当にあしらっていたが、どうやら相当悔しかったらしく、河原で素振りをしてはまた勝負を仕掛けてくるというパターンをもう何十回繰り返しただろうか?諦めない姿勢は結構だが、正直な話もう面倒臭い。部屋の中が散らからないように、外まで出るのが。

 

「野田ぁ、まだ懲りねぇのかよ」

「テメェじゃあアニキには勝てねぇよ」

「黙れ!!俺が勝つまで続ける!!」

 

いい加減手加減した方が良い様な気がするが、それがバレた時こいつの性格を考えると後が怖い。

 

「だからってな、野田。毎度毎度外まで連れ出されるのはいい加減面倒だぞ俺は。もっと部屋の中で出来る事で勝負しないか?」

「じゃあ何で勝負する気だ?」

 

それが問題だ。部屋の中で出来て、野田が納得出来る奴だろ?将棋とか頭を使うのは駄目。無駄にフェア精神がある野田を鑑みれば、TVゲームは俺の方が初心者だからこれも無理。・・・そういえば、弟と妹が保育園で御弾きをしてたな・・・。

 

「無理に野田さんの立場を立てて勝負する必要はないかと」

「相変わらず突然現れるな、遊佐ちゃん」

 

そして俺の考えを読む。・・・そんなに分かりやすい顔をしているだろうか?

 

「それで、これは何の騒ぎ?」

「ゆりっぺ!」

 

続いて校長室に入ってきたのは仲村だ。立華との一件で一時期廃人の様になっていたが、今は平静に見えるくらいには元気になっている。

 

「野田と五十嵐、何時もの事だよ」

「あぁ、また野田君がボコボコにされるっていう」

 

事実だがなかなか辛辣である。

 

「毎度毎度外まで連れ出されて、しかも日によって場所が違うんだぞ?この間なんか山の頂上まで連れてこられた」

「律儀に付き合う五十嵐さんもどうかと思いますが」

「放っておいてくれ、遊佐ちゃん。・・・それで、なんか部屋の中で出来て野田が納得できそうなのって無いかと思ってよ」

「それなら丁度おあつらえ向きなの考えたわよ」

 

・・・『考えたわよ』?この事態を予測してたわけでもなさそうだが、仲村がやろうとしていた事と俺と野田の状況が上手く一致したという事か?

 

「ほら、この世界って娯楽が少ないじゃない?だから戦線メンバーの士気を高める為に何かないかと考えてたのよ。それで思いついたのが、名付けてランキングバトル!」

『『『ランキングバトル?』』』

 

その場にいた男子の声が綺麗にハモる。

 

「今回の場合、五十嵐君と野田君の勝負ね。でもそのまま戦っても五十嵐君の圧勝は確実。だから周囲のNPCや戦線メンバーが何でもいいから武器になりそうな物を投げ入れてくれない?それは下らない物ほどいいわ」

「・・・む」

 

俺と野田が向き合い、面白がった他のメンバーが適当な物を持って俺達を囲んだ。

 

「その中から掴み取った物で戦うのよ。素手でもハルバートでもないから室内で使ってもそこまで散らからないし、実力差関係なく勝負でき

るでしょ?ランキングバトルは、その名の通り戦線メンバー内でランキングを付け、敗者は勝者から屈辱的な称号を送られるわ」

「それ、1位になったら何か貰えるのか?」

「当然!月に一度、その時ランキング1位だったものには・・・・本人が望むことを1度だけ、2位以下が可能な限り叶える権利を与える!!

『『『おおおおおおおおおおおおお!!!』』』

 

その場にいた全員が湧いた。それはそうだろう、戦線メンバーの数は多い。それだけ人数が居れば、戦線内のルールやモラルに触れない程度になるにしても大抵の事はまかり通る。

 

『そ・・・それってもしかして・・・ぼ、ぼぼぼ僕も戦線の女の子とぉ・・・・!』

『これに勝ち抜けば、音無さんと・・・・・・・ポッ』

『・・・・・・・・・・・・・・・・・五十嵐さん・・・・・・・・』

『肉うどん・・・食い放題・・・!』

『岩沢先輩と・・・・ぐふふふぅ~』

『CrazyDancingPartyHoooooooooo!!』

 

各々の欲望が口から洩れだす戦線メンバー達。・・・・・・あれ?もしかしてこれって俺も組み込まれている?俺は戦線メンバーじゃないんだが。

 

「ちなみに私はリーダーとしてランキングとバトルの管理をしなきゃだから除外ね。空いた穴は五十嵐君が埋めるから」

「おい、何自分だけ逃れようと――――」

「それじゃあ早速武器を投げ込んで頂戴!」

 

仲村の宣言と同時に、様々なものが俺と野田の間を飛び交う。よく見てみれば、いつの間にか他のメンバーまで居た。こいつら、完全に祭り気分だな。

 

「俺は・・・・これだぁぁぁぁぁ!!」

 

最初に獲物を掴んだのは野田だった。その武器は――――

 

「く、黒ひげ危機一髪だとぉ!!?」

 

樽にプラスチックの剣を刺すと、中の人形が飛び出すことで有名なパーティグッズだった。そんな物でどうやって戦えってんだ?それで殴るのか?

 

「ちなみに、掴んだ武器は本来の使用方法で戦う事。つまり野田君は、中の人形を飛び出させて攻撃するのよ。安全性を考慮してのランキン

グバトルだから、当然それ以外の方法で攻撃すれば失格ね」

「のあああああああああああああああああああああっっ!!?」

 

哀れ野田・・・・俺も変なやつを手に取らないように気を付けないとな・・・・。

 

「これだ!・・・・・・・って、俺の色鉛筆!?」

「それを投げ込んだのは私です」

「遊佐ちゃん!?こんなもんでどう戦えばいいんだ!?」

「あともう一つ、一度手にした武器の変更は出来ないわ。五十嵐君は色鉛筆を駆使して、野田君にダメージを与えるのよ」

 

色鉛筆でダメージって・・・・どうすれば?

 

「行くわよ・・・・バトルスタート!!」

 

狼狽える俺達を無視して、無情にも勝負の幕は上がった。

 

 

 

   ---------------

 

 

 

お人好しの包帯男

五十嵐

 

VS

 

愛の暴走特急

野田

 

 

「包帯男って・・・・・」

「・・・異論はねぇ」

 

 

「まずは俺の番だ!!」

 

野田の攻撃。

野田は樽にナイフを2本刺した。

しかしおっさんは飛び出さない!

 

「え?・・・・あ、あぁ俺の番か。とりあえず描けばいいのか?」

 

五十嵐の攻撃。

野田の肌にアートを描いていく!

 

「こそばゆい!ていうか痛い!?」

 

野田に200のダメージ!

野田に300のダメージ!

 

「ここからが腕の見せ所だ!!」

 

野田の攻撃。

野田は樽にナイフを二本刺した。

しかし、おっさんは飛び出さない!

 

「先端が丸くなってきた・・・・削らないとな」

 

五十嵐は色鉛筆を削っている。

 

「チャンスだ!」

 

野田の攻撃。

野田は樽にナイフを4本刺した。

しかし、おっさんは飛び出さない!

 

「のわぁあああああああああああああああああ!?」

「悪いが、行かせてもらう!」

 

五十嵐の攻撃。

野田の肌に風景画を描いていく!

 

「俺の右腕に校庭が!?」

 

野田に300のダメージ!

野田に150のダメージ!

 

「これで・・・どうだ!!」

 

野田の攻撃。

野田は樽にナイフを1本刺した。

勢いよくおっさんが飛び出してきた!

 

「ちっ!」

 

五十嵐に50のダメージ!

 

「折れちまった・・・・また削らないとな」

 

五十嵐は色鉛筆を削っている。

 

「これひょっとして取りにいかなきゃならないんじゃね!?」

 

野田は転がっていったおっさんを回収し、樽にセットした。

 

「これで・・・終わりだ!」

 

五十嵐の攻撃。

野田の顔に人物画を描いていく!

 

「整形されていくぅ―――!!」

 

野田に350のダメージ!

野田に400のダメージ!

 

「ぐわぁああああああ!!」

 

野田のライフが0になった。

野田はその場に倒れた。

 

「何だ・・・この戦い」

 

五十嵐 Win!!

 

 

 

   ----------------

 

 

 

「勝者、五十嵐君ね。それじゃあ野田君に屈辱的な称号を付けなさい」

「それじゃあ・・・これで」

 

野田は『アホの極み』の称号を手に入れた!

 

「ぐわあああああああああああああああああああああ!!!?」

 

 

 

 

これが事の発端。戦線を巻き込む月に一度の一大イベントの始まりだった。

 

 

 

   -----------------------

 

 

 

「椎名が負けた?藤巻にか?」

「はい。それも一方的な勝負だったそうです」

 

そんな話を遊佐ちゃんから聞いたのはランキング決算が行われる前日の事だった。ランキングバトルのルールは身体的実力差を軽く無視して、大番狂わせが起こっていたりする。昨日だって、ユイが松下に勝ってたりしてたし。

 

「椎名さんの武器がぬいぐるみ、藤巻さんの武器もぬいぐるみという状態でしたが」

「あぁ、納得した」

 

椎名は攻撃する事も耐える事も出来なかっただろう。ランキングバトル、恐るべしだ。

 

「明日はゆりっぺさんが取り決めた月一のランキング決算です。現在のランキングはこんな感じですね」

 

そう言って遊佐ちゃんはメモ帳を俺に見せてくれた。えーっと、何々?

 

 

1位  五十嵐『暫定ランキング1位』

2位  関根 『関江』

3位  音無 『ツッコミはハートです』

4位  ユイ 『色気0』

5位  大山 『エア・マスター』

6位  藤巻 『全世界が認めた三下』

7位  岩沢 『お空の死んだ世界から♪』

8位  竹山 『ハンドルネームは竹山』

9位  椎名 『自重しないSINОBI』

10位 マスク・ザ・ユリッペ『はーらほーれうまうー』

 

 

「おい待て」

「何でしょう?」

 

変な名前を見て思わず待ったをかける。いや、『何でしょう?』じゃなくてさ。

 

「このマスク・ザ・ユリッペって奴・・・・どう見ても仲村だよな?」

「どうやら変装して参加、1位になれればそれで良し。1位になれなくても白を切れるとの事です」

 

何て姑息な奴なんだろう。称号も意味が解らないし。とりあえず仲村は無視だ、他の奴はどうなっているんだ?

 

 

11位 ひさ子『オッパイわっしょい!』

12位 入江 『入根』

13位 日向 『スケコマシ野郎』

14位 高松 『偽筋』

15位 直井 『厨二神』

16位 遊佐 『鋼鉄のオペレーター』

17位 チャー『哀愁漂う老け面』

18位 松下 『(21)』

19位 TK 『ダンスダンス、馬鹿みたい』 

20位 野田 『並行世界級の片思い』 

 

 

皆中々酷い称号を与えられている。・・・というか―――

 

「俺が1位だったのか?」

「はい。このまま明日までランキングが変わらなければ、五十嵐さんには2位以下のメンバーに1度だけ命令権が与えられます」

 

そうか・・・・となると、少しだけ楽しみかもしれない。そんな大層なことを言うつもりはないが、大抵の事は出来そうだから内容にも悩む。

 

「まぁ、ランキングが変わらなければの話ですが」

「え?」

 

そう言って遊佐ちゃんは軽く手を上げる。するとどうだろう、戦線メンバーからNPCまでワラワラと集まってきやがった。これってまさか

・・・・。

 

「は・・・謀ったな遊佐ちゃん・・・!」

「五十嵐さんにランキングバトルを申し込みます」

 

観客に囲まれる中、相対する俺と遊佐ちゃん。やってくれる・・・・だが俺も早々負ける気はない。せっかくの機会だし、俺も色々と楽しみたいし。

 

「それでは武器を投げ込んでください」

 

俺達の間を飛び交う武器やガラクタ、玩具や本。様々な雑貨からただ一つの武器を掴みとる。今回の武器は――――

 

「う・・・うなぎパイ・・・?」

 

地方名物、うなぎパイだった。これ完全に食い物だぞ・・・?どうやって戦えば・・・・?

 

「私はこれです」

 

遊佐ちゃんの手に握られているのは・・・・三節棍!?

 

「ちょっと待て、それ本物の武器だろ!?」

「バトルスタートです」

 

カ――――ンという、誰かが持ち込んだゴングの音と共に戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

   -----------------

 

 

 

1位 五十嵐 『暫定ランキング1位』

 

VS

 

16位 遊佐 『鋼鉄のオペレーター』

 

 

「私の攻撃です」

 

遊佐の攻撃。

 

「ぐはっ!?」

 

五十嵐に512のダメージ!

 

「くっ・・・!やるしかないか!」

 

五十嵐の攻撃。

五十嵐はうなぎパイを叩きつけた!

遊佐に0のダメージ。

うなぎパイが折れてしまった!

 

「う、うなぎパイがぁ!?」

「これで止めです」

 

遊佐の攻撃。

 

「ぐおっ!?」

 

五十嵐に619のダメージ!

 

「俺の・・・負けか・・・」

 

五十嵐のライフが0になった。

五十嵐はその場に倒れた!

 

「オペレーション完了しました」

 

遊佐 Win!!

 

 

 

   ----------------

 

 

 

「貴方にはこの称号を授与します」

 

五十嵐は『堅物唐変木』の称号を手に入れた!

 

「意味が解らんが・・・・無性に腹が立つな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何て事は無い、死んだ世界戦線の日常の一コマ。変わらないと、心のどこかで思っていた日々。でもそれが、俺と遊佐ちゃんの関係を変える切っ掛けだったんだ。

 

 




戦線メンバーの称号、候補があれば是非!
活動報告に出しておきますので、是非!

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