ペルソナ4ザゴールデン 平和を望んだ異端者   作:無幻

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特別捜査本部

結局水、木と休んだが金には登校した。疲れも十分取れた。

それに、身体的じゃなく、精神的にもすっきりしている。多分、自分の影が本音をさらけ出して、俺自身がそれを認めたからだろうな。久しぶりにいい気分で登校だ。

 

「よ、おはよう」

「ああ、おはよう」

「正直今からでも話してもらいたいが、人が多すぎるし、放課後にな」

「うん、いいよ」

 

して、放課後。

俺たちは屋上にいた。

 

「で、結局こないだのはなんだったんだ? というかあそこってどこだっけ?」

「あれはテレビの中の世界だ」

「やっぱりか。霧があったし、薄々感じてたからそれはいい。聞きたいのは、お前らが使ってた能力。技とかペルソナとか。あと、俺の影。あれはいったい何なんだ」

 

自分自身の心、確かに俺は認めた。だが、信じられないことばかりだ。

最後もそうだ。自分自身、なぜあれがペルソナだと知っていたのか。心の仮面、という単語があった。頭の中に流れてきた、て感じだったが。

 

「まずは影からだね。正確にはシャドウっていうんだけど」

「あれは自分の心だ。なんてたっけ? 抑圧された内面ってのが自分の体で現れるんだ」

「それが、あれか」

「ああ。それにそれだけじゃない。シャドウは自分を認めようとしない自分を殺そうとする。そして、本人に成り代わろうとするんだ」

「……ずいぶんと物騒だが、なるほど納得だ。自分を認められない自分を殺す、か」

 

確かにそれだけの殺気があった。

自分さえ、認められない。人間はいったいどれだけ弱いのか。自分を認められない人間は死んでいくのか。あの世界に限った話じゃないな。

 

「じゃあ影、いやシャドウか。それについては少しはわかった。次はお前らが使ってたペルソナってやつだ。俺も手に入れたみたいだが条件がよくわからん。」

「ペルソナは自分のシャドウと向き合い、受け入れたときに手に入る。使うのには体力を使うから注意が必要だ。使いすぎるとシャドウの攻撃でやられてしまう。回復とかのほうは精神力ってほうを使うみたいだが、使いすぎると強いシャドウが出たとき危ない。だからあまり強くないやつを相手にするときは武器を持っていくんだ」

「それはまた。あ? なぁ、シャドウってさ俺から出たみたいなでかいやつしかいねぇの?」

「ううん、そうじゃないよ。人の無意識がシャドウってことみたいで、詳しいことはちょっとあれだけど。もっと小さい奴がたくさんいるよ」

 

まぁそりゃそうか。そういえば俺のシャドウも違うシャドウを召喚してたみたいだし。

 

「ペルソナって自分自身って感じがするがするんだが、お前らペルソナって一体しか持ってないだろ?」

「まぁな」

「うん」

「そうだよ」

「まぁ俺たちはそうっすね」

「でも鳴上は結構たくさんのペルソナ使ってなかったか?」

 

ラクシャーサやらパワーやらイザナギやら。いくつか覚えてないのもあるがそれでもたくさんペルソナを使ってる。

 

「俺自身よくわかっていない。だが、俺にはシャドウも現れなかったし、いくつかのペルソナも使える」

「それ、便利そうだな」

「ああ、人を助けるためには、な」

 

そこで一度話をきった。とりあえずの聞きたいことは後ひとつ。

それも結構聞きづらいことだ。だから、少し覚悟しなければいけない。もしかしたら袂を分かつことになるかもしれないからだ。

 

「じゃあとりあえず次が最後ってことになる。お前らは、さ。何の為に戦っているんだ?」

「え?」

「俺のシャドウもいってたろ? 俺は強くなりきれない、弱いままだ。理由が無いのに戦えない。けどお前らは普通に戦えてる。お前らはどうして戦えるんだ? 鳴上は別としても、お前ら全員見たくない自分を見てきたんだろ? 俺と会うまでに、たくさんのシャドウっていう敵と戦ったんだろ? おまえらは、どうして戦えるんだ? 見捨てることもせずに。他の人間みたいに、見たいもんだけ見てりゃいいだろ?」

 

これが、俺の思ったことだ。某レプリカ君に言われたことと同じ。理由がないと助けられない。理由が無いのに動く気にならない。助けたくないわけじゃない。でも、理由がないのになぜ?って考えがある。

こいつらはどんな答えを出せるのか……。

 

「そんなの、見過ごせないからに決まってんだろ! 死ぬかもしれない人を、犯人も!」

「俺は先輩らに助けてもらった、だから、今度は俺が先輩らを助ける番なんすよ! それに、犯人には何倍にも返してやらないと気が済まねぇ!!」

「人が死ぬかもしれない、それを知ってしまったら見捨てることなんてできないよ」

「うん!それにそれができる力があるなら尚更ね!」

 

一人一人の答えはとても立派だ。人として正しいことだろう。だがそれでも、違う気がした。人を助ける? 犯人を捕まえて、償わせるため? そんな理由じゃ俺は戦えない。人と人の争いじゃない。人と人との争いだったらそれでも十分だった。

だが、本当に人ならざるものと戦うには、俺にとって、そんな理由じゃダメだと、俺の心がいっている。

俺は、怖いんだろう。自分の心と向き合っても、誰かに、助けた誰かに何か言われるかもしれないのに、助けるなんて、できない。俺はまだ、弱虫のまんまだ。

 

「鳴上は? お前も人を助けるためか? それとも犯人を捕まえて、罪を償わせるためか?」

「…………確かにそれもある。だが、少し、俺は違う」

 

鳴上はそういった。鳴上は俺が気づかない、俺の望む戦う理由を出せるのか? 

もし出せないなら、協力はしても、一緒に戦うことができるとは思えない。理由が無ければ戦えないほど、弱い人間。認めるべき事実だから。

……俺は鳴上の答えを待った。鳴上が、口を開く。

 

「俺は、真実が知りたい」

「なに……?」

「どうしてこんなことをするのか、とか。言葉では表せないんだが、真実を知りたい。俺にとって、それが一番の目的だ」

 

そうだ。簡単なことだった。

なぜ戦うか? そう聞かれたら、生きたいから、助けたいから。そうなるだろう。

でも俺はそれじゃ不十分だった。なんでか、なんて簡単だった。

ただ生きるだけじゃ、ただ助けるだけじゃ、知ることができない。真実<<ほんとう>>を知ることが、俺の心が求めていたこと。どうしてそうしたのか、理由があるはずだから。

そう、俺は今まで嫌われるにしたってもっとちゃんとした理由が欲しかった。真実を知る。そのために、戦う。理由を知る為に、真実を知る。

 

「オーケー。わかったよ、お前ら」

 

だから、俺は信じられる。

一緒に戦える。周りから見たらくだらない理由かもしれない。だが、俺は知りたい。そして、同じ考えである鳴上を、信じられる。

 

「お前らに協力したい。いいか?」

「もちろん!」

「じゃあ、お前も特別捜査本部の仲間入りだな!」

「特別捜査本部って、お前!」

「は、はい!? 何でしょうか!?」

「かっこいいじゃないか!」

 

あれ? なんかこけたぞ?

 

「びっくりさせんじゃねぇよ。びびっちまっただろ」

「そうか?」

「そうなんだよ!」

「まぁいいじゃん。元気ないよりさ」

「そうっすよ」

「いや、そうなんだけどさ」

「それより、事件の日のこと、教えてくれ。どうやってテレビに入ったか、覚えてないか?」

 

そういわれて思い出そうとする。だが、なんせ寝惚けてたところが多いもんで思い出せない。

 

「あの時は……俺夜更かしってほとんどできないから、かなり眠かったんだよな。んで、夢うつつにっていうか。ううん、遠くからなんかなってたような気がして、ほぼ無意識にそっちのほうに向かってた」

「それはチャイムか?」

「あー、そういやそんな感じだな。……うん、そうだ。玄関の方に向かってたし、多分間違いない」

「やっぱり玄関からか。大胆なやつだな」

「外に出て、誰もいないな、てボーっとした頭で考えたらまた眠って……あれ? 口元になんか当てられたような気が……?」

 

そうだ、ほとんど気にしてなかったが(というか気にする余裕なんて無かったが)口元にハンカチ見たいの当てられてそれで寝ちまったんだ。

 

「それくらいだな。あとは、気づいたらあのへんな場所だった」

「手がかりは、玄関からってことくらいか。まったく、闇討が夜更かし大得意だったらもっとわかったかもしれないけどなぁ」

「無茶言うな。お前らだって親に厳しく言われたことあるだろ? 俺の家は、特に俺に対して厳しかったからな……」

 

あのころはとても幸福だとは思えなかった。ものには困らなかったが、物を与えておとなしくさせるって考えがよくわかったからな。

 

「感傷に浸るのはここまでかね。で、そっちの事件についての情報を聞きたい」

「うん、OK」

 

そのまま今までの事件についての考察を聞いた。

だが正直鳴上以外はあまり要領を得ないところが多かった。

 

「つまり、まとめると。テレビに映った人物がマヨナカテレビに映り、その人物は数日以内にテレビに入れられて、入れられた後は本人の行き過ぎた願いがはっきりと映る。そしてその後、数日雨が続いた後に霧が出て、その霧が出る前に助け出さないと、入れられた人はシャドウに襲われ死んでしまう、と」

「ま、そういうことだ」

「ふーん、中々、俺のときは深刻だったんだな。天気予報はチェックしてるが、俺がテレビに入れられたときは三日雨が降り続く初日ってことだからな。お前らが見たって事は俺が入れられたのは0時前。不幸中の幸いって事か」

 

6月6日だけは天気予報が少し外れて夜には雨が降ってたからな。少し遅れてたら、死んでたかも、なんてしゃれにならない。

だが、俺はここで何かが引っかかった。しかし、どうしてもそれが頭に浮かばない。

とてももどかしいこの感じが、今回はとても苛立つ。

きっといつか思いだすだろうと思い、考えるのはやめた。

 

「さて、完二、鍵を返せ」

「あ? 別にいいっすけど、なんでまた?」

「いやー、行き過ぎた、とはいえアレが完二の願いだと考えると、さ」

「はぁ?」

「正直、ホモに自分のうちの鍵を渡したくない」

「うぉおぉい!! ちがうっすよ! 誤解っす! まったく。えーと、どこやったかな」

 

少し否定した後、(無い)頭を使ってこの話題は切り上げたほうがいいと判断したのか、鍵を探し始めた。

 

「あ、あった。はい、どうぞっす」

 

渡された鍵は三つ。……三つ?

 

「何故に三つ?」

「なにいってんすか。あんたが合鍵と、よくわからんけどとりあえず一緒にもっとけって言ったんでしょうが」

「そうだっけか。まぁいいや」

 

三つの鍵を受け取ろうとし、そのうち、三つ目の鍵に触れた瞬間、なにかが聞こえた気がした

 

汝……我は…

 

だがノイズがかかったようにうまく聞こえない。うっかり鍵を落としそうになる。

心配されるが、俺はむしろ声の方が気になっていた。だが、それは後だ。この後も紹介があるようでついていくことになった。道中、携帯を返してもらったが、まぁ多分気にしないほうがいいだろう、なぜか女子二人の番号が登録されていることは。

 

そして、テレビの中へとやってきた。

何故に? 武器とか一切無いが、どうしろと?

などと思っていると霧が濃くてよく見えないが、シルエットが見えた。……ああ。

 

「そういえばいたっけこんなの」

「こんなのとはひどいクマ! クマは、一生懸命生きてるクマよ!」

「はいはい。そういや、お前って名前なんだっけ? なんだっけ、ていうか聞いてないよな」

「クマはクマクマ」

「そうか、よろしくな。クマクマ」

「ぶうっ!!」

 

なんか後ろで失笑した音が聞こえた。

みると、花村が腹を抱えて笑ってた。他のみんなも花村ほどではないが、笑いをこらえているようだ。

 

「あ、あはっははははは!! お腹、お腹痛いぃ、あ、ははははは!!」

 

訂正、天城が一番笑ってた。

 

「なんで笑ってんだ、テメェ!!」

「いや、だって、くくくく」

「い、今のは、素、なのか、プッ」

「鳴上も笑うなよ!」

「ま、護くん。く、クマは、一回なんだよ、あ、は、あははははは!!」

「ゆ、雪子、笑いすぎ、プッあははは!」

 

えー、クマクマっていった、てそうか。こいつ口癖もクマだっけ。

くそ、俺の目つきでもびびらないほどツボにはいってやがる。

 

「紛らわしいんだよ!」

「なんでクマに怒るクマ!? そっちが勝手に間違えたクマ!」

「ああ!? んだ、てめえ! てめえのその愉快な着ぐるみ中身、みせやが、れ?」

 

イラッときたので着ぐるみをとろうとしたら、中身が無かった。

おまえはエ○リックか!

 

「て、手品か?」

「いや、クマは最初からそんなんらしいぜ」

「クマは自分の正体がわかんなくて困っているクマ」

「やれやれ。まぁこんな霧の濃い世界で生まれたってんなら中身の無い不思議生物がいたっておかしくない、か」

「あ、そうだ。クマ、護にメガネ渡してやってよ。……普通のやつを」

「そ、そうだね、っぷ。あ、あんまり笑いものにするのも、よ、よくっぷない、よね」

 

お前が一番笑ってるんだっつの!! てかメガネ? そういえば全員メガネ付けてんな。

クマがどこから取り出したのかメガネを渡してくる。

 

「おお、すごいな。まったく、とまではいかないにしても、霧が無いように見える。……俺がきてすぐに出してもらいたかったねぇ」

「いいでしょ別に」

「そりゃ悪くは無いがな」

「顔見せも終わったし、帰ろう」

 

そんな感じでテレビに入る、という体験が終わった。

……今更だが、テレビに入るって超能力者になれるんじゃね? などと思った。

どうでもいいな。

 




自分がなんかのネタにしようと思ってたクマクマネタを、まさか筋肉馬鹿に先に言われるとは思わなかった。アイマイミーについておいで、のねたも他のネタに使おうと思っていたのに、クマに取られた……。

どうでもいいですね、はい。

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