遊戯王GX-至った者の歩き方-   作:白銀恭介

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注意

播磨制裁決闘のタネが満載です。
それでも見ますか?

























こうかいしませんね?


それでは、スタートです。


【ネタバレ注意】 閑話:はりま対策会議

「それじゃあ、始めましょう」

「そうだね。まずは意見交換からかな?」

「……なんでお前らの方がテンション高いんだよ」

 

 入学試験決闘があった週末。

 久遠が参加することが決まっている播磨元校長の制裁決闘、その作戦会議が開かれようとしていた。

 参加者は久遠の同級生だった天上院明日香と神倉楓。あまり多くのメンバーを集めてもどこから情報が漏れるか判らなかったため、比較的久遠と近しい人のみが集まることとなった。

 事前の参加の意思を見せていた亮だったが、高等部の卒業記念決闘の相手役に選ばれてしまったとのことで、電話ですら参加することができないと連絡があった。

 久遠としては同じく特待生の一人である万丈目に声をかけようと思ったものの、先の入学試験決闘の会場における二人の態度が気になり、声をかけることができなかった。

 直接会えば、彼女らの態度の原因が判るかとも思う一方、播磨の居るアカデミアに戻るのも気が引けるし、日本に帰ってきたことで突如発生した大量の仕事をこなすことで1週間などあっという間に過ぎてしまったというのもあった。

 

 ここは、久遠が用意したレンタル可能な会議室。

 部屋にはホワイトボードと机が備え付けられているが、それ以外には何もない。

 ホワイトボードには先に久遠が入手した対播磨戦のレギュレーションが既に書き写されている。

 明日香と楓の持ち物はノート1冊。久遠はと言うとPCを持ちこんでいた。

 

 

「というか、俺なりにもう検討できてんだけどなぁ」

「せっかくだし、たまには意見の出し合いしようよ」

「そうよ」

 

 明るく答える楓に追従する明日香。

 そのまま、空きスペースに移動しながら久遠とすれ違いざまに

 

「いいじゃない。ここのところ、結構落ち込んでたんだから。こんなに気分がいい楓は久しぶりよ」

 

 そう、小さな声で伝えてくる。

 

「(…………ま、そうか)」

 

 アメリカへの留学中、たまにそうして連絡してくれた彼女の話を思い出す。

 久遠が去った後の楓の様子。『番外』を背負うようになった背景や、彼女の様子を聞いていたから。

 こんなイベントで楽しんでもらえるならそれでもいいかと思いなおす。

 どこか締まらないものはあるものの、そんな雰囲気で作戦会議が始まった。

 

 

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「さて、レギュレーションのおさらいだ」

 

 久遠は、ホワイトボードを机のそばへと引き寄せる。

 そこには、レギュレーションが書かれていた。

 

  一、制裁決闘は1対1のシングルデュエルにて行う

  一、制裁側は攻守0のモンスター以外をデッキに入れてはならない

  一、制裁側は攻守の増減を行ってはならない

  一、制裁側の特殊勝利を禁ずる

  一、制裁側のバーン行為を禁ずる

  一、制裁側のロック行為を禁ずる

  一、制裁側は40枚のデッキを使用する

  一、制裁側による相手モンスターの破壊を禁ずる

  一、制裁側による相手手札への干渉を禁ずる

  一、《自爆スイッチ》を特殊ルールとして禁止カードに追加する

  一、制裁側のシンクロ、エクシーズ等、制裁側専用の召喚方法の使用を禁ずる

 

「…………改めて、酷い縛りだね」

「そうね」

「じゃ、基本的な話から。どうやって攻める?」

 

 久遠の議事進行で打ち合わせが進む。

 先に答えたのは、楓。

 

「まずは、勝利条件のおさらいね」

「ライフを0にする、ドローできなくする、特殊勝利。この三つかしら」

「そうだな。まず、特殊勝利は消える」

 

 久遠が指し示したのはホワイトボードに記載された一文。

 

  一、制裁側の特殊勝利を禁ずる

 

「じゃあ、先にライフを0にする方法で検討してみましょう」

「方法は大別して2種類。殴るか、焼くかだな」

「焼くのはまずなしね。これがあるから」

 

 楓が指したのは

 

  一、制裁側のバーン行為を禁ずる

 

 という一文。

 

「でも、殴るのも厳しいんじゃない?」

 

 逆に明日香が指し示したのは以下の2文。

 

  一、制裁側は攻守0のモンスター以外をデッキに入れてはならない

  一、制裁側は攻守の増減を行ってはならない

 

「攻撃力0のモンスター以外を入れてはいけない。ステータスを変動させてはいけない。攻撃力?のモンスターは0ではないから入れられないわよね? これじゃあ久遠くんのフィールドにまともなモンスターを立たせることもできないでしょう?」

「本当にそこに抜け道はない?」

「あら、その言い方だと楓は何かに気づいてるの?」

「魔法か罠ならモンスターにしてもいいのよ」

「そうか! 罠モンスターとトークンね!」

「正解!」

 

 罠モンスター、モンスタートークン。確かにこの二つならデッキに攻撃力0のモンスターを入れずして攻撃力を持たせることができる。

 ひらめいたとばかりに手を打つ明日香に対して、既に気づいていた楓が少し自慢げに見える。

 

「どう? 久遠くん?」

「んー…………40点」

 

 答えを見つけたとばかりに、舞い上がっている二人に対して、久遠のテンションはさして高くない。

 

「どうして?」

「あんまり攻撃力高いトークンや罠モンスターが居ないんだよ」

 

 そう言って、久遠が取り出したのは数枚のカード。

 

    《リバイバル・ギフト》

    《ナイトメア・デーモンズ》

    《ヴィシャス・クロー》

 

「トークンで攻撃力が高いのはこのあたりだけど、この辺は大体相手フィールドに展開されるから《洗脳解除》とかが必須になる。加えて言うならヴィシャス・クローはバーン効果も備えてるから相手が攻撃してきてしまったら、それだけでレギュレーション違反になる可能性があるんだよね。もちろん、弱いトークンを強化するのもレギュレーションに引っかかる」

「ゴーズは?」

「本体が攻守0じゃないからダメ。で、こいつらを強化できないとなると、攻撃力のラインが2500、今回の相手にはギリギリなんだよな」

「相手のデッキは…………」

「万丈目兄弟の【宝石ドラゴン】…………だったっけ?」

「そ、その核となるのが《竜魔神 キングドラグーン》、攻撃力2400だ。ヴィシャスのトークンでしか対抗できないってんじゃ、正直心もとない。戦闘破壊するとこっちのレギュレーションにかかるしな」

 

 久遠が指し示したのは下の方に書かれている一つのルール。

 

  一、制裁側による相手モンスターの破壊を禁ずる

 

 そう言い、ホワイトボードの空きスペースに△マークと『なぐるトークン』と記載する久遠。

 次に話題が移ったのは

 

「で、罠モンスターだけど、こっちも火力不足ってのが正直な意見だな」

「《メタル・リフレクト・スライム》はどう? あれなら守備表示の反射で倒せるんじゃない?」

「…………えっと……」

 

 明日香の言葉に楓が考え込むように計算を始める。しかし、すぐに顔を上げて。

 

「ギリギリ……かな?」

「そうなるな」

 

 既にその答えには至っていた久遠が楓の意見に同意する。

 そうなると、明日香が意見を同じくしている二人に対して疑問を投げかける。

 

「あら、どうして?」

「メタル・リフレクト・スライムのフィールド上での守備力は3000。1ターンで相手のライフを反射ダメージだけで削り取ろうとすると、相手の平均攻撃力は5体並んで2200以下、4体なら2000以下が必須になる。ここまでいいか?」

「ええ」

「当然、自分のモンスターより守備力が高いモンスターのところへぶつかりに行くバカはいない。そうなると《バトルマニア》みたいなカードで攻撃を強制してやらんといけないんだけど」

「そうすると、削りきるまでに必要なステータス差が結構際どいの」

「そういうことか。ここでもキングドラグーンの攻撃力2400ラインが一つの基準なわけね」

「だな。決して無理じゃないから、○かな?」

「そうね。そうしましょう」

 

 楓が『なぐらせていためつける』と書いて○書く。先程のトークンよりは可能性があるという意味らしい。

 

 納得する明日香。しばしホワイトボードを見つめると、一つ、気付いたかのように。

 

「あ」

 

 と声を上げる。

 

「何か思いついた?」

 

 そういって、そう座に反応したのは楓。

 

「相手のデッキのほうには攻撃力の制限はないんでしょ?」

「あー、成程」

 

 そうして、明日香の言葉に楓が納得する。同時に久遠もどんな答えを持ってきたかを察する。

 『コントロール奪取』 それが明日香の出した答え。

 

「奪えば、攻撃力の高いモンスターを使えるってわけね」

「そうすれば、対等に戦えるようになるし、破壊を介さずに相手のモンスターを減らせるし、いいことずくめじゃない?」

「………………」

 

 答えを見つけたとばかりに喜ぶ明日香。楓が思い至らなかった答えを見つけることが出来たからちょっと得意げに見える。

 一方、久遠はと言うと、特にリアクションは示していない。

 

「…………どうしたの?」

「んーにゃ。同じく40点」

「どうしてよ!?」

 

 会心の案を蹴られたのか、食ってかかる明日香。

 それをなだめながら、久遠は説明を続ける。

 

「またもキングドラグーンが問題。特殊効果を覚えてる?」

「確か……2つあったはずよね。手札からドラゴン族モンスターを特殊召喚できる効果と、効果の対象にならない効果…………あっ」

「そ、コントロール奪取の大半は『対象を取る』効果だ。ブレインコントロール然り、心変わり然り」

「《強制転移》は? あれなら効果対象を選ばないから奪えるよね?」

「ドラグーンがもう一体のモンスターを出せるだろ? そっちが今度は効いてくる。対象を取らないとはいえ、コントロールを譲渡するのは相手が選べるわけだから、最悪別のを身代りにされるだけじゃないかと思ってる」

「そうか…………なかなか大変ね」

「まぁな」

「そうなると……殴るのは難しいかな?」

「今のところ、案としては2つね」

 

 ホワイトボードに書かれているのは、『なぐるトークン』と『なぐらせていためつける』の2行。ただし、楓も明日香もこれといってしっくりきている様子はない。

 仕方なく、視点を変えようとする。

 

「それじゃ、もうひとつの勝利要件、ドローできなくさせる。すなわちデッキキルはどう?」

「ちょっと厳しいんじゃない?」

「明日香、何でそう思うの?」

 

 楓の提案を即座に否定する明日香。

 その早い否定にむっとする楓だったが、そこまですぐに反論するということは何か理由があってのことなのだろうとそれを聞こうとする態度に入る。

 

「問題なのはこの二つなのよ」

 

 そう言って明日香が指し示したのは以下の2つの条件。

 

  一、制裁側は攻守0のモンスター以外をデッキに入れてはならない

  一、制裁側による相手手札への干渉を禁ずる

 

「デッキ破壊のキーカードと言ったら、《メタモルポッド》や《サイバーポッド》じゃない? 他には、【ワーム】シリーズかしら」

「あ、攻撃力……」

「そう、デッキ破壊のキーカードはモンスターカードに多いんだけど、攻守0のモンスターって多くないのよ」

「デッキ破壊がそれだけなら確かにそうね」

「他に方法があるのかしら?」

「《現世と冥界の逆転》、これなら自分の手札だけで相手の手札には干渉しないでも倒せるわ」

「《現世と冥界の逆転》……ちょっと待って、どこかで見たことがあったような」

 

 必死に記憶を探る明日香と、既にそれを思い出している楓。

 しばらく待つものの、答えが出ない様子だったので、楓は話を進めにかかる。

 

「バトルシティのDVDだよ。海馬瀬人VSイシズ・イシュタールの時だったかな」

「それよ!」

「冥界の逆転な……今制限カードだっけか。《処刑人―マキュラ》、《苦渋の選択》、《第六感》当たりが使えないけど、《王家の神殿》、《針虫の巣窟》でデッキを削りまくって初手でぶちかますってのはやり様はあるな」

 

 そう言い、久遠は【何もさせずにデッキキル】と書く。そして、横には『○+』の記号。

 先程から変なネーミングをしているが、ようやく実用的な案が出てきた。

 

「じゃあ―」

「でも却下」

「え?」

 

 しかし、それすら即座に却下する久遠。

 そうすると、腑に落ちないのは楓の方。折角デッキキル、しかも制限に引っ掛からない案を出したというのに。 

 

「何で?」

「大前提なんだけどさ、これって制裁決闘だぞ。冥界の逆転を使うなら相手の墓地にカードがたまらない先行か、それに近いターンで仕込みまで完了しとかなきゃならない」

「……だから?」

 

 まだ納得できていない楓に久遠は苦笑しながら返す。

 

「制裁される側ならなりふり構わず勝利を掴むって理由でやってもいいだろうけどさ、制裁する側が先行ワンキルはダメだろ」

「……別にいいんじゃない?」

「いやいや。だめだろ、いくら播磨相手でも。『最後のチャンスを与える』ってコンセプトを真っ向から否定してんじゃねーか」

「むぅ~」

 

 ちょっとつまらなそうにむくれる楓を見て苦笑いを返す久遠。

 逆に、面白くなさそうなのが楓と明日香。

 あれやこれやと意見を出したものの、こうなってしまうと決め手に欠けるのが正直なところである。

 

 

「でも、それじゃあどうしようもないんじゃない?」

「いや、そんなことないよ?」

「そういえば、さっき検討はできてるって」

「じゃあ、久遠君なりの答えを聞いてもいいわけね?」

「ん? ああ、大したもんじゃないんだよ。俺がやろうとしてんのは【ロックバーン】みたいなもんだし」

「ちょっと!?」

 

 たまらず、ホワイトボードの傍らに立っていた明日香がホワイトボードを叩く。

 そこに示されているのは2行

 

  一、制裁側のバーン行為を禁ずる

  一、制裁側のロック行為を禁ずる

 

「ロックもバーンも明確に禁止されてるじゃない。それともこのルールを明らかに無視するつもり!?」

「だからやろうとしてんのはロックバーン『みたいなもん』だってば。ロックのようでロックに非ず。バーンのようでバーンに非ず。そんで、播磨を屈服させようってコンセプト」

「だから!!」

「ちょっと待って明日香。久遠君、『ロックのようでロックに非ず。バーンのようでバーンに非ず』ってどういう意味?」

「この2つに関しても、抜け道があるんだよ。それを突くんだ」

「……どういうこと?」

「じゃあまずは、バーンのほうから解説しようか。いきなり逆質問になるけど、そもそもバーンの定義って何だと思う?」

「バーンの定義……」

 

 『バーン』について、これまでアカデミアの中等部の授業で何度も学んできたことだ。

 すかさず、明日香が答える。しかし楓は考えこんだまま、答えを返さない。 

 こういうのにはすぐにリアクションを返すのがいつもの彼女であるというのに。

 

「バーンの定義は『カードの効果でダメージを与えること』よね?」

「うん、それでいい。それに、抜け道が実はあるんだよ」

「……抜け道? ……何かしら」

「……………………もしかして、『戦闘ダメージの押しつけ』かな?」

 

 先の沈黙はこのため。ここまで先に思慮していたがための沈黙だった。

 その楓の回答に久遠は肯定の意を返す。

 

「そう。バーンに対しての明確なメタとして《デス・ウォンバット》とか《ピケルの魔法陣》とかがあるのは知ってるよね?」

「うん」

「ええ」

「その効果の適用外になるのが『戦闘ダメージの押しつけ』なわけだ。具体的にはこの2種類」

 

 そうして久遠が出したのが2枚のカード。

 

「片方は別の制約に引っかかるから使えないけど、こっちなら使えるだろ」

「…………成程、盲点ね」

「ほとんどバーンカードみたいにして使うから、気付かなかった」

「そ、でもこれだけじゃあ倒しきることはできない。一発限りだし、さすがに二回目からは警戒するはずだから。だから他にダメージ……つか、ライフを削る方法が必要になる」

「バーンでも、戦闘ダメージの押しつけでもなく、ダメージを与える方法?」

「いや、違う。『ダメージを与える方法』じゃなくて、『ライフを削る方法』だ。似てるようで違うものだ」

「………………」

「………………」

 

 しばしの沈黙。楓も明日香も考え込んだまま顔を上げない。

 おおよそ1分ほど考え込んだ挙句、顔を上げたのは楓のほう。

 

「………………もしかして、あれかな」

「……?」

 

 何かに気づいた様子を見せる楓。

 一方で、明日香はまだ気付かない様子である。

 無理もないと言えば無理もない。デュエルモンスターズというゲームはカードプールが膨大で、その中から要件を満たすカードを探すのは容易ではないのだから。

 

「へぇ、楓は気付くか。結構使用率高くないカードのはずなんだけどな」

「それなら、『ロックのようでロックに非ず』のほうも、説明がつくかも。ついでになぜライフを削っていく必要があるのかも、それで、全部説明がつく」

「ん、そこまで言えるってことはほぼ完璧にわかってるな。そう、それで正解だと思うぜ」

「ちょっと、説明してよ。よくわからないじゃない。2人だけで納得したような顔しないでよ」

「そりゃそうか、悪い悪い。楓が選んだのは、この2枚のカードだよ」

 

 あらかじめ準備していたからか、カードを見せる久遠。

 視線だけで穴があきそうな勢いで明日香はカードテキストを読んでいく。

 それを見て、明日香は納得半分、疑問が晴れない表情を隠せない。

 

「確かに、これならダメージ以外に相手ライフを減らせるけど、これがなぜ『ロックのようでロックに非ず』なの? 普通に何もできなくなってロックに判定されるんじゃ……」

「ある特定の条件でのみ、ロックじゃなくなるのよ」

「どういうこと?」

 

 まだ明日香は答えにたどり着いていない。

 楓は説明を続ける。『ロック禁止』の抜け道の説明を。

 

「ロックの定義は『相手の行動を封じること』よ。封じるっていうのは『攻撃や召喚、発動などの行動を出来なくさせること』でしょ?」

「ええ」

「その定義の範囲には『行動をしてもいいけど、やったら負ける』ってのは、範囲外だと思わない?」

「……それって」

「だから『特定の条件』なんだよ。相手のライフをコントロールしてやらないといけないけどね」

 

 気付いた明日香に、楓が説明をつなげる。条件が限定的な疑似ロック。ただし、それが成立すれば文字通り相手に何もすることができなくなってしまう。いや、正確には『なにかをしたら即敗北』という状況を作り出すことができるのである。

 それが『ロックのようでロックに非ず』という戦法の正体である。

 

「そういうこと。まあその辺は《モウヤンのカレー》とか《恵みの雨》で調整すりゃいいしな。場合によってはライフを0にして勝ってしまってもいい」

「…………そういうことなのね」

 

 ようやく合点がいった明日香。そして、最後は勝利の方法についての話し合いとなる。

 

「でもさ、そうして相手の行動を封じてどうするの?」

「デッキが切れるまで待てばいいかな」

「でも、だって……ほら。」

 

 そういった楓が指し示したのは1つのレギュレーション

 

  一、制裁側は40枚のデッキを使用する

 

「これって明らかにその条件を意識してない?」

「してるだろうねえ。普通に播磨は60枚デッキとかにしてくるんじゃない?」

「そうなったらデッキ枚数で負けるじゃない。マジブラをまた回すの?」

「さすがに2番煎じだから、何らかの対策をしてくるんじゃないかしら?」

 

 前回の制裁で使用した手段を講じる楓に明日香が反論する。

 久遠はというと、完全に涼しい顔をしている。

 

「まあ、それについては対策済み。このシチュエーションにおあつらえ向きの最強カードがあるのさ。これについては本番のお楽しみと行こうか」

「最強カード?」

「なら、最初からそれを使えばいいんじゃないかしら?」

「いや、普通にはまあ使うことはないカードなんだよ。ここまで限定された条件でもない限りは」

「そんなカードがあるの?」

「あるよ。でもこのカードが決め手になる決闘は今後まず現れないんじゃないかな?」

「…………最強カードなのに?」

「うん」

「???」

 

 納得がいっていない2人を余所に、久遠はデッキをまとめる。

 

「ま、吉と出るか凶と出るかは運次第。別に負けても失うものなんて何もないんだし、行ってみましょうかね」

 

 そうして、会議は終わる。

 定められた制裁決闘は明日に迫っている。

 

 縛られたルールに対しての解は、その決闘の中で、明らかになる。

 

 




さて、播磨戦がスタートです。


「ダメージソース」とは一体!?
「ライフを削り、ロックのようでロックに非ず」状態を作るには?
「最強カード」とは一体!?

それは次回明らかになります。




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