遊戯王GX-至った者の歩き方-   作:白銀恭介

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道の果てに―万丈目準―

 ジュニア大会の優勝、入賞経歴多数

 デュエルアカデミア中等部特待生

 そして、万丈目財閥の御曹司

 万丈目準という少年を表す称号は数多く、そのどれもが輝かしいものである。

 2人の兄と共に、『政界、経済界、デュエルモンスターズ界での頂点』を目指すことを合言葉に研鑽を重ね、事実として相応の結果を残してきた。

 同年代や少々上の年のデュエリストになど勝って当たり前、一回り以上年が離れたデュエリストに対しても同格以上の戦いができているということは、自身も他人も余すことなく認めてきたことだった。

 それはデュエルアカデミアの中等部に特待生候補として招かれてきたことからも明らかで、だれもが、本人ですらもこれから自身の順風満帆な人生が続くことを疑ってはいなかった。

 

 彼にとっての転機は突然訪れる。それは突如目の前に現れた一人のデュエリストによるものであった。

 鷹城久遠、それが突如現れたデュエリストの名だった。筆記試験で自身よりも上位の成績を取った者の一人として知ったのが最初である。しかしながらこの時点では万丈目としては気に留めることすらなかった相手だった。デュエルモンスターズはあくまでカードゲーム。机上の成績ばかりが良くても肝心のその実力が低くては話にならない。そして、往々にしてそういった『理屈屋』は実力を伴わない者が多い。それが万丈目準という少年が12年の人生で学んできたことだったし、事実としてそういった者を実力でねじ伏せてやった。これからも、それは変わることはない。目の前の相手も、自分がこれまで相手にしてきた有象無象と何も変わることはないだろう。それが彼の鷹城久遠に対しての第一印象だった。

 万丈目が鷹城久遠を気にかけることになったのは、その後の実技試験からだった。受験のために自信を持って組み上げたデッキが、わずか1ターンで、しかも18000ものオーバーキルを食らってしまった。彼にとって、それは未知の体験の一端。ここまで手も足も出ない決闘は初めてだった。

 驚きはまだ続く。続く決勝戦で、鷹城久遠は『伝説』の一翼たる海馬瀬人のみが持つカード『青眼の白龍』を操ってきた。それも、まるで海馬瀬人本人が操っているかの様なプレイングで。 

 持っているカードパワーが高い。それは紛れもない事実。だが一方で、同じカードを持っていたとして、果たして自分に同じような回し方ができるか、同じような構築ができるか。そう自問自答しても、答えは否としか言えなかった。

 その後、鷹城久遠がプロデュエリスト『久遠帝』であることを知り、同じ特待生としてデュエルアカデミアの門をたたくことになるが、ここでまた、彼にとっての関門が現れる。新入生歓迎会にて相対した三年生の特待生、三王の一角だった。容易にとはいかないまでも、食らいついては行けるだろうとおもった矢先に、完膚なきまでに叩きのめされた。

 才能で劣っていたとは思えない。及ばなかったのは経験の差によるもの。客観的に結果を見ても、自身の手ごたえを見ても、そうであることは疑いの余地はなかった。これから3年を、あるいは高等部まで含めた6年をかければ、その差を徐々に詰め、追い抜いて行くことができる。上級生も、同級生たちも、目に映る目標は、志を新たにするのに十分であった。            

 

 ――全ては、万丈目財閥ために。自身に期待してくれる兄達のために。

 しかし、そうした目標も早速にして狂っていく。それはまた、皮肉にも特異な同級生によって成されてしまう。三王を同時に相手にした1 VS 3 の変則バトルロワイヤル。誰がどう考えても見せしめとしかなりえないその決闘を、またしても久遠は易々と超えて行ってしまう。

 久遠には久遠の想いがあって、それを成したのだろう。それはおぼろげながらも、万丈目には理解できる。しかし、頂点を目指す万丈目にとって、重要なのはそんなことではなく、久遠によって成し遂げられた結果そのもの。それは紛れもなく、今の久遠の実力によってなされたもので。万丈目にとって、それは想像できる成長の範疇を超えていて、追いすがることができないものであることを、認識させられてしまった。

 それでも、万丈目自身のアカデミア生活の始まりは順風満帆といえた。それまでと変わらずに取巻きを携え、自分に歯向かう者はなく、頂点に座す者としての優越感をこれ以上なく受けていた。しかし一方で、それが逃避であることにはどことなく、気付き始めていた。気付き始めてはいたものの、それまで培ってきたプライドが、それを認めることを拒んでいた。

 初めて出会った『見下す対象』でない久遠に対して、どう接すればいいかが判らなかった。現役のプロという、彼の求める世界を知る人間であることを知りつつも。

 それ故に、久遠が持ちかけた『勉強会』は彼にとって、ギリギリの妥協点であるといえた。

『今度2年と3年の先輩たちが勉強会開くって話でさ、お前も誘ってくれって言われたんだけど、参加しない?』

 誘われた。請われた。ただその一つの事実が彼にとって妥協できるポイントだった。自分から教えを請うことはできない。でも、自分が『求められる者』の立ち位置であると納得すれば、まだ妥協することはできた。

 自然と、                  

『お前も参加するのか?』          

 と、聞いてしまっていた。その問いに対して是という答えを聞いた瞬間、反射的に

『よし、なら俺も参加するぞ』

 そう答えてしまっていた。

 これで、もう一段自分は高みへ登れると思った。自身のプライドを傷つけることなく、万丈目の名を貶めることなく。

 ――万丈目財閥のために、兄達のために。

 『勉強会』で得られるものは、少なからずあった。上級生との決闘(デュエル)は毎回得る物があったし、格下との決闘も、自身が優れていることを再確認する意味で役に立った。同級生のアドバイスも、癪ではあったが耳を傾けておくだけの価値はあった。

 しかし、万丈目以上に実力を上げたのはそれまで歯牙にも欠けていなかった格下の生徒たちだった。伸び代があったというのが実態ではあるのだが、実際に相対する万丈目自身としては、それまで容易に勝つことができた相手に苦戦することが増えてきたという事実が、彼を焦らせる。

 そんな彼に久遠によって示された道は、『デッキの根本的な見直し』だった。これまでそんな言葉など歯牙にもかけなかった彼にとって、今やそれは唯一縋ることのできる道だった。

 しかし、デッキの根本的な見直しは彼にとって容易でない作業だった。まず、どこから手をつけたらいいかがわからない。時間は無為に過ぎ、気付けば、学園代表を選ぶ選抜会までの日数もわずかとなってしまっている。1年とは言え、学年代表として舞台に立つからには無様な振舞いはできない。万丈目の名が、それを許さない。かといって、このままではどうしたいいのかがわからない。

 苦渋の結果、彼が選んだのは、久遠への教えを請うことだった。

 

「夜に済まない、ちょっと相談に乗って欲しくてな」

「相談?」

「ああ、前の勉強会でデッキ構築についてお前から指摘されたので選考会までに新しいデッキを構築してみようと思ってな。しかし、どこから手をつけていいか見当がつかんのだ。」

 そんな問いかけをするだけで、内心では不安で仕方がなかった。もし見下されたら。馬鹿にされたら。

 これまで自分が接してきた周囲の人間は、自分に従うか、すり寄ってくるしかしなかった。自然と彼は周囲に対しての接し方は高圧的で見下したものとなる。それが、そうして見下してきた相手の立場に立たざるを得ないようになって初めて、自分がこれまで格下だと見下してきた相手にしてきたことをされるのは、この上ない恐怖であることを知ってしまった。

 そんな万丈目の不安は、結果として杞憂に終わる。久遠は万丈目の申し出に対して快諾をし、夜を徹してデッキ構築とテストプレイに付き合ってくれた。計58度にわたる決闘、デッキ再構築、調整の繰り返しといった妥協のないカリキュラムは、結果的に地獄のような想いをしたものの、彼が本来不安に感じていたものとは別のベクトルであったそれは、決して不快に感じるものではなかった。

 そして、選抜会。地獄のような思いをしただけの甲斐があり、新デッキを引っ提げた彼は、1年生にして2人目の全校ベスト10入りを果たし、新たなステップを踏み出すことに成功する。

 ――俺はまだまだ成長できる。他でもない、俺のために

 初めてできた、見下す相手でない『友人』と言っても良いかもしれない相手によってできた、彼自身の心の成長。決して同格以上が相手でも馴れ合うことはないが、それでも、自身を高めるための糧にできる相手がいるということは、彼にとって少なからず好影響であった。

 そう、『あった』のだ。

          

 転機は突然訪れる。交流戦を終えた次の日、久遠が留学生を襲撃し、査問委員にかけられたという知らせがあったことに端を発する。

 第一に感じたことは『馬鹿な』というもの。付き合いはそう長くはないが、そのようなことをしでかす奴ではない。そもそも久遠が私欲のために誰かを傷つけるということそのものが考えにくい話であった。しかしながらそんな万丈目の想いを余所に、制裁決闘の段取りは着々と進んでいく。そのなかで公募されたのは制裁決闘の参加者を募るもの、一生徒に対して100名もの参加者を募り、加えて直接の勝利者に対する無条件昇格という破格の条件。

 参加することはしなかった。こんな形で久遠を倒すことなど万丈目自身は望んではいない。正々堂々と、一対一で決着をつける。それこそが自分が望んだことであり、目標と言える境地だった。制裁決闘の結果次第では久遠自身の退学があるとはいえ、そこを曲げることはしたくなかった。

 見ることもしなかった。いくら久遠でも1 VS 100という絶望的な戦力差、ある程度の健闘はできるかもしれないが、それでもどうしようもない物は存在する。それでも久遠が負ける姿というものは、どうしても見たくはなかった。たとえどんなに理不尽な物でも、久遠が負ける姿を目に収めたくなかった。

 

 制裁決闘の結果は大半の、それこそ万丈目自身をも含む大方の予想を裏切り、久遠の勝利に終わる。それ自体に対して複雑な感情こそ抱いたものの、それ自体にはどこかでもしかしたらという思いがあった。今となってしまっては、こと決闘に関して久遠が負ける姿を想像しがたい。だからこそ、自分が倒すべき相手にふさわしいのだ。

 

 

 そして、その日が。万丈目にとっての久遠という少年が、倒すべき相手だと想う最後の日となる。

 

 それは、本当に晴天の霹靂とも言える発表だった。

 鷹城久遠のアメリカ留学の公表。それが終わりの始まりだった。それと同時に久遠帝が主に活動していた『種族リーグ』の専念を中断し、メジャーなトーナメント戦に打って出ることを発表する。そうして、最高峰の大会への出場権を得て、留学を果たした。

 それは、傍から見ている限りは華々しい成長である。しかしながら残された者にとっては、それは最悪の裏切りの選択肢。

 自分が望んでやまなかったNo1の地位を、こうもあっさりと捨て去り、新たなステージを目指して行く。その座で自分を待っていてくれることすらしなかった。ならば、それを目指しても未だ得ることができないどころか、未だはるか遠くに見ることしかできなかったかった自分は、追い詰めることもできなかった自分は、いつのかにか目標にしていた相手に、端から相手にされていなかったのではないか。そんな想いすらも首をもたげ始めた。

 確認しようにも、その相手は既に新たなステージへと向かう準備を始め、『此処』(古いステージ)には現れていない。その事実も、万丈目にとっては疑念を確信に変えるだけの一要素となっていた。

「何だ……何なんだ……結局、俺も奴に見下されていただけだったのか」

 誰もいない自室で一人そう呟いても、それを弁明する相手は既に学園にはいない。久遠にとって自分が眼中にないと見なしていたのなら、それは『見下される』よりもさらに残酷なことなのかもしれない。

 目の前にあるのは、その相手と組み上げたデッキ。志を新たにする際の相棒として心強く感じていたそのデッキすらも、今となっては、ただ施された物としか見えなくなり始めてしまった。新たなるエースも、今はもう並び立つ己の姿がイメージできなかった。

 ――俺は…………何のために……。

 それは、目標を失ってしまったが故の、空虚感。しかし、人の上に立つことを当然と考えていた少年には目標を失ってしまったことなど認められない。認められないが故の、理解不能な空虚感だった。

 連日報道される久遠帝の快進撃。日本中でそれを快く思わないのは自分くらいのものだろう。何もかもがつまらないと思えて仕方がなかった学生生活が続く中、相も変わらず華々しい道を歩み続ける同級生。それが万丈目のフラストレーションをさらに貯めていった。

 久遠が去ってから過ごしたわずかな日々は、この上なく空しかった。かといって何をどうしたらよいのかもわからない。そして、そうしたときに相談する相手がいない。そもそも居なくなってしまったが故の今の空虚感。そんな悪循環の中、沸々とした日々を送る。こんな何もない日々が何年も続くのかと思うと、どうにかなってしまいそうだった。

 そんな空しい日常にわずかな波紋が走る。波紋を起こす一石を投じたのは、播磨校長。

 播磨校長に対して万丈目が抱く感情は、決してマイナスの物ではない。若くして、名門であるアカデミアの長という立場に立ち、その立場にふさわしいだけの実績をのこしている人物だ。その姿は、自分が尊敬する二人の兄に少なからず重なる部分がある。

「やあ、待っていたよ。万丈目君。入りたまえ」

「失礼します」

 厳かな雰囲気を醸し出す校長室に入ると、校長は笑顔で自分を迎え入れてくれた。自分の取巻きが浮かべるような卑屈さを持ったそれではない、あくまで自然な笑顔。それを最後に向けられたのはいつのことだったか。そんなことを考えることができる程度には、万丈目の緊張はほぐれていく。

「話というのは、他でもない。鷹城君のことだ」

「……っ!」

 『鷹城』その名前を聞くだけで、万丈目は一瞬で落ち着かなくなる。先ほど解れたかのように感じた緊張感が、再び張り詰める。しかしながら、校長はそれを敏感に察してくれたようで、落ち着くように促してきた。

「まあ落ち着きたまえ。鷹城君が去ってしまってからなんだかアカデミア全体が暗くなってしまったようでね、鷹城君と仲の良かった同級生ということで君に話を聞いてみたかったんだ」

「僕が……ですか」

「ああ、同じ特待生同士、それなりに交流もあっただろう?」

「ええ……まあ……」

 そうして、万丈目は語り始める。自分の取巻き達が、あこがれた女性が、その友人が、久遠が去ることでどう変わったかを。客観的に見てもグダグダな説明だった。話す内容は支離滅裂で、まとまりもない。それは自分の感情と客観視するべき内容が混同しているのだが、感情が高ぶってそれにすら気づくことができない。

 それでも、播磨校長は黙って万丈目の話を黙って聞いてくれた。それは図ってのことかもしれないが、結果的に万丈目の信頼を勝ち取る結果となる。これまで誰にも相談することができなかった自分の想いを聞いてもらえたのは、受け止めてもらったのは久遠が居なくなって以来のことだったから。

 15分も自分の話を続けただろうか、ようやく話を終えた万丈目に、校長は本題を告げにかかる。

「成程。学生たちにとって、鷹城君という人物は小さくない存在だったのだね。つくづく学園から去ってしまったのは惜しかった」

「…………………」

「しかし、この現状はよろしくない。やはり、こうなってしまっては早急に手を打つ必要があるね」

「手……ですか?」

「そうだね。鷹城君という柱を失ったアカデミア、特に1年生にとっては新たな象徴とも言える人物が必要だ。未熟な学生たちにとっては、やはりその精神的支柱が必要になるんだろうね」

「それじゃ……やはりカイザーでしょうか?」

 万丈目世代が入学するまで、アカデミアの絶対的支柱と言えば三王、とりわけその頂点に立つ『帝王』丸藤亮が筆頭に挙がる。久遠によって形を変えたそれを、元ある形に戻そうというのか。

 ならばなぜ、わざわざ自分が呼ばれたのだろう。そんな疑問が湧き上がる。三王も久遠とは交流があり、カイザーをトップにすえなおそうという話ならば、わざわざ自分を呼ぶ必要などないはずだ。

 その答えは、次の播磨校長の言葉ですぐさま明らかになる。

「それもいいが、私の考えは少し異なるんだ」

「え?」

「さっきも言ったが、とりわけ1年生に影響が大きいと私は見ているのだよ。そして、そこに立つべき新たな支柱は、万丈目君。君であると私は考えているのだ」

「僕ですか?」

 話が突然降って来て追いつかないまでも、頭をフル回転させて何とか播磨校長の言葉を飲み込む。目の前の相手は、あの皇帝を差し置いて、自分に新しい象徴となれと言って来ている。

 それでも未だ不自然さを感じる。1年における万丈目自身の立ち位置は学年次席。上を見れば三王と同格にまで食い込んだ1年エース、神倉楓がいる。なのに敢えて自分を推そうというのか。

 そんな万丈目の戸惑いを余所に、校長は、自身の話を続ける。

 

「ああ、君だ。君には、丸藤君や神倉君にはない強みがある。入学してすぐに他の生徒の注目を集めるだけのカリスマ性もあるとみている」

「………………」

「どうだい? 君が本気で挑むというなら、私は、いや、アカデミアは総力を挙げて君をサポートするよ」

 それは、突然持ちかけられてしまった悪魔の取引。いまだ三王に至らぬと自覚している万丈目にとって、それを一足飛びにして頂点へと押し上げてくれるというのは魅力的に感じなくもない。しかし、現実問題そんなことができるのだろうか。そんな逡巡をしていると、まるで心を読んだかのように播磨校長は言葉を紡ぐ。悪魔の契約を促す甘美な一言を。

「その顔は、『果たしてできるのか』と迷っている様子だね。大丈夫さ、万丈目とアカデミアが力を合わせれば、必ず、君の求める物は手に入る。それとも、鷹城君が居た立場に立つのが、怖いかい?」

 その言葉に、久遠に負けないように追いすがろうとしてきた彼のプライドが再び、起き上がり始める。そして、決定的だったのは――

 

「何より、トップに立つことは君の、いや、お兄さん達の悲願でもあったのだろう? そのためのチャンスを君は棒に振ろうというのかい」

「!!」

 

 何故知っているのか。そんな疑問すら浮かばなかった。その一瞬においてのみ目の前の校長が、自分に期待してくれる兄のように見えた。

 

「(そうだ、俺にはまだ成さねばならないことがあるんだ)」

 

 デュエルモンスターズ界の頂点に立ち、三兄弟で全ての世界を手中に収める。それが万丈目の始まりで、使命だったはず。

 それが、今残った唯一縋ることのできた『目標』が万丈目という少年を縛る『枷』となり――

「判りました。その話、受けます」

 悪魔の契約書にサインをしてしまう。

 冷静に考えれば、播磨校長の発した力を合わせる『万丈目』が彼のことを指していないことなど、気付けそうだったのに。校長の目が自分に向いていないことなどわかりそうだったのに。

 久遠に対しての負けん気が、唯一縋ることのできた『目標』が、彼の判断を狂わせてしまう。

 ――兄達のために、そうすれば、自分はまだ上を目指す理由を持っていられる

 

 それが、万丈目準という少年の道の果て。

 プライドに準じたが故に起こった、目的と手段が複雑に乱れた愚行の物語。 

 

 




「残された」少年の愚行の物語

そうして、虚像の王位を求める少年は、どこまでもゆがんでいく



次に紡がれるのは「残った」少女の物語

立ちはだかるのは、久遠と楓にとってのすべての始まりの物語

次回「道の果てに―神倉楓―」




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明日香編は別枠で……おねがいします


さて、万丈目がどうやって歪んでいったのかという物語でした。
高校に入った時点(=本編)ですでにタカビーな彼ですが、そうならない道があったのではという話です。結局元の道にも取っていますが。
最初っから彼が認めることのできる人間がそばに居れば、高校入学時にあそこまで腐っていなかったのかもしれません。
本作では、その役割になりきれなかったのが久遠です。
もし、久遠が今の道を選ばなかったら……万丈目のそばに居続けられたら。
彼にも別の道があったのかもしれません。
久遠がいなくても、世界は回るしいろんな人が変わっていったりしていきます。


今回ちょっと難しかったです。
個人的に賛否両論かもしれないなと思いつつ……本日はここまでです


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