真・恋姫†無双 ご都合主義で萌将伝!   作:AUOジョンソン

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「何耳派?」「猫」「狐」「狸」「はぁ? 狸? 何それ、どういう需要なの?」「いや、いいだろ、狸耳。丸くて」「意外と可愛いもの好きなのか」「・・・狸自体はそんなに好きというわけではない。狸耳の美少女が可愛いから好きなのだと言っている」「清清しいほどのゲス発言・・・」「むしろ狐耳の何がいいのか。犬とほぼ同じじゃないか」「お? それ言うと戦争だぞ。お? お?」「・・・頭の悪い絡みはやめろ。反応に困る」「いいだろ、狐耳。・・・キャス」「それ以上はいけない」「後何耳ある?」「動物系以外だと・・・エルフとか?」「エルフ・・・」「エルフなぁ・・・」「・・・えるふ? それはどんな耳なのでしょう?」「まず、位置は人間と同じだ」「ふむ」「で、横に長くて」「ふぅむ・・・?」「さらに尖ってる」「うぅん・・・? ああ、化生の類ですね!」「まぁ、それで納得できるならそれで良いんだが」

それでは、どうぞ。


第六十九話 ケモノ娘達の餌食に

「・・・二人目、ですか」

 

「あー、いや、うん」

 

「次はシャオちゃんかー。おっぱい小さい子のほうが出来やすいのかなー?」

 

「・・・お前、それ絶対朱里とかの前で言うなよ?」

 

「ふぇ?」

 

執務室にいたのは桃香と愛紗。

珍しく朱里や雛里といった文官はいないようだ。こっそりとほっと安堵の息を吐く。

 

「・・・ねー、愛紗ちゃん」

 

「なんでしょう。桃香様」

 

「今日のお仕事、これで終わりにしない? 由々しき事態だよ、これは!」

 

「・・・何を唐突に。ダメですよそんなの」

 

「でもでも! こうしてる間にも他の子たちは身篭ってるんだよっ? 私たちも負けてられないよね!?」

 

「む・・・ま、まぁ、そういわれるとそうですが・・・」

 

「今なら私たち二人で独占だよ!? 勿体無いと思わないの!?」

 

「た、確かに・・・」

 

おい、何を言ってるんだ君達は。

確かに今日の仕事は少ないから後回しにしても問題は無いが・・・。

ん・・・? そうだな。後回しにしても問題ないなら、ちょっと欲望に忠実になろうかな。

 

「俺は全然構わんぞ。ほら、桃香、おいで」

 

「っ!? ほ、ホントっ!? わーいっ!」

 

がた、と立ち上がった桃香は、俺のもとまで駆け寄ると抱きついてくる。

ぎゅむ、と柔らかい身体の感触が心地よい。

 

「ギル殿・・・!?」

 

「愛紗はどうする?」

 

桃香の体を撫でつつ聞いてみる。

 

「・・・い、一回だけ。一回した後は、お仕事していただきますからね!」

 

「一回で済めばいいけどな」

 

・・・

 

「・・・結局三回か」

 

「えへへ、これでお仕事頑張れるよー!」

 

「おほん。・・・まぁ、悪いものではないですね」

 

妙につやつやしている桃香たちを見つつ、この寒さのなか、窓が空いている執務室で仕事を進める。

俺の発言どおり、一度だけというのは予想通り無理だったようだ。一人一回ずつ、そして最後に二人いっぺんで合計三回。

しかし、最近だとこのくらいなら『まだいけるな』くらいの感想を抱けるほどにはなった。これを『成長』と取るのか、『慣れ』と取るのか・・・。

 

「それにしてもちょっとお仕事楽になったよねー」

 

「まぁ、他の文官たちも成長してきたからな」

 

大体の案件を任せられるようになって、本当に機密のものだとか、国主の最終決定が必要な書類しか俺達の元へこなくなったのだ。

だから、最近だと本当に余裕を持って処理できるようになってきた。

珍しく朱里がいないのも、その辺りが関係しているのだろう。他の事に気を回せるようになったから、ちょいちょい出かけることが出来るようになったのだろう。

 

「このペースだと日が暮れる前には終わるな。晩御飯、何か食べに行こうか」

 

「いいねー。何食べる? 寒いからやっぱりラーメン?」

 

「大丈夫か? 寒い季節になると太りやすくなるぞ」

 

「ふぐぅっ・・・。そ、それは言わないでよぅ・・・」

 

なにやら精神的にダメージを受けたらしい桃香が、意気消沈したように机に突っ伏す。

愛紗がそれを見てため息をつき、やれやれ、と頭を振った。

 

「まぁ、運動さえすればいいのですが・・・。桃香様はあまり運動がお好きではないようですから」

 

「うぅ・・・だ、だぁってぇ」

 

容赦の無い愛紗の言葉に、再び精神にダメージを受けたのか、若干涙目になる桃香。

確かに桃香はあんまり運動しないからなぁ。ちょいちょい腹は摘めるし。

 

「腕立てすると胸が突っかかるし、腹筋五回出来ないし、走るとすぐばてるし・・・」

 

「・・・自分の主ながら、ここまで運動に縁がないとは・・・」

 

肉体的にも精神的にも運動に向いていないのだろう。

なんというか、月と同タイプの子なんだよなぁ。

 

「ま、少しずつでもいいから走ったりしてみろよ。少しは変わるぞ?」

 

「んみゅぅ・・・あんまり太っちゃうのもやだもんね。お兄さんに見せられなくなっちゃう」

 

自分の脇腹辺りをふにふにと摘む桃香は、口を尖らせながら短くため息。

まぁ、ある程度の肉付きなら歓迎できるが、あまり肥満体過ぎてもな。健康体が一番ですよね。

そう考えると、この国の将たちは皆理想的なぼでーである。流石美少女。

 

「私と同じくらいの身体能力の人いないかなー。やっぱり一人より二人、二人より四人だよね!」

 

「確かにそうだな。一人で黙々とやるよりはやる気起きるだろ」

 

しかし、桃香と同じ身体能力か・・・。麗羽とかかな?

彼女なら今は侍女やってるから仕事が休みのときとかは付き合ってくれそうだ。

桃香は麗羽の性格を気にしない大らかさがあるからな。二人とも上手くかみ合うだろう。

 

「あぁ、麗羽さんね! そうだねぇ、あの人となら、一緒に運動とか出来そう!」

 

遠まわしに『あの人運動できなさそうだよね』と言っているも同然なのだが、流石桃香というべきか、天然での発言のようだ。

何も考えていないというのは強いなぁ・・・。だから麗羽と気が合うのか・・・? 天然どうしで。

今度桃香と麗羽と天和を同じ部屋に集めてみたくなったな。空間がとてもほんわかとしそうだ。

 

「? どうしたのお兄さん。難しい顔して」

 

「ん、いや、何でもない。麗羽となら、桃香も頑張れるだろうなぁって思っただけだよ」

 

「そっか。えへへ、褒められちゃった」

 

「・・・褒められ・・・?」

 

桃香の発言に、愛紗が首をかしげる。

まぁ確かに、今のは褒めたのかどうか微妙なところだ。

俺は誤魔化す気で発言したので、褒めたつもりは一ミリも無い。

 

「・・・っと、お仕事おーわりっ! 愛紗ちゃん、確認してっ」

 

「分かりました。・・・ええ、問題ありませんね」

 

受け取った書類に不備が無いか確認した愛紗が、笑みを浮かべて頷く。

わーい、と手放しで喜ぶ桃香に癒されつつ、立ち上がる。

 

「じゃあ、晩飯だな。どうする? さっきは話が逸れちゃったけど、ラーメンにするか?」

 

「んーと・・・どうしよっかなぁ」

 

「私はお二人に合わせますよ。特に嫌いなものもありませんので」

 

どうしよっか、と悩む桃香が、むむむと唸る。

決まるまで時間が掛かりそうだ。・・・ま、ゆっくりと待つとするか。

 

・・・

 

「これが、おでん、ですか」

 

「ああ。時間も無かったしあんまり煮込めなかったけど、味はある程度染みてると思うぞ」

 

結局、ラーメンだと太るよねぇ、という桃香の言葉により、自炊することに。

そこで、材料もあるし、レシピもあるしということで、おでんを作ってみたのだ。

 

「ええと、これは大根、これは卵・・・何この、虫っぽいの・・・」

 

「螺だ。美味しいぞ?」

 

「・・・ほ、ほんとに? 騙したりしてないよね? 食べたら『うわっ』とか言わないよね!?」

 

「何でそこまで疑うんだ。・・・俺が食べればいいのか? ・・・むぐ」

 

ん、美味しいな。

もぐもぐと咀嚼する俺を、信じられないものでも見るかのように見つめる桃香。

・・・お前な、幾ら見た目が悪いからって・・・。

あ、でもあれだよな。タコとかナマコとか食べる民族だったな、日本人。

 

「ほら、美味しい。愛紗も、食べてみろって」

 

「は、はい。・・・いただきます」

 

意を決したように、目を強く瞑って口に螺を運ぶ愛紗。

・・・お前もか。

 

「むぐ、むぐ・・・っ。お、美味しいですね、これは。歯ごたえもありますし、おでんの汁とも合いますね」

 

「ほ、ほんとに? ・・・私ももらおっかな」

 

「おう、食べろ食べろ」

 

「あ、あーんっ。はふ、もぐ・・・」

 

桃香も目を瞑りながら一口。

 

「・・・あ、ホントだー。美味しいねぇ、これ」

 

何時も通りの笑顔を浮かべつつ、もぐもぐ咀嚼する桃香。

どうやら二人とも気に入ってくれたようだ。

・・・まぁ、鮑とか食ってるんだから、これも気に入らないはずは無いんだけどな。

やっぱり見慣れないものは怖いのだろうか。

俺も「うなぎのゼリー寄せ」とか出されたら幾ら美味いと言われようが食べるのは躊躇するだろう。

 

「大根とかも食べてみろよ。美味しいぞ」

 

「はーい。む、よっ、あれっ。た、卵が取れないよぅ」

 

「・・・へたくそだなぁ。ほら、あーん」

 

「あ、あーん!? あーんは嬉しいけど・・・た、卵まるまる一個は無理じゃない!? ちょ、こ、こっちに向けるのやめ・・・う、うぅー・・・! あ、あーん!」

 

「ほれ」

 

熱々卵を桃香の口にシュゥゥゥーッ!!

超! エキサイティン! ・・・いや、なんかほら、言わないといけない気がして。

 

「はぐっ。・・・あっふい! あふいよ、おひぃふぁん!」

 

「何言ってるか分からんな。ほら、愛紗はこの食べやすいように細かく切った大根を食べると良い」

 

はふはふ口を開けて喘ぐ桃香をスルーし、箸で細かくした大根を差し出す。

頬を赤くしつつも、愛紗は素直に口をあける。

 

「はむ・・・これも美味しいですね。もっと煮込むと更に味が染みるのでしたか。興味深いですね」

 

「こういう煮物なら焼き物と違って焦がす心配は無いだろうし、挑戦してみるのも良いかもな」

 

「そうですね。・・・今度作り方を教えていただいても?」

 

「もちろん」

 

ありがとうございます、と頭を下げる愛紗の隣で、ようやく卵を噛み砕いて飲み込めたらしい桃香が立ち上がる。

 

「お兄さんっ! 熱かったんだけどぉっ!」

 

「そりゃそうだろうな。なんせおでんだ。熱いのが存在意義みたいなものだしな」

 

「もうっ。そういうのは壱与ちゃんにやってあげてよ! もしくは副長さん!」

 

「それは流石に失礼だろ、桃香」

 

確かにあの二人だったら喜びそうだけども。

というか桃香の頭の中でもその二人は『そういう』役回りなんだな。

 

「で、どうだった? 美味しかったか?」

 

「味なんて分かるわけ無いでしょっ! もうっ。口の中火傷しちゃったじゃない」

 

「む。それは大変だな。見せてみろ」

 

「・・・あっ。そ、そんなこといって、『傷は舐めればいいんだぞ』なんていってちゅーするつもりでしょ!」

 

「ほう。・・・その発想は無かったな。おいで桃香。やってやろう」

 

顔を真っ赤にしてそう言い切った桃香に、俺は心から感銘を受けて手招きする。

まさかそんなシチュエーションを思い浮かべるとは思わなかったのだ。

 

「ふぇえええぇぇええ!?」

 

「・・・羨ましい」

 

「こないのならこちらから行こうか?」

 

「ちょ、ちょっと待って! ほんとに! 今口の中舐められたら、敏感になってるから・・・!」

 

何で桃香はナチュラルにエロティックな発言をするんだろうか。天然キャラだからか?

 

「・・・そこまで嫌なら仕方ないな。諦めるとしよう」

 

「そ、それはそれで残念というか・・・うぅ」

 

どっちなんだよ。

悩む桃香を尻目に、取り合えず腹も減ったのでおでんを食べ進めることに。

落ち着いたのか、桃香も頬を赤く染めつつももぐもぐとおでんを食べるのだった。

 

・・・

 

「ぬくいのにゃー」

 

「にゃー」

 

「にょー」

 

「にぃー・・・」

 

「・・・入り浸ってるなぁ」

 

ある日のこと。

書類仕事を終えて部屋に戻ると、猫四天王が部屋で寛いでいた。

前も言ったとおり、俺の部屋は空いてるし、たまに部屋を警備している兵士や侍女がいても、将や俺の知り合いであれば顔パスで通すようになっている。

だから俺の部屋で誰かが寛いでいることは別に構わないのだが・・・。

 

「こら美以、布団は散らかしたら戻さないと」

 

「うにゃー・・・ごめんなのにゃ。でも、みぃはぬくいところから動きたくないにゃ」

 

「全く。今日はどうするんだ? 一緒に寝るか?」

 

「寝るにゃ! 兄はあったかいしいーにおいがするから大好きにゃ!」

 

「だいおーさまだけずるいのにゃ。シャムも一緒に寝るのにゃ」

 

「ミケもー!」

 

「トラもにゃー!」

 

・・・こうして、彼女達と一緒に寝るようになったのは、二週間前のいつもより寒い日の夜のことだった。

寒いからと俺の部屋でごろごろ好きなように寛いでいたので、俺の部屋にいるなんて珍しいな、なんて思いながら寝る準備をしていると、寝台を占拠されたのだ。

仕方が無い、と彼女たちを端に寄せて寝台の真ん中に寝転ぶと、わらわらと彼女達にくっ付かれ、口々に「あったかいにゃ」とか「良い匂いするにゃ」と言いながら寝入られる。

これまた諦めて寝ると、翌日の夜も彼女達はこの部屋にいて、寝る準備をすると寝台を占拠。またか、と端に寄せて寝転ぶとわらわら寄って来て・・・と完全なデジャヴ。

更にその翌日は、寝る準備をする前に彼女達を一列に並べ、「待て」をしてみた。

うずうずとするものの、「俺が良いと言うまでに動くと一緒に寝てやらない」と言うと彼女達は我慢しきったのだ。

それからはその繰り返しだ。夜に戻り、ある程度彼女達の相手をしてやって、シャムが欠伸をして船をこぎ始めたら寝る準備をして、四人を呼んで眠る。

ちょいちょい他の女の子が遊びに来たりするが、そういう時はその子の部屋で寝たりしているので、翌日の美以達の機嫌は悪い。・・・理不尽な。

 

「ほーれ、ごろごろー」

 

「んにゃーん・・・」

 

シャムの喉を撫でてやると、満足そうな声を出してくれる。

うんうん、この子が一番猫っぽいよね。

他の子は猫というより野生児である。

 

「よっと」

 

巨大な寝台が、俺の体を受け止めて沈む。一切軋む音が出ないのは素晴らしいな。

それを見ている美以たちに手招きで許可を出すと、一斉にこちらに飛び込んでくる。

 

「にゃー!」

 

「ちょ、一人ずつこ、げふっ」

 

みぞおちにピンポイントで頭突きをかましてきた美以を取り合えずくしゃくしゃ撫でてやって、他の三人を受け止める。

ちなみに彼女達には定位置があり、美以が俺の上に乗って、ミケとトラが両サイド、シャムが何故か俺の頭の上に被さるように眠るのだ。

被さるといっても顔の上に来るわけでもなく、俺の頭を抱えるように眠るので、なんともくすぐったい。

ぷにぷにのシャムのお腹を枕に眠るのはとても気持ちいいのでスルーしているが、良くこんな体勢で眠れるな、四人とも。

・・・まぁ、頭の上で助かったというべきか。これで余った一人が股間とかに来られた日には、ほら、ねぇ?

 

「おやすみ、みんな」

 

「おやすみにゃっ」

 

「おやすみなさいにゃ」

 

「おやすにゃー」

 

「・・・すぅ・・・」

 

一人一人違う挨拶を返され、苦笑しながら俺も目を瞑る。

この眠り方に慣れた自分が怖いなぁ。

 

・・・

 

「お、またいるな」

 

翌日、部屋に戻るとまた美以達が寝台を占拠していた。

布団が盛り上がっていて、中にいる四人がもぞもぞと動いているのが見える。

ああもう、またぐちゃぐちゃにしてるな、なんて思いながら声を掛けていく。

 

「美以、昨日も言ったけどちゃんとかたづ」

 

「兄っ!? 兄ーっ! 取り合えず部屋から出るのにゃっ!」

 

「は? おい、今俺帰ってきたばっかりなんだけどっ!?」

 

俺の声に気付いた美以が、盛り上がってもぞもぞ動いている布団の中から飛び出してくる。

そのまま俺の手を取って部屋の外に無理矢理引っ張っていくと、ぜいぜいと息を整える。

 

「どうしたんだ、美以。いつものお前らしくないな」

 

背中を擦り、水筒を手渡す。

ごきゅごきゅと中の水を飲み干すと、落ち着いたのかため息を一つ。

 

「・・・兄に頼みがあるのにゃ」

 

「ん? なんだ、腹でも減ったか? ・・・仕方ないな、厨房に行って何か・・・」

 

「ちっがうにゃ!」

 

む? 違うのか?

ふしゃー、と威嚇するように怒鳴る美以に、はて、と首をかしげる。

 

「トラたちが大変なことになったのにゃ!」

 

「大変なこと? 風邪でもひいたか?」

 

「違うにゃ! はつじょーきにゃ!」

 

「はつじょー・・・発情!?」

 

「そうにゃ! さっきまではみぃが抑えてたけど・・・兄が混ざると多分皆我慢できなくなるにゃ!」

 

「ああ、だから連れ出してくれたのか」

 

それは助かったな。

ありがとう、という意味を込めて頭を撫でると、美以は満足そうな顔を浮かべる。

 

「それで? 一晩別のところで過ごせばいいのかな?」

 

「にゃ・・・一日程度で収まるもんじゃないにゃ。今のままだと・・・一週間くらいかにゃ」

 

「おいおい、大丈夫なのかよ、それ」

 

「みぃたち同士だと長いけど、兄に手伝ってもらえればすぐに収まるのにゃ」

 

「・・・それは、アレか」

 

「助けて欲しいにゃ!」

 

がっし、と俺の服を掴む美以。えー・・・。

いや、発情期を抑えるために男が必要って完全に『アレ』だろ?

・・・っていうか、連れ出したのって俺を助けるためじゃなくて事情を説明してまた部屋に向かわせるためか。

 

「いや、俺としてはいいけど・・・トラとか本人はいいのか?」

 

「たぶんだいじょぶにゃ」

 

「そ、そうなのか」

 

多分て・・・。

 

「で、前までは誰に手伝ってもらってたんだ?」

 

そのときの話を聞けば少しは参考になるかな、と思って話を振ってみる。

 

「? 別に誰にも手伝ってもらってないにゃ。みぃとかはつじょーきじゃないのが交代で相手してたにゃ」

 

「ええー・・・?」

 

じゃあ今まで男に手伝ってもらったことないのかよ。

 

「何で俺が手伝ったらすぐ終わるって知ってるんだ・・・?」

 

「? はつじょーきにゃんだから、こづくりすれば満足するにゃ。当たり前にゃ?」

 

「・・・ああ、俺がアレか。南蛮の常識を知らないってことなのか」

 

お前馬鹿なの? っていう顔をされたので、取り合えず頬を抓っておく。

 

「にゃっ!? にゃにするにゃ!」

 

「いや、なんていうか・・・まぁいいや。じゃあ手伝いに行こうかな」

 

「・・・みぃから頼んでおいてにゃんだけど・・・ほんとに良いにゃ?」

 

「おいおい、美以がそれを言うか。・・・ま、しっかり責任は取ってやるからさ」

 

取り合えず、トラたちの様子を見にいかないとな。

 

・・・

 

「にゃぁ・・・んっ、あっ、ひにゃぁぁ・・・」

 

寝室に入った瞬間、嗅ぎなれた匂いを感じた。

同時にもぞもぞしている布団の中からあからさまな喘ぎ声だとか、水音だとかも聞こえてくる。

 

「・・・美以、これマジもんじゃねえか」

 

「? まじもんってなんにゃ?」

 

小声で美以に話しかけると、完全に素で返された。

あ、分からないのか。

いやでも、俺の想像より発情期だったな。もうちょっとファンシーなのを想像してたけど。

こう、もじもじしつつも「切ないにゃぁ・・・」みたいな。

そんな軽度のものを考えていたので、まぁ最悪本番はしなくてもオッケーか、とも軽く考えていたのだが・・・。

 

「これはちょっと予想外だなぁ」

 

「・・・やっぱりダメにゃ?」

 

「いや、そこまでは言ってないだろ? 声掛けたらいいのかな」

 

布団をがばっと剥いでみる。

三人がそれぞれの股に顔を埋めていて、ぴちゃぴちゃ音が鳴っている。

・・・あ、こっちみた。

 

「オスにゃ・・・」

 

「オスだにゃ・・・」

 

「オスにゃん・・・」

 

「美以、これはやばいぞ、ちょっと一旦出直して・・・美以?」

 

ぎらぎらとした目で三人に見られながらにじり寄られ、隣の美以を連れて一旦逃げようとしたのだが・・・。

 

「・・・オス、にゃ」

 

「美以、お前もか・・・!? ミイラ取りがミイラ・・・うおおっ!?」

 

後日。

部屋の前で警備をしていた兵士から、「私が今まで働いてきた中で・・・一番長く感じた夜でした・・・」という愚痴を吐かれた、と銀から愚痴られた。

申し訳ないな、とは思うけど、警備が侍女のときじゃなくて良かったなぁとも思ってしまったとさ。

あ、ちなみにだけど、美以も含めて全員、発情期は無事終わりました。・・・これで全員同時にご懐妊、なんてことにならなきゃ良いけど・・・。

初体験のすぐ後にご懐妊とか、なんと言うエロゲ。・・・あんまり言うとフラグが立つ気がするので、ここら辺にしておくか。

 

「兄ー・・・立ち上がれないにゃぁ・・・」

 

「うにゃぁ・・・」

 

力なく呻く四人を他所に、取り合えずシーツを取り替える為に侍女を呼ぶ。

ああもう、一気に四人は大変だな。多分下のクッションまでいってるんじゃないのかな。

 

「ほら、風呂に行くぞー。取り合えず何でもいいから羽織りなさーい」

 

ぐったりしている四人を連れて、すでに常連となった浴場へと向かうのだった。

 

・・・

 

「お、詠。久しぶりー」

 

「あら、ギルじゃない。ホント久しぶりね」

 

厨房にふらっと寄ってみると、とんとんと料理の下拵えをしている詠がいた。

こちらに顔だけ向けてそう答えると、すぐに手元に視線を戻す。

ちょろっと悪戯したくなるが、まぁ危ないので後にしよう。

 

「お昼ならもうちょっと掛かるわよ。ボクも作り始めたばっかりだし」

 

「ん、いや、別に急いではいないから、大丈夫。・・・手伝おうか?」

 

「結構よ。あんたは座って待ってなさい」

 

「・・・ああ、なるほど。隣に俺がいると落ち着かないんだな、詠は」

 

「っ! ば、バカじゃないの!?」

 

「図星か」

 

流石ツン子。言葉よりも態度が分かりやすい。

顔をこちらに見せないようにしているが、耳まで真っ赤なので丸分かりだ。

若干手元も乱雑になってるし・・・見本のようなツン子だな。

 

「るっさい! ・・・ったく、久しぶりに会ったと思ったら」

 

落ち着いたのか、はぁ、とため息をつきながら規則的に包丁を動かす詠。

何を求められてるんだ、俺は・・・。

 

「・・・あんた、辛いの大丈夫だっけ」

 

「ん? おう、全然問題ないぞ。・・・あ、泰山のマーボーは勘弁」

 

「あそこまで辛くするわけ無いでしょ。(しんぷ)くらいしか食べれないわ、あんなの」

 

『あんなの』扱いされる泰山のマーボーの凄まじさが、詠の表情からも分かる。

俺も食べるだけならまぁ、貯蔵魔力の八割を消費しても問題ないのなら完食する自信はある。

自分から進んでは食べたくないので、月から令呪で命令でもされないと絶対に挑戦はしないけど。

 

「ま、取り合えず辛いのは大丈夫ね。・・・ん、こんなモノかしら。味見する?」

 

「お、するする。どれ」

 

立ち上がって詠のもとへ行くと、小さな皿を手渡される。

どうやら本当に麻婆豆腐らしい。

くい、と傾けて、口に流し込む。・・・うん、美味しい。

 

「どう?」

 

「美味しいよ。流石詠」

 

「な、撫でないのっ」

 

俺の手元からひったくる様に、味見用の皿を奪う詠。

全く、恥ずかしいならそういえばいいのに、と思いつつ頭を撫でていた手を離す。

 

「あっ・・・。ふ、ふんっ」

 

こうして寂しそうな、物足りなさそうな顔をするのも予想済みだ。

あえてあまり突っ込まずに、くくっ、と笑って席に戻る。

少しこちらを目で追っていた詠だが、目を合わせて笑いかけると、慌てて手元に視線を戻す。

いつまでも初々しいのは、詠のいいところだな。そういうところを見れるというのは、恋人特権というものだ。

 

「そういえば、月の様子はどう? ・・・最近行けてないけど、元気そうにしてる?」

 

「ん? ああ、もちろん」

 

「そ。・・・後三ヶ月かぁ」

 

ほぅ、と息を吐きながら卓に料理を並べていく詠。

 

「後で一緒に様子見に行くか?」

 

「・・・ボク、この昼休憩終わったらまた仕事よ? どこかの誰かさんが私に侍女長代行なんてやらせてるせいで・・・ねっ!」

 

だんっ、と湯飲みが目の前に強く置かれる。

・・・お怒りである。

 

「ま、お怒りもごもっとも。・・・よし、じゃあ・・・」

 

一人自動人形を取り出して、命令を飛ばす。

俺の命令を受けた自動人形は、瞳を閉じた顔のまま頷き、軽い足取りで厨房を出て行った。

 

「? どうしたの?」

 

「ん、いや、多分近くにいるからすぐにつれてくると思う。先に食べちゃおうか」

 

「・・・また変なことしようとしてるの?」

 

「まぁまぁ。ほら、俺の膝の上来るか?」

 

「なっ、何を唐突に・・・!」

 

「久しぶりに詠といちゃつきたいだけだよ。ほら」

 

「・・・-っ!」

 

料理を並べ終わった詠は、顔を真っ赤にしたまま、俺の膝の上に腰掛ける。

・・・ちょっと届かなかったので、持ち上げて膝の上に持ってくる。

 

「・・・こうして、あんたにもたれてると、やっぱり安心するわね」

 

「はは、どうしたいきなり」

 

俺の言葉に答えることなく、詠はこちらを見上げてくる。

その後すぐに前に向き直り、ん、とレンゲを勧めてきた。

 

「さっさと食べなさい。冷めるじゃない」

 

「分かったよ。よっと」

 

一口分掬ってみて、口に。

・・・うん、美味しい。何時も通り、安心できる味だ。

 

「・・・どう? 辛すぎたり、しない?」

 

「大丈夫。何時も通り美味しいよ」

 

「そ。まぁ、ボクの料理が不味いわけないしね」

 

「ほら、詠も一口」

 

ひょい、と掬ったマーボーを、詠にも勧めてみる。

 

「じ、自分で食べれるわよっ」

 

「食べさせたいんだよ。ほら、あーん」

 

「そう言うの、反則なんだから・・・あ、あーんっ!」

 

吹っ切れたのか、俺の差し出したレンゲを咥える詠。

はむ、と可愛らしくマーボーを食べた詠は、むぐむぐと咀嚼する。

 

「・・・まぁまぁね。簡単に作ったにしては上手くいったほうよ」

 

それからしばらく、詠に食べさせたり自分でも食べたりしていると、騒がしい声が聞こえてくる。

 

「ちょっ、は、離してくださいっ。何で私を連れて・・・隊長の差し金ですかっ!?」

 

「? 何かしら、騒がしいわね」

 

「ようやく来たか」

 

「って言うことはこの先に隊長いるのっ!? ちょ、寝起きですよ私っ。髪ボサボサだし・・・服は何故か侍女服着せられましたけどっ!」

 

厨房にやってきたのは自動人形と、その自動人形に襟首つかまれて引っ張られる副長だった。

 

「あら、副長じゃない。・・・どうしたの、その格好」

 

「詠さん・・・あ、隊長。おはようございます」

 

「こんにちわの時間だけどな。それにしても酷い格好だ」

 

「だ、だって、この人が! 寝起きで意識がはっきりしない私を無理矢理に着替えさせるからこんなことに・・・!」

 

「・・・」

 

また目を閉じたまま、副長の襟首を掴んで佇む自動人形は、無言で、ぱ、と手を離す。

 

「ふみゃっ! も、もうっ、いきなり離さないでくださいよっ!」

 

尻餅をつく副長の服装を直してやり、髪も整える。

 

「あ、ど、どもです」

 

「・・・それで? 何で副長が侍女服なんて着てるわけ?」

 

膝から降ろされた詠は、不機嫌そうに言いながら食器を片付け始める。

 

「ん、ほら、侍女長代理の代理。副長に任せれば、月のところにいけるだろ?」

 

「・・・大丈夫なの、副長って」

 

「し、しっけーな! 私だって隊長の右腕! それに月のお姫様なんですよ! 人の上に立つのは得意です!」

 

「ほんとにぃ・・・?」

 

じとり、と半目で副長を見る詠。

まぁ、不安になるのは分からんでもないが、これでも俺の遊撃隊の副長だ。

色々書類仕事もやれるし、最近は家事能力も高くなっている。人もまとめていくことが出来るし、任せても問題は無いだろう。

なんてことを説明してみると、詠は渋々納得したようだ。

 

「分かったわ。ま、今日の午後からの仕事はそんなに多くないから、慣れてない副長でも出来るでしょうけど」

 

「それなら話は早いな。じゃ、副長。頼んだぞ」

 

「はーいっ。・・・あ、あのっ。上手に出来たら、いっぱい、褒めてくださいねっ」

 

「いいぞ。だけど・・・一つ失敗するごとに今日の副長の晩飯が一段階ずつ辛くなっていくからな」

 

「ふぁっ!? ば、罰ゲームありなんですか!?」

 

「そりゃ、詠の変わりに侍女長を代行してもらうんだからな。責任持ってやってもらわないと。・・・それとも、失敗しないではこなせないか?」

 

「うぅ・・・が、頑張りますっ。ふぁいと、私! 頑張れのーみす! 罰ゲーム、ダメ、絶対!」

 

一人なにやら自分にエールを送っているらしい副長に侍女長代理を任せ、俺と詠は後宮へと向かうのだった。

 

・・・




「もうっ、ほんっとーに熱かったんだからね!」「散々謝っただろ。・・・そういえば桃香」「ふぇ? なに?」「お詫びと言ってはなんだけど、桃香のために特別なお風呂を用意したんだ」「特別なお風呂!? 何それ!」「よっと。これが宝物庫に入っている特別製の浴槽だ!」「わぁ・・・なんだか透明だね? このお風呂に入ると恥ずかしそう・・・」「まぁ、お湯も張ったし、取り合えず入ってみなよ。この足場で入るんだぞ」「ちょっと高いんだね。んしょっと。お兄さんも一緒にはいろ? 一人だと恥ずかしいし・・・えと、お詫びっていうなら、一緒に入ってほしい、かも」「む、そうだな。ちょっとこっちも用意があるから、先に入っていてくれ。よっと」「? なにその白いの」「後で必ず必要になるんだ」「へぇ~・・・んしょ、と。じゃあ、先に入っちゃうよ? ・・・わ、すべりそー」「気をつけろよー」「うん。押したりしたらだめだからね?」「そんなことしないって」「えへへ、絶対だよー? ・・・よいしょっと。・・・あつっ。お兄さん? これ結構あつ・・・ふぇっ!?」「あ、足滑らせた。押すまでも無かったな」「あっつっ! あつっ、おにいさ、これ、あつっ!」「ほら、何とか出てきてこれを体に塗りなさい」「あばばばば・・・!」「・・・倶楽部、作れそうだな。ダチョウとか」

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