帝国貴族はイージーな転生先と思ったか?   作:鉄鋼怪人

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第八十三話 家族の思いやりってなかなか気付けないよね?

「ハイネセンファミリー」と称される同盟の最初の国民はバーラト星系惑星ハイネセンに降り立った一六万人と途中で分離、ないし逸れた三二万人の計四八万人と言われている。そして同盟拡大により多くの旧銀河連邦植民地や流浪船団(兼宇宙海賊)を国内に併合する中で彼らは長らく同盟政財界の支配層を成し、それは「607年の妥協」まで続く事になる。

 

「607年の妥協」後、少なくない建国以来の一族が没落していったがそれでも尚、名に実の伴う一族は今でも同盟政財界の中核をなしている。同盟政界の御意見番であるグエン家にサンフォード家、ヤングブラッド家、同盟の四大財閥を形成するヘンスロー家、チアン家、スターリング家、ジンダール家が挙げられる。軍人家系に至ってはラップ家、ワイドボーン家、アッシュビー家、アラルコン家等々軽く数十家はあるだろう。

 

 当然コープ家も代々の高級士官を輩出してきた名家だ。宇宙暦785年の時点でコープ家に連なる現役軍人の中で将官は二名、佐官は一四名、尉官二二名、下士官や士官学校・専科学校学生含めれば更に増えるだろう。中央・地方政界の議員に右翼団体の幹部、大企業役員を務めている者もいる。

 

「ディリィちゃーん、ほーら大好きなミルフィーユよぅ~?ほーらあーんして~?」

「自分で食べられるわよ!」

 

 目の前でにこやかに注文したカスタードと苺のミルフィーユをあーんさせようとしてコープに煙たがられている少佐もまたコープ家出身の軍人の一人である。

 

 オーレリア・ドリンカー・コープ少佐、士官学校780年度卒業組、コープの4歳年上に当たる。卒業席次は74位、三大研究科の一つ統合兵站システム研究科出身、大分前に触れたが一時期同研究科の志望者を倍にしたマドンナ様だ。後方勤務本部補給部付、第四艦隊司令部後方参謀付副官、宇宙艦隊第一輸送軍管理課事務、そして現在の第二艦隊司令部後方課参謀という経歴は明らかにエリート士官のそれであった。

 

 そして何よりも大事な事であるが……彼女はコープの姉に当たる。大事な事なのでもう一度言う、コープの姉に当たる。

 

「だってだって、ディリィちゃん昔はあーんしたら食べてくれたじゃないの!嫌いな人参ペーストだってお姉ちゃんと頑張って克服して……」

「マジでそれ以上の私の尊厳を踏みにじらないでくれる!?」

 

 叫ぶようにコープは姉の発言を止める。殆ど悲鳴に近い。

 

「もう……最悪……姉さん、お願いだからこれ以上子供の頃の事言わないで……どれもこれも初等学校に入学する前の事でしょうに……」

「だってだって!久しぶりの顔合わせじゃないの!仕事で私からは会えないのに、ディリィちゃんなら時間に余裕があるのに訪問もしてくれなくて!いつでも可愛い妹が来てもいいように好物のミルフィーユを冷蔵庫に常備してたのよ!?けど来てくれないおかげで私が食べないといけなくなって去年よりも太っちゃったわよ!」

「全部胸部に集中していないかしら?」

 

 拗ねたように語る少佐に忌々し気にコープは毒づく。尚、視線は姉の胸部を怨敵の如く睨みつけていた。

 

 コープ少佐の乱入の結果場が白けたのか、兎も角もロボス少将とフェルナンデス少将は互いに鼻を鳴らしながらそれぞれの艦隊司令部に帰ってしまった、が少佐がまず(ドン引きする勢いで懇願し)フェルナンデス少将からコープを借りる許可を受け、その上コープがホーランドを道連れに、ホーランドが私を道連れに、私のためにベアトが自主的に残留し(天使かな?)、現在五名が今しばらくアイアースの士官サロン内に在席している次第だった。

 

 全く持ってコープとは似ても似つかぬ姉だ。元気、というよりも御転婆娘というべきだろう。朗らかな口調と邪気の無い表情は妹よりも子供らしい。尤もスタイルの軍配は圧倒的であるが……。

 

「おいティルピッツ、姉さんのどこ見ているのよ、この変態貴族がっ!」

 

 そんな私の思考を感知したのか、蔑みしかない視線で罵倒するコープ。

 

「こらっ!ディリィ、折角の御友達に酷い事言わないの!貴方昔から友達作りが下手だったのに……幼馴染なんてメリエルちゃんくらいしか……」

「お願いだから姉さんはこれ以上私の個人情報垂れ流さないでよ!?」

 

 慌てて姉の口を塞ぐコープ。その姿は普段の高慢でプライドの高い姿からは似ても似つかない。

 

「あー、何だ。コープ、愉快な御姉様だな?」

「煩い」

 

ぎろりと睨みつけながらそう言い放つコープ。

 

「ディリィちゃん!」

「もうっ!姉さん、お願いだからこれ以上は本当に止めて……せめてこれ以上は昔話は掘り返さないで……」

 

 額に手をやりながらコープは心底疲れた表情で頼みこむ。いや、それは半ば懇願に近かった。

 

「む~、分かったわ。けど、この遠征の後官舎に一度くらいは来て欲しいわ。お姉ちゃんもディリィちゃんに何年も会えていないから心配にもなるもの……」

「うっ……わ……分かった……わよ」

 

 少しだけ悲しそうにそう言われると実の姉でもあるためか、コープも気まずそうな表情をし、渋々といった面持ちでそう答えざるを得ない。

 

「あらそう!良かったわぁ!ふふっ!じゃあケーキ沢山用意しておかないと!お泊まりしてもいいからね!実はもうディリィちゃんのためのお泊まり用ベッドもお皿も御風呂セットも用意しておいたのよっ!!」

 

 目を輝かせて子供のように嬉しそうにはしゃぐ少佐。その姿を見て「やっぱり泣き落としかよ」等と呟くコープ。

 

「あ、ごめんなさいね。ついついディリィちゃんに夢中でつい忘れていたわ。さっき言ったけどオーレリア、オーレリア・ドリンカー・コープ、第二艦隊司令部に勤務しています。確か……ホーランド君と、ティルピッツ君と、ゴトフリートちゃん……でいいかしら」

 

そのように確かめるように我々の名を尋ねる。

 

「え、ええ……第三艦隊司令部航海課所属、ティルピッツ中尉です」

「第一一艦隊、司令部航海課、ホーランド宇宙軍中尉であります」

「若様と同じく、第三艦隊司令部航海課、ベアトリクス・フォン・ゴトフリート宇宙軍中尉です」

 

 私は困惑しつつ、ホーランドは端的に、ベアトは優美に、同時に警戒するように、三者三様の返事と敬礼。

 

「ああ、やっぱり!ディリィちゃんから何度か名前だけは聞いた事はあるのよ!ディリィちゃんって照れ屋で口が少し悪いけど嫌いにならないでね?この子これでも本当はとっても優しい子なの!小さい頃だって……」

「姉さん?」

「あっ……もう、分かったわよ……」

 

 遂に腰からブラスターを引き抜こうとする妹に、残念そうに口を閉じる姉。コープの目はガチだ。

 

「まぁ、照れ屋な妹がこういうから仕方無いわ、私からのお話はここまで。それはそうと……ねぇねぇ、ディリィちゃんって普段どうなの!?御友達の目線からの御話を聞きたいの!」

 

 と、テーブルから身を乗り出す少佐。子供みたいに目を輝かしており、到底士官学校上位卒業組のエリート様には見えない。

 

「どう、と言われましてもねぇ……」

 

 派閥や出自もあって、我々は別にそこまでコープと親しいと言う訳でも無いのだが……。それに何よりも下手な事言うと正面のコープがブラスターを乱射しかねない。なので……。

 

「……おい、ホーランド。お前が言えよ」

 

こういう事は他人に投げる。

 

「なぜ俺なのだ……?」

 

珈琲を飲み終えると不満気に尋ねるホーランド。

 

「いやだって私もベアトもそんなに詳しくないぞ?お前なら研究科も配属も同じだろう?」

「むっ……」

 

 完全なる正論のため反論を封じられるホーランド。正面に視線を向ければ興味深々、といった表情で待ち構える少佐。それを見て小さな溜息を吐き、ホーランドは上官に対する儀礼的な口調で語り始める。

 

「そうですね……小官の私見の印象で言わせて頂ければ、とても向上心の強い妹殿であると考えます」

「ちょっ……」

 

 何か口にしようとしたコープを今度は姉の方が笑顔を浮かべながら羽交い絞めにして口を塞ぐ。

 

「あっ……」

「ホーランド君、気にせずに続けてね」

 

 御機嫌そうな表情で先を促す少佐。流石にコープの姿に呆れと同情を禁じ得ない表情を浮かべるホーランド。

 

「その……何だ、変な事は言わん。安心しろ」

 

 何かを訴えようとするコープにそう前置きをしつつ、淡々と続きを語る。

 

「……その印象を受けたのは最初に会った時からのものです」

 

 士官学校に入学してそこまで日が経っていない頃の事だと言う。恐らく名前から帝国系であると分かっていたからだろう。次席に帝国系がいる事が気に食わないのか勝負を吹っ掛けられたと言う。戦略シミュレーション、単座式戦闘艇シミュレーション、情報処理シミュレーション、射撃、遠距離狙撃、ナイフ格闘術、徒手格闘術全てでホーランドが勝利した後、憮然とした表情で去っていったという。

 

「ですが二週間程で戻ってきて再び勝負を挑まれました」

 

 結果は前回と同じ、だがコープの腕は前回と別物と言っていいレベルだったという。

 

「僅か二週間であれだけの向上、相当の鍛錬を積んだ結果である事は間違いありません」

 

 元より男女のハンディキャップがある事、自身の二週間の間の成長を含めればかなりの努力の結果である事は間違い無い。同じ男性であれば、或いは前回の自分であれば敗北していた可能性が高い、という。

 

「戦略研究科の講義でも同じです。毎回上位席次や先輩方にも物怖じせず意見し、自習と復習を怠らず、毎回対戦シミュレーションの見学や相手をしては驚かされました」

 

 毎回前回の失敗を分析して次回では徹底的に改善してくるために非常に手強かったという。席次こそ10位内に入らないがそれは主に陸戦個人実技系列の成績が女性であるが故にどうしても苦手であるだけで、指揮官としての成績ならば3位以内、首席自体も決して不可能では無かったとホーランドは語る。

 

「何よりも勝利に貪欲ではありますがとても高潔でフェアな人物です」

 

 誇り高い……プライドが強いともいうが……が故に卑怯な手口を嫌う人物であるという。後輩相手にも虐めには厳しく、シミュレーションの試合でも相手の体調が悪い時は別の機会に変える事は良くあったという(試合中に休憩時間を与えず疲労蓄積をさせたり心理戦は平然と行ったらしいが)。

  

 特に成績を理由にホーランド自身数名の生徒に囲まれて襲われそうになった時はコープが正に襲い掛かかろうという彼らを制止したという。成績で劣るなら鍛錬して追い越せばいいのに暴力に訴えるなぞ同盟軍人として、建国以来の血筋としての誇りは無いのか、と叱責したという。彼らを追い出した後、プライドの高い彼女が士官学校の学生として仲間の恥じ入るべき行動に(渋々とだが)謝罪したらしい。あるいは夜間山岳行軍の際には一時二人で孤立し、襲来する敵兵士役や罠を協力して無力化しながら三日後に本隊と合流した。ホーランドを見捨てる事も出来たのにライバルである自分を好悪を越えて協力しようというのは平然と出来る事ではない。

 

「その点において中尉は極めて自制的な努力家であり、人間性を誇るべきであっても、少佐殿が心配なさるような事は決してない、と私個人としては考えます」

 

 レポートの報告をするような淡々とした、しかし丁寧に事実のみを語るような口調でそう締め括るホーランド。

 

「……ん?どうした?何も変な事は言っていないぞ?」

 

 不思議そうにホーランドは周囲を見渡す。私達はと言えば唖然とした表情で固まっていた。いや、コープだけは俯き加減で沈黙していたが。

 

「いや、何お前青春してんの?」

「いいなぁいいなぁ!青春してていいなぁ!」

 

 私と少佐はほぼ同時にそう言う。私は嫌味に近く、少佐はうきうきした口調であったが。

 

「ホーランド、やはり篭絡されていましたか」

 

 一方ベアトは、ホーランドをスパイか裏切者を見るような蔑みに近い視線を向ける。いやそれ違う……違わないけど違う!

 

「騒がしいな。何か問題でもあったのか?」

「問題無いけど腹が立つ」

「何だそれは」

 

うぜぇ、自覚が皆無な所がうぜぇ。

 

「ねぇねぇ!デートとかしたの?恋人繋ぎで映画とか見に行ったの?ご飯食べにいったりは!?」

「映画鑑賞等の趣味はありませんので……幾度か休日の図書館にて勉強会に行った覚えはあります。勉強会や弁論大会、シミュレーション演習等の打ち合わせを兼ねた食事は取った事はありますが」

「えっ、二人っきり?」

「そういう日もありましたが……」

 

 困惑気味に語るホーランドからすれば全くその手の意識はゼロのようだ。これでコープの方が飄々としていればこちらの穿ち過ぎであるのだが……。

 

「………」

 

 顔を俯かせているが耳は真っ赤だし、頭から湯気が出とる。  

 

「……コープ、大丈夫か?」

「…………殺せ」

 

呻くようにコープは呟く。御愁傷様だ。

 

「あ、ディリィちゃん!どこ行くの!?」

「…………もういや……かえる」

 

 子供みたいな口調で席を立ち、おどおどしくサロンを後にするコープ。背中から邪気のようなものが見えそうなほど精神的ダメージを受けていた。うわ、周囲の奴らが引くように道を譲っとる。

 

「あっ……もう、あの子ったら……!ごめんなさいね?また今度お話ししましょう?皆、あんな子だけどこれからも仲良くしてあげてね?」

 

 立ち上がった少佐は妹を一瞥すると手を合わせて、小声でひっそりとそう告げる。

 

「は、はぁ……」

 

 反応出来たのは私だけだったが、少佐はそれで納得してくれたらしい。我々にウインクすると慌ててコープの後を追う。

 

「……何なんだ?俺は何か妙な事でも言ったか?」

「煩いラノベ主人公」

 

 ……取り敢えず私は自覚皆無なリア充に罵倒の言葉を浴びせる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後方にてこのような馬鹿騒ぎが起こっている間にも前線における小競り合いは激しさを増していた。5月1日までの間に両軍間に生じた小戦闘は合計八〇〇回を超えた。

 

 狭く捻じれた回廊内での小競り合いは近距離戦闘が中心となり、必然的にそれは防御力の劣る駆逐艦や戦闘艇による格闘戦が中心となるため、実弾兵器が多用される事も含め着実に両軍の損害を増大させていた。4月12日から5月1日までに生じた同盟軍の損失は艦艇九八九隻、これとは別に亡命軍の損失も戦闘艦七一隻、大型戦闘艇八八隻に及んだ。

 

 無論、帝国軍の損害も決して少なくなく推定八二〇隻から八八〇隻が撃破されたと推定される。帝国軍が同盟軍を待ち伏せする形となり、防衛衛星や偵察衛星を利用出来る点を鑑みれば寧ろ同盟軍は善戦しているといえた。

 

 一連の戦闘による通信傍受、捕虜の尋問により帝国軍の陣容もかなり明確になった。

 

 主力となるのは別名を「有翼衝撃重騎兵艦隊」とも称される要塞駐留艦隊一万四〇〇〇隻である。司令官はエヴァルト・フォン・ブランデンブルク大将、イゼルローン要塞司令官にグレゴール・フォン・ミュッケンベルガー大将が就き、要塞全体の防衛を受け持つ。

 

 増援部隊としてエドムルト・フォン・グライフス大将率いる第二猟騎兵艦隊一万四八〇〇隻、これは現在第一一艦隊を始めとする前衛部隊が小競り合いを繰り広げる艦隊であり実数は損失を含めもう少し少ないだろう。

 

 第二猟騎兵艦隊と共に帝国軍の増援として展開しているのは第四弓騎兵艦隊である。この艦隊は正規18個艦隊とは違いワープ能力を持たない大型戦闘艇を中核とした艦隊であり戦闘艦一〇〇〇隻、大型戦闘艇八〇〇〇隻、そして戦闘艇移送用の輸送艦一五〇〇隻からなる。司令官は昨年就任したばかりのウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ中将だ。

 

 陸戦隊の援軍としては装甲擲弾兵副総監兼装甲擲弾兵第三軍団司令官オフレッサー大将が従軍する。共に派遣された装甲擲弾兵五万名と軽装陸戦隊八万名は帝国の陸戦部隊の精鋭だ。

 

 艦隊総数は間違い無く三万を超える。四万三八〇〇隻の遠征軍はそこに亡命軍の戦力を追加したとしても到底要塞攻略は困難と言わざるを得ない。

 

 だが今回は要塞の完全攻略を意図したものでは無い。政治的には政権支持率向上のためのパフォーマンスとして、軍事的には帝国軍の同盟勢力圏進出の阻止と来るべき要塞への全面攻勢に向けた情報収集のためである。

 

 そして問題は、そのための具体的な戦略目標である訳で……。

 

「そう言う訳じゃ、此度の遠征の第一目標は帝国軍艦隊の撃滅である、各員はまずその事を肝に銘じてほしいのぅ」

 

 遠征軍総旗艦「アイアース」の会議室にて宇宙艦隊司令長官ローラン・モーリス・ブランシャール元帥は朗らか、というには少々気の抜けた声でそう宣言した。この歳七六歳の白髪に干からびた細い体の老人がもし同盟宇宙軍の実戦部隊最高責任者であると知らなければ恐らく誰もが今すぐにでも病院に行く事を勧めたであろう。曲がった腰に、弱弱しく今にも折れそうな手足、前歯の何本かは抜けていた。軍服に縫い付けられた勲章の数々は彼の煌びやかな軍歴を象徴するものではあったがその枯れ木の如き老体には寧ろその重さが負担になっているようにも思えた。

 

 正直見ていて心配になるような棺桶に片足を突っ込んだ老人、というのがブランシャール元帥から受けるであろう第一印象であった。

 

 尤も、この場に集まる数十名の諸将の中で彼を嘲る者なぞ一人としていない。

 

 ブランシャール元帥の経歴は極めて珍しいものであった。同盟軍士官学校に三度の受験の後にようやく入学、あのブルース・アッシュビーを首席とする730年度卒業組であり、その際の席次は「ゴート」……即ち最下位であった。

 

 同盟軍士官学校の上位卒業生の多くが統合作戦本部や宇宙艦隊司令本部、あるいは国防委員会なり後方勤務本部、正規艦隊や番号付き地上軍司令部に配属される事が常識であるように、下位卒業生の多くが比較的冷や飯食いや危険の多い軍種や部署に配属される事が常であった。

 

 だが、多くの場合士官学校の下位席次の者は決して遊び惚けてその席にいる訳ではない。寧ろ、才能もなく、教育環境で劣りながら尋常ではない努力で士官学校という「エリートの巣窟」に食らいついている者が絶対的多数派なのだ。

 

 故に士官学校下位という集団は時として勇猛な、あるいは粘り強い軍人を生む土壌でもあった。ダゴン星域会戦の英雄アンドラーシュ中将、コルネリアス帝の大侵攻に際して粘り強い抵抗を見せ同盟滅亡回避に成功したムフタード元帥、同盟史上最強のエース艦長ゴエン・ズン准将は士官学校最後尾集団出身であった。

 

 ブランシャールもまた、到底士官学校卒業生が嫌がるような雑務を積み重ね、同期の最後尾で昇進を重ねていった。その姿は同期は当然として後発の士官達からもドン亀とも、河馬とも称された。

 

 だが、軍歴を積む事六六年、730年マフィアは軍部から立ち去り、それ以外の上位席次卒業者も戦死か予備役か、天寿を全うした中、ブランシャールはここにいた。遠い昔、首席のアッシュビーが生きて得る事の出来なかった元帥号を得て、である。そして同盟軍は決して無能者が昇進出来る組織ではないのだ。故に彼を侮る者なぞこの場には存在し得なかった。……極一部を除いてではあるが。

 

「それでは、今次遠征の基本計画を説明致します」

 

 遠征軍総司令部作戦部長ドワイト・グリーンヒル少将は緊張の面持ちを残しながらも紳士としての姿勢を崩さず流暢にソリビジョン上の映像を操作しながら説明に入る。

 

「ブランシャール元帥の仰る通り、我が軍の第一の戦略目標は敵艦隊の撃滅にあります。即ち、我が軍は敵を「雷神の槌」の射程外に引き摺り出し、これを殲滅しなければなりません」

 

 ソリビジョン上の映像はイゼルローン要塞と帝国軍艦隊を映し出す。

 

「現在、過去の遠征データ、そのほか同盟情報部や帝国国内の反体制派、銀河帝国亡命政府等、各方面の尽力の結果イゼルローン要塞の要塞主砲の凡その性能と射程については把握されております」

 

 要塞主砲「雷神の槌」は平時は流体金属層内部に隠れる八基のエネルギー発生装置を兼ねた特殊浮遊砲台が生み出す巨大なビームの柱である。出力は最大で九億二四〇〇万メガワット、ビームの口径はある程度収束・拡散・仰角変更が可能であり、最大射程は五.二光秒から六.八光秒の間であると言われる。

 

「当然この出力の巨砲を前にしてはこのアイアース級の誇る高出力エネルギー中和磁場でも数秒しか保ちません。射線内の艦艇は発射前に射線を離脱する以外の道はまずあり得ません」

 

 そしてそのためには艦隊を散開させるのが一番有効な訳だがそれを許さぬのが狭隘な回廊の地形と要塞駐留艦隊を中心とした帝国軍である。前者の対策のためには寡兵での突入で解決出来るが帝国艦隊に対して劣勢となり、後者との艦隊戦を想定すれば前者の狭い地形がネックとなる。

 

 ならば馬鹿正直に艦隊戦なぞせずに遠方からの質量攻撃……というのは誰でも思いつく事であるが捻じれた回廊内では光速近くまで質量兵器を加速させるのには距離が足りず、それを果たしても艦隊の迎撃網と要塞砲、そして厚い装甲が待ち構える。その上アルテナ星系を周回する要塞は傍目では認識しにくいが動いており、最悪要塞自体がスラスターで周回速度を加速ないし減速すれば誘導装備がない質量兵器ならば容易に回避可能なのだ。

 

 いっそのこと要塞を無視する、という案も無い事はない。要塞砲と回廊危険宙域ぎりぎりの隙間は確かに存在する。だが余りに狭くそこを通るならば艦隊は密集ないし極度に薄く少数での航行となる。要塞駐留艦隊の良い的だ。ワープして無視は更に危険だ。回廊の向こう側の様子が分からなければ事故の可能性もある。それ以上に恒星アルテナの無駄に大きな質量の影響もありワープでの通過は危険を伴う(だからこそ帝国はアルテナ星系に要塞を築いたのだ)。

 

 回廊封鎖は更に無意味だった。イゼルローン回廊が航行不能になればフェザーン回廊が主戦場になる。イゼルローン回廊側より兵站・防衛設備の整っていないフェザーン回廊側での戦闘は同盟側に不利となる(そもそもフェザーンがそのような策を許すとは思えないが)。

 

 即ち同盟軍はこの要塞を攻略しなければいつまでも帝国軍の脅威に晒されてしまう訳だ。

 

「よって我が方としましては要塞砲射程外……所謂D線の外側。要塞から七光秒の距離を維持します。左翼を主力たる第二艦隊、右翼に機動力に優れた第一一艦隊を展開。第三艦隊及び各独立部隊、そして「特務部隊」は中央部ないし後方に待機、遠征軍司令部もここに置かれます」

 

 帝国軍は当然要塞砲射程内に引き摺り込むように挑発行動を行うだろう。だが挑発に乗ってはいけない。

 

「特に各艦隊司令官には部隊の統制に尽力して頂きたい。要塞戦においては近距離通信も困難となり得ます」

 

 艦隊は当然ながら要塞の保有する通信妨害能力はある種の脅威だ。単純な話だ。同じ通信妨害装置でも艦艇のそれより要塞の持つそれはサイズを気にしない分その出力は強力だ。その上狭い回廊内では散布型のジャマーの密度も高い。最前線では下手すれば隣の艦艇との通信も困難となり得た。

 

 そうなれば連絡艇や光通信による情報伝達以外の道はない。連携した戦闘が必要な最前線での砲戦においてそれは大きなデメリットであるし、部隊の統制が取れなくなり陣形の崩壊や一部部隊の突出もあり得る。

 

「分かっておる。あの忌々しい要塞に行くのはこれで三度目だ。あの激しい妨害電波の事は良く理解している」

 

 第二艦隊司令官マイケル・ワイドボーン中将が腕を組み思い出すのも憎らしそうにする。

 

「この日のために訓練を積み重ねてきた。我が艦隊は元より対要塞戦を想定している。どれ程の通信妨害を受けようと問題はない」

 

 ジャスティン・ロベール・ラップ中将の言は決して自信過剰ではなかった。第一一艦隊はこの日に備えマルアデッタ星系にて段階的に無線通信やデータリンクを禁止した上で厳しい戦闘訓練を積み重ねて来たのだ。

 

「それで、計画の変更は?」

 

ヴァンデグリフト中将は作戦の確認を行う。

 

「現状新たな課題要素はありません。当初の計画通りに第二・一一艦隊が敵を引き摺り込んだ、と言えるタイミングで「特務艦隊」を投入致します。そこから先は第三艦隊、及び司令部直属部隊の出番となります。また状況によっては第一一艦隊による要塞へのミサイル攻撃敢行も想定されます」

 

 グリーンヒル少将が補足説明する。第一一艦隊は第二・三艦隊に比べ機動力の優れた回廊内での戦闘向けの編制である。機会さえあれば軌道戦力の一部を持ってミサイル攻撃で要塞への一撃離脱攻撃も視野に入れられる。

 

「……我らが艦隊の配置は如何に?」

 

 会議室の一角より不満気な声が響いた。グリーンヒル少将がそちらに視線を向け困り果てた表情をほんの一瞬ではあるが作る。

 

 黒いコートにケピ帽という明らかに同盟軍とは異なる出で立ち。この人物の所属する組織において将官の軍装は各位のオーダーメイドであるための事であった。

 

「貴軍につきましては、ここまでの消耗も鑑み、決戦時に備えた予備戦力として後方待機を願いたいと考えております」

 

 亡命軍遠征随行艦隊司令官兼宇宙艦隊副司令長官カールハインツ・フォン・ケッテラー大将はあからさまに不満気であった。

 

「即ち貴官は我々に雑務のみを押し付け、重要な本番では御払い箱と言いたいのかな?」

「そのような事は……」

「それとも殿役かな?その位置では全軍の最後尾からの撤収になろうからな?」

 

 鼻を鳴らす大将。口元に白髭を生やしたふくよかな初老の亡命貴族はあからさまに蔑むような視線を周囲に向ける。それは単なる立場的な理由だけでなく、より根源的なものを感じられた。即ち帝国貴族が家畜を見る視線である。

 

「大将殿、言葉が過ぎますぞ……!」

 

 遠征軍総参謀長ゴロドフ大将が眉間に皺を作りながら指摘する。立派な顎鬚を生やした五十代の偉丈夫は非難するような目つきを部外者に向ける。

 

「ふん、貴族主義者め」

「本国から戦功を催促されているのでしょうな」

 

 ワイドボーン中将とラップ中将が顔を寄せ合って小さな声で語り合う。共にハイネセンファミリー系の中で長征派に近い保守系の二人は顔馴染みの友人でもあった。艦隊成立以来、比較的派閥色の薄い第三艦隊司令官は二人の会話に加わらず黙り込む。

 

 そもそもが此度の遠征軍自体、長征系主導の遠征だ。主力艦隊三個のうち二個がハイネセンファミリーの影響が強い艦隊。遠征軍総参謀長も同様だ。遠征軍司令官こそ統一派出身であるが、それは各派閥の意見調整役として、また失敗時の首切り要員だ。どの道歳が歳であるし、元帥自体この手の面倒な任務を成功させる事で昇進を重ねていった事も含め軍・政両面で納得の人事だった。

 

 一方、帝国系の士官の従軍率は過去三回の遠征と比較しても一番低い。数少ない帝国系士官の大半は第三艦隊や独立部隊所属だ。

 

「前回は帝国系主体だったからな。国防委員会と議会としてはバランスをとった形だな」

 

 亡命軍司令官と総参謀長を始めとした司令部要員の対立を傍目にワイドボーン中将は語る。

 

 前回は帝国系の影響の大きい第六艦隊が従軍、それどころか副司令官まで兼ねていた。イゼルローン要塞外壁に史上初めて張り付いた部隊も帝国系だ。遠征自体は失敗であり、市民からは不評であったが相対的に軍内での帝国系の発言権は向上した。各勢力間の均衡を崩すのを良しとしない統一派としてはここで長征系に功績を上げる機会をやろう、と言う訳だ。

 

「賢しい奴らですな」

「だが、乗るしかあるまいからな。結果として忌々しいあの貴族主義者共の台頭を抑える結果にもなる」

 

 斯くして、政界において一勢力が突出せず牽制し合う状況が保たれ、同盟の統一が維持される訳だ。

 

「これ以上軍の秩序を乱さないで欲しいものですな。貴軍の戦力では万全の帝国軍と合い戦うのは困難である事は自明の理でありましょう?」

 

 第一一艦隊航海参謀フェルナンデス少将が発言する。

 

「その発言は我らに対する侮辱発言と受け止めて宜しいか?」

 

 ケッテラー大将はフェルナンデス少将を睨みつける。両脇に控える亡命軍士官も剣呑な雰囲気で少将を凝視する。

 

「実際、正面からの砲戦では足手まといであるのは本当でありますがな」

 

ラップ中将は皮肉げに語る。

 

 事実亡命軍宇宙艦隊は練度こそ同盟軍正規艦隊に匹敵するし、部隊間の連携も多くの旧私兵軍将兵とその子孫が在席しているため小部隊でならば問題ない。だが大規模会戦となる話は別だ。同じ主家の私兵軍同士なら兎も角他家の私兵軍との連携戦闘は苦手であるし、そこに徴兵された一般平民と旧帝国軍投降兵や傭兵出身者まで加わっている。

 

 その上艦艇も統一されていない。同盟軍と帝国軍、更にはフェザーン傭兵向けの戦闘艦艇、そしてそれらの艦艇の中で更に新型と旧式が混在している。回廊内での制宙権をかけた小規模戦闘や乱戦、哨戒、後方警備なら兎も角、最新型のみで構成される正規軍との正面戦闘は不利であった。

 

 事実ケッテラー大将に向け今まさにフェルナンデス少将がそれらを指摘すると蔑みの表情こそ向けるが反論の口を開けないでいた。奴隷共の末裔に指摘される事は吐き気がするほどの屈辱であるが一方で大将の軍事的才覚が理性的にその言葉を受け入れているからであった。

 

「まぁまぁ……少将も大将殿も、そういうでない。友軍同士で喧嘩する事もなかろう」

 

 ほっほっほっ、と気の抜けた、状況を理解しているのか怪し気な笑い声を上げる総司令官。だが歳の功か、それとも一種の才覚か、その姿は不快に思うよりも、見ているだけで力が抜けそうになるものだった。

 

「ふむ……しかしまぁ、士気の高いのは良い事じゃ。のぅ、総参謀長、そうは思わんかね?」

「は、はぁ……それは…仰る通りで……」

 

 いきなり話を振られたためか曖昧な返事をするゴロドフ大将。

 

「あー、そうじゃそうじゃ……確か……えーと……参謀達からの意見書に……ああ、これじゃなぁ」

 

 震える手付きでテーブルの上の資料をめくっていき、ブランシャール元帥はようやく、といった体で目的の物を見つけ出す。

 

「あー、第三艦隊、航海参謀ロボス少将はいるかな?」

「はっ、こちらに」

 

 席の一角より立ち上がる肥満気味の参謀。

 

「これこれ、君の提出した意見書だが……少し説明してくれるかね?」

 

 資料を振りながら頼み込む元帥。少将は一度咳込み、説明を開始する。

 

「私の提案と言うのは後方予備戦力に対する有効利用に関する意見であります」

 

そう言って手元にタブレット式のコンソールを受け取り中央のソリビジョン画面を操作する。

 

「無論、皆様に説明するまでもなく予備戦力は有事に際して機動的に運用するために軽視するべきものではありません」

 

 当然ながらこの場にいるのは殆どが将官、どれ程階級が低くても戦略・戦術の指導を受けたエリートの佐官や尉官である。予備戦力の必要性を学生に対するように長々と説明する必要は皆無だ。

 

「ですが回廊という地形においては、これら予備戦力の必要時における迅速な移動が困難であり、いざという際に遊兵となる事態が度々発生しえたのも事実です」

 

 ここまで口にして周囲を見やる。何等かの意見が無い事を確認し、ロボス少将は続ける。

 

「故に必要以上の予備戦力の維持は却って部隊間の移動に問題を発生させ得ます。寧ろ予備戦力の一部を小規模な機動戦力として運用するべきと小官は考えた次第です」

 

 ソリビジョンが動き出す。

 

「ここで亡命軍の特徴が利用出来ます。元よりも大規模な艦隊戦よりも小部隊による運用に秀でる当部隊を戦線における伏兵部隊の捜索・迎撃のほか対戦闘艇戦闘、一撃離脱戦法による奇襲部隊としての運用を考えさせていただきました」

 

 立体ソリビジョンの中では亡命軍の運用法についての例が映像として映し出される。

 

「特に最前線では無線通信による部隊間の意思疎通が困難であり、その点では亡命軍に一定の優位がありましょう」

 

 各家の私兵部隊単位ならば連携能力は同盟や帝国の正規軍よりも高い。所謂阿吽の呼吸で縦横無尽に動き回るであろう事は間違い無い。

 

「どうじゃね?我が軍としてもそう悪い話ではないと思うのじゃが。餅は餅屋とも言うしやらせてみても良いとは思うがのぅ」

「とんだ茶番だな」

 

 元帥の態度に小さく、隣のラップ中将しか聞こえない声でワイドボーン中将は呟いた。何という事もない。予めそういう流れの出来レースなのだろう。同盟軍にとっては被害を減らし、亡命軍に戦功の機会をやるための予定調和。フェルナンデス少将以下数名が反対意見を出すがその辺りも計算済みに違いない。

 

「我々にとっても帝国人同士で血を流してくれれば万々歳、と言った所ですかな?」

「それでいて会戦の決定的な勝敗には関わらせない、と言う訳だ。戦功にはなるが所詮は嫌がらせ以上の効果は無いしな、それにしても……」

 

 ワイドボーン中将はロボス少将を一瞥する。ある意味では哀れな立場でもある。アルレスハイムで御山の大将ならぬ御山の皇帝をしている一族の妾腹と成り上がりの非ハイネセンファミリーの間の生まれという面倒な立場なのだ。帝国人社会の中でも妾腹の上、血の半分は余所者のそれである。決して肩身が広い訳でもあるまい。

 

 そして士官学校の席次は上下が因縁の建国以来の一族出、役職からは中間管理職の悲哀が漂う……尤も上についても禄でも無いのだが。

 

「同情はせんがね」

 

 彼方側に立つ以上それを基に甘く接するつもりはない。我々建国以来の一族が奴らを監視しなければいつ同盟が貴族共に乗っ取られるか知れたものではないのだ。

 

 結局、暫しのやり取りの後この案は採択された。驚きも何もないまさしく予定調和。その後も幾つかの議題と討議が行われ、一時間程で会議は終了する。

 

「そういえば、中将の甥はどうかね?」

 

 席を立つ前にワイドボーン中将はラップ中将に尋ねる。彼の甥はワイドボーン中将の孫と同じ士官学校の学生、しかも同年代であったが子供時代は病弱で軍人になるのも危ぶまれていた。

 

「まだ陸上実技面や航空訓練では不安がありますが、それ以外は問題ありません。成績も優秀です」

「そうか、それは良かった」

「ですが、少々変わり者でして……エドワーズの所の娘は分かるのですが、それ以外の友人が……」

 

 幼馴染であるエドワーズ家の娘とは仲が良いのだが、それ以外の「同胞」とはどこか馬が合わず、寧ろ非ハイネセンファミリー系の学生達とばかりつるむ事が多いのだという。

 

「マルコムからもその話は聞いている。あの子は病院暮らしが長かったからなぁ」

 

 その分同世代の「同胞」と仲を深める機会が少なかった。そのためどこか溝があるのかも知れない、等とワイドボーン中将は慮る。見る限りは決して内気な子では無いし、闘病中に見舞いに来た時は笑顔を見せる健気な少年に感じられたのだが。

 

「虐めは受けてはいないのだろう?暫くは自由にさせてやるべきではないかな?」

「……そうですな。いやはや、少々過保護過ぎてしまい、妻にも呆れられてしまいましてなぁ」

 

 ラップ中将は苦笑して誤魔化す。彼の子供のうち軍人にならなかった娘一人を除く息子三人は悉く帝国との戦いで戦死していた。その分甥に息子達を重ねすぎる面があった。

 

 ラップ中将は資料を整理すると立ち上がった。二人はその後は軍務とは関係のない雑談に興じながらシャトルへと向かう。これが最後の息抜きの機会であると理解していたからだ。

 

 この二十時間後、5月2日1600時、自由惑星同盟軍イゼルローン遠征軍先鋒部隊は遂に漆黒と流血の貴婦人をその索敵範囲内に捉えたのだった……。

 

 

 




何故かアリシゼーションを見ていたらアリスとユージオが子供時代のジェシカとラップで脳内変換された

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