ドラゴンクエスト―ダイの大冒険― 冒険家の歩き方   作:amon

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第4話『占い師ナバラ登場!冒険家の行き先は?の巻』

 

 

 

 

 カール王国でヒュンケルと別れてから、3年の月日が流れ、俺は15歳になった――。

 

 この3年間、歩いて飛んで泳いで世界中を回った……。

 

 ギルドメイン大陸では、テラン王国、ベンガーナ王国、アルキード王国、リンガイア王国をそれぞれ訪ねて回った――。

 

 アルキードは、特にこれと言った特徴のない平和な国……ぶっちゃけると平凡過ぎると言うか、面白みに欠けた。

 

 ベンガーナは商業が盛んで、町には何軒もの様々な商店が建ち並び、デパートまである豊かな国だが……、どうも人の心は貧しい様に思った。何かを買った売った、幾ら儲けた損したの話題ばかりで、余りに俗っぽくて飽き飽きし、1日滞在しただけで国を出た。

 

 テランは人口50人程度のまるで村の様な小さな国だったが、自然に囲まれた美しい国でもあった。ベンガーナとは対照的で、商店は1軒の万屋(よろずや)だけで品数も乏しかったが、国民は皆親切で、俺は結構好きだった。

 

 リンガイア王国は堅牢な城壁に囲まれた町と城があり、“城塞王国”の異名を持つ金城鉄壁を誇る国……その姿は圧巻だった。町全体が、1種の防壁の役割を果たす様に計画的に設計されているらしく、キチッと整えられた町並みも中々の物だった。

 

 北のマルノーラ大陸では、オーザム王国を訪ねた――。

 

 かまくらの様な丸い形の家が特徴的な、割と規模の小さな国だったが、年中寒い中で生きていく為の知恵として、寒さの届き難い地下に部屋が作られていて、まるでドラクエ8に出て来る雪国の町オークニスの様な風景で、中々面白かった。うっかり寝たら死にそうなほど寒かったが……。

 

 ラインリバー大陸では、ロモス王国を訪ねた――。

 

 ここもこれと言って特徴はなく、のどかで平和な国だった。ロモス城から南に行くと “魔の森”と呼ばれる入り組んだ森があり、そこの側にアバンさんの仲間の戦士ロカと僧侶レイラが暮らす『ネイル村』がある。1度訪ねたら、2人に歓迎された。

 

 死の大地は、流石に怪し過ぎて何が待ち構えているか分からないので、遠くから眺めるだけで済ました。それでも、不気味過ぎて嫌な汗をかいてしまったがな……。

 

 主だった場所はこんな感じで、他にも各大陸の小さな村なんかも訪ね歩き、3年で世界をほぼ一回りしてしまった事になる。

 

 自分でも駆け足過ぎじゃないか?と思うが、今の俺の体力と脚力、それに『トベルーラ』を駆使していたら、こういう結果になったのだ。

 

 それに、アバンさんが魔王ハドラーを倒したおかげでモンスターも大人しくなり、人を襲わなくなった事も要因の1つと言えるだろう。

 

 平和は勿論、結構な事だ。だが、モンスターが襲いかかってこない為、この3年俺のレベルは伸び悩み……今のステータスはこうだ。

 

 

―――――――

エイト

性別:男

レベル:40

―――――――――――

E竜神王の剣(攻+137)

E鉄の胸当て(守+23)

E鉄の盾(守+20)

E鉄兜(守+16)

E布の外套(守+4)

―――――――――――

力:124

素早さ:112

身の守り:66

賢さ:163

攻撃力:286

守備力:129

最大HP:411

最大MP:192

Ex:533469

――――――――――――――――――――――――――

剣スキル:66  『ブレイドスター』(剣 攻+25)

槍スキル:18  『槍の達人』(槍 攻+10)

ブーメラン:13  『シューター』(ブーメラン 攻+5)

格闘スキル:24  『黒帯格闘家』(素手 攻+5)

冒険心:70  『立ち向かう冒険心』(消費MP3/4)

――――――――――――――――――――――――――

エイト

HP:411

MP:192

Lv:40

――――――――――――

ホイミ ベホイミ

ベホマ キアリー

キアリク リレミト

ルーラ トベルーラ

トヘロス ザオラル

ギラ ベギラマ

ベギラゴン マホトーン

イオ メガンテ

ドラゴン斬り 火炎斬り

メタル斬り 隼斬り

疾風突き 一閃突き

クロスカッター 大防御

石つぶて 正拳突き

――――――――――――

 

 

 1、2回珍しくかかって来たモンスターを返り討ちにした以外は、自主的なトレーニングで経験値を得た。

 

 毎日とはいかないが、3年も修行してたったの1しかレベルアップ出来ないとは……『実戦に勝る修業はない』なんて良く言われるが、本当だったらしい。

 

 いや、もしかして俺のトレーニングが間違ってたのか?直径3メートルくらいの丸い岩を担いで兎跳びしたり……、剣・槍・ブーメラン・拳の素振りを各1万回繰り返したり……、ホルキア大陸とギルドメイン大陸の間の内海を泳いで10往復したり……と、思いつく限り、色々やってみたんだがなぁ……。

 

 ああ、ちなみに……竜神王の装備に関してだが、目標のレベルに到達はしたものの、平和な世の中では全く活躍の場が無いので、剣以外は結局、“ふくろ”にしまい込んだままになっている。何しろ、敵モンスターがいないからな。

 

 

「さて、これからどうするかな……」

 

 逆立ち歩きで山道を歩きながら、俺はこの先の予定を考える。あ、ちなみに今いるのはギルドメイン大陸のテラン王国へと向かう途中の山道だ。

 

 あの国は静かで景色も良いし、考え事をするには打って付けの場所だからな。あそこで気を落ち着けて、じっくりこれからの事を考えてみようと思ったのだ。

 

 

 という訳で、逆立ち歩きで進むこと半日――テラン王国に到着した。

 

 

「ん~~~♪相変わらず静かで綺麗な国だな、ここは」

 

 大きく深呼吸をすると、新鮮な空気が胸を満たす。

 

 人間の文明レベルが低いおかげで、全体的に自然豊かなこの世界だが、テランを包む空気はただの森や山より綺麗な気さえする。“神秘の国”なんて呼ばれるのは、こういう事なのかも知れない。

 

 何かの神を信仰していると聞いたが、その辺りも関係あるんだろう。

 

「さてと、とりあえずは散歩して、それから湖畔で釣りでもしながら、のんびり考え事といくか」

 

 釣り道具は、旅の途中で買ったのが一式、“ふくろ”に入っている。餌は、その辺の土を掘ればミミズが出てくるから無料(タダ)――こういう基本的に自然が豊かな所も、この世界の良いトコロだ。

 

 俺は、湖の側をのんびりと歩く。湖を囲む様に民家が点在し、それぞれ住民がひっそりと暮らしている。

 

「ん?何だあれ?」

 

 民家の方を見ていたら、ふと気になる看板を見つけた。

 

『占い師ナバラの館』

 

「ナバラ……?」

 

 聞いた事がある。どんな事でも占ってくれる凄腕の占い師のお婆さんがいると……その所謂“占いおババ”の名前が、確かナバラだったはずだ。

 

 こんな所に店を構えてたのか……。

 

「占いか……うん、ちょうど良い。占ってもらってみるか」

 

 旅のアテがなくてどうしようかと思っていたところだったんだ。占いで方向を示してもらうのも悪くない。

 

 俺は、そのナバラの店に足を向けた――。

 

 

 

 

「おや、このご時世に客とは珍しいね……」

 

 中に入ってみると、特に薄暗くも怪しい雰囲気もなく普通の部屋で、その真ん中に置かれたテーブルに、黒のローブととんがり帽子を被ったお婆さんがいた。

 

「あんたが、有名な占い師のナバラさん?」

 

「どう有名なのか知らないけど、あたしは確かに占い師のナバラだよ」

 

 そう答えるお婆さんは、やはり占い師ナバラで間違いなさそうだ。早速、占ってもらうとしよう。

 

「占ってもらいたいんですが……」

 

「まあ、あたしの館を訪ねて来たんだからそうだろうね。そこへお座り」

 

 ナバラさんは向かいの椅子を俺に勧めてきた。それに従い、俺は椅子に腰かける。

 

「さて、何を占って欲しいんだい?」

 

 さて、どう言えば良いかな……?

 

「え~と……俺は今までに世界中を旅してきたんですが、主な国や場所は殆ど巡ってしまって、これからどこへ行けばいいか悩んでいるんです。それで、何かこう……俺がこの先どこへ行けばいいかを占ってもらいたいんです」

 

「ふぅむ、なるほどね……若いのに、もう行く先に迷っちまったのかい。そんなに生き急いでも良い事無いよ?」

 

「別に生き急いでるつもりはないですよ。ただ、旅をするからには何かしら目的が欲しいってだけです」

 

「ふぅん……まあいいけどね」

 

 何か探る様な眼で俺を見たかと思えば、ナバラさんは軽く息を吐いた。

 

「どれ、それじゃあ『古代占布術』を試してみようかね」

 

「こだいせんふじゅつ?」

 

「まあ、ちょっと待っといで」

 

 そう言うとナバラさんは、奥の部屋に引っ込んでしまった。一体何をしようっていうんだ?

 

 

「よっ、こいせっと!」

 

 少し待っていると、ナバラさんが何やら色々抱えて戻ってきた。

 

「ほら、あんた!ぼさっと見てないで手伝いな!あんたの事を占うんだからね!」

 

「わ、分かりました……!」

 

 客に手伝わせるのか?と思ったが、ごねてへそを曲げられても面倒なので手伝う事にする。

 

「この台をその辺に置いて、この布を被せておくれ。布はしっかりと皺のないように被せるんだよ」

 

「分かりました」

 

 丸い大きなお椀型の台を適当な所に置き、その上にテーブルクロスの様な白い布を言われた通りに被せる。

 

「これで良いですか?」

 

「ああ、ご苦労さん」

 

 見れば、ナバラさんは持ち手の付いた燭台の様な道具に火を灯していた。

 

 さっぱり分からない……。これで一体どうすると言うんだ?

 

「あの、ナバラさん?」

 

「慌てるでないよ。今、説明するさ」

 

「は、はい」

 

「これは『古代占布術』と言ってね。布に火を落として、その焼け跡から探し物の場所を具体的なキーワードで占う術なのさ。ほれ、この火をお持ち」

 

「は、はい」

 

 言われるがままに、火の点いた燭台を受け取る。するとナバラさんは、布を被せた台を挟んで俺の対面に立った。

 

「その火にあんたが求めるものを念じるんだ。そして、あたしが合図したらその火を台に落とすんだよ。分かったね?」

 

「……分かりました」

 

 求めるもの、か……。俺が求めるのは、やっぱり“冒険”だな。どんな、って聞かれると説明に困るが、とにかくワクワクドキドキするような出来事が欲しい。

 

「…………」

 

 目を閉じて念じてみる……。冒険~冒険~冒険~~……。

 

「……いいよ、落としな」

 

「……っ」

 

 合図に従い火を落とす。目を開いて見ると、火から焦げ跡が不自然に伸びていく。普通は火を中心に広がっていくものなのに、布の上の焦げ跡は右に左に蛇行している……。ただの火じゃない、というなんだろう。

 

「……ア、ル……キー、ド……」

 

「え?」

 

 俺と同じく布の焦げ跡を見つめていたナバラさんが呟いた。

 

「アルキード……って、ベンガーナの南にあるアルキード王国の事ですか?」

 

「……恐らくね。そこに、あんたが求めるもの、或いはそれに繋がる何かがあるという事さ」

 

「アルキード王国か……」

 

 前に行った時は、特にこれと言って面白いものなんてなかったはずだ……。

 

 だが、今のところ他にアテはない。ここは占いを信じてみるのも良いだろう。

 

「……分かりました。行ってみる事にします」

 

「そうかい。まあ、あんたが納得してそうすると言うなら、好きにするがいいさ。ああ、一応言っとくけどね。何もなかったからって文句を言いに来るんじゃないよ?占いはあくまで占い、当たる事もあれば外れる事もある」

 

「分かってますよ、そのくらい……」

 

「ならいいけどね。ああ、それと、見料は100ゴールドだからね」

 

 なんて言うか……微妙に絡み辛いお婆さんだなぁ。やや偏屈気味……マトリフさんを思い出す。

 

 人間、歳を取ると性格が扱い難くなるんだろうか?俺はそうならない様にしなければ……。

 

 

 とりあえず、払う物はちゃんと払って、俺はナバラさんの店をさっさと出た――。

 

 

 アルキード王国……何があるのか、或いは何もないのか。

 

 期待と不安を抱きつつ、俺はまた逆立ち歩きでアルキード王国へと歩き出す――。

 

 

 

≪SIDE:ナバラ≫

 

 

「ふぅむ……」

 

 あたしはあの坊やが去った後、愛用の水晶玉を覗き込み、占っていた。

 

 最初見た時、不思議な感覚を覚えた……変な勘違いをするんじゃないよ?他の人間にはない、不思議な力を感じたって事さ。

 

 だから、あたしは得意の占術であの坊やの未来を占った。

 

 その結果……

 

「み、見えん……!未来が……!?」

 

 占いが失敗したんじゃない。まして、あの坊やの未来が閉ざされているのとも違う……それならば、閉ざされるまでの未来は見えるはずだ。

 

 だが、あの坊やの未来は一寸先すら、まるで何かに覆い隠された様に全く見通せん……。こんな事、長い占い師人生の中でも初めてだ。

 

「あの坊や……一体、何者なんだい?」

 

 若者が去ったドアの方に、あたしは思わず呟いていた……。

 

 

 


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