「ギャンか、それともゲルググか、それが問題だ」次期主力MS選定レポート   作:ダイスケ@異世界コンサル(株)

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本日2話目の更新。またしても、ジオンのお金の話。ずっと不思議だったのです。
どうしてジオンがあれだけの軍備ができたのか


第30話 これだからアースノイドは

戦争の資金調達に戦時国債を販売するのは必要不可欠な行為である。

そして勝利は国債の販売を容易にする。

 

「で、どうやって返すつもりなんだ」とアランは問いかけた。

 

国債というのは債権であるから、要するに借金の一形態である。

借りた金は返さなければならないし、期間とリスクに応じて利子をのせる必要もある。

 

「連邦から賠償金として返させればいいではありませんか」

 

当然ではありませんか、と秘書が胸を張るのに、アランはため息をついた。

軍人さんは、これだから困る。

 

今や連邦はコロニー住民を毒ガスで殺戮するほどに必死なのだ。

対して、ジオンはそのコロニーを地球に質量兵器として落下させることで復讐を果たした。

 

今回の戦争は、経済的な次元で手うちにできる段階をはるかに踏み越えてしまっている。

戦争が決着したとして、そのときに双方の国家がまともな財政を保っているか。

ジオンが勝ったとしても、敗北した連邦に支払い能力があるかについて、つまり借金は帳消しに出来てもさらなる賠償金がとれるかどうか、アランはかなり怪しいと見ている。

 

「連邦からの借金なら戦争の勝利で踏み倒せはするだろうけどね、ジオンはおそらく他のサイドにも借金をしていると思うよ」

 

「・・・それは確かですか?」

 

ジオンの財政院を訪問した経験から、アランはジオンが国家ぐるみで二重帳簿をつけている、との確信を強く抱くようになっている。

それが支出だけでなく、借り入れについてもそうだろうと想像するのは自然なことですらある。

 

要するに表の政府官僚が関与しないところでザビ家が借金の証文を乱発している可能性がある、ということだ。

政府のガバナンス機能として、非常に危ういことこの上ないとしか言えない。

もっとも独裁国家というのはそういうものなのだろうが。

 

「確か、とまでは言い切れないけどね。これでもサイド3赴任前にかなりの期間、物資と資金の流れについては調査したんだ。地球とジオンの間に怪しげな資金の流れがあった、と上層部に不要な報告をあげたせいで、ここにとばされて来たわけだしね」

 

記憶力に優れた秘書がアランの記録を覚えていない筈がない。

 

「それは存じていますが」と、うなずく秘書にアランは続けた。

 

「だけど、それだけの金額じゃ今のジオンの軍備は説明できない。小惑星帯で金かダイアモンド鉱山でも発見したのでなければ、その資金の出所は宇宙でしかあり得ない。

 

おそらくザビ家は、ギレン総帥はかなりの無理をして他のサイドや月からも資金を調達したはずさ。総帥本部に飾られている古代中国の壷が抵当に入っていても不思議じゃない」

 

「・・・それは」

 

「それはつまり、ジオン公国は他のサイドからの借金をどうにかして返さないとならないし、戦争は短期間で勝利しなければならない、ということさ。期間が長引けば利子は増える一方だし、負けそうだ、と見なされれば戦時国債の利率があがって財政的に破綻する」

 

ジオン公国は勝っている。連邦という巨大国家をモビルスーツを用いた強力な先制パンチでコーナーまで追いつめた。

 

だが、戦争はまだ終わってはいない。次の戦争の舞台は連邦の有利な地球だ。

一方でジオン公国というボクサーには、もうスタミナが残っていないように見える。

早急に決着をつけなればならない。

 

「連邦も、それは同じ状況なのでは」

 

反射的に言い返した秘書の観測をアランは否定する。

 

「連邦はまだ戦時経済に舵を切っていないし、GDPでの国力はジオンの何十倍もある。そもそも国家として蓄積してきた資産の桁が違うからね。

 

連邦は他サイドに借金をしなくとも戦争ができるよ。連邦なら戦時国債を銀行を通じて自国民と企業に売りつけて、返済に困ったらインフレで相殺できる。長引けば資金の面でも連邦は絶対的に有利ということになるし、極端なことを言えば、連邦はじっと待っているだけで、ジオンが借金の利子で潰れるのを見ていればいい。

 

連邦はジオンには戦わなくても勝てる。少なくとも、財政的にはね」

 

「連邦の資産は、一世紀のあいだ全てのスペースノイド達から収奪したものです!」

 

こらえきれなくなったのか、秘書は金切り声をあげた。

 

「・・・まあ、そうなんだけどね。金は金だよ」

 

「これだから、金の亡者のアースノイドは・・・」

 

秘書の憎々しげな小声の呟きについては、アランは聞こえなかったふりをした。




少し内容が小難しいかもしれません。
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