『なぁに、びびってんの?』
「お前、だれだよ?」
問いかけた、俺と瓜二つ、いや、目の色以外、寸分違わず俺と同じ姿の‘ナニカ’がいた。
『俺は、お前。お前の影だ。わかるだろ?』
「な、何言ってんだよ、俺はここにいる、影ってなんだ。お前、なんなんだよ!」
後ろから人の気配がした。見ると、鳴上達だった。どうしてここに、そんなこと思うも、またナニカが口を開く。
『認められないか? そうだもんなぁ。お前は、誰からも理解されなかった』
「!?」
『お前はただ目が怖いってだけで、ずぅーっと蔑まれてきたよなぁ? それでそれだけの間ずぅーっと友達が欲しかったんだよな?』
「な、なにを!」
『馬鹿みたいにずっと同じこと繰り返してよ。人を助けようと、助けまいと、お前を理解してくれる人間なんて現れない。それがわかってても、今度こそ、今度こそ、って儚い、脆い絆に縋りつきたかったんだよなぁ? それで今まで報われたことなんて一度もねぇってのによ!!』
事実だった。ずっとつながりが欲しかった。
それを、どうして! 知っている!?
『気持ち悪い、恐ろしいってさ。目つきが悪い。ただそれだけで怖がられた、蔑まれた。誰も、母さん以外はただの一人も俺をわかろうとはしなかった!』
「い、いつかはきっとわかってくれる奴だっているはずだ!」
『良い子ぶんなよ。お前はずっとそう思って、物心ついたころからずっとそう思ってたんだろ? だが現状はどうだ。誰も味方なんかしてくれてないじゃねぇか!』
「そ、れは」
『誰も俺を理解してくれない! 俺をわかろうとしない! どうして俺ばかりこんな目にあうんだ! 俺はずっとみんなと仲良くしたいだけだ! ずっと俺は、お前はそう思ってた。でも言わなかった。お前が、弱いから! そして逃げた、そうだろ?』
「違う!」
『何が違う! お前は弱い。誰かに理解されたくても、誰にも理解してもらえない。だから、理解される必要なんてない、って逃げたんだろうがよ! そして、自分は周りと違うんだって見下してたんだよな? 理解してくれない奴には価値が無いって思ってたんだろ?』
「う、嘘だ! 先輩は、そんな人じゃないだろう!?」
『完二! あははは!! お前も俺と同類だと思った。お前も見た目と中身が違うから、ずっと馬鹿にされてきたんだよな! だから仲良くした。だからお前は友達だった。弱くてしょうがない俺と、一緒にやってけると思った。けど、違ったな』
「なにを、言っている?」
『お前らにはわからないだろうよ! 人を助けても、助けた相手からさえ蔑まれ、気味悪がられた人間の気持ちが! ただ近くにいたってだけで犯罪の犯人にさえされかけた! 俺の気持ちが! それでずっと傷ついた、俺の気持ちが! 本当の家族にさえ、いらないと言われた人間の気持ちが!! 全部ただ目つきが悪いなんてくだらない理由で!! 挙句の果てには大量殺人犯だ! もう嫌なんだよ!!! 何もかも!!!!』
「「「「!!」」」」
やめろ、やめてくれ……!
『だから、俺はやめたんだ。誰かを守っても、人を信じることはしなかった。俺は、仲間が欲しかった。ヒーローなんて現れない。必要ない。わかってくれる仲間が。でもそれすらかなわなかった! ただこんな姿で生まれただけだ。たったそれだけで、俺の人生、決まっちまった! 糞食らえだ! こんなつまんねぇ人生!』
「!」
「やめろ! もう、やめてくれ!」
喉から搾り出した声。だが、ナニカは笑い続けた。
『はははは! なに言ってんだよ。嘘をつくのは嫌いだったろ? 俺』
「ならなおのことやめろ! 俺は、そんな弱くなんて無い!」
『嘘ついてんじゃねぇよ!! お前、いや、俺。わかってたんだろ? 入院したとき、天城の話が出たとき! 鳴上に完二のことを聞かれたとき! 思ったんだろ。ここの霧の世界にかかわってるんじゃないかってな! そのことを聞かなかったのは、怖かったからだ。自分の平穏が崩れるのが嫌だったから、かかわろうとしなかった!』
「そ、それ、は」
『腕が折れていたから? そんなもん、言い訳だろうが! そもそも本人に聞くどころが、留守電の確認すら怖くて出来なかったんじゃないか!! お前は弱くて怖かったから。だから助けようなんて考えず、考えようともしなかった! それが、事実だ』
「だ、黙れ」
『怖くて怖くてしょうがない。だからできたのがこの地獄みてぇで恐怖そのものみたいな世界だろ? なんもかんもなくなってしまえばいいって思ったんだろ!? 怖いものが全部無くなっちまえばいいって、自分を理解しないものなんて消えればいいって思ってたんだろ! そのなかで、自分さえ、消えちまいたいって考えたんだろうがッ!! たくよ、自分が他人に歩み寄ることさえ、拒絶されることが怖くて、できなかった! 怖くて、助けて欲しかった、けど口にだす事さえしなかった、できなかった! それも全部、弱いからだ! 認めろよ、お前は、俺なんだよぉ!!』
「黙れ! おまえなんか―――――」
「待って! 護!!」
「闇討、それは言っちゃダメだァ!」
「落ち着け、それはシャドウの思う壺だ!」
霧の中、俺の声はとてもよく響いた。
相手が自分なんて信じたくない。制止の声さえ、遠く感じた。だから―――――――――
「―――――お前なんか、俺じゃない!」
――――――そう言い放ってしまった。
こういうのは十分にありえると思う。思いをずっと溜め込んできた主人公の叫びでした。
もう少し台詞を変えたほうが良いという場合は具体的にいってくれれば変更します。