――USオープンで大番狂わせ、久遠帝が世界ランク2位に大金星!!
――久遠帝またも無傷勝利、1回戦の勝利はマグレではなかった!!3回戦進出!!
――10000オーバーキル!!久遠帝ベスト16進出!!いったいどこまで進むのか!?
――日本人頂上決戦制する!今大会唯一の日本人ベスト8へ!
――久遠帝ベスト4へと進出!日本人セミファイナリストは4年ぶりの快挙!!
連日報じられるUSオープンの報道に、日本中は大いに沸いていた。その話題の的は一人のプロデュエリスト。久遠帝。それが話題の中心になっている人物である。
現役最年少ながら、種族リーグを主に活動する久遠帝が突如海外挑戦を表明し、その直後に行われたジャパンカップで優勝。4大大会の一角であるUSオープンのワイルドカードを手に入れた。
若干の期待を持たれて参加する権利を得たUSオープンだったが、初戦の対戦相手は世界ランク2位、【変異カオス】を擁するプロ、ジャスティス。その対戦表が発表されたときに誰もが快進撃はここで終わりだと諦めを持った。
しかしながら、その予想を久遠帝は裏切る。ふたを開けてみれば完封でジャスティスを退け、そのまま快進撃を続ける。そして、最新の報道では日本人で4年ぶりとなるベスト4進出を達成した。
日本中が注目を続ける最年少プロのニュース。それが伝わっているのは、デュエルモンスターズの専門教育機関、デュエルアカデミアでも同じことだった。
「久遠くん、頑張ってるわね」
「うん、今日も勝ってた」
「そう、すごいわね。しかし、こうして同級生がニュースになってるのを見るのも不思議な感覚ね」
「私はそうでもないわ。昔からこうだったから……久遠くんがプロになってから」
「……そう」
ニュースを話題にしているのは、デュエルアカデミア中等部の生徒、天上院明日香と神倉楓である。特待生の制服を身に纏う2人は、今話題となっているプロの同級生。久遠帝と名乗る少年プロ、鷹城久遠の学友である少女たちであった。
一時は学を共にし、学びあった身近な友人。それが、こうして世界の第一線の舞台に立ち、しのぎを削っているということは、素直に誇らしくはあるものの、同時に物寂しさも覚えてしまう。
「この大会中に一気に評判も変わったわね。世界挑戦の表明をした直後なんて、デュエルモンスターズの批評家たちは『どうせ物見遊山で終わる』なんて評していたけど、今じゃ手のひらを返したかのように『今最も頂点に近い日本人プロ』なんて言ってるんだから、いい加減なものよね」
「いい加減な人ほどそういう感じね。でもデビュー当時から応援してくれてる人もいたらしくて、そういう人には『有名になったら独占インタビューとかでお礼したいな』って言ってたよ」
「久遠くんらしいわね」
「うん。ところで、明日香さんは今日……」
「勉強会? 行くわよ。久遠くんが居なくなってしまったけど、それでも石原先輩や兄さん、亮といった実力者とデュエルできる機会をそうは逃したくないもの」
「そう…………」
「不安なの?」
「あれから、こなくなってしまった人もいたから……」
「ああ……」
そうして、楓と明日香は教室の一角を見る。最も視界がよく、逆に教師からも目につきやすい『特等席』とされる場所、そこに陣取っていた最後の特待生の席。今は取巻きを連れてどこかに行ってしまったのだろうか、空席となったそこを見つめる。
その席の主の名は、万丈目準。最後の特待生である。男子同士ということもあり、久遠とはある程度仲が良かったように思える。お互いに馴れ合うような性格でなかったため、『仲良く』というのは違う気がするが、少なくともプライドの高い万丈目を持ってして、鷹城久遠は見下す対象でなかった。それだけで、彼らは友人同士であったと言えるのではないかと思う。
「万丈目君が有る意味一番久遠くんの留学で変わってしまった人だからね」
「うん。でも、あれは変わったとかいう話じゃ……ない気がするわ」
久遠の留学の話を聞いてから、楓と同じくらいに気落ちしていたのが彼だった。2,3日露骨に落ち込んだ様子を見せていたが、今は立ち直ったのか、無理に振り切ろうとしているのか、以前よりも性格が激しくなっているように見える。取巻きを引き連れ、より高圧的な態度を隠そうともしなかった。
それは彼のデュエルのスタイルにも現れている。久遠の留学騒動直前に行われた交流戦選抜大会に、久遠と2人で作り上げたデッキを引っ提げて学内トップ10を倒す大番狂わせを起こした彼だったが、久遠の留学以降、その新しいデッキを使う様子がなく、以前の、入学当時のデッキに戻してしまっていた。
それはまるで、鷹城久遠と共に歩んだ道を、否定するかのように。何もかもをなかったことにしようとしているかのように見えてしまうのである。何がそこまで彼を駆り立てるのか、少女2人は知る由もない。
「何か思うところがあるのかもしれないわね」
「うん、今度、話を聞いてみるのもいいかもしれないわ」
「そうね。2人で問い詰めてやりましょう」
「……明日香さんが行くと逆効果じゃない?」
「何でかしら?」
「…………久遠くんといい、この人達は……」
「???」
想いに気づかれていない万丈目に同情と若干の共感を覚えつつ、楓と明日香は勉強会へと向かう。
それが、彼女たちの、新しい日常。
どこか空虚な物を覚えつつも、それでも日常は慌ただしく回っていく。またはるか遠くに行ってしまった幼馴染を追いかけるために。楓たちもまた、歩みを続ける。
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「クソっ!!」
デュエルアカデミア中等部の校長室。その主は自身の机に拳を叩きつける。机の上に置かれた書類、それが校長の播磨を苛立たせる原因だった。
『不公正な制裁決闘開催に関する警告書』
それが、播磨に送られてきた書類だった。鷹城久遠に対して行われた制裁決闘について、その正統性が証明されないままに開催されたと理事会側が判断、開催責任者の播磨に対して警告が下されたというのが事の顛末である。
理由としては証拠不足の強硬開催。学び舎という組織において、『疑わしきものを罰す』という方針が教育者としての姿勢に反するという点も指摘事項に上がっている。
理事会の調査は迅速かつ詳細にわたって調べられていた。レジー・マッケンジーの目覚めと共に彼女への事情聴取も行われ、そのなかで彼女が鷹城久遠を非難する言葉が一切出なかった。報告書には他にも多くの調査報告が記されており、それらを公正な目で判断するに鷹城久遠は有罪とは判断できないとする結論がまとめ上げられていた。
ただ、鷹城久遠自身が理由こそ明確に説明できないまでもレジー・マッケンジーの件についての関与を認めていること、教師を中心とする裁決で2/3以上の罷免賛成が取れなかったことから、今回の裁定は『警告』にとどまっている。
こんなことは今までなかった。数度制裁決闘を開催はしてきたが、それに対しての警告、ましてここまで詳細な調査報告を交えての説明を学園側に提出してくるといった事例はなかった。しかも、結果として鷹城は制裁決闘を突破し、自身の無罪を勝ち取っている。にもかかわらずこんな話が来るというのは、変を通り越して不可解であると考えざるを得ない。
「…………………」
言葉を発さぬままに播磨は考える。これまでを、そして、これからを
――今回の話は、何故起こったのか?
理事会の中に、自分の意とは相いれない思想の者がいるため、その勢力が警告をしてきた。
――何故、助かったか。
教師たちの罷免に対しての賛成が2/3を超えなかったため。しかし、敵が少なくない自分にとって、それは何の気休めにもならない事実。ただ『運が良かっただけ』に過ぎない。
――ならば、今後何が必要か。
権力が必要だ。理事会に有無を言わせないだけの権力が。教師たちの中で絶対的な存在であることを示す権力が。それには今の自分の後ろ盾になっているマッケンジーでは役に立たない。もっと、自分の、自分だけの力が必要だ。
――すべきことは。
アプローチは、二つ。理事会に食い込むための足がかりを作ること。そして、教師たちの中で自分の手ゴマとなるものを増やすこと。両方の線で当たってみる。
机の上のもう一つの書類を見る播磨、顔写真が張り付けられたそれは、教師採用の応募者の履歴書。めぼしい者はそう多くなかったが、目を引く人物が2名いた。元プロでありながら、その素行を問題視され、プロを引退後も様々なトラブルを起こしてきた人物たちだ。短絡的かつ単純。最も忌避すべき人間性でありながらも、事操るための手ゴマとしてなら非常に有用。しかも元プロという肩書のおまけつきだ。上手く御すれば、教師たちに対しての楔となってくれるだろう。
もう一つのアプローチ。理事会に食い込むためには、足がかりが必要だ。それ相応の社会的地位を持っていて、なおかつこちらになびきそうな存在。そんな都合のいい存在が果たしているのかとは思った物の、ちょうどいい存在が生徒の中にいた。
大企業グループの三男坊、その2人の兄も政界や経済界に頭角を現しており、社会的立場は注目すべきものがある。何度かその三男坊本人とも顔を合わせてみたことはあるものの、プライドが高く、おだてれば調子に乗りやすい、最も操りやすいタイプの人間であった。そして、現特待生であることからも、それを立てることについて、何ら不自然はない。
しかしながら、彼には現状、頂点に立つにあたっての壁が二つばかりある。一人は学生にして現役プロの鷹城久遠。これについてはマッケンジーの要望もありアカデミアから排除したため、今現在は問題とならない。もう一人は、なにかとその鷹城とつるんでいる特待生の一人。成績表を見る限り筆記は文句なしのトップ。実技に関しても3年の丸藤を落とすほどであることから、その地位にふさわしいだけの実力は持っているのだろう。
「神倉楓…………邪魔だな」
誰もいない自室で呟きを聞く者はいない。しかしながらおおよそ教育者として相応しくない発言。それを何一つ悪びれる様子もなく播磨は発する。その中にあるのはどのようにして自分の目的を達成するか、ただその一つのみ。
放逐する方法は最早使えない。鷹城の件でそれをやって理事会に目をつけられたのだ。ならば、できることは、目的の生徒の地位を向上させること。それしか今はできることはない。
ふと、扉をノックする音を聞き我に帰る。呼び出していた例の学生が来たようだ。静かに、厳かな雰囲気を纏わせる。それがデュエルアカデミア校長たる自身に必要なこと。だからこそ、ごくごく自然にそれをやってのける。
「やあ、待っていたよ。万丈目君。入りたまえ」
目的の生徒―万丈目グループの三男坊である万丈目準―を呼び入れる。まだ、ここから挽回できる。
ふと、一瞬だけ。ほんの一瞬だけ考えたことが脳裏をよぎる。
――俺は、間違っているのだろうか。
俺が間違っているわけがない。これまでも、これからも、絶対に。
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USオープン、準決勝を目の前にした鷹城久遠。控室に座する彼の目の前に有るのは3つのデッキ。
一つは、1回戦からここまで使用してきた【BF】デッキ。強力な展開力を誇り、攻守ともに安定して優れたデッキである。ここまでつかって来て危なげなく勝ち進めてきたものの、さすがに見せ過ぎの感もある。そろそろ対策を講じてこられてもおかしくはない。これを使い続けるのもいいが、若干のリスクはあるかもしれない。
もう一つは、【BF】デッキの次に使おうとしていたデッキ。こちらもデッキパワーとしては十分に申し分ない。初見の相手ならば、ほぼ対策ができないままに終わるだろう。2戦を残したこの状況、ここで投入するのは有りかもしれない。もちろん、決勝に投入すれば優勝へはより近くなることも間違いない事ではある。
そして、最後の一つ。久遠の『真のデッキ』が一つ。こうして他の2つと並べてはみたものの、いざ使おうという気にはどうしてもならない。これは、使えない。使ってはならない『禁忌』だと、素直に直感が伝えてしまっている。このデッキを使ってしまうことは、デュエルモンスターズというゲームの、有りようすら台無しにしてしまう、それが久遠には判っている。
「きちんと、使ってやれればいいのだけど……な」
言葉に出しても、久遠には判ることだ。デュエルモンスターズという競技が『相手』を必要とするものである以上、その願いは永劫叶わない。自分と同等の『異端』でも現れない限り。結局、他の人と公平でないということは、『対等』な勝負を行うことができないということ。それは、『異端』を手にした時から、判っていたことだったはずだ。
「まあ、詮無きことか」
それが自分の生き方だと決めたのだ。
それでも、まだ先が有ると信じることができたから、いままでデュエルモンスターズを続けてこられたのだ。
共通リーグになかなか打って出ていくことはなかった。世界大会や、それに準ずる大会への挑戦も、かたくなに拒んできた。それは一重に、頂点に手が届いてしまうことを先延ばしにするだけの行為。
――世界の頂点に手が届いてしまうことが怖かったから。
――その先に何もない事を知ることが怖かったから。
それが、ゆっくりと歩き続けてきた理由の真相。
しかし、もう、それすら許されない。
のらりくらりとしてきた結果、今の袋小路に迷い込んでしまったのだ。逃げることはできないし、けじめはつけなくてはならない。
そうすることで、小さいながらの居場所を作れたのだから。それを守るためなら、あれこれ我が儘は言えない。
だから、久遠にできることは、自分に追いすがれるだけの人が現れることを願うのみ。
出場時間になった。
結局、手にしたのは1回戦から久遠を支え続けてきた【BF】デッキ。対策は打たれるかもしれないが、問題はない。対応できるだけの応用力は持っている。
あと二つ。
それだけで、世界の頂点に――手が届いてしまう。
歓声の待つ地へと久遠は進む。
幾度となく行ってきた行為の中で、また、小さな希望を抱き、ステージへと登る。
子供のころから何度となく雑誌でみてきた、憧れの選手が、目の前に立っている。
周りの歓声を背に受け、久遠帝は威風堂々たるたたずまいでフィールドに立つ。
そして、決闘は幕を開け――
――願いは、またしても叶うことはなかった。
――久遠帝、無傷のままに決勝進出
対戦相手は、6年連続で世界チャンピオンを防衛し続ける『DD』
『残すは』、彼一人だけだった。
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アカデミアの中では、新たなニュースが場を沸かしていた。そのニュースの内容は、新人講師採用試験デュエルが開催されるというものである。
デュエルアカデミアという学校の社会的地位は、決して低くない。むしろ、一大産業として成り立ち、プロリーグも大規模な興業として成立している現代において、そのプロを養成する学校という意味では非常に世間の注目も集めやすく、かつ全国大会などで相応の結果を残している現状、その学校名にはある種のブランドが付いている。
自然と、そこで働く教師にも社会的な箔が付いており、そのためかアカデミアへの就職を希望する者も少なからずいる。元プロ、全国大会出場者、そういった面々が多々勤めているのが現在のアカデミアである。
一方で、その関門は非常に狭い。デュエルで学生を導くものであるべきという考えから、教師を志望せんとして門をたたく者に課せられるのは、学生50人抜きの決闘。一人でも敗北すれば即不採用となる試験に、志半ばに折られてしまった者も多くいる。
久しぶりに開催が決定した採用試験の張り紙に、集まる生徒たち。勝利の報酬は無条件の単位進呈。その報酬を求めて概要を調べに来たようである。
当然、そんなことに興味がないのは、単位、成績共に文句なしの特待生達。
「みんな何であんなにも挑もうとするのかしらね?」
「参加するだけで成績にプラス評価だって聞くし、万一勝てれば無条件に単位取得でしょ?危ない人たちにとっては一発逆転のおいしい話なのだと思うな」
「そもそも採用試験を受ける人に張り合えるレベルになっていたら、単位落としたりなんてしないはずだけどねぇ?」
「お姉ちゃん、しっ!」
通知が張り出されている食堂の真ん中で、天上院明日香、神倉楓、石原法子、周子の姉妹、紬紫の5人で食卓を囲んでいた。話題は、学生たちが集まっている職員採用試験。
「教師採用試験って、突破できた人いるのですか?さすがに50人抜きは難しいと思うのですけど」
「一度一度状況はリセットできます故、よほどの事故にならない限りは安定して戦えます。それでも関門としての難易度が低くないのは事実でして、ここ3年でその試験を突破できたのは1名だけだと伺っております」
楓の質問に対して、格式ばった物言いで答える紫。慣れてこそ来たものの、独特のペースと口調で話されると、ときどき口調が移ってしまうことがある紫に発言に、楓は興味を失い半分、返答を返す。
「なら、どっかで負けるのかもしれないですね」
「ところがどっこい、今回の教員志望は、元プロデュエリストらしいよ?」
「元プロですか?」
法子の発した『プロ』の言葉に反応する楓。その言葉が誰を指しているか、判りやすいまでの表情をしている楓に法子は苦笑をしながら答える。
「んー、何でも、そこそこ活躍していたプロデュエリストらしいのだけど、なんかのトラブルで辞めちゃったみたい。そのあとしばらく消息不明だったんだけど、校長先生がスカウトしてきたみたい」
「へぇ……」
「法子先輩、詳しいですね。どこからその情報を?」
「ん? 吹雪先輩から聞いたんだよ」
相変わらず謎の情報網を持つ兄に、若干の驚きを隠せない明日香。一方の楓はというと、既にこの話に半ば興味を失いつつある。
それに気づいたのか、法子は話を続ける。
「楓ちゃんはあんまり興味ない?」
「ええ……そんなには」
「そーいや、吹雪先輩もちょっとだけ怪訝そうに言ってたな」
「?」
引っかかりを覚える楓。あの吹雪先輩が怪訝に思う相手というのは珍しい。基本的に人を嫌うということをしない人だ。それ故に多くの人に好かれる理由となりえるのだろうが。
その引っ掛かった様子を見て、興味を持ったのだと判断したのか、話は続く。
――思わぬ方向に転じた話を。
「引退してた時に、結構きな臭い事やってたみたいで、何でもショップ破りとか、カード狩りとか?とにかくそんなことをしてたらしいの。うちの生徒も小学生のころ……だから3~4年前かな、被害にあったことがあるって」
どこかで聞いたことがある話。そう片付けることはどうしてもできなかった。あまりにも揃いすぎた特徴、出来事が合った時期。そして、楓自身が体験した『あの』エピソード。
それらすべてが昔あった一つの出来事を指していた。
全ての始まりがあった日で、多くの者を失ってしまったあの日。その出来事がフラッシュバックしてきた。
「確認しなきゃ……」
「……楓?」
呟きを怪訝に思った明日香の声も最早耳に入らない。まるで夢遊病のように席から立ち上がり、食堂を後にしようとする楓。一方で楓の表情を見た他の女子は一瞬驚きを隠せなかった。いや、隠すことができなかった。楓の表情に現れていたのは、これまで一度として露わにしてこなかった、明確な怒りの表情。
そんな表情のまま食堂を立ち去ろうとする少女を、誰一人として止めることはできなかった。
異端を排除してなお、アカデミアには不穏な空気が立ちこめる。
嵐は、またしてもやってくる。
神倉楓と鷹城久遠の『過去』をえぐる傷跡とともに。万丈目準の『現在』の道標を狂わせながら。
播磨という男の、『未来』のための物語は、狂いつつ、進み続ける。
歩き続ける久遠。
-―その道の向かう先は頂点と言う終わりの場所
選択を迫られる万丈目
――その道の向う先は、虚ろなる王座
過去と向かい合う楓。
――その道の向う先は、すべての始まりの物語
次回「道の果てに」
ご無沙汰しております。ちょっと短めでした。
というか、ちょっと忙しすぎてこっちに時間がマジでさけない状態でした。
こっちの更新も微妙に少なめです。申し訳ない。
久遠がいなくても播磨がいればアカデミアにイベントは立ち込めるのです。
しかし、彼も少しずつ尻に火がつき始めた状態。
『過去』に触れる可能性がある楓、はたしてそれはただの勘違いで済むのか。
久遠がいない今、向かい合えるのは、彼女だけなのです。
どのように進んでいくか、それは、これから先の物語。