帝国貴族はイージーな転生先と思ったか?   作:鉄鋼怪人

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第百六十三話 親の愛情の形は人それぞれ(キャライメージ画像有り)

「それでは包帯を外します。一瞬視界が不鮮明になるかも知れませんが安心して下さい。接続している視神経が信号に慣れていないだけの事です。すぐに鮮明になるでしょう」

 

 眼科医局長はそう説明してから私の左目を覆っていた包帯をほどいていく。

 

「っ……確かにこれは直ぐには慣れないな」

 

 左目の瞼を開いた私は室内の光に目を細める。光コンピュータの内蔵された義眼が光量を調節していき、左目の視界は次第に鮮明に移り変わっていく。

 

「視界が見えるのなら神経は接続されています。義眼が動くか動作を確認して下さい」

 

 眼科医の言葉に従い生身の眼球を動かすのと全く同じように私は義眼を動かしていく。その動きは滑らかでほぼタイムラグはない。流石フェザーンの最高級ブランドである。

 

 最高級ブランドと言っても、この手の義眼は消耗品であるのが前提だ。そのために寿命が長くなく何度も買い換えないといけないのが玉に瑕であるがその辺りは妥協するしかあるまい。本来ならば培養した生の眼球を移植したくはあるが……それはどこぞの獅子帝の脅威が消えた後で良かろう。移植手術自体は後からでも可能だし、どうせ義眼の交換も全て他人の財布持ちである。私の財布は一切痛まないので何の問題もない。

 

「神経接続は良好です。後遺症や身体の拒絶反応も無さそうですね。この分でしたら今年中に退院は可能でしょう」

 

 私の左目の様子を確認し、教授は断言する。

 

 所謂大学病院というものは街の自営開業医と違い、直接的な医療行為よりも、寧ろ最新の設備や理論に基づいた医学教育・臨床・研究を行う側面が強い。そしてフェザーンに数ある病院でも最も先進的な医療設備と潤沢な人材を擁するのがフェザーン医科大学付属病院である。

 

 宇宙暦8世紀において銀河で最も栄える惑星の最高峰の医療施設である。その設備と体制は銀河一であるし、実際銀河中から富裕層や難病患者が集まるためその医療ノウハウもまた充実している。更に言えば私の入院については非公式ながら銀河帝国亡命政府と自由惑星同盟政府、フェザーン自治領主府、そして銀河帝国からすら細心の注意を払って専念するように口添えされていた。既に耳の再生治療や切り傷の縫い合わせ等は名医達によって丁寧に行われて、最早その跡すら分からない。

 

 当然、今目の前で私を診断している人物もまた唯の眼科医ではない。フェザーン医科大学付属病院眼科医局の教授であり、そのトップの医局長である。第六世代型光コンピュータ義眼の開発や急性虹彩異常症候群の治療手術方法の提案、変異性角膜萎縮症の原因究明等で知られるその道では五本の指に入る高名な医者だ。その発言を訳もなく疑う理由はないし、更に言えば私のような『よくいる患者』の診断をさせるよりも医療研究に従事させる方が余程人類社会の発展のためになるまである。

 

「そうですか。それは幸いです。……流石にいつまでも病院に缶詰にされるのは退屈ですからね」

 

 ははは、と私は社交辞令染みた笑みを浮かべる。私がこの病院に入院してから今日で既に三週間が経とうとしていた。

 

(尤も、入院してなかったらそれはそれで憂鬱な仕事をこなす事になるんだろうけどね……)

 

 窓から見える暖かそうな秋口のフェザーンの青空に視線を移し、私は三週間前の夜に交わされた糞みたいな交渉を思い返すのだった……。

 

 

 

 

 

 

『やっほー!ティルピッツ家のヴォルター君、見えてる~?』

 

 液晶ディスプレイの中から野太い、何処か頭の悪そうな声で手を振るのは銀河帝国においても五本の指に入る名門貴族カストロプ公爵家の当主オイゲン・フォン・カストロプその人であった。手を振るごとに皮下脂肪で満たされた顎や頬がプルプルと震える。その不摂生を連想させる肥満体は到底頑健で健康な肉体を賛美する帝国の有力者とは思えない。

 

「……これはこれはお初にお目にかかりますカストロプ公、ティルピッツ伯爵家の長子ヴォルターで御座います。このような品のない出で立ちで御会いする事、見苦しかろうと存じますがどうぞご容赦を」

 

 私は一瞬帝国の大貴族にそぐわな過ぎる出で立ちのカストロプ公に唖然とし、しかし電磁警棒の一撃で未だ痙攣する筋肉を無理矢理動かして立ち上がり、怪我を感じさせないように宮廷作法に基づいて頭を下げる。端から見れば馬鹿馬鹿しくもあるが相手が相手だ、ここで見くびられる訳にはいかなかった。

 

『ふむふむ、挨拶は大事だからのっ!結構結構、あっ!少し待ちなさい』

 

 そう言うとカストロプ公は画面から見えない所に控えていた女中にジュースを飲ませるように命令する。恭しく差し出されるグラスのストローを咥え、下品な音と共に公爵はジュースを飲んでいく。ゴクゴク、とディスプレイから音が響く。

 

『ぷはぁ、やっぱりフルーツジュースはマーシャルの果物を使うに限るのぅ。あそこはシャンプールのように暑くての、お蔭で果物が甘いわ甘いわ。それにエキゾチックな南国風の美女が沢山いての、ぐふふ……!!』

 

 口元から飲みこぼしのジュースが零れる事を気にする事なく下品な笑顔でどうでも良い事を捲し立てる公爵。周囲の使用人達が淡々と零れたジュースを拭き取っていくがそんな事気にも止めずに話し続ける。

 

『まぁ、儂の南国の島でのプレイボーイ振りを語るはまたの機会として……ふむふむ、これはまた随分と手酷くやられたみたいだな可愛い可愛い息子よ。その姿、まるで巣から追い出された溝鼠のように惨めじゃあないかな?』

 

 血塗れでズタボロな息子に、心配すると言うよりも嘲笑するような口振りでカストロプ公爵は声をかける。実際その表情は満面の笑みを浮かべていた。それは明らかに血の繋がった息子に向ける類いのものではなかった。

 

「グゾオヤジイィィィィイッ!!!フザケるなよぉぉぉ!!?デメェェェェ人の楽しみに勝手に首を突っ込む積もりかあぁぁぁぁッ!!!?」

 

 最早獣の咆哮に近い声でマクシミリアンは叫ぶ。その鋭い怒りに満ち満ちた眼はこれまでで一番殺気立っていた。彼の態度もまた、実の父親に向けるべきものとは思えない。

 

 尤も、ディスプレイ越しとは言え、カストロプ公は息子の怒声に鈍感そうな態度をとる。マクシミリアンの怒りを見ても興味無さそうに視線を此方に移して鼻をほじる。

 

『さてさて、ヴォルター君。儂はのぅ、今とってもとっても傷ついておるのだよ。見ての通り可愛い息子がこんな哀れで無残な敗北者の姿を晒しておるのだ。実の父親として、そんな痛々しい姿を見ると心が痛んで仕方ない。分かってくれるかな?』

「私も父は兎も角、母が今の私の姿を見れば卒倒するでしょうね。御気持ちは分かりますよ。……ですがその事で私を追及する積もりならばそれはお門違いというものです。御誘いをかけに来たのは息子さんなんですから。その辺りの事はどうせご存じでしょう?」

 

 私は公爵に尋ねる。このタイミングで態態ドローンで中継して顔を見せたのだ。ここに至るまでの推移をこの公爵は間違いなく把握している事だろう。映像を見るに公爵自身は領地にいる、そしてこんな通信をオープン回線でやる筈もないので秘匿通信でしている筈だ。そして私的な秘匿通信を使うのならば事前に中継地を準備する必要もある。昨日今日で出来る事ではない。

 

 つまり、この男は息子のふざけたお遊びを最初から最後まで把握していたと考えるのが妥当な考えだ。

 

『うーむ、そう言われてしまったら儂としては反論出来なくなるのぅ。じゃが、一つ忘れとらんかね?』

 

 顎を擦り、心底困ったといった表情を浮かべる肥満体はしかし次の瞬間には何の気無しに手を挙げる。そして続けた。

 

『君達の生殺与奪は儂の掌にあるのじゃぞ?』

 

 カチャカチャ、と銃器を構える音が室内に響き渡る。上を見ればそこにはマクシミリアンが連れて来ていたカストロプ公爵家の私兵達が銃口を此方へと向けていた。

 

「若様……!!」

 

 私を庇うように立ち上がるテレジア。しかし、私は彼女の肩を掴みどかす。そして肩をすくめて問い掛ける。

 

「随分と品のない挑発ですね。名門カストロプ公爵家の当主らしくありませんよ?」

 

 私の嫌みっぽい言い様に、公爵は笑みを崩さずに言い返す。

 

『ふむ、ヴォルター君。君はこれが挑発に見えるのかね?』

「えぇ、それも安い挑発です。あるいは脅迫ですかね?どちらにしろ、余裕がない様子な事で」

 

 敢えて嘲るように私は言い捨てる。公爵がこの場で私達を殺す積もりならとっくの昔に死んでいるだろう。少なくとも態態顔を見せて無駄口を叩く必要はない。そして公爵は放蕩者な息子に比べれば遥かに合理主義者で知られている。ともなれば先程の発言の真意は威嚇であり、本音では私達と交渉を望んでいると考えられる。……多分ね。

 

(その実、息子と同じで面倒臭い奴だったらかなり困るが………)

 

 子が子であれば親も大概であっても可笑しくない。内心ではドキマギしっぱなしであるが……幸いな事に、今回はどうにか予想が当たったようだ。

 

『……ふむ。まぁ、そこそこ交渉する事が出来る頭はあるらしいな?伯世子殿?』

 

 そう語ると共に、ディスプレイ上に映るカストロプ公の纏う空気は明らかに変わった。どこか間抜けな表情は口が裂けそうな程釣り上げられた笑みに変わり、脂肪で重そうな瞼で半開きのその瞳を一層細く、しかし鋭くする。その口調もまた馬鹿貴族から明らかに知性を感じさせるものに変わっていた。

 

(演技って訳ね……)

 

 恐らくは肥満体なのも、馬鹿っぽく振る舞うのも周囲を油断させる演技なのだろう。あるいはリトマス紙か。

 

 どこまで効果があるかは兎も角、自身の道化ぶりを見せつけ、それに相手がどのような態度を示すかで相手の力量を測り、どのような交渉をするべき相手なのか探っているのだろう。あるいは油断を誘う事も狙いかも知れない。

 

『……実の所、今回の騒動は私も心苦しく思っていてね。全く、強欲なフェザーン人共の口車に乗って息子が迷惑をかけた。まずはそれを謝罪しよう』

 

 そういって、完全に形式的な謝意を口にする公爵。背後ではその息子が怒り狂ったように何やら叫ぼうとしているが使用人達によって迅速に押さえつけられてその行動は阻止されていた。

 

「謝罪の言葉は受け取りましょう。……ですが、まさか口でだけ謝れば許されるとお考えではないでしょう?此方は色々と損害を被っておりましてね。名門カストロプ家の家名に相応しい誠意を見せて頂きたいと考えております。何を以て証明して頂けますでしょうか?」

 

 当然ながら、今の謝罪だけでこの騒動が収拾される訳ではない。どこで手打ちにするか、生じた損害を誰が受け持つのか、責任問題は誰に押し付けるのか、課題は幾つもある。

 

『当然、儂もそんな高慢ではないよ。これでも儂は取引では『誠実』な性格だと自認しているのだがね?君に、いや君達が喉から手が出る程欲しがるだろう手土産を用意させて貰っているよ』

 

 公爵はニタニタと、これから取って食う獲物を吟味する肉食獣染みた笑みを浮かべていた。一目見るだけでその加虐性が分かるような表情だ。そして、そんな表情で公爵はその提案を口にした。

 

『儂は同盟政府の三〇年満期長期戦時国債一〇〇〇億ディナールを、無利子で負担する準備が出来ている』

 

 当たり前といった風に、あるいは大した事ではないかのように抑揚もなくそう答えるカストロプ公。しかし、その発言の中身は自由惑星同盟政府や銀河帝国亡命政府にとって、余りにも甘過ぎる誘惑だった。

 

「……成る程」

 

 暫しの沈黙の後、私はカストロプ公の狙いを理解した。どうやら公爵はこのままやっても逃げ切るのは難しいと判断したらしい。そして出血を最小限にするために、逆に手打ち話を提案してきたという訳だ。

 

(流石カストロプ家、見切りと思い切りが上手いなっ……!)

 

 それが足下を見られた提案だと、法の正義から余りに逸脱した事だと理解していても、それでも尚、公爵の提案は余りに魅力的過ぎた。長期貸付国債一〇〇〇億ディナール分を無利子でかつ、即決で引き受ける事が出来るような存在なぞ銀河に五人もいない。余りにも条件が良すぎてこの場で直ぐに取引に応じてしまいたくなる。

 

「我々がそんな確証もない言葉に靡くとでも?」

『靡かせようなどと、心外な言葉だねぇ。儂は本当に心からの謝罪のために提案しているのだがね?……無論、儂とて大金をそう簡単に動かせる訳ではない。変な妨害が入ればそれも簡単にはいかなくなるだろうなぁ?』

 

 カストロプ公をこのまま三国の反カストロプ陣営で追い詰める事は不可能ではあるまい。不可能ではないが……容赦なく摘発しようものならば、死なば諸共とばかりに彼らが暴発しかねない。この時期にそんな事が起きて見ろ、借款交渉を進めるのは困難になるだろう。

 

 いや、既にスペンサーが仕出かした事でフェザーンの親同盟派はガタガタだ。当然スペンサー以外にもカストロプ公に繋がっている者はいるだろうし、そもそも親同盟派のナンバーツーが消えてしまったのだ。まともにやり合って借款がスムーズに進むと考えるのは楽観的過ぎる。

 

 そうなればカストロプ公の提案は渡りに船だ。今現在最も迅速に同盟軍の出兵予算を支払えるのはカストロプ公位のものだ。そして同盟とフェザーンでカストロプ家の密貿易ネットワークを摘発してみろ、火の粉は帝国にも波及する。カストロプ家がその火の粉をどのように払うのかは兎も角、その資産の少なからずは帝国政府のものとなるだろう。政治的にもかなり追い詰められよう。

 

 そうなればもう一ディナール分すらカストロプ家は同盟国債の購入は難しくなる。同盟政府と亡命政府が借款を成功させるためにはカストロプ家と妥協し、その莫大な資産で同盟国債を購入してもらうのが確実なのだ。

 

『無論、それだけではない。今回の騒動による損失……死傷者とその遺族への補償に市街での破壊されたインフラの被害、自治領主府ビルの修繕費、そして……勿論君のその左目の補償金も支払おう』

「その代わりに摘発を止めろ、という訳ですか」

『時間が欲しいだけだよ。儂も無実の罪を被せられる等不名誉な事は御免でね。無罪潔白の証明は容易いんだが、手間だけはどうしてもな』

 

 白々しく肩を竦める肥満公爵。今の言葉を意訳すれば「証拠を揉み消す時間を寄越せ」という所だろうか。カストロプ家の無罪潔白を訴える発言程に嘘臭い言葉もそうそうお目にかかれまい。

 

「公爵の仰る取引内容については把握致しました。……ですが、敢えて聞きたい。公爵ならばこの自治領主府ビルに自治領主なり、亡命政府の使節なりが滞在している事は御存じの筈。何故、態々私に御声を?」

 

 公爵程の人物である、同盟・亡命政府・フェザーン自治領の各有力者がどこにいるか把握しているであろうし、私があくまでも使節団の護衛兼随行員に過ぎない事も分かっている筈だ。私にはここまで重要な提案に対する決定権なぞない。私に提案するのは無駄とは言わずとも優先順位は本来高くない筈だ。

 

 それ故、私は公爵が何の目論見があってこのような場で私なんぞにこんな重大な提案をしているのか、その真意を測りかねていた。

 

(一体何故……?)

 

 怪訝な表情を浮かべる私に、カストロプ公爵はその答えを口にする。

 

『ぐふふ、分からぬかね?そう難しく考える事もあるまい。これはな、つまりは獲物にブランドの付加価値を与えているに過ぎんのさ』

 

 カストロプ公爵は私の彼に向ける表情から疑問の内容を予想し、答えを口にした。こいつ、何意味不明な事言っているんだ?

 

 私の内心を見透かすように、公爵は頬杖をついて説明していく。

 

『いやいや、別に可笑しな趣向で称賛している訳ではないよ。確かに先程口にしたように血の繋がる息子がここまで惨めに敗れるのは想定外ではあるし、一族の恥ではある』

 

 だが、と公爵は注目するようにそう呟き、言葉を続けて口にする。

 

『だが、だからこそ意味がある。中々に問題児ではあるが息子はそこらの有象無象の貴族共とは格が違う、天才と言っても良い程さ』

 

 元々、門閥貴族はコスト度外視の教育環境のお蔭で性格は兎も角、平均的な能力は大半の平民とは隔絶している存在だ。カストロプ公が言うにはマクシミリアンは、そんな貴族達の中でも群を抜いて優秀なのだと称賛する。

 

「息子自慢ですか?何故今そのような説明を?」

『息子自慢?ふむ、当たらずといえども遠からずだな。でだ、そんな素晴らしい息子だが、だからこそマクシミリアンは中々に困った奴でな。何事にも本気にならんし、すぐに飽きっぽくてな。儂も中々苦労しておるのよ。それを……』

 

 そこでカストロプ公はこれまでで一番の笑みを浮かべた。それは明らかに人を虐め、いたぶる際に浮かべる類いの、ものだった。

 

『君は息子相手にここまで立ち回って、まして溝鼠の如く惨めな姿に変えて見せた。素晴らしい、実に素晴らしい。見てみたまえ、息子のあの憎悪に満ちた顔を。復讐に燃える顔を。折角息子が全力で潰したいと思える強敵が現れたのだ。父親としては息子の成長のために敵を一層成長させたくなるじゃないか?』

 

 パパ頑張っちゃうぞ?等とほざく公爵様である。あー、つまりこれはあれか。

 

「私は発破材かよっ!?」

 

 恐らくは、カストロプ公爵は息子を奮起させるため(そしてそれ以上に息子と私への嫌がらせのために)今の提案をしたのだった。確かに私には提案の決定権はない。だが、カストロプ公が私を通じて提案する事で私に態と功績をやって、息子が私を追い落とすために向上心を高める事を期待しているようだった。

 

 あるいは、息子が敗れた事に対して私を持ち上げる事で被害軽減を図る側面もあるのかも知れないが……どちらにしろ、カストロプ公は私を平然と貴族社会の火中に放り投げてくれた訳だ。というかマクシミリアン君まだ私を狙う積もりなの?マジ洒落にならないんだけど?もう二度と会うのもご免なんだけど?

 

『くくくっ!あの野蛮人から逃げ切って、あまつさえ我が息子をこれ程までにぼろぼろにしてくれたのだ。君を仕止めて武威を示そうと血気盛んな青年貴族達からモテモテであろうな』

「ファックだっ!門閥貴族なんて皆糞ファックだ!!」

 

 恐らくは息子が敗れた事をこの糞デブはこっそりと、そしてガンガンと宮廷で噂してくれるだろう。あの獅子帝相手にすら狩りの獲物としてその首を狙おうとしていた青年貴族達の事である。私の首にどれだけの価値を見出だしてくれる事か……おい、笑えないんだけど?

 

「んんんんんんっ!!!!」

 

 口を塞がれたマクシミリアンが目を飛び出さんばかりに見開き、怒り狂ったように顔を赤くさせる。残念ながら叫び声こそ使用人達に口を塞がれて言語化されなかったが大方の内容は予想出来た。自分の獲物を横取りさせるような真似をする父親にマジギレしているのだろう。おい、それキレる所違くね?

 

 正直、だからお前その怪我で元気あり過ぎない?と思いつつ、私は視線をディスプレイ上の公爵に戻す。

 

「成る程ね。流石は何でもかんでも再利用する守銭奴のカストロプ公だ、相手に与える功績すら嫌がらせに使うなんて感心するよ」

 

 一ミリも尊敬しないけど。

 

『くくっ、ヴォルター君程の人物からの称賛だ、有り難く受け取っておこうかの。さて、では……』

 

 慇懃無礼に私に礼を述べるカストロプ公は、次の瞬間視線を遠くに向ける。それは私の背後、そして恐らくは騒ぎ立てるマクシミリアンよりも更に遠くを見てのものだった。

 

 私は背後を振り向く。私がこの部屋に入る際に開いた奥の扉から二つの人影がうっすらと現れ、次いでその影はすぐにその細部まで照らし出される。その顔立ちを私は良く知っていた。

 

『さて、では折角ヴォルター君のお蔭で最低条件は整ったのだ。そろそろ交渉も本番と行こうかね?大公殿、自治領主殿?』

 

 カストロプ公は、護衛を付けた状態でこの食堂階にまで降りて来たアレクセイとワレンコフ自治領主に対して、展開を予想していたようにそう嘯いた。

 

 そして、私は理解した。ここまでの会話すら、恐らくは全てカストロプ公の予想範囲のもので、恐らくは彼らが降りて来るまでのお遊びに過ぎなかったのだろうという事を……。

 

 

 

 

 

 

「とまぁ結局、そのまま一番大切な部分は周囲に任せてしまった訳だがね?」

 

 清潔かつ広いフェザーン医科大学付属病院の入院室に戻った私は大きなベッドの上ではぁ、と溜め息をつく。傍のテーブルには様々な所から来た見舞い品が山を形成していた。

 

 回想終わり!である。残念ながらそこから先はアレクセイにワレンコフ、更に後には高等弁務官事務所にいたトリューニヒト国防委員やオリベイラ教授達、専門家の出番であり私に出る幕は無かったのだ。まぁ、どの道あの時点で私も怪我が怪我なので治療に専念しなければならなかったのも事実ではあるが。

 

「たく、やってらんねぇな。えぇ?」

 

 特に理由もなく、私は見舞品が重なるように置かれたテーブルの上にあった『それ』に手を伸ばし、手の中に納めればその刃を開く。銀色に輝く西洋剃刀の刃は鮮やかな光沢が照明の光を反射し、その取っ手にはとぐろを巻く黒竜の姿が刻まれ、その瞳に当たる部分には紅玉が嵌め込まれていた。それは五〇〇年の歴史を持つカストロプ公爵家の紋章である。

 

 私個人としては左目を失った言い訳を考える必要があった。流石に実家の手は直ぐにここまでは届かない、その間にアレクセイも巻き込んで可能な限り母や祖母を宥める事の出来るアリバイが欲しかった。そのアリバイの一つにして、交渉とそれによる手打ちの結果、私が獲得した賠償の一つがこの西洋剃刀である。

 

 ……私が左目を失ったのは公式には悪趣味なゲームではなく、マクシミリアンとの私的な決闘によるものである事になった。遠くで未だ真実を知らぬ母達を納得させ、ベアトやテレジアに可能な限り怒りの矛先が向かないようにするには残念ながらこの言い訳がベストだった。

 

 即ち、公式には私はフェザーンにて言い争いとなった名門カストロプ公爵家の嫡男にいちゃもんをつけられた上に決闘を申し込まれ、銃と剣で戦い左目と引き換えにこれに勝利した事になっている訳だ。

 なお、同盟政府の記録を見れば私は使節団に随行しながら私的な理由でトラブルを起こして重傷を負った大馬鹿者という事になる。最高だね。

 

 同盟的価値観で言えば呆れて声も出ないような大馬鹿者であるが、笑える事に帝国視点ではこの印象が百八十度変わって英雄扱いだ。決闘自体は私戦権を失って以来続く貴族の誇りを守るための特権であり、決闘を申し込まれたらそれを断るなぞ恥である。 

 

 しかも、相手は名門カストロプ公爵家、更には嫡男本人だ。帝国では代理人を立てる事も少なくなくなっているが、カストロプ公爵家程の名門の嫡男本人が戦うとなれば礼儀として此方も本人が出るのが道理、勝利の結果としてカストロプ家から賠償金とこの家紋入り西洋剃刀等、幾つかの戦利品を得た事になっている。伯爵家からすればこれは素晴らしい功績だ。

 

 ……こう言ってはなんだが正直、相手がカストロプ公爵家だったのはある意味幸いではあった。これがどこぞの子爵家や男爵家相手の怪我なら問題だが、流石に公爵家ともなれば話が違う。

 

 同じ権門四七家に名を連ね、しかも爵位の面では格上の家の嫡男相手の決闘で勝ったのだ。伯爵家にとってはこれは名誉ある事であるし、相手の家の家紋が刻まれた武器や道具を手に入れたのは子孫に対して誇るべき偉業である。

 

 それ故に私の怪我に実家があからさまに騒ぎ立てる事はなかった。この前ソリビジョン越しに実家と連絡を取った時も祖母は呆れ返り、立ち眩みを覚える表情を浮かべてはいたが、遂に叱る事は出来なかった。まぁ、あの祖母の場合は最悪私が四肢を失い芋虫状態になろうが生殖器さえ無事ならば納得しそうな人ではあるが……。

 

 序でに言えば母も私を怒鳴りつけて叱る事は出来なかった。私の怪我を見た瞬間にショックで気絶したけど。うん、ご免なさい。

 

 ……正直、母に気苦労ばかりかけている私は結構ド畜生な気がしない訳ではないが……この際は仕方ない、不可抗力だ。実際、私の怪我はマクシミリアンのせいだし、その放蕩息子様が馬鹿やってくれたお蔭で同盟政府や亡命政府が政治的に非常に助かったのは事実なのだ。リターンの事を考えれば私の替えの利く目玉位は我慢するべきなのは明らかだった。

 

 ……まぁ、特に私個人としても、此度の騒動で偶然ながら幾つかのコネクションを得る事が出来たし、また普段は分かりにくい帝国宮中における秘密を幾らか知る事が出来たのは非常に大きな成果だった。そう、ゴールデンバウム王朝における特大のスキャンダルとかね?

 

「……吃音症、ね」

 

 私は窓の景色をぼんやりと見ながら小さく呟いた。それが私が直接カストロプ公より教えられた現オーディン=ゴールデンバウム一族に受け継がれる、そして恐らくは原作においてはヘルクスハイマー伯爵が知った『遺伝的欠陥』の正体であった。

 

 吃音症、発声中に円滑な会話やスムーズな発声が出来ない……例えば発語時に言葉が連続して発声してしまう、あるいは発声できずに無音状態が続く、語頭を伸ばして発音してしまう等の症状で代表される病気である。歴史的に見た場合、フランス=ブルボン王朝のテュレンヌ大元帥、第二次世界大戦時代の大英帝国皇帝ジョージ六世、シリウス戦役時代のラグラン・グループの一員チャオ・ユイロン、第六代銀河連邦首相モスタファー・レザ・ザリーフ等が代表だ。

 

 正確に言えば吃音症は純粋な遺伝病ではない。吃音症自体は遺伝子的な問題がなくとも精神的な理由から特に幼少期に発症する事が多々ある事が知られており、遺伝子はあくまで発症させやすくなる要因に過ぎない。その辺りは所謂癌や糖尿病等とも同じであり、その遺伝子があるからと言って絶対に発症する訳でもないし、遺伝子的な理由がなくとも発症する者はいる。そして発症したとしても意思疎通の面で多少の不便はあろうとも、それ自体は実生活の中で致命的なものとはなり得ない。……無論、それに関連して併発する病気もあるにはあるが。

 

 それに、仮に発症したとしても各種の治療・矯正の手法自体は西暦時代に既に確立している。百人いれば百人全員が完治する……とは流石に行かないが、それでも絶対的多数は日常生活に支障を来す事はない。そう、絶対的多数派は。

 

 フリードリヒ四世は宇宙暦790年現在の時点で皇后ルイーゼを始め六人の寵妃を計二八回妊娠させて、内流産と死産で一五人が死亡、誕生した一三人の内公式に生存しているのはブラウンシュヴァイク公夫人アマーリエ、リッテンハイム侯爵夫人クリスティーネ、そして皇太子たるルードヴィヒの三名のみとされている。そう、公式には。

 

 恐らく一夜の関係も含めれば数百人、あるいは千人以上と関係を持っているだろうフリードリヒ四世には御落胤もそれなりにいると思われるが、一応それは横に置いておこう。今回問題なのは公式には死亡扱いされている皇族だ。

 

 二十年以上前に行われたクレメンツ大公に対する宮廷クーデター後、皇太子となったフリードリヒ大公は、クーデターの首謀者の一人、ベルンカステル侯爵の娘ルイーゼを妃に、つまりは未来の皇后に迎え入れる事になった。

 

 当時、この行いは口の悪い貴族達に悪評のネタにされた。帝室を擁護する勤皇派の諸侯すら渋い表情を作った。多くの者達はこれを豚に真珠を、猫に小判を、フェザーン人に勲章を与えるようなものであると噂した。

 

 ベルンカステル侯爵の長女ルイーゼは気立て良く、聡明で、口が上手く、何よりも美しい事で評判であった。社交界の華であり、多くの貴公子から言い寄られる人気の存在だった。何度か彼女を巡って青年貴族達が自らサーベルを持って決闘した事件が起きた程だ。

  

 一方フリードリヒ大公と言えば顔こそ美男子であったがそれだけだ。兄リヒャルトのように学問と芸術を愛するような教養溢れる人物ではなく、弟クレメンツのように社交性とウィットに長けた快活な人物でもない。

 

 兄弟達が熾烈な次期皇帝レースに興じる中で帝王教育を敢えて受けずに帝都の酒場を渡り歩いて馬鹿騒ぎに興じていたのは暗殺を恐れて道化を演じていたと言えない事はない。仮に兄弟達の共倒れを狙っていたとすれば謀略に長けた賢帝の素質があっただろう。

 

 だが、それが演技としても借金苦で平民に土下座したり、新無憂宮に大量の催促状が送られて来るような事は許される筈もない。真に有能であれば自らの借金すら利用して有力な諸侯に自らの売り込みをかけただろう。

 

 実際は熾烈な皇帝レースの中で密かに自らの借金立て替えと引き換えの高官ポストの提示をして諸侯を取り込んで見せた事で知られている。フリードリヒの行いは演技としても論外だ。

 

 皇太子になった後も、その素行の悪さは兄弟達が生存していた頃に比べればマシとしても、到底彼らの評価基準では落第ものだ。皇太子になってからも帝王教育を受けず、各種の講義の成績も兄弟に比べれば遥かに劣る。学問・芸術・狩猟と言った健全な趣味に興味を示さず、漁色のためだけに帝都の下町に無断で御忍び外出をする。皇宮警察が総動員で帝都を捜索して漸く皇太子を見つけた場所は大概売春宿や酒場であり、一度は性病で死にかけた事すらある。

 

 そんな『ろくでなし』の所に社交界でも人気の姫君を嫁がせようなぞ、少なくない宮廷人達が反対した。それでも元より政治的基盤が弱いフリードリヒ皇太子のてこ入れのためにこの婚姻は実行された。

 

 ルイーゼ自身も義務感からか積極的に夫となる皇帝を支えようとしたと言われている。だが、皮肉な事に当の皇帝はそんな皇后を嫌ったらしい。

 

『理由は大体予想はつくがね。あの放蕩で、無気力で、その癖ナルシチズムに酔った男の事だよ。皇帝としての自分を支えようとする女なぞ目障りだろうさ』

 

 ぐふふ、とディスプレイ越しにローストチキンを貪りながら嘲笑気味にカストロプ公爵が嘯いた記憶が脳裏に甦る。フリードリヒからすれば皇帝になりたくも無かったのにさせられて、しかもその首謀者の娘が嫁いで皇后として自身にあれこれ言って来たのだから嫌いもするだろう。皇后が自分と違い社交界での人気者で、貴族らしい貴族なのも疎んじた理由かも知れない。

 

 滑稽なのは、恐らく皇后側はそんな皇帝の思考を理解して無かっただろうという事だ。彼女からすれば夫を支えれば支える程に夫が自分を嫌う悪循環な訳だ。そして夫婦仲が悪くなって宮廷で悪評を言われるのは不人気なフリードリヒの方である。(因みに面白い事に、庶民の間では下町に良く顔を見せた皇帝より貴族的に御高く留まる皇后の方が悪口の的になったらしい)

 

 話が少し脱線した、元に戻そう。そんな皇帝と皇后でも夫婦としての義務は果たしていたようで先述の二八回の妊娠の内、皇后によるものは六回である。アマーリエとクリスティーネ、それに皇太子になる寸前に急死した三男フランツ、二回の流産を経て最後に生まれたのが幼少期に病死されたとされる皇姫アントニアである。

 

 ここまで言えば大体察しがつくであろう、ゴールデンバウム王朝の皇族の中で皇姫アントニアは病死していない。幼少期に吃音症を発症した事で皇族から抹消されたのだ。

 

 皇女が吃音症を発症した……これが銀河帝国の指導層に激震を走らせた事は疑いない。

 

 一応、『劣悪遺伝子排除法』もあらゆる遺伝子障害を迫害した訳ではない。そもそもが『劣悪遺伝子排除法』自体はルドルフ台頭以前に銀河連邦が発布した政府に不平不満を叫ぶ貧困層の弾圧と抑圧のために制定された法律を基にしたものだ。『劣悪遺伝子排除法』それ自体も少なくとも最初期には遺伝的障害者の虐殺よりも、寧ろ各種の凶悪犯罪者の弾圧に、高齢者や障害者、病人の効率的な政府管理・福祉監督を主目的としたものであり、殺戮を目的としたものではなかった。

 

 エルンスト・ファルストロングの行った組織的処刑も基本的には重犯罪者に対するものであったし、公式記録上は辺境へ流刑に処され消息不明になったとされた者も多くは銀河帝国の管理の及ばない後の外縁宙域に逃亡したか帝国国内の流浪民になったかに過ぎない。安楽死政策は主に有機ハイドロメタル中毒等の当時猛威を奮っていた公害病で永続的に激痛や障害に苛まれる病人や脳死したまま緩慢な延命処置を施されていた者を主眼に制定されたものだ。そもそも「絶対的多数の安寧のために一握りの危険分子を排除した」という発言自体、後世に混同されるがファルストロング本人の発言ではない。寧ろその発言をした後任のアルブレヒト・フォン・クロプシュトックの悪評(帝国的には功績)を何割か押し付けられた(付与された)という側面があった。

 

 それでも、例え『劣悪遺伝子排除法』の排除の対象として明文化されてなくても、晴眼帝条項によって法が公式に有名無実化しても、カスパー一世短命帝やグスタフ一世百日帝のような類似事例があったとしてもそれは看過出来る事ではなかった。そもそもそれらの前例だってその直系は帝位を継いでいない。

 

 より深刻なのは調査の結果、恐らくその遺伝子的要因が皇帝ではなく、皇后側にあったと思われる事だ。それはある意味皇帝側に問題があるよりも深刻だった。

 

 三諸侯のクーデターの後に帝国国政を主導したのはベルンカステル・ブラウンシュヴァイク・リッテンハイムの三家である。しかも、ベルンカステル侯爵はアントニアが吃音症を発症した時点で既に孫娘たるアマーリエとクリスティーネをブラウンシュヴァイク・リッテンハイム両家と婚約させていた。いや、それどころかかなりの密度で婚姻や養子縁組みを相互に行っているのが帝国貴族だ。ベルンカステル家と婚姻や養子縁組みをしてきた家はこれまで何家ある……?

 

 仮に遺伝子的な因子がアマーリエとクリスティーネに受け継がれていなくても、また受け継がれても発症に必要な因子の一部分に過ぎなかったとしても、それが完全に受け継がれていたとして本人達が発症していないとしても、その事実自体が爆弾になり得た。

 

 それ故に帝国政府はその事実を隠匿した。アントニアは死亡扱いで代々多くの帝国の機密に携わってきたブラウンシュヴァイク家に預けられた。その上で皇帝フリードリヒ四世の漁色を積極的に支援し、世継ぎのスペアを一人でも多く製造する事が期待された。

 

 ルイーゼは宮廷の窓際に追いやられた。自裁が命じられなかったのは事がベルンカステル侯爵家だけの問題でなかった事もあるが、皇后本人の人望や同情もあっただろう。それでも何よりも衝撃を受けたのは本人だったのだろう。結局風邪を拗らせて、そのまま医者に診せようともせずに自殺同然に病死してしまった。

 

「皇太子ルードヴィヒが狙う訳ですな。彼はルイーゼ皇后の腹から産まれた訳ではない。その上にその事実を手に入れればブラウンシュヴァイク家やリッテンハイム家を次期皇帝レースから脱落させる事も、場合によっては味方につけるなり、お家の御取り潰しにする材料にもなり得ますからな」   

「おい、何自然に人の推理の中に入り込んでるんですかね?馬鹿なの?死ぬの?」

 

 私の考察に横入りして言及してきたアドリアン・ルビンスキー氏に対して私は尋ねる。何当然のように部屋に入って来ているんですかね?

 

「おやおや、これは心外ですな。共に自治領主と使節団を危機から救った同志ではありませんか?」

「何仲良さそうに取り繕ってんですかねぇ。今回の騒動は結局お互いに利用していただけでしょう。というか一つ釦を掛け違えてればお前さんのせいで我々が被害受けていたんだけど?」

 

 スペンサーがカストロプ家と繋がっていたのを知りながら自身の成り上がりのために同盟政府どころか自治領主にも何も伝えてなかったのは下手すれば戦犯行為だ。本当、上手く立ち回ったものだ。

 

「此方が把握している密貿易ルートに顧客リスト、それに大佐の口添えのお蔭ですな。どうにか物理的に首が繋がりました」

「御世辞はいりませんよ。……これで数年以内に補佐官殿が次期自治領主なのは確定ですか?」

 

 スペンサーが自治領首府に捕らえられたので次期自治領主候補から外されたのは当然として、ワレンコフの救出に関わった事で同盟政府、そして親同盟派の後ろ盾を得、更には親帝国派や勢力均衡派からも黒狐は一定の評価を得ていた。

 

「評価、というよりは取引ですよ。親帝国派が軟化したのは主にブラウンシュヴァイク公とカストロプ公が手を回した結果です」

 

 前者は甥っ子の男爵の保護の報酬とルードヴィヒ皇太子への嫌がらせ、後者は今回の騒動におけるカストロプ公の譲歩の結果だ。

 

 フェザーン内部のカストロプ公の紐付きの実刑と各種の証拠の公表を見逃す代わりに、公爵は幾つかの譲歩をする羽目となった。その一環として自治領主府に対して莫大な賠償金を裏で支払い、フェザーンの同盟債権引き受けやロビー工作への部分的協力を引き受ける事になった。しかも、長期的にはカストロプ公と繋がっている元老や官僚、企業重役には『引退』し田舎で静かに余生を過ごして貰う事になるだろう。

 

「それはそうと、流石はカストロプ公だな。帝国への愛国心の欠片もない。自家と領地のためならば祖国が損しても構わないとはな」

 

 尤も、それはブラウンシュヴァイク公も五十歩百歩だが。ブラウンシュヴァイク公やリッテンハイム侯はカストロプ公を帝室への畏敬の念もない寄生虫であると裏で詰るが、そんな彼らとて宮廷闘争のために同盟との戦争に政治を持ち込み、結果何万何十万という兵士が死のうとも気にも留めない。全く、高慢な事だ。

 

「それが貴方方でしょう?そういう貴方はカストロプ公から教えられた帝室のスキャンダルを活用しないのですかな?」

 

 ベッドの傍に置かれた椅子に腰を据えて不敵な笑みを浮かべる禿げ男。おい、何見舞品食べ始めてるの?アイドルしてる小娘にしろ、不良士官殿にしろ、何で皆して私の見舞品を当然のように食べるのかな?

 

「まぁ、そこを突っ込むのも疲れますがね……それはそうと、私を舐めすぎでしょう?使えませんよ、あんな秘密を利用するなんて」

 

 アルレスハイム=ゴールデンバウム家と亡命政府、そして同盟政府が帝室にばら撒かれた遺伝的欠陥を知ったとして、それを使うのは諸刃の剣だ。

 

 そもそも証拠が無い。事実だとしても、口だけで伝えられた裏付けのない話では無価値だ。だからと言ってブラウンシュヴァイク男爵の所にいた少女の遺伝子を無断で調べる事は『劣悪遺伝子排除法』を人類史上最悪の悪法と叫び、『遺伝子の権利』が保証されている同盟政府では許されない。仮に調べられたとしても姉妹や姪子のそれと比較しなければ血縁関係の証明なぞ出来まい。当然、そのためのサンプル回収は困難を極めよう。

 

 それらをクリアした上で事実だと声高に叫んだ所で、帝国政府は反乱勢力の戯言と切り捨てて帝室侮辱の懲罰行為として出兵を行うだけだ。寧ろ、これまでにない規模の戦力が動員される可能性すら有り得るし、下手すれば普段然程協力的でない諸侯達まで積極的に帝国政府に協力する可能性もあった。ベルンカステル侯爵家は名門だ、血縁関係のある家は数えきれない。折角(ルードヴィヒ皇太子への報復として)アルレスハイム方面の出兵の妨害に協力する事を約束してくれたブラウンシュヴァイク公爵家が敵に回る事にもなる。

 

 同盟市民も拍手喝采するか、と言えば一部極右支持者以外はあからさまな称賛はすまい。幾らゴールデンバウム一族であるとは言え、いやだからこそその遺伝子の欠陥を嘲るのは五〇〇年前にルドルフが行った事と何の違いがあるというのか?

 

 当然、フェザーンもこの情報を何等かの交渉に使う事なぞ危険過ぎて有り得ない。下手したら自治領主の首が年に複数代わる事も、帝国軍がフェザーンに侵攻する可能性もあった。あくまでも帝室のスキャンダルは帝室の、宮廷内での争い以外には価値がない。私や亡命政府には殆ど活用出来ないのだ。

 

 寧ろ、私なぞは証拠こそないとは言え秘密を知る身である、表向きブラウンシュヴァイク公やリッテンハイム侯から敵視されていないが、裏では確実に警戒されている筈だ。というよりも多分カストロプ公はそうやって潜在的な緊張関係を作り出すために私に暴露したに違いない。流石カストロプ公というべきか、性格が悪い。

 

「それで?件の男爵と御姫様は今いずこに?」

 

 ブラウンシュヴァイク公爵家本家から皇族の姫君を預かっていたヴェルフ=ブラウンシュヴァイク男爵家は一三年前、ブラウンシュヴァイク一門の間で生じた混乱で当主と夫人が死亡したのは以前にも触れた。

 

 男爵が姫君を連れて逃げたのは、恐らく一族内で生じた混乱に原因があるのだろう。大方、遺伝子的な問題の疑いがあるアマーリエを妻にしたオットーを当主にするべきかで一族の一部が騒いだといったあたりか。いざという時にアマーリエとアントニアが同じ場所にいるのは遺伝子サンプル入手の面で危険があると判断したのかも知れない。下手に帝国にいるよりもフェザーンの方がこの際安全と考えたのだろう。自治領主府や同盟政府にも身元がバレた現在彼らはどこにいるのだろうか……?

 

「アイリスの話ですと傭兵共を連れて『裏街』の領主を始めているそうですよ」

「いや御免、何言ってるか全然意味分かんない」

 

 うん待って。………どういう過程を経たらそういう形に行きつくんだよ!?

 

 ……どうやら黒狐の話によれば、あの騒動の後にスペンサーの逮捕(表向きは公金横領や贈賄容疑という事になっている)により売り注文殺到で大幅に株価を下げたアトラス社は少なからずの傭兵を解雇したらしい。

 

 そして男爵はそんな傭兵を解雇された傍から何やら提案して雇用していき、そのまま『裏街』に突っ込むとその市街の一部を制圧、現地のマフィアを駆逐して(残念ながらカストロプ公が密貿易から全力で足を洗っていたために支援もされずに壊滅したらしい)実質的に領地化してしまったそうだ。しかも御丁寧に、制圧した土地を好き勝手するために自治領主府へ地代を支払って購入するという律儀さである。

 

「アイリスから聞いた話ですと男爵曰く、『自衛のためには自分の国を作るのが一番だって、はっきり分かんだね』と嘯いていたそうです」

「いや、何もはっきり分かんねぇよ。斜め上過ぎる解釈だよ。何勝手に経営シミュレーション始めてるの?」

 

 そりゃあ、安全が保証されている筈のコーベルグ街ですら死にかけたのだ。自衛のために自分で兵士と金を拵えるのは理解出来るが……スラムの一角を占拠して領地宣言はどうよ?

 

「いえ、正直フェザーンとしては下手に保護するよりも男爵殿が自衛してくれるなら助かりましてな。責任問題は勘弁です。当然同盟や帝国に行く訳にも行きません」

「そうなるとどの国も実効支配していない管理責任のない『裏街』で好き勝手してもらった方がマシ、と?酷い理屈だな」

「触れぬ神に祟りなし、です。どこも男爵や姫君に下手に関わって藪蛇は御免のようですね」

「実際、藪を突いたスペンサーはお縄についたしな。皇太子様は知らないが……少なくとも明確にブラウンシュヴァイク一門を敵に回したな。ブラウンシュヴァイク公は身内贔屓だ。身内に手を出す奴を野放しにはしないだろう」

 

 無論、腹違いの妹を確保した後なら話は別であろうが……残念ながら現実は皇太子にとっては不愉快極まりない状況だ。

 

「今回の騒動について断片的に耳にしたリッテンハイム侯も皇太子殿下を警戒し始めているそうです」

「だから見舞品の中にリッテンハイムの物も交じっている訳ね……」

 

 正直、一応敵陣営なのに良いのか?と思ったりもするが……うん、所詮門閥貴族にとっては亡命政府との戦争自体兄弟喧嘩みたいなものだからね。兵士がどれだけ死のうが大した問題じゃない。やっぱり身分制度は悪ってはっきり分かんだね。

 

「まぁ、見舞品自体は諸侯の資産から見れば子供のお小遣いみたいなものでしょうし、カストロプ家に対する嫌味という面もあるでしょう。大佐からしても助かるのでは?御実家への言い訳の材料が多いのは喜ばしい事でしょう?」

「その辺りの事バレてるのね」

「大佐がお怪我なさる度に御母堂が卒倒している話は少し調べれば分かりますよ」

「さいですか」

 

 おい止めてくれない?他所様に恥ずかしい家庭事情知られるとか赤面物なんですけど。

 

「そう言えば補佐官殿の見舞品はないんだな?それに……お世話になった家主もか」

 

 見舞品の山を見ながら私は尋ねる。どれもこれも差出人は御貴族様か自治領主府関連、あるいはトリューニヒト議員を始めとした同盟政府関係者だ。当然ながら自治領主府と同盟政府からのものは形式的なものか、あるいは一種の口止め料だ。

 

「アイリスの場合はそんな余裕ありませんし、そもそも貴方は賠償する立場でしょう?それに、私の場合は大佐に見舞品なぞ贈っても無意味でしょうに。……理由は知りませんが何故か貴方は顔を合わせた直後からずっと私を警戒していたようですから。私は無駄な事にコストを支払う気はありませんよ」

 

 ふふっ、と怪しさ満点の笑みを浮かべるアドリアン・ルビンスキー。うーん、これは正しく黒狐!

 

「鏡を見てからそんな戯れ言は言って欲しいものですね。あわよくば同盟政府を出し抜こうとしていた奴が言う事ですか。……本当、油断ならないですよね?一番大事な事は最後まで隠してくれて」

 

 そう言って、私は探るような笑みを浮かべる。対する黒狐の方は既にその不敵な笑みが消え失せていた。その表情から感情は窺い知れない。半分カマかけたようなものだが……どうやらビンゴであるらしい。

 

「そこまで信頼されていないのは心外ですな。私が此度の騒動で企てていた事は洗いざらいお話しましたよ?余り私を陰謀ばかり好む謀略家扱いするのは止めて欲しいものです。私はそこまで大物ではありませんよ」

 

 黒狐の言葉は原作を知る私からすればどこか白々しいが、恐らくは本人は本気でそう口にしているのは分かった。今現在謀略を考えていないのは事実だろう。そう、謀略は。

 

 だが、秘密が常に陰謀とは限らないし、ましてや人は見かけにはよらない。人間の感情や嗜好、主義主張は複雑であり、数式のように絶対的なものではない。だからこそ、原作からすれば想像出来ない私の予想も、存外的外れではないようだった。

 

「本当でしたら目立たずに保護する積もりだったのでしょうが……今回の騒動は失敗でしたね。お蔭で計算外な注目を浴びた筈です。まだ気付かれてはないでしょうがそれも時間の問題、でしょう?」

 

 そして、それが知られれば黒狐にはそれを保護する事は出来まい。正確にはワレンコフが許すまい。この面倒な時期に態態爆弾を増やそうなんぞ自殺行為だ。

 

「ワレンコフ自治領主は下劣でも冷酷でもありませんが典型的な民族主義的なフェザーン人です。だからこそ温情は期待出来ませんし、貴方もまた自治領主の命令に逆らう事は出来ない筈だ。婿養子の貴方には」

 

 自治領主府官吏としてワレンコフにその優秀さを認められ、その娘を妻にする事で彼の出世街道は開けた。だからこそ、自治領主に身内として信頼されるがこそ黒狐はスペンサーすら知らない隠し通路の存在を知らされていた。そんな彼が、しかも次期自治領主の椅子を出汁にされてワレンコフの意思を公然と無視なぞ出来まい。

 

「……やはり貴方は小狡い人だ。本当に出会したのは偶然ですかな?」

 

 はぁ、と小さな溜め息と共に諦念気味にルビンスキーは尋ねる。

 

「残念ながら偶然だ。私がそんなあからさまな嘘を言うと思うか?どうやら私は変な所でばかり悪運が良いらしくてね」

「嘘臭さしかない発言ですが大佐が言うと説得力に満ち満ちているのが悔しいものですな」

 

 ルビンスキーに釣られるように私は冷笑する。私もそう思うよ。

 

「それで?答えは?」

「私の独断で決めるべき事では有りませんよ。彼女の自由意思に任せます。どうせ私が舗装した道は死んでも通りたがらないでしょうから」

 

 肩をすくめ、呆れた表情を浮かべる黒狐。そこには相手への呆れと親しみが見て取れた。

 

「成る程、ではそう御願いしますよ」

 

 私も無理強いはしない。私個人としては実家への言い訳の一つに出来るので回収出来た方が都合が良いが、絶対しなければならない訳でもない。彼女が今更此方の世界に関わるのが嫌ならば一向に構わない事だった。無論、薦められるのなら付いて来てもらった方が良いのだがね?

 

「引き際が宜しいですな。自信でも御有りで?」

「まさか。ただ短い付き合いではありますが彼女の逞しさは散々知っておりますから。どのような選択肢を取ろうとも彼女ならば上手く生き抜いて見せるでしょうよ」

 

 私は『裏街』での家主様のがめつさを思い返して答える。あれは少なくとも馬鹿ではないし、現実を直視しない性格でもなかろう。私の期待に沿わない選択をした所でそれでおっ死ぬ事はあるまい。その時は宿泊費と賠償金に色を添えて支払うまでの事だ。

 

「だと良いのですがね。……大佐はまだ御経験がないのでご存知ないかも知れませんがね、子供というものは大概良く親を見ているものです。そして大概一番親の真似をしなくて良い所を真似してしまうものなのですよ」

 

 ふっ、と困ったような、そしてどこか楽し気な笑みを浮かべるルビンスキー。その表情に私は一瞬目を見開いて瞠目する。どこか晴れ晴れとしたその表情は到底原作で陰謀ばかり企んでいた冷笑家には思えなかったから。

 

「おや、最後の最後で一泡吹かせられましたかな?……それでは、そろそろ私は失礼しましょうか。どうやら後ろも閊えているようですからな」

 

 そう言って見舞い品の菓子を食べ終えた黒狐は椅子から立ち上がるとさっと背後の扉を開いた。

 

「あっ……!?」

 

 どうやら病院の廊下で控えていたらしいテレジアが驚いたような表情で此方を向いていた。私がルビンスキーと面会していたのでずっと待っていたらしい。良く見ればベアトとアレクセイも一緒に廊下にいた。

 

「これはこれは大公殿下、先日の交渉以来ですな。殿下も大佐殿と御面会を?」

 

 黒狐は先程の憑き物の落ちたような表情から一変、いつものように底の知れない微笑を称えてアレクセイに尋ねる。一方、アレクセイの方は慣れた態度で肩を竦める。

 

「いや、そう思ったが私は別の機会にする事にするよ。それよりも補佐官、どうだい?折角の機会だ。これから昼食でも?積る話もあるだろう?」

「それは素晴らしい。お互い、まだまだ話すべき事は多いでしょうからな」

 

 ふふふ、ははは、と互いに何処か空虚な笑みを浮かべる大公と黒狐。会話は親し気であるが恐らくは互いに警戒しっぱなしであった。お互いの立場が立場だしね、仕方ないね。

 

「そういう訳だ。ヴォルター、私達は行かせてもらうよ?また明日にでも顔は出すから」

「あ、あぁ……」

 

 アレクセイの言葉に、私はそう答えるしかなかった。そんな力ない態度に口元をへの字にして溜息をつくアレクセイは私の元に来ると耳元に顔を近づけてだらしない子供を注意する母親のような口調でこう口にした。

 

「子供じゃあないんだから、堂々と頼むよ?」

 

 私の耳元から顔を離したアレクセイは私の顔を見て苦笑する。そして「この前の騒動、助かったよ」とウィンクと共に小さな謝意を口にすると、大公はそのまま踵を返して黒狐とその場を退場してしまった。その動きはどこか演技染みていたが、何故かとても様になっているように思えた。

 

 その場に取り残される私と従士二人。

 

「あー、見舞品あるけど……食べる?」

 

 暫しの沈黙……そしてそれにいたたまれなくなった私はベッドの上から焼き菓子の箱を掴むと誤魔化すように尋ねる。

 

「いえ、結構です。……若様、僭越ながら私は室外で控えておきます。ですので、どうぞ……」

 

 軍服姿で直立不動の姿勢を取るベアトはちらりとテレジアを、次いで私の方向を見るとそう提案する。その表情と視線から私はベアトの意図する事を察する。

 

「ゴトフリート少佐!私は……」

「そうだな、ベアト。助かる」

 

 何事か言おうとするテレジアの発言を遮る形で私は答えた。少々強引ではあるが、それがベアトなりの配慮であり、助け舟である事を私は理解していた。

 

「そういう事だ、テレジア。部屋に入って来てくれ。ベアト」

「はっ!」

 

 敬礼して答えるベアトはテレジアに室内に入るように視線で命じる。

 

「少佐、私は……」

「若様の御命令です」

「……了解しました」

 

 何やら気まずそうにするテレジアに、しかしベアトは何処か高圧的に命令である事を強調する。そうなればテレジアに否定の返事をする事は不可能だった。どこか渋い、緊張する表情で室内に入って来る従士。もう一方はそれを確認すると私の方を見つめる。私もまた彼女を見つめていた。それだけで、視線を交差するだけで、私はベアトの言いたい事が理解出来た。あるいはそう思っていた。

 

 音もなく、扉が閉められる。同時に私は自身以外で唯一この部屋にいる従士を見つめる。捨てられた子犬のように震えるその姿はどこか気の毒であり、しかし何故かコミカルな笑いが思い浮かんでいた。さて、取り敢えずは……。

 

「そうだな、まずはそこに掛けてくれ。飲み物は紅茶と珈琲、何方が良いかな?」

 

 先程まで黒狐が座っていた椅子を指差して、私はまずこの従士の緊張を解き解す事にしたのだった……。




ゴールデンバウム家の遺伝的欠点の事実についてはOVA奪還者から、また映画「英国王のスピーチ」からも着想を得ました。作者的には奪還者において獅子帝を回収役に任たのは恐らく皇帝かルードヴィヒ皇太子だと考えていたりしています。少なくともブラウンシュヴァイク・リッテンハイム家が態態獅子帝を指名はしないと思います。


本当は今回で今章を終わらせようと思いましたが長くなったのでもう一話追加しそうです。
 
謝罪として御母様のイメージイラスト貼ります


【挿絵表示】

御母様(主人公を産んで直ぐ位?)、こんな美人な母親に抱っこしてもらったり添い寝してもらってました。主人公には勿体な過ぎますね。


【挿絵表示】

もう一枚、主人公が従士の擁護やら平民への配慮を口にすると心底不思議そうに首を傾げます。次いでに主人公が余り貴族的でない事ばかりやったり怪我すると優しく叱りつけて、それも聞かないと大泣きします。

尚、ベアトや作者のような平民と目が合うと扇子で口元を隠して塵を見る目で見てくれます。やったね!(錯乱)


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