遊戯王GX-至った者の歩き方-   作:白銀恭介

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アカデミア入学へ

コンコン

病室のドアをノックする音

 

「どうぞ」

 

と中から声が聞こえてくる。

 

「失礼します」

「……ああ、君か。久遠(くどう)君」

「ええ、(ひびき)さん」

 

プロデュエリスト、響紅葉。

久遠(くおん)がプロデュエリスト久遠帝(くどうみかど)として訪れた相手である。

先日戦士族リーグで試合を組まれていた相手だったが、対戦相手の体調不良により試合は無期限延期となった。

少しだけ、時間ができたので、見舞いがてら会いに来たというわけである。

 

「その節は迷惑かけたね」

「いえ、別にそれはいいんです。対戦できなかったのは残念でしたが」

「そう言ってくれるとありがたい。」

「それで、急に入院だという話でしたが、長引きそうなんですか?」

 

一瞬、遠い目をしながら

 

「うん、ちょっと長引くかもね」

「そうですか……でもその割にはあまり悲観していないように見えますが」

「悲観か・・・確かにあんまり悲観してないね」

「理由をお聞きしても?」

「うん、いいよ」

 

しばらく間をおいて、響プロは話し始める

 

「18でプロになってここまでがむしゃらにやってきたけど、そのなかで自分は何を残せたのかな?というのを考えるようになったんだよ、最近」

「何を残すか…ですか。」

「うん、いくつかタイトルは取れたし、あるていど有名にもなった。でも、『何かを残せた?』という疑問に対しては答えが見つからなくてね」

「ええ」

「こうして歩みを止めてみると、そういうのが一気に不安になってくるんだよ。でも、ある少年と出会って、言ってもらえたんだ」

 

『すっげー、響プロだ。俺、あんたを超えるのが目標なんだ』

 

「僕を見て、僕自身を超えようと言ってくれた。そういうのを聞くとね。まだまだ負けるかって気になるんだよ」

 

多分それは『ファンです』と言ってもらうこととは別のこと。「あこがれ」ではなく「目標」であることは似ているようでずいぶん違う。

 

「そうですか……いい出会いでしたね」

「まだまだ子供だけどね」

「じゃあなおのことプロの世界で待っていてやらないといけませんね」

「ああ、彼も僕らの試合は楽しみにしてたらしいんだ、復帰戦は君で頼みたいな」

「はは、なら俺はそれまでに相応のステージを用意しときます」

「頼むよ」

 

そして話題は、その少年の話題に移る。

 

「しかし、響さんが目標ってことは、やっぱりHERO使いなんですか?」

「うん、2年くらい前、あるプロにもらったパックに入ってたモンスターがエースだって言ってた」

「プロにもらった…ですか。響さんといい、結構プロに関わりがある子なんですね。」

「そうだね、彼のもう一人の目標だって言ってた。いつかお礼が言いたいんだってさ」

「色々な人を待たせてますね」

「あはは、そういえばそうだね、でも大丈夫、そっちはきちんと待ってくれてると思うよ」

「会ったことある人かな?」

「何言ってんだい、君だよ、君」

「僕ですか?」

 

はて、心当たりがない。

久遠のプロ活動はデュエルの試合がほとんど、あとはメディアの取材がごくまれにあるくらいで、ファンと触れ合うような機会がないのである。

そこで響プロが伝えるのは懐かしい名前

 

「そうなの?十代君、君にもらったって言ってたよ。」

 

それで、ようやくつながった。

 

「……十代…遊城十代でしたか。懐かしい名前です」

「知ってるんだね。」

「ええ、向こうはもう覚えていないのかもしれませんが。古い友人の一人です。それこそ、久遠帝(くどうみかど)を名乗る前から」

「そうか……」

「そっか…じゃあ僕もまだまだ頑張らなくちゃいけないんですね」

「そうとも」

 

さて、そろそろ時間か。

次の約束は遅れるわけにはいかない

 

「久遠君、君、進路はどうするの?」

「進路ですか?それは…」

「十代君と同い年なんだろう?」

 

こういう聞き方をするということは、久遠(くどう)ではなく久遠(くおん)の話だろう。

 

「オフレコでお願いします。デュエルアカデミアに行きます」

「アカデミアか……あそこならプロ活動の支援も出てくるのかな」

「オーナー次第でしょうけど」

「十代君、試験で落ちたって言ってたからなぁ」

「(あのバカ……。)」

「でも高等部で必ず入るって言ってたよ」

「なら、再び会うのもそう遠くないのかもしれないですね」

「そうだね、そしたらもんでやってくれ」

「ええ、わかりました。それでは」

 

部屋を出ながら久遠は思う。

道を違えても、こうしてどこかでつながっている。

自分に見えなくても、その道を見つけて追ってくれる人もいる。

なら、自分は今の道を信じて進むだけそういうものなのだろう。

 

それを……信じよう。

今は…………まだ……。

 

 

----

 

 

「久しぶりデース、久遠(クオン)ボーイ。しばらく見ないうちに大きくなりましたネ」

「お久しぶりです、ペガサス会長」

「ノーン、ここには私たち以外に誰もいまセーン。普段通りでいいのデース」

「解りました。ペガサスさん」

 

ペガサス・J・クロフォード

3人の"伝説"とは別に、デュエルモンスターズの創造者として名を残す人物。

久遠の本来の予定はこの人に会うことであった。

しかしながら、多忙を極める人物でもあるので予定が若干シフトした。

響紅葉の見舞いに行ったのはその空き時間があったためでもあった。

 

「海馬ボーイに聞きました。アカデミアに行くそうですね。今更何か学ぶところがあるのですか」

「まだ学生ですから、学ぶことは多いですよ。ついでに、彼の支援が得られるのはメリットですね」

「そういうことならアメリカ・アカデミアに来てくだサーイ。あそこならI2社のサポートが最大限にできまマース」

「ありがたいお誘いです。……が、しばらくはこちらに通おうと思います」

「ホワーイ、何故ですか」

「もうちょっと、こっちで頑張ってみたい目標ができたので」

「そうですか、残念デース」

「在学中に留学という形でもできたらいいですけどね」

「それはまた追々考えマース」

 

久しぶりの雑談と近況報告

この人との付き合いも海馬社長と同じくらいにはなるが、相変わらずつかみどころがない。

さて、会う時間がずれたため、そんなに長く時間が取れない。

早速本題に入るとしよう。

 

「それで、解析の方はどうなっていますか?」

「進捗はあまりよくありまセーン。」

「そうですか」

 

久遠は海馬、ペガサスに保護を求めた際に久遠は自身の異端の1つの分析を依頼していた。

久遠が使用することができる、未知のカード群。その存在について。

 

「久遠ボーイに提供してもらった10枚のカードについてですが、最近になって1枚だけデュエルディスクに反応するカードが出てきたのデース」

「どれですか?」

「《真空イタチ》デース」

「……何故あれが?」

「実は、真空イタチは今シーズン発売されるカードに封入されるカードなのデース」

「そうだったんですか」

「イエース。これであなたのカードで実際に使用できるのが《暗黒騎士ガイア》、《トゥーンアリゲーター》と真空イタチで3枚になりました。」

「《青眼の白龍》はだめなんですよね?」

「イエース、その他私が知らないカードはすべてダメだったのデース」

「よくわからないですね」

「いえ、ここから私たちは一つの仮定を思いついたのデース」

「と、言いますと?」

「大事なのは『担い手』と『存在できる時代』なのデース、ブルーアイズのように所在がはっきりしているカードは使用できないカードになり、レア度がそこまで高くなく、不特定多数が持てるカードは使用できるカードになるのデース」

「……そうですか、でもアリゲーターはトゥーンじゃ…。」

「アリゲーターは私が使ったからだと思いマース。本来の担い手が使う分には制限をすり抜けられるようデース」

「なるほど」

 

あり得ないほどのカードプール、他の人が使用できないそれ。

その原因を調べてみてもう4年

いまだに明確な回答は出ない。

なぜ、こんな力を得てしまったか。

なぜ、自分なのか

なぜ、なぜ、なぜ

その答えは、いまだに出ない。

 

「わざわざ呼びだてたのに申し訳ないデース」

「いえ、俺の方もペガサスさんに久しぶりに会えてよかったです」

「そう言ってくれると助かりマース、それで、久遠ボーイ。"あちら"のほうは?」

「問題は…ないです。制御もできてます。」

「私も一度その力に溺れた身なのであまり大きなことは言えないのですが……」

「解ってます。大丈夫ですよ。」

 

 

その後、また軽い雑談をして、帰路に付く。

久遠の異端、その全容は未だ深い闇の中。

 

 

--------

 

短かった春休みを終え、新しいシーズンが始まる。

同時に、久遠にとっては新たな学園生活の一歩のスタートとなる。

 

「や、おはよう」

「おはよう」「おはよう」

最寄りの駅で楓、天上院と合流する。

試験後、急に仲良くなったようで、あれから春休みにかけて、何度か会っていたらしい。

 

「神倉、春休みはどうだった?」

「明日香さんと特訓してたよ」

 

どうやら呼び方も変えたらしい

 

「楓とデッキを入れ替えたり、雑誌に載ってる大会デッキを回してみたりね。いままで自分のデッキにばかりこだわって、相手のデッキがどう回るかなんてあまり考えなかったから、いろんな視点が持てて有意義だったわ」

「あー、あれな。神倉流特訓術。俺も初心者のころよくやってたわ、昔はレアカードなんて持ってなかったから紙に絵描いてな」

「昔からあんなことやってたの?」

「こいつ、デュエルの戦術論が大好きで、雑誌とか買っても他の人が見るような記事見ないで詰めデュエルとかばっかやってたから。その一環みたいよ。」

 

そのためカード効果にも詳しいし、筆記1位もその恩恵があるのだろう。

 

「そういや、呼び方変えたんだな」

「うん、入学までには変えてくれって言われて」

「なんで?」

「さあ……」

 

天上院の方を向いて聞いてみる

 

「なんで?」

「アカデミアで『天上院』っていうと、兄を指すのよ。いい意味でも悪い意味でも有名人でね。」

 

ため息交じりに答えられる。

そんなに変なやつなのか。

 

「一緒にされたくないと」

「というより、妹の色眼鏡で見てほしくないという感じね。デュエルの技能はトップクラスだから」

「ふーん」

「だから貴方も名前呼びでいいわ『久遠君』」

「まぁそういうことなら別にいいけど」

「……」

 

くいくい。

と制服の端を引っ張られる。

振り返ってみると、楓。

 

「どした?」

「ううん、なんでもない。そろそろ行かないと」

「あら、もうそんな時間?」

 

と、言いながらも、楓が何を言おうとしていたかはわかる。

デュエルでは押し押しの戦術化のくせに、こういうところだけは消極的だ。

昔、久遠をデュエルの世界に誘った時も、こんな感じだった。

だから、こういうときは何かを言いたいとき。何かお願いがあるときなのだ。

だから、うぬぼれでなければ、これが正解。

 

「じゃあ行くか、『楓』『明日香』」

「!!!…うん!!」

「ええ、行きましょう」

 

--------

 

入学式は、滞りなく行われた。

制服色がまちまちだったが、これは、成績ごとのランク付けらしい。

オーナーの趣味らしく、XYZの色でランク付けをされるとのこと。

 

X組は《X-ヘッド・キャノン》の青色

Y組は《Y-ドラゴン・ヘッド》の赤色

Z組は《Z-メタル・キャタピラー》の黄色

となっているようだ。

 

特待生が青、優秀者が赤、その他が黄色だという話である。

「高等部で色とランクが異なるのでややこしいと文句を言ったやつがいたが、地方に飛ばしてやったわ」

とはオーナー談。

 

制服が青なので注目されてしまったが、入学式にリムジンに乗って颯爽と現れる特待生のおかげで、注目は多少和らいだ。

この点だけは万丈目に感謝感謝である。

ついでに、送迎を断っておいて本当によかった。

 

 

そして、夜。

アカデミアの講堂で、歓迎会が開かれることになった。

入学式のときの様な厳かな雰囲気が一転、華やかなパーティ会場のように飾り付けられている。

講堂の周辺に多くの食べ物が並んでおり、立食パーティのようになっているようだ。

中央のスペースが空いているが、何かイベントでもやるのだろうか。

適当に食べ物を取り、楓、明日香を探す。

二人とも、すでに友達を作ってきたようで、数人と談笑している。

そこに男一人で突入するのは…ちと気まずい。

 

仕方なく、空きテーブルを見つけて、一人で食事を始める。

すると、数人の新入生と思しき人たちが、集まってきた。

 

「やあ、ここいいかい?」

「ん?どーぞ」

 

制服の色は、黄色。

つまり、ランクとしては、下位に認定された者たちらしい。

 

「はじめまして、よろしく」

「あ、よろしく」

「せっかくの懇談会なのに、なんで一人でいるのさ」

「あー、知り合いがもう別のグループに行っててさ、出遅れちゃったんだよ」

「そりゃタイミングが悪い」

「そしたらなんか『入れてくれ』って言いづらい感じだったしね」

「でも、きみならどのグループに行っても歓迎されるでしょ?青い制服(クラスX)だし、あんな風にさ」

 

といってスペースの中央を指さす。

そこには人だかりができている。

 

「何あれ?」

「もう一人の特待生だよ。今朝送迎ありで登校してきた」

「何か気取ってるよな」

「でも特待生だから腕も確かなんだろうしな」

「(1キルされましたよーとは言えないなぁ)」

 

そう言って、人だかりを再度見る

 

「何か、赤制服ばっかじゃない?」

「そうだねぇ……特待生の覚えが良ければ学園生活も華々しくなるからじゃないかな?」

「上に近い奴ほどその辺の野望ギラギラなんだろうな」

 

そういうもんか……。

「(別に特待生から覚えがよくてもそれが益になることなんてあんまないと思うんだけどな)」

「言っとくけど、俺達はそんなこと考えてねーぞ」

「は?」

「だから、ただ一人で飯食ってたから声かけただけで、覚えがどうとか関係ねーって話だ」

 

それでようやくつながる。立場としてはあの集団の中央の奴と変わらんのか、と気づく。

 

「あー、そういうことか。俺も青だしな。全然考えてもなかった。」

「何か、エリートっぽくないよなぁ、お前」

「そんなつもりないしな。」

「でもつえーんだろ?今度色々教えてくれよ」

「おー、いいよ。でもその前に、デュエルしようぜ!じゃない?」

「あはは、そりゃそうだ」

 

しばし歓談を続ける。

と、そこに人だかりを連れた有名人がやってくる

 

「よう、鷹城」

「よう、有名人」

「ん?何のことだ?」

「とぼけんな、顔がにやついてんぞ」

 

どうやら、万丈目は衆目を集めるのが好きらしい。

心なしか鼻高々になっていないだろうか。

 

「鷹城さん!!おい、Z組はどいてろ!!」

「………?」

 

万丈目の横の奴が声をかけてくる。

「(何か態度悪いなこいつ……)」

久遠がそう思うのも、無理はない。

先ほどから久遠と歓談していたZ組生徒を『どいてろ!』と押しのけたのだ。

 

「君誰よ。俺はこっちの奴らと話してたんだけど」

「そんな、落ちこぼれの奴らより、僕らと一緒にいた方がいいですって」

「だれとどう付き合うかは勝手に決めるよ。少なくとも初対面の人間に横柄な態度をとる奴と友達になりたくはないしな」

「まぁまぁ……いいよ、また出直すよ」

 

空気を読んでか、争い事はごめんということか。結局Z組の連中が引き下がる。

 

「悪いな、また別の機会に話そう、今度は友達紹介してくれ」

「ああ、またな」

 

そして去っていくZ組連中

それを好機とばかりに久遠にY組連中が寄ってくる

 

「鷹城さん、強いんですってね。なんでも万丈目さんに次ぐ実力だとか」

「レアカードもかなり持ってるとか」

「しかも、天上院さん、神倉さんとも仲良しだとか」

「……ああ、まあな」

 

非常にめんどうくさい。

先ほどまでの気のいい連中と比べると、なんと浅ましさを感じることか。

というか、万丈目に次ぐ実力って?と万丈目を睨むと眼が泳いでいる。

「(吹きやがったな)」

しかし…態度が悪い。強気になびき弱気をくじくようになってる。

Y組全体がこうではないと信じたいところだが。

 

とにかく、この空気は嫌だ。元凶に解決してもらおう

 

「で、何用よ?」

「いや、この後代表戦が組まれるって話を聞いてな」

「代表戦?」

「何か各学年5名の代表を出して学年対抗をするって噂だ。そうなれば俺達が出ることになるだろ?」

「で?」

「だから神倉と…天上院君を交えて打ち合わせしようと思うんだ。」

「ああ、そういうことか。いいよ、行くか」

 

この集団から離れられるならなんでもいい。

そうして、移動を始めようと思ったら、急に証明が暗転した。

 

 

「レディーーーーーーーース、エーーーーーーーーーーーンド、ジェントルメーーーン」

 

突然のアナウンス…と、女子の歓声。

一体何事だろう?

 

「僕の指差す先にあるものは?」

「「「「天!」」」」」

「ん〜JOIN!というわけで、ブリザードプリンス、天上院吹雪プロデュースの歓迎会デュエルをスタートするよー」

 

再び大歓声。

あれが明日香の兄貴かと…と理解する久遠。見た目はいいし、明るいしカリスマ性もありそうだ。

……が、変な人だ。

明日香が名前で呼んでくれと言われる理由がわからないでもない。

 

「それではルール説明だ。各学年4人の代表選手を選抜、学年対抗でデュエルだ。デュエルするのはシングル2組とタッグ1組にするよー。」

 

「そして、新入生代表はこちらから選ばせてもらったよー。神倉楓さん、天上院明日香さん、万丈目準君、そして、鷹城久遠君だ。この4人は特待生だね~。さあ、前方に来てくれるかな?」

 

万丈目と前方へ移動する。既に楓と明日香が前方に集まっている。

 

「デュエルは30分後に開始だ。それではみんなー準備してくれ―」

 

まずはブリーフィングだな。

 

 

----

 

「明日香、面白い兄貴だったな。」

「他人事だと思ってない?」

「うん、身内ではいやだわ。」

 

ものすごく恥ずかしそうにしている明日香。

もう少しからかってみたい衝動がないわけではないのだが……時間は限られている

 

「おっけ。じゃあ作戦会議を始めるか」

「まて、ここは俺がリーダーとして作戦を練るぞ」

 

万丈目が出しゃばってくる。

頭はいいはずだから、任せてもいいか、と思う久遠。

ここにきてから万丈目が増長してきている気がするが、そのへんは仕方ないとあきらめる。

あれだけちやほやされてきたのだから。

 

「神倉と天上院君は試験の時とデッキ変わっていないのかい?」

「ええ」「うん」

「俺も変わってないから作戦はそれを前提に立てられるな。鷹城は?」

「【サイカリガジェ】組んできた。けどサブはいくつかあるから、まぁどんなのでも基本いける」

「サイカリガジェ?」

「あー…【ガジェット】だ」

「なんでそんな弱小モンスターを主軸にしてんだお前は」

 

こいつに司令官やらせるとこういう弊害があったか。と今更ながらに後悔する。

カードステータス第一主義の悪癖。それが治っていなかった。

 

「よし、シングル2を鷹城、シングル1を神倉だ。タッグを天上院君と俺がやる。」

さり気なく自分の要望を入れたようだ。

 

「(まあいいか、どうせ歓迎会だしなぁ)」

とくに出しゃばる理由もないので、引き下がることにした。

 

「ちょっと待って」

と、横から声を挟んだのは楓。

 

「何だ、神倉」

「万丈目君と明日香さんのタッグは賛成できないわ、悪魔族と戦士族ではデッキシナジーがなさすぎるもの」

「じゃあどうする、鷹城の機械族とお前の魔法使い族でも他の人とシナジーあるわけじゃないだろうが。案があるなら言ってみろ」

「久遠君、私たちのデッキとシナジーあるのは作ってる?」

「一応作ってるよ。まだ万丈目とのタッグ用は完成度高くないけど」

「じゃあ私が組むわ。万丈目君と天上院さんでシングルお願いできる?」

「ええ、いいわ。私もそれに賛成。」

「む…仕方ない、そういうことならいいだろう。」

「ええ、それで行きましょう」

 

1年生チーム、初戦オーダー

   S2 天上院明日香

   TAG 鷹城久遠・神倉楓

   S1 万丈目準

 

 

そうして、歓迎会デュエルが始まる。

 

 

 

 


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