「ギャンか、それともゲルググか、それが問題だ」次期主力MS選定レポート   作:ダイスケ@異世界コンサル(株)

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これも区切りがいいので、短いですが。
次の話も今夜中にあげられたら・・・そろそろタイトルの話にいきますので
いましばらくお待ちください


第5話 1月10日「新兵器」

宇宙歴0079年1月10日

 

ジオン公国の宣戦布告から1週間が経過した。

 

アランは依然としてズム・シティの高級ホテルに軟禁、有り体に言えば放置されていた。

戦争が始まったのだ。アラン一人のことなど構っている暇がないのだろう。

 

ニュースでは初日ほどの大戦果はないものの、各サイドや月面の抵抗勢力を撃破した、との勝報が何度も伝えられた。全ての戦勝報告を素直に受けとれば、いまだに地球連邦政府が城下の盟を誓っていないのが不思議なほどだ。

 

人々の関心は、勝って当たり前のジオン軍全体の戦果から、より顔の見える戦争勝利の立役者の情報を欲するようになった。

 

最初に取り上げられたのはザビ家の3将帥だった。

ドズル、キシリア、ガルマのザビ家将帥達の有能な指揮と奮闘ぶりを称える記事やニュースが取り上げられたが、一部の視聴者の人気が若いガルマ将軍に集中しすぎたことや政府からの通達もあって自粛されるようになった。

 

次に標的になったのは新兵器を操るパイロット達だった。

どこから流出したのか士官学校時代の写真がニュースに流れ、若い彼らの奮闘はプロパガンダ放送内に専門のコーナーが作られるほどの人気を博し、一部のパイロットは若い娘達からアイドル並みの人気を得ている、とも言われている。

 

「新兵器が一機で宇宙戦艦を撃沈だと?バカバカしい」

 

アランは目論見が外れた苛立ちもあって、男女の若いアナウンサーが軽薄な笑みを浮かべて垂れ流すだけの放送内容に毒づいていた。

 

新兵器とやらは、ギレン総帥が言っていたモビルスーツとやらで間違いないだろう。

宇宙服だか作業機械だか知らないが、素人向けの稚拙なプロパガンダだ。

 

宇宙戦艦の装甲は超高速で宇宙を飛び交うデブリなどものともしない厚さを誇り、何十にも分けられた気密区画をコントロールすることで長距離ミサイルやビームの砲撃にも数発は耐えるだけの生存性を持っている。それをたかだか1人が操縦するスーツとやらで撃沈できるはずがない。

戦艦は簡単に沈むようにはできていないのだ。

 

それにしても、連邦軍の動きが鈍い。

アランの苛立ちの種は、そこにある。

 

いくらなんでも、そろそろ初戦の衝撃から立ち直ってもいい頃だ。

 

「・・・ここで臨時ニュースをお伝えいたします」

 

突然、映像が切り替わり固い表情のアナウンサーの姿が大写しになった。

 

「軍の発表によりますと、我が軍は地球圏打撃のための特別作戦"ブリティッシュ作戦"を実施。大質量の特殊弾頭を用いて地球圏の複数の都市に大打撃を与えることに成功しました。繰り返します・・・」

 

ホテルのロビーから「スペースノイド万歳!ジーク・ジオン!」「アースノイドめ、ざまあ見ろ!」と叫ぶ人々の声がくもぐって聞こえてくる。

 

アランはその日、自分の血の気が引く音をはじめて聞いた。

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

いったいどの都市が被害を受けたのか。どの程度の被害を受けたのか。

ロンドンは無事なのか。

 

半狂乱になったアランは婚約者の無事を確かめるべく、何とか情報を得ようとやむを得ず公国軍総司令部に連絡を取った。

だが、厳しい情報統制の前にいくらザビ家といっても末席で軍の階級もない人間には全く情報が回ってこない。アランは肩を落として司令部を後にせざるを得なかった。

 

翌日、サイド3と並ぶ経済力を誇るサイド6が中立を宣言した、とのニュースが入ってきた。

 

戦争初日のジオン軍の攻撃により降伏したサイド1、2、4に続いて4つ目のサイドの実質的な地球連邦体制からの離脱である。

 

宇宙コロニーが7つのサイドに分散して建設されており、サイド7が未だ建設途上であることを思えば、観光地のサイド5を除く、ほとんど全ての宇宙コロニーのスペースノイドはジオン公国の勢力圏に入ったと言っても良いだろう。

 

連邦が立ち直らなければ、このままジオンが押しきることもあり得る。

 

アランの脳裏からは数日前までの楽観論はすっかり消えていた。

 

どうも連邦軍には何かが起こっているらしい。この期に及んでの責任の擦り付け合いや派閥による足の引っ張り合いか。

それとも・・・アランはもう一つの可能性に思い当たり戦慄した。

 

ひょっとするとジオン軍が喧伝する新兵器とやらが、本当に強力な代物だったのではないだろうか?

 

もしも件の新兵器が戦局を塗り替えるだけの存在であるならば、その指揮運用、調達、製造の権限を握るものは戦争の行方と権力を握ったのも同然である。

 

「次期主力モビルスーツの選定をめぐって、軍内部は真っ二つに別れている」とのギレンの言葉は誇大表現でも何でもなかったのではないか。

 

アランは改めて自分が巻き込まれた嵐の巨大さに押し潰される心地がした。




組織、新兵器、予算の問題を扱っているため以降は固有名詞が増えてきます。
また、各種設定資料になかったり相互に矛盾する内容があった場合には話を分かりやすくするために、敢えて無視する場合もあります。予めご了承ください。

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