結局眠ってしまい、見れなかったマヨナカテレビ。
興味云々以前に起きれない。一応0時前に時計をセットしたけど朝見たら壊れてた。
恐るべし身体能力。
登校中歩いていると、里中が強引に傘に入ってきた。
雨降ってるからな。
「ナーイス・タイミング! ごめん入れて!」
まぁ断る理由もないからいれる。
「里中、傘はどうしたんだ? 雨は朝から降ってただろ」
「いやー最近見たカンフー映画で傘を使ったアクションがあってさ。真似してたら折っちゃった、傘」
「おいおいほどほどにしろよ?」
「うん。そういえばあれ見た!?」
「マヨナカテレビか? 見ようとしたけど起きれなくて見れなかった。里中はなんか映ったのか?」
「うん。けど遅刻するから後でね」
しばらく歩いていくと不意に里中が話し出す。
「え、えーっと今更だけどさ、近いよね、これって。あたし、やっぱ走っていくわ、うん」
「風邪引くぞ? 大人しく入ってけ。まぁ、俺と一緒に行くのが嫌だってんなら別にかまわないが?」
「い、嫌じゃない! そ、そーだよね、風邪引いちゃうもんね! 風邪引いたらうつっちゃって迷惑かかるからね! やっぱ入れて」
「最初から素直にそうしろ」
「うん、ありがと。それじゃ行こ」
なんて出来事があった。
周りの奴が驚いたように見つめてきていたので、ニヤリ、と笑ってみると、ビビッて逃げ出した。うん。わかってたよ。
授業が終わると噂話が良く聞こえた。
里中たちも話している。どうやら第一発見者は小西先輩らしい。
天城は家の手伝いに帰った。
「ところでさ、昨日の夜、見た?
「え? や、まあその……お前はどうだったんだよ」
「見た! 見えたんだって! 女の子! ……けど運命の人が女ってどゆことよ?」
「実はレズっ気があるとか?」
「んなわけないでしょ!誰かまではわかんなかったけど、明らかに女の子でさ。髪がねふわっとしてて、肩ぐらい。で、ウチの制服で……」
「それ……もしかしたら、俺が見たのと同じかも。俺にはもっと、ぼんやりとしか見えなかったけど」
ふーむ、二人が女を賭けて戦う姿……ないな。
「え、じゃ花村も結局見えたの!? しかも同じ子……? 運命の相手が同じってこと?」
「知るかよ、で、お前らは見たのか?」
「俺は起きれなかった。目覚ましもかけたんだが、朝起きて見たら、壊れていた。というわけで見てない」
「闇討はどんだけ力があんだよ。で、鳴上は?」
そう花村が言うと、鳴上が見たことを話始めた。
「お前が見たのも同じ人っぽいな……」
「けど妙な声ってのはまだいいとして、テレビに吸い込まれそうになったってのは信じられないな」
「動揺しすぎ? ……じゃなきゃ寝落ちだな」
「けど夢にしては面白い話だね、それ。テレビが小さいから入れないってとことか変にリアルでさ」
「テレビが大きかったらどうだったんだろうな」
本当に夢だったなら目が覚めただろうが、言ってるとおりに現実だったら何が起こったことか。
昔テレビに人が映ってるとき、どうやってテレビに入るのー?って母さんを困らせたことがあったなぁ、懐かしい。
「あ、そういえばウチ、テレビ大きいの買おうかって話してたんだ」
「へぇ、今、買い替えすげー多いからな。なんなら、帰りに見てくか?ウチの店、品揃え強化月間だし」
「見てく見てく! 親、家電疎いし、早く大画面でカンフー映画みたい! チョアーハイッ!」
「落ち着けよ、ここ学校だぞ」
まったく、花村も呆れてるだろ。
「だいぶデカイのもあるぜ。お前が楽に入れそうなのとかな、ははは!」
冗談めかして言っている。まぁ俺も信じられないから人のことをいえないんだが。
結局、俺も一緒にいくことになった。
今日はバイトがあったんだが。連絡して休みをずらしてもらった。まぁ雨で客足が遠のくってのが大きいんだろうが。
ジュネス家電売り場
「でか! しかも高っ! こんなの誰が買うの?」
「さぁ……金持ちなんじゃん? このあたりでいるとしたら闇討くらいかもだけど。けど、ウチでテレビ買うお客とか少なくてさ、この辺店員も置かれてないんだよね」
「ふぅん、やる気ない売り場だねぇ。ずっと見てられるのは嬉しいけど」
と、おもむろにテレビに近づき、画面を軽くたたく。当然、乾いた音がするだけだ。
「やっぱ入れるわけないよな」
「はは、寝オチ確定だね」
「大体、入るったって、今のテレビ薄型だから裏に突き抜けちまうだろ……ってか何の話してんだっつの!」
「ノリ突っ込みか」
「ちげーよ! なんかお前と会話するのが普通になって来てるな。まぁいいや。で、里中。お前んち、どんなテレビ買うわけ?」
そうだな、数日前は花村と話すことなんてなかったしな。
「とりあえず安いヤツって言ってた。オススメある?」
と、移動をし始めた。
「こちらなどいかがでしょうか、お客様。この春発売されたばかりの最新型で……」
「ちょ、ちょっとまって。全然安くないじゃん! ゼロ一個多いだろって」
「てかお前の安いがどんくらいか聞かないと」
さて、あいつらも熱中してるし。
鳴上とテレビに近づく。俺も悪戯半分でテレビに触ろうとする、と。
「う、わ!」
うっかり躓きテレビに突っ込む、やばい弁償! って思ったかと思うと手がテレビに入った。そのまま突っ込みそうになったが、首をつかまれた。
おかげで突っ込みはしなかったが、手を即効で引き抜く。……何が起きた?
「とりあえず助かったぞ鳴上。で、見たか?」
「ああ」
今度は鳴上が手を入れる。入った。そう、丁度水面に手を突っ込むかのように沈んでいる。
「そういやさー、鳴上、お前んちのテレビって……」
といいながら花村がこっちを見た。と、動きがフリーズした。
そんな花村に疑問をいだいたのか、里中が口を開く。
「なに? どしたの花村」
里中もこっちを見る。……凄いびっくりして面白い顔をしてる。
「な、なぁ。あ、あいつの腕ささってない……?」
「うわ……! えっとー、あれ、最新型? 新機能とか? ど、どんな機能?」
「ねーよッ!」
そりゃないだろう。あったら買うっつーの。
どうなってんだ? 里中と花村がさっき触ったときには何もなかったのに、俺と鳴上が触ったら腕が入った。
考えをまとめる暇もなく、二人がこっちへやってくる。
「うそ、マジでささってんの!?」
「マジだ、ほんとにささってる……。すげーよ、どんなイリュージョンだよ!? で、どうなってんだ!? タネは!?」
二人とも、気持ちは分かるが騒ぐな、人が来る。
「手だけだけでなく、もう少し入るかもしれない」
と、今度は手を抜き、上半身を突っ込む。
ってうおおおおい!?
「いや、流石にやりすぎだろ!? よせって、何してんだ、お前ー!?」
「す、すげぇーっ!」
「いや、確かに凄いけど早く出ろって!」
「中には空間が広がっている」
空間!? テレビって入り口なのか!?
「な、中って何!?」
「く、空間って何!?」
「どうやら、中は相当に広そうだ」
「ひ、広いって何!?」
「っていうか何!?」
「お前ら落ち着け、えっとそうだ深呼吸! えとっひっひっふー?」
「護も落ち着きなって!」
そ、そうだな。息を深く吸い、吐く。うんちょっと落ち着いた。
「やっべ、ビックリし過ぎてもれそう」
「は? もれる?」
「行き時なくて、我慢してたってか……。うおぅダメだ! もる、もる!!」
そう言ってトイレに行こうとして、戻ってきた!?
「客来る! 客、客が!!」
「え!? ちょっここに半分テレビにささった人いんですけど!! ど、どうしよ!?」
というとわたわたと走り始める二人。
「お、おい、そんな走るとぶぐぉう!」
ぶつかった。しかも更に鳴上にぶつかって……瞬間、浮遊感に包まれた。
「おちてるうぅぅううぅ!?!?!?!?!?」
数瞬の浮遊の後、激突した。
「いってぇ」
「ケツの財布がダイレクトに」
「もうなんなのってどこココ!?」
「ここ、ジュネスの中じゃないよな?」
「当たり前だろ、俺たちテレビに入ったはずだし」
辺りを見回してみる。辛うじて三人は見えるが他はあまりにも霧が濃くて見えない。
ホントここどこだよ。
「ねぇ、なんなの、これ」
「それより怪我はないか?」
「そうだな、怪我が心配だ。こんな場所じゃな」
「……若干、ケツが割れた」
「もともとだろが!」
と、ここで花村が辺りを見回す。
「うおっ!」
「な、なに、ついにもらした!?」
「それは大変だな!」
「バカ、見てみろって周り!」
「これってスタジオ?」
言われて目をこらして見るとなるほどたしかにスタジオだ。
「凄い霧……じゃない、スモーク?こんな場所、うちらの町にはないよね……?」
「あるわけねーだろ」
「霧に包まれたスタジオなんて俺らの町どころが世界のどこかにさえあるかどうか」
「しかしどうなってんだここ。やたら広そうだけど」
「どうすんの?」
里中が不安そうに訊ねる。
「調べてみよう」
「え?だ、だけど。と、とにかく一回帰ってさ」
目を凝らし、じっくりと辺りをうかがう。と、嫌なことに気づいてしまった。
「おい、お前ら、緊急事態だ。出口がないぞ」
「え? ……あたしらそういや、どっから入ってきたんだっけ? ほんとに出れそうなトコないんだけど!?」
「ちょ、そんなわけねーだろ! どどどどーゆーことだよ!」
なんか言い争いに発展したぞ
「落ち着けよ」
「そそそそうだな。う、うん。落ち着いて考えよう」
「とりあえず出口を探そう。ほかの事は、それからだ」
「けどここ、ほんとに出口あるの?」
「もしかしたらないかもしれない。けどさ、何もせず終わるより、なんかやったほうがいい。まずは、探すことだ。場所でも、あるいは生き物でもいい。諦めなければなんとかなるさ」
「う、うんそうだよね」
よし、落ち着いたみたいだ。そうして俺たちはとりあえず固まって動くことにした。
ばらばらに動いたら危険だからな。
しばらく歩いていくと、建物のような場所へときた。
「なんかさっきと雰囲気が違うような?」
「やっぱりそう思う?……怖い。ね、ねぇ護」
「手、つないでもいい?」
「いいぞ。ちっと恥ずいけどな」
ぎゅっと手を握ってくる。女の子特有の柔らかい体を意識しそうになる。
まぁ今はそんな場合じゃない。
「建物の中っぽい感じはするけど」
「ああ、霧でよく見えないな」
「ね、ねぇかえって遠ざかってない?」
「今はとにかく進もう」
そうだ。先が霧に包まれていても進むしかないんだ。
しばらくいくと部屋に出る。
「ここは霧が薄いな」
「……圏外、か。まぁ当たり前か」
「テレビの中なら繋がらないだろうな」
「ねぇ、なにここ」
そういわれて部屋を確認する。
真っ赤な色と黄色のペンキがぶちまけられたような状況。顔がくりぬかれた大量のポスター。
イスと、そのすぐ上に縛ってあるスカーフ。
「行き止まりだよ! 出口なんて無いじゃん!」
「見た目も気味悪くなる一方だな……。アーっ! つかもう無理だぜ……! 俺のボーコーは限界だ……!」
と、部屋の隅のほうに行きっておま、ここでする気か!?
「ちょ、花村なにしてんの!?」
「出さなきゃもれんだろうが」!
「そこでやるのはやめろ! 建物があんだし、トイレもどっかにあるはず!」
「そんな我慢できるか! ……み、見んなよ!見られてっと出ないだろ! くぅううぅ~出ねえぇ~!ボーコー炎なったら、お前らのせいだぞ!」
「んなもん知るかよ」
と、諦めたのか戻ってきた。
「にしても、何なの、この部屋?」
「ポスターは顔なし、切り抜かれてる」
「めちゃくちゃ恨まれてるってこと?」
「だろうな。しかし、このポスターどっかでみたような」
どこだっけ? 今日も見たような気がするが。
この場所が悪いのか、どうしても思い出せない。
がんばって思い出そうとする。
「いいや、さっきのところまで戻ろう。ここにいるのはなんかまずい」
「うん、なんか気分悪いし」
「そういや、俺も」
「確かに、体が重い気がする」
「よし、戻ろう。なんかマジ気持ち悪くなってきた」
俺たちは一回さっきの場所まで戻るのだった。
「ふぅ、やっと戻ってこれたよ」
「霧が濃いからうかつには進めないしな」
「ってなにあれ?」
里中のいるほうを向くと、影が見えた。
「な、なんかいる!」
霧の中から、人形が現れた。
……何故に人形? ってか動いた!?
「何これ? サル、じゃない。……クマ?」
「え、クマなのかこれ」
「なんなんだこいつ」
「き、君らこそ誰クマ?」
「喋った!? マジか!?」
「だ、誰よあんたっ!? や、やる気!?」
と里中が思いっきり威嚇すると謎のクマはおびえ始めた。
「そ、そ、そんなに大きな声出さないでよ」
「……危険な存在じゃなさそう、だな。すまないな。さて、ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「ダメクマよ。君たちは速くあっちに帰ったほうがいいクマ。最近だれかがここに人を放り込むから迷惑してるクマよ」
「は? 人を放り込む? 何の話だ?」
「誰の仕業か知らないけど、アッチの人にも、少しは考えて欲しいって言ってんの!」
ふむ、こいつの言っているアッチは多分現実世界のことだろう。だけど、放り込む、とは? 意味わからん。
あ、里中が謎のクマに詰め寄って……クマが鳴上の後ろに隠れた。
「とにかく、帰れクマ!」
「あ?」
「ひぃ、そ、そんなに怖い目をしてもだめクマよ」
謎生物に怖がられるくらい、目つきが悪いのか。
というか生まれつきだ。
「いいから、危険だから早く帰ったほうがいいクマ」
「こっちとしても帰りたいのは山々だが、帰り方がわからないんだよ。お前は戻り方を知っているのか?」
「知ってるクマ。だからクマが外に出してあげるクマ!」
言うが速いか、少し離れてステップを踏む。と、テレビが出てきた。
「入り口もテレビ、出口もテレビ、か」
とりあえず驚いてる三人と画面のほうへ回った。
「さー行って行って行ってクマ。ボクは忙しいクマだクマ」
そういってクマに押され、テレビに入った。
そしてまた一瞬の浮遊感かと思えば、さっきぶつかったはずのテレビの前だった。
「あれ、ここって」
「戻ってきた……のか?」
と、放送が入った。結構長くいたらしく、タイムセールらしい。
ずっとつないでいた手を離す。
「じゃあな!」
「え? どこいくの?」
「一人暮らしだからな。ちょっと体がだるいがタイムセールという名の戦場にいってくる! んじゃ、またな!」
そういって、俺はタイムセールへと向かった。
結果は、二、三日は困らないくらいは手に入った。
しっかし、あの世界は本当になんだったんだろうな。
今回は長い、多分すこしだけ。ちょっとアットノベルスと文章を変えています。ほんの少しだけだけど。