「先攻は?」
「どうぞ。挑戦者に譲ります」
実際に相対すると結構狸なんだな、と久遠は思う。
【サイバー・ドラゴン】において後攻はメリットだろうに、それを余裕のように見せかけて心理的優位に立とうとしている。
見え透いてはいるが、それでも今回のデッキでは先攻のほうがありがたい。ありがたく頂戴するとしよう。
「どうも、ではドロー」
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TURN1
久遠帝(TP)【???】
LP 4000
手札 6
鮫島【サイバー・ドラゴン】
LP 4000
手札 5
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カードを引く。まずは"準備"が必要だ。
「始めます。まずは魔法カード《ワン・フォー・ワン》発動。手札からモンスター1体を墓地に送り、デッキからレベル1のモンスターを特殊召喚できます。《大木炭18》を特殊召喚、守備表示です」
現れたのは真っ黒な木人。レベル1の中で最も守備が高いモンスターを召喚したが、とりあえずこれで最初のターンは生き残れるだろう。特に、《サイバードラゴン》の攻撃力と同じ守備力であることが大きい。
「ほう、ワン・フォー・ワン……知らないカードです。こうして始めてみると、知らないカードが出来るのは不思議な感覚ですね」
相手にしない。すでに幾度となくいわれてきたことだ。
「モンスターを1体セット、カードを3枚伏せてターンエンド」
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TURN1
久遠帝(TP)
LP 4000
手札 0
モンスター
大木炭18(守2100)
伏1
魔・罠
伏3
鮫島
LP 4000
手札 5
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「私のターン、ドロー」
さて、マスター鮫島のターンになる。
【サイバー・ドラゴン】の持ち味はその奇襲性。いきなり攻撃力2100が特殊召喚されてくることや、融合によっていきなり4000や8000クラスの化け物が飛んでくる。
"マスター"ともいわれているデュエリストともなれば、それだけとんでもないものが飛んでくると思うが……。
「私は、手札から《サイバー・ドラゴン》を特殊召喚。このカードは相手フィールドにのみモンスターが存在するときに手札から特殊召喚できます。さらに魔法カード《パワー・ボンド》。手札またはフィールド上から、融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、機械族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚します。さらにこのカードによって特殊召喚したモンスターは、攻撃力が倍増します。私は手札の《サイバー・ドラゴン》2枚を融合。現れよ、《サイバー・ツイン・ドラゴン》!!」
考えうる中で最低最悪の展開、よくもそろえてきたものだと感服する。
「(初手に全部揃ってんのかよ……しかもきちんと今後のことを考えてる布陣だな)」
やろうと思えば《サイバー・エンド・ドラゴン》も展開できた初期手札の布陣。それをあえてサイバー・ツインで展開してくるところにしたたかさを感じる。
久遠帝のフィールドには2枚の伏せカード、これが攻撃迎撃だった歳の損害は4枚消費して1体のモンスターを出すサイバー・エンドより、2体のモンスターを展開できるツイン+サイバー・ドラゴンのほうがリスクが少ない。
加えて、リスクカードであるパワー・ボンドに対しても最小限ながら回避策を設けているらしい。しかし、しょっぱなから飛ばしてくる。融合召喚されたサイバーツインの攻撃力は、5600。
「バトル、サイバードラゴンで伏せモンスターを攻撃!エヴォリューション・バースト!!」
「通せません、その前にトラップ発動、《グラヴィティ・バインド-超重力の網-》レベル4以上のモンスターは攻撃できません」
「そうきますか、ではバトル終了、私は《サイバー・ジラフ》を召喚、そして……」
リカバリー策は二重らしい、つくづく強か、でもそれは通させない。
「当然握ってますか……。でもそれも却下です。カウンタートラップ発動、《キックバック》、相手モンスターの召喚を無効にし、手札に戻します」
本来は相手の展開を遅らせるためのカード。本来フィニッシャーを特殊召喚で展開してくる【サイバー・ドラゴン】に刺さるかというと若干微妙。しかし、事パワーボンド軸の【サイバー・ドラゴン】を相手にすると、このカードの役割は一気に変わってくる。
「ぐっ…そう来ますか」
ここまで涼しげな顔をしていたマスター鮫島の顔が少し歪む。リスク回避の一手が潰されたからだろう。そう、ここでの役割は、パワーボンドのリスク回避潰し、初ターンで罠カードを伏せるここでのみ、刺さる一手。
「仕方ありません、カードを1枚伏せて、ターンエンドです」
「エンドフェイズ、パワーボンドのデメリット効果を受けてもらいます。《サイバー・ツイン・ドラゴン》の元々の攻撃力分のダメージ、2800です」
「ぐぐぅっ……。安くはない代償ですが、首の皮1枚つながったというところでしょうか」
初手にサイバーエンドを出していたら、これで決まっていたが、そこはさすがの嗅覚というべきか。もうひとつのリスク回避がうまく働いた形だ。
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TURN2(END)
久遠帝
LP 4000
手札 0
モンスター
大木炭18(守2100)
伏1
魔・罠
《グラヴィティ・バインド-超重力の網-》
伏1
鮫島
LP 1200
手札 1
《サイバージラフ》
モンスター
《サイバー・ドラゴン》(攻2100)
《サイバー・ツイン・ドラゴン》(攻5600)
魔・罠
伏1
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「僕のターンです。ドロー」
1ターン回って、場の状況はそこまでいいとはいえない。初っ端から攻撃力5600の2回攻撃とかどういう状況だとも思う。それでも、このターンは様子見。まだどうにでもなるはず。
「何もありません、エンドです」
「えらく消極的ですね、私のターン、ドロー」
マスター鮫島がカードを引く。とたんに目つきが鋭くなる……来るか。
「速攻魔法、サイクロン、グラビティバインドを破壊です」
ロックを解除に来たか、高攻撃力のサイバー・ツインがいる状況でやってこない理由がない。こちらの場には守備力2100の大木炭と伏せモンスターがいるだけなのだから。
「バトル!!」
「メインフェイズ終了前にリバースカード、《闇霊術-「欲」》、闇属性モンスターを生贄に、カードを2枚ドローします。相手は魔法カードを見せることでこの効果を無効にできますが……。」
「公開はしません」
相手の手札は1枚。キックバックで戻されたサイバー・ジラフで確定しているから公開できない。
「では2枚ドロー。」
手札は、3枚。でも目的はそちらではなく。
「改めてバトル、サイバー・ツインで大木炭を攻撃!!」
「墓地の《ネクロ・ガードナー》を除外して効果発動、相手の攻撃を1度だけ無効にします」
「ワン・フォー・ワンのときですね、でもサイバー・ツインは2回攻撃を持っています。もう一度攻撃」
「知ってます。墓地のタスケルトンを除外、効果はネクロ・ガードナーと同じです」
「そのための闇霊術でしたが……。仕方ありません、ターンエンドです」
「(何とかしのげた。さて、手札も引けたしここから反撃だ。)」
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TURN4
久遠帝
LP 4000
手札 3
モンスター 大木炭18(守2100)
魔・罠
鮫島(TP)
LP 1200
手札 1 (サイバージラフ)
モンスター サイバー・ドラゴン(攻2100)、サイバー・ツイン・ドラゴン(攻5600)
魔・罠 伏1
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「僕のターンです。ドロー。」
5ターン目、攻めてみるか。
「魔法カード、《簡易融合》を発動します。1000ポイントライフを支払い、融合デッキからレベル5以下の融合モンスターを融合召喚扱いとして特殊召喚します、僕は•《サウザンド・アイズ・サクリファイス》を特殊召喚」
現れたのは気味の悪い沢山の目を備えたモンスター、スタジアムが一瞬シンとなるが、一瞬で湧き上がる。
「サウザンドアイズですか、まさかデュエルモンスターズ創設者、ペガサス氏のカードが見れるとは」
「ええ、なかなかのものでしょう。でも見とれてる時間はさしあげません、サウザンドアイズの効果発動、1ターンに1度、相手フィールドのモンスターを装備扱いにできます。僕はサイバー・ツインを選択!」
「させません、リバースカード、《融合解除》私は……」
一瞬逡巡するマスター鮫島、対象をどちらに取るかで悩んでるのかもしれない。
ここでサウザンドアイズを融合デッキに戻すのも1つの手、しかし、すでに効果は優先権を使用して発動済み、サイバーツインは装備対象を失い、墓地に送られる。サイバーツインを選べば、サイバードラゴンは特殊召喚できる。
簡易融合の効果を知らないのが問題なのだろうが…
「サイバーツインを融合解除、サイバードラゴン2体を特殊召喚します」
当然のように正解を引いてくるな……。
「サウザンドアイズの対象がいなくなりましたので装備はなしです。」
攻勢の目はなくなった、切り替えよう
「それではカード2枚を伏せて、エンドフェイス、簡易融合の効果で特殊召喚されたサウザンドアイズが破壊されます。ターンエンドです」
簡易融合で特殊召喚したモンスターはターンエンド時に破壊される。先ほど融合解除をサウザンドアイズに発動していたら、サイバードラゴン2体分の損になっていた。これを見極められるということは、相手は一流のデュエリストである証明である。
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久遠帝
LP 3000
手札 1
モンスター
大木炭18(守2100)
魔・罠
伏2
鮫島(TP)
LP 1200
手札 2
《サイバージラフ》
モンスター
《サイバー・ドラゴン》(攻2100)
《サイバー・ドラゴン》(攻2100)
《サイバー・ドラゴン》(攻2100)
魔・罠
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「私のターン、ドロー」
相手がドローする。これで手札1枚。場にサイバードラゴンが3体揃っているが、大木炭は超えられていない。
さて、どう出る。
「……《サイバー・フェニックス》を守備表示で召喚、ターンエンドです」
守りを兼ねて展開してきた。
「僕のターンです、ドロー」
こちらもできることは多くない、お互いに初手からカードを思いっきり消費したからである。
「魔法カード《天使の施し》を発動、その効果により3枚ドローして2枚捨てます。……後は特にありません、エンドです」
「私のターン、ドロー」
8ターン目、相手の手札は持ってることが分かっているサイバージラフと今ドローしたカード、さて……。
「魔法カード、《強欲な壺》 デッキから2枚ドロー、さらに《天使の施し》、3枚ドローして2枚捨てます」
手札は十分に補充され、だぶついてたジラフも捨てられた。攻め気になっているのがありありとわかる。
「さらに私は魔法カード《大嵐》フィールドの魔法、罠をすべて破壊します。」
「それは止められませんが、追撃は止めます。リバースカード《つり天井》相手フィールドに4体以上のモンスターがいるとき、すべて破壊します。そして、さらにチェーン、速攻魔法《禁じられた聖槍》を発動します。対象はこちらの大木炭です。チェーン処理により、聖槍の効果、攻撃力を800下げ、魔法、罠の効果を受けなくなります、そしてつり天井は4体以上フィールドにモンスターが居る時、それをすべて破壊。聖槍の効果を受けている大木炭以外の全てのモンスターが破壊されます」
「なんですと!!?何故このタイミングなのですか!?サイバーフェニックスを出した直後に発動できたはず」
「[サイバー・ドラゴン]においてフィールドのモンスターが減る条件はそんなに多くないんです。特殊召喚中心のデッキですからね。ある程度発動タイミングは調整できます。でも、大嵐で破壊されるならここしかないんです。ここで罠を一掃しようってことは、融合、握っていますよね?」
「そこまで読むのですか……。つくづく10歳とは思えないプレイングをしますね。」
「……どうも」
「しかし…こちらの動きを止めてくること止めてくること、これはやりづらい」
「……」
「私はカードを1枚伏せて、ターンエンドです」
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ターン 8(EP)
久遠帝
LP 3000
手札 1
モンスター
《大木炭18》(守2100)
魔・罠
鮫島(TP)
LP 1200
手札 1
魔・罠 伏1
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「僕のターン、ドロー。前のターン天使の施しで捨てた《ネクロ・ディフェンダー》の効果を発動、墓地のこのカードを除外して、フィールドのモンスター1枚を選択、次の相手のターン終了まで選択したモンスターは戦闘破壊されず、ダメージも0になります。選択対象は大木炭です」
今、できることは多くない、これで耐えられるだろうか。
「カードを2枚セット、ターンエンド」
10ターン目、まだまだ先は長い。相手フィールドは伏せカードが1枚のみ、手札は次のドローで2枚
こちらのフィールドは大木炭と伏せカード2枚だけ。どう出てくるか。
「私はリバースカード、《リビングデッドの呼び声》を発動、天使の施しで捨てた《プロト・サイバー・ドラゴン》を特殊召喚」
現れたのはサイバードラゴンを一回り細くしたドラゴン……というかミミズ。
問題は、サイバードラゴンやサイバーツインが墓地にあるのにこいつをわざわざ呼んだこと、これが意味するのは…さらなる展開
「特殊召喚したプロトサイバーが場に現れた時に、手札から速攻魔法《地獄の暴走召喚》、特殊召喚された攻撃力1500以下のモンスターを可能な限り特殊召喚。私の場には攻撃力1100のプロトサイバー、しかしプロトサイバーはフィールドではサイバードラゴンとして扱います。私は墓地よりサイバードラゴンを3体、攻撃表示で特殊召喚します」
「僕はデッキから大木炭を2体、守備表示です」
当然のようにサイバードラゴンを展開してくる、しかも先のターンに予見してた通り、これは…来るか
「手札から魔法カード《融合》を発動、サイバードラゴン2体とプロトサイバーを選択し、《サイバー・エンドドラゴン》を特殊召喚!」
現れるのは3つ首の巨大な機械竜、サイバー流の真のエースが現れる。圧倒的な攻撃力のそのプレッシャーは、決して軽くない。
「行きます、バトル!サイバーエンドで、先ほど特殊召喚された大木炭を攻撃、守備表示ですが、サイバーエンドは貫通効果を持っています。」
「十分理解してます、リバースカード、永続罠《スピリットバリア》。自分フィールドにモンスターがいるとき、戦闘ダメージを0にします。大木炭は破壊されますが、ダメージはなしです」
「ぐぬぬ……本当に硬い……ターンエンド」
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ターン 10(EP)
久遠帝
LP 3000
手札 0
モンスター
《大木炭18》(守2100)
《大木炭18》(守2100)
魔・罠
《スピリットバリア》
伏2
鮫島(TP)
LP 1200
手札 1
モンスター:
《サイバー・エンド・ドラゴン》(攻4000)
《サイバー・ドラゴン》(攻2100)
魔・罠
《リビングデッドの呼び声》(対象なし)
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「僕のターン、ドロー。魔法カード《馬の骨の対価》を発動、先ほど特殊召喚された大木炭を生贄に2枚ドロー、1枚セットしてエンドです」
「私のターン、ドロー。動きませんね。が、好機、バトル!サイバーエンドで大木炭を攻撃!」
「リバースカード《リミット・リバース》墓地の攻撃力1000以下のモンスターを攻撃表示で特殊召喚」
「攻撃力1000以下のモンスターではサイバーエンドは攻略できませんぞ!」
「できますよ。僕は墓地からサウザンドアイズを選択、サウザンドアイズの効果、このモンスターがフィールドにいるとき、相手モンスターは攻撃できない」
「くっ!」
そろそろ焦れてきた……かな?いい傾向ではあるか。
「カードを1枚セット、エンドです!」
「僕のターン、ドロー」
なら、もうちょっと熱くさせておきたいところである。幸いに相手からすると嫌な形で攻勢に出れそうだし。
「サウザンドアイズの効果発動。当然対象はサイバーエンド!」
「サイバー・エンドっ!!」
サイバーエンドを自分フィールド上に装備として奪う。エースカードを奪われたら熱くなるのは当然と言えば当然、しかも起死回生の一手だったのだろう。もはや受け手としての余裕が全然感じられない。
この状況で冷静にプレイできるか、それで相手の技量が見えてくる
「バトル、サウザンドアイズでサイバードラゴンを攻撃、サウザンドアイズの攻撃力は4000です。」
これが通れば終わりだが……。
「かかりましたね、そうはいきません、罠発動《炸裂装甲》、攻撃モンスターを破壊します」
「当然そう来ますよね、チェーンします。罠発動《強制終了》! その効果により、サイバーエンドを墓地に送り、バトルフェイズを終了、このため炸裂装甲は無効になります」
「どこまでも……こちらの手をかわしてきますね……本当に、堅牢な守りだ」
何とかかわしたが、ボルテージはどんどん上がってる。
「メインフェイズ2、なにもしません、エンドです」
「私のターン、ドロー!!モンスターをセット、ターンエンドです」
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TURN14(END)
久遠帝
LP 3000
手札 2
モンスター
《大木炭18》(守2100)
《サウザンド・アイズ・サクリファイス》(攻0)
魔・罠
《スピリットバリア》
《リミットリバース》(対象:サウザンド・アイズ・サクリファイス)
《強制終了》
鮫島(TP)
LP 1200
手札 0
モンスター
《サイバー・ドラゴン》
魔・罠
《リビングデッドの呼び声》(対象なし)
----
「僕のターン、ドロー」
まずは基本に沿った動きで…
「サウザンドアイズの効果を発動、サイバードラゴンを装備します」
「ぐぬぬ…………」
サイバードラゴンを吸収してサウザンドアイズの攻撃力を上昇、攻撃の準備は整ったのだが。一瞬相手のフィールドを一瞥する。サイバー・ドラゴンを装備した今、相手のフィールドにいるのは1体のセットモンスター。しかし、その手の内は何となくではあるが読めている。
「(ま、もらえるアドはもらっておかないと損だわな)」
内心で呟く。このデッキでセットするモンスターなどあれしかない。
「モンスターセット、カード1枚セットしてバトル!」
「なんですと!!?」
バトルの前にカードやモンスターをセットする戦術に『読まれた!?』という表情を隠すこともできない鮫島。大分落ち着きを失っているなと久遠は思いつつも攻撃を宣言する。
「そのデッキでセットモンスターなんて十中八九《メタモルポッド》。サウザンドアイズでセットモンスターを攻撃」
「ぐぐっ、その通り、セットモンスターはメタモルポッドです。お互いにカードを全て捨て、5枚ドロー」
こちらの手札は1枚、相手の手札は0、こちらが1枚捨てた後、お互いに5枚ドローする。
「(……うーむ、逆手だ。)メイン2は何もせず、エンドです」
引いたカードは決めてのカード、しかし召喚条件を満たすサポートカードはすでに伏せてしまっている。まぁ、どうにでもなるのだが。
「私のターン。ドロー!くくっ」
一瞬浮かべた笑みに、起死回生の一手を引いたのだと確信する。ここが、正念場か。
「久遠選手、貴方は確かにすばらしいタクティクスを持っている。しかし、私は現役のプロとして貴方にプロの高みというものをお教えしなくてはいけません」
「…………」
「今からそれをお見せしますぞ。私は魔法カード《貪欲な壺》を発動!墓地のサイバードラゴン2体、サイバーフェニックス、プロトサイバー、サイバージラフをデッキに戻して2枚ドロー!これは都合がいいカードが来ました!私は今ドローした魔法カード《ハリケーン》を発動!お互いの魔法、罠を全て手札に戻します!」
ここは、通せない。このタイミングを逃すと、一発で刈り取られてしまう。
「チェーン発動です。速攻魔法発動《時の飛躍-ターン・ジャンプ》 この効果によりターンプレイヤー、つまり貴方のターンで数えて3ターン後のバトルフェイズに移行します。バトルフェイズですが、モンスターがいないため何もできませんね。メイン2に移行してください。このターン貴方はもう攻撃できなくなりました」
「ハリケーンの効果で魔法、罠が手札に戻ります」
リミット・リバースが手札に戻ることでサウザンドアイズが破壊される。
しかしこれで、このターンの負けはなくなった。メイン2で最高の布陣を持ってくるだろうが、こちらの準備はもう、終わっている。
「このターンの勝利はなくなりましたが、まだ私の勝利は揺るぎません!魔法カード•《未来融合-フューチャー・フュージョン》を発動!デッキから、22体のモンスターを墓地に送り、《キメラテック・オーバー・ドラゴン》を選択、さらに魔法カード《シールドクラッシュ》を発動!セットモンスターを破壊します」
破壊されたのはネクロ・ガードナー。これでこちらのフィールドには大木炭が残るのみとなった。
「速攻魔法《サイバネティック・フュージョン・サポート》を発動!ライフを半分支払い、融合素材モンスターをこのターン墓地から指定可能にします。そして、魔法カード、《パワー・ボンド》を発動!私はサイバードラゴン含む25体を除外、現れよ、《キメラテック・オーバー・ドラゴン》」
現れたのは、攻撃力40000のキメラテック。さすがにとてつもないプレイングをしてくる。
「(【未来オーバー】も組み込んでんのか。それでよくあーもサイバードラゴン系ばっか展開できんな)」
恐ろしき、サイバー流といったところか。
「あなたの守りは素晴らしかった、しかし、次のターン、貴方の負けが決定します。私は《サイバー・ジラフ》を召喚、生贄に捧げてこのターンの効果ダメージを0にします。私はカードを1枚伏せて、ターンエンド。パワーボンドのデメリットダメージはジラフの効果で0になります」
「僕のターンです、ドロー!」
「タイミングは大分早いですが罠発動《威圧する咆哮》これであなたはこのターンの攻撃を行うことはできません。つまりは私のキメラテックの攻撃を耐える必要がありますが、40000の攻撃力を耐えきれますかな?」
「できます。今からそれを証明して見せましょう。このモンスターは自分のターンで10ターンフィールドに存在させていたレベル1の通常モンスターを生贄に特殊召喚できる、僕はレベル1の大木炭18を生贄に、《眠れる巨人ズシン》を特殊召喚!」
フィールドを覆う巨大な影、先に召喚されたサイバーエンドとはまた別のベクトルの威圧感がフィールドを覆う。
「さて、攻略できますか?攻撃は威圧する方向で封じられてますので、カードを3枚伏せてターンエンド」
「くっ、どんなモンスター相手だろうと、私のフィールドには攻撃力40000のキメラテック、破壊しつくします、ドローッ!!」
「スタンバイフェース、リバースカードオープン《バトルマニア》チェーンして《おジャマトリオ》。まずおジャマトリオの処理でマスターのフィールドに3体のおジャマトークンが召喚されます。続いて、バトルマニアでこのターン表側表示のモンスターは全て攻撃表示になり、このターンバトルが必要になります」
「なんですと…私の場には…」
「そうです。攻撃力0のおジャマトークンがいます。このターンで決着しますよ。」
「私は、ミストボディを捨て、《ライトニング・ボルテックス》を発動、これでズシンを破壊!」
「できません、ズシンに魔法、罠、モンスター効果は影響を及ぼしません」
「ぐっ…だが、おジャマで攻撃する前にキメラテックで攻撃すればいいだけの話、私の攻撃力40000を超えられますかな?」
「……」
「都合が悪くなるダンマリですか、まあいいです、どちらにせよこのターンで終わりです。その巨人を呼ぶのが1ターン遅かったようですね、バトルッ。キメラテック、その巨人を焼き尽くせっ。エヴォリューション・レザルト・バースト、25連打っっ!!」
「意味はないですがリバースカード、《ハーフアンブレイク》キメラテックを対象に発動、このターン対象モンスターは戦闘で破壊されず、僕の戦闘ダメージは半分になります」
「関係ありません、40000をいくつ半分にしようが、越えられないっっ」
「ズシンの効果発動、このカードが戦闘するとき、常に相手のモンスターの攻撃力+1000となります。」
「なんですとっ!!?そんな掟破りなっっ!!」
「だから異様なまでに召喚条件が厳しいんです、続けます。戦闘相手はキメラテック攻撃力40000、それに1000を加えた41000がズシンの攻撃力です。ズシン、迎撃しろ。ズシンパンチ25連打」
「ぐうぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「おまけです、おジャマトークン、ズシンに攻撃して来い。これにより戦闘ダメージ追加で3000、トークン破壊ダメージで900ダメージです」
鮫島:LP 600 → -24400 → -27400 → -28500
大歓声が上がる。それもそうだ。大人気のサイバー流の2大エースのサイバーツインにサイバーエンド、加えて奥の手ともいうべきキメラテックの連打、"伝説"の一角ペガサスの真のエースサウザンドアイズ、そして未知の無敵モンスター、それを出すための超常的なデュエルプレイング、そして30000近いオーバーキル。
どれも歓声を上げるのに十分な内容だった
しかし、それを成し遂げた本人はというと、
「(……やりすぎたか)」
という一言に尽きた。
2013/10/10 《つり天井》の効果勘違いしていることを指摘いただきました。味方の場も一掃される効果を失念していました。
2013/12/14 色々修正、間違いが多々あったので修正しました。結末こそ変わりませんが